軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第93話  武具注文は半日仕事の香り

陽気に歌いながら、仕事場を片付け始めるドワーフたち。

まさか……。

まさかまさか。

そのまさかで、仕事場を片付けそのまま酒盛りが始まってしまった。酒があったら我慢できない! というわけなんだろうか。

こらえ性がないにもほどがあるだろ。

「あんたたちも一杯やってくれ」

大親方に杯を渡される。

どうやら酒盛りは大親方公認らしい。

ていうか、仕事場に普通にグラスが置いてある時点でお察しである。

エトワとエレピピはまだ未成年だけど、どうする。

いや、こっちの世界には酒に対する法律なんてないか……。

酒盛りは進み、さすがのドワーフ族。グイグイみるみる減っていく。

うーん。ウイスキー、けっこう沢山持ってきてあったんだがな。

いつのまにか用意された干し肉をパクつきながら、アルコール度数40%の酒をストレートでどんどん飲んでいく。

俺たちは、真っ昼間、それも仕事中に突然始まった酒盛りにドン引きしながら、舐める程度にしておこうとみんなでアイコンタクトしつつ、しばし杯を傾けた。

「すまんな。ワシらドワーフは、嬉しいことがあるとどうしてもだめでな。こうして騒ぎたくなっちまう。まして、こんないい酒と鉄を貰ったんじゃな。さあ、せっかくだ! ダンナももっと飲んでくれ!」

赤ら顔の大親方にさらに勧められる。

節くれ立った分厚い手で酒瓶を持ち勧めてくる。

うーん……。

ビールとかならともかく、ウイスキーはそんなに飲めませんて……。

せめて薄めるものでもあれば……。

……あ。そういえば水を持ってきてた。

水質汚染の可能性を考慮して、ミネラルウォーターを用意してあったのだ。

よしよし。

これを水割り用の水として使おう。

薄めれば量飲めなくもない。

ドワーフ達は、いつのまにか俺が持ってきた酒だけでなく、別の酒樽まで出してきて飲み始めていた。

これって、要するにただの酒好き……?

どんなことでも口実にして酒飲んじゃうという、呑兵衛が得意とするパターンなんじゃ……。

まあ、そうだとしても、喜ばれてよかったな。うん。

これならきっと良いものを作ってもらえるだろう。

……全然仕事の話をする感じじゃなくなってしまったけどな!

「それで……どんな剣を打って欲しいんだ?」

と思ったら、仕事の話を振ってきた。

これくらいの酒で酔っぱらって仕事の話どころじゃないという雰囲気ではない。

むしろ酒が入ってこそコミュニケーションが始まるようなタイプか。

呑みニケーションだね。

まあ、今日は他に用事があるわけでもない。

武具の注文は、大きい買い物だし、ゆっくりとコミュニケーションしながらスリ合わせていくのもいいだろう。

日本だと買い物が全体的にスピーディなものだ。

だが、例えば中東なんかでは半日くらい掛けて交渉しながら買い物するのもザラだと聞く。

それに、郷に入れば郷に従えともいうからな。

……ドワーフペースで酒に付き合ってたら、体がいくつあっても足りないだろうが。

「えっと、頼みたいものは、簡単に言えば携帯用の片手剣です。僕たちは、非常に小規模なんですが、騎士隊をやろうと思ってまして。それで隊員用のお揃いの剣が欲しくて。あと防具も」

騎士隊の件を伝える。

お揃いの剣。

できれば防具もお揃いで欲しい。

「騎士隊? 個人でか」

「そうです。いえ、まだ始まってすらいないんですけどね。……それで、武器と防具をまとめて発注しようかと。武器はお揃いの片手剣で――まあ、これは携帯用のサブウェポンという位置付けで。普段は街で店をやっているので、とりまわしの良い武器が必須だという事情でして。形は……峰打ちが可能な、片刃のものがいいですね」

両刃もいいけど、峰打ちできるほうがいいもんな。

別にKATANA的なものに拘るつもりはないけど、単純に実用的に。

魔剣が両刃だからってのもあるし。

「……騎士隊のメンバーは?」

「この子たちです」

俺がそう告げ、後ろでチビチビと付き合い程度に飲んでいる女性陣を紹介する。

ギョッと目を剥く大親方。

「騎士、女騎士か!」

ああ、やっぱ意外なんだな。

「はい。女騎士隊です。いいでしょ」

俺が特に気にせずそう答えると、大親方は遠慮なく破顔した。

「ふっはーはっははは! 騎士! 騎士隊か! 騎士職の女を集めてか!」

む。そんな笑うほどのことかしら。

ドワーフジジイともなればマッチョ思想に毒されすぎて、やはり騎士は(というか戦士全般は)男でねーとと思ってるのかな。

……まあ、仕事さえできるなら思想はどうでもいいけどさ。

さすがに女用の剣など打てんとか言い出したら考え物だが。

「おかしいですか?」

でも、ちょっと声音に出てしまったかもしれない。

いかんな。もっと大人にならなきゃ。

女の騎士隊を本格的に始動させれば、世の中の偏見はたぶんこんなレベルではないのだろうから。

「すまん。気を悪くさせちまったか。悪い意味じゃない。ただ……痛快でな。女だけの傭兵団もあるんだ、女が騎士をやったってなにもおかしかない。だが、本気でそれをやる奴がいるなんて思わなかっただけでな」

別に悪気はなかったらしい。

許す!

「半分は成り行きだったんですけどね。偶然、騎士職の女性と縁が深くて」

「いいと思うぞ。男と女で実際に仕事に差が出ることはほとんどねぇからな。ワシの経験では。それに女が騎士になれねぇのは、この国だけだ。効率だか慣例だか知らねぇが、大した歴史のある国でもないくせにな。だいたい鉄のことを鍛冶屋に相談もせずに決めるようなお役所仕事をやるような国だ。戦争で鉄が大量に必要なのはわかるがな、質より量で戦に勝とうなんてなぁ――」

うわぁ、いつのまにか鉄の話になってる。

国に対して鬱憤が溜まってるんだな。

もしかすると、すでに酔っているのかもしれない。

てか、質より量で戦やるのは基本だろうとか思うけど、それには触れないでおこう。

大親方は一通り国のやり方についての愚痴を吐き出した後、俺の腰元に視線をやりながら呟いた。

「で、ダンナのその剣は? 騎士隊の剣は、旦那のぶんも打つんだろう? その剣と、両方持つのかい」

おっと、魔剣が見つかった。

別に隠してたわけじゃないけど、剣を打ってもらいに来ておいて「メインはこっちなんです、サブ打って下さい」ってのは、ちょっと隠しておきたい本音だったんだがな。

「ええ。でも、これはちょっと特別仕様でして。迂闊に使える種類の剣じゃないんですよ。まして人間相手にはね」

「うーむ。……確かに雰囲気があるな。どれ、ちょっと見せてもらってもいいか? なに、ただの興味本位だがね」

まあ、そういう展開になるか。

「重いですよ。気を付けて」

魔剣を大親方に渡す。

この剣は、所有者である俺以外の人が持つと、妙に重量感があるのだそうだ。

「おおお、本当に重いな。なんだこりゃ」

「ふふふ。所有者を選ぶ魔剣ですからね……」

カッコつけてるが、偶然手に入れたのに過ぎないんですけどね!

「魔剣!? 魔剣と言ったか!? こいつが!? ……いや、そんなはず……」

なんか妙に食いついたな。心当たりがあるんだろうか。

「魔剣を知っているんですか?」

「おう。ドワーフ族に伝わる古い伝説よ。血塗られた七本の魔剣。七の種族を葬り去り、七の血色に濡れた剣。それの持ち主は、末代までの呪いを受けると言われている」

呪い……。

変なクマに襲われたのが呪いといえば呪いか。

それ以外には無いと思いたい。

「では中も見せてもらうぞ」

一息に剣を鞘から引き抜く大親方。

現れる、黒い刀身。

「 濡烏(ぬれがらす) 」というだけあって、シットリと濡れるような黒色だ。

ちなみに、真実の鏡で見える魔剣の情報はこう。

――――――――――――――――――――――

【種別】

近接武器

【名称】

濡烏(ぬれがらす) の魔剣ハートオブブラッド

【解説】

千の魔獣の血を吸い赤く染まった魔剣

近接戦闘職が装備可能な剣

魔術色『濡烏』により回避率上昇の加護を付加

魔剣固有スキル『吸収』の呪いを攻撃対象に付加

魔獣に対してクリティカル率上昇

【魔術特性】

回避率上昇 B

吸収 C

対魔獣 A

【精霊加護】

なし

【所有者】

ジロー・アヤセ

※譲渡不可

――――――――――――――――――――――

大親方は魔剣に瞳を釘づけにし、ゴクリと息を飲んだ。

「なんだこいつは……」

「凄い黒いですよね」

「いや……色も確かにすげぇが……。こんなもん人の手で打てるものなのか……? あのナイフも想像の埒外にある造りだったが、こいつはその比じゃねぇ。……素材が何かすら、この俺がわからねぇなんて……。それに、この内包された魔の波動……」

震える声で大親方が吐露する。

まるで、魔剣に憑りつかれたようだ。

そんな大親方に、俺はドヤ顔で言った。

「黒いのは、後付けみたいですよ。元は刀身も赤かったみたいですね。あ、ちなみに、本物の魔剣です」

大親方が顔を上げる。

「本物……なのか? ……そうだろうな。内在する魔力が、未だかつて無い濃密さだ。いや……これは魔力そのものが剣になったと言っても過言じゃねぇ。これなら……納得するしかねぇな。変わった客だとは思ったが……まさか、ダンナが魔剣に認められるような剣士だったとは。全く強そうには見えねぇのに、人は見かけによらねぇもんだ……」

一人納得する大親方。強そうに見えねぇは余計だぜ。

ふぅと一息付いて、魔剣を鞘に納める。

「いや、いいもんを見せてもらった。確かにこいつは迂闊には使えねぇな。俺にはこれほどの剣は打てねぇが、普段使いには丁度いいやつを打ってやる。……いや、打たせてくれ。魔剣に認められるほどの剣士に剣を打てるなんて、鍛冶屋にとっちゃ最高の名誉だからな」

なんだか急に認められてしまった。

魔剣の所有者というだけで、まるで勇者かのような扱いである。

マジで、偶然見つけただけなんだけどな。

まあ、言う必要もない事なんだけど。

◇◆◆◆◇

その後、本格的に注文書を作成した。

あの程度の酒では酔わないのか、手尺でカンタンな採寸を取りながら注文を厚紙に書いていく大親方。

こっちの要望の装備をちゃんと作ってくれる模様。

武器も防具も。大親方自ら。

値段もかなり勉強してくれるようだ。

というか、大親方はもう引退している身だから手間賃と材料費ぐらいでいいのだとか。

魔剣効果だか、鋼材効果だか、はたまたウイスキー効果だか知らないが、ずいぶんと好待遇である。

ラッキーと言いかえてもいいな。

最初にレベッカさんが採寸した。

まあ採寸っても、大親方が手尺で適当に測って、あとは手のひらを見るだけなんだけどね。

なんでも、手を見ればその人間の力量はわかるらしい。

「む? この指輪は、リンデンローブの手によるものか?」

レベッカさんの手を見て、「むむむ、見た目にそぐわぬ力量……」と唸っていた大親方が、俺がプレゼントした指輪に目を付けた。

「リンデンローブ?」

「エリシェの細工師だ。うちからも時々仕事を発注しとる。腕は良いんだが頑固な男でな。宝飾の仕事は長く受けてないはずだが……」

そういえばリンデンローブなんて苗字だったなビル氏。

エリシェの細工師、ビル・リンデンローブ。

エリシェ市長のミルクパールさんの旦那だ。

ひょんなことから知り合って、その縁でレベッカさんにプレゼントする指輪を作ってもらったのだ。嵌め込んだ 宝石(ガーネット) は持ち込みで。

いや、指輪を見ただけで作成者がわかるなんて、さすがだな。職人ってそういうものなのか。

今回作る剣も、ビル氏に細工入れてもらうかな。

剣は「私はちょっと重めのが好みねー」というレベッカさんの注文により、重厚な感じの両刃の直剣を打ってもらうことになった。まあ、レベッカさんは傭兵歴長いし、好みがハッキリしてんだろうからね。

次にマリナが見てもらう。

マリナの鎧は、胴部分以外はまだ使えるということで、そこだけ再生することになった。

次に剣の形を決める前に、ハルバードを見てもらう。

「おお、これもまた変わった色の斧槍だな」

「主どのにいただいたのであります!」

マリナのハルバードは「 滅紫(めっし) 」色。

「けしむらさき」と言ったほうが通りが良いだろうが、要するに濃い紫色なのだ。

俺の剣が黒いように、こっちの世界のアイテムは特殊な色付きのが時々あり、なんかしらの特殊効果が付与されている。

マリナのハルバードに付いた付与効果は『滅び』。

どういう効果なのかはイマイチ検証できてないが……。

そういう意味では、マリナの斧槍も気楽には使いにくい武器と言えるのかもしれない。

「うーむ。これもなかなか良い品のようだな。さっきの魔剣ほどじゃねぇが、魔力も内在している。よほど金持ちのようだなお前さんら」

どうやら、こういった属性付与された武器ってのは、普通はかなり高値で取引されるものらしい。

古道具屋で普通に安く手に入れたけど、掘り出し物だったんだな。

剣はよくわからないということで、俺のと同じ方向性のものを打ってもらうことにした。

お次はディアナ。

「エルフ様じゃねぇか!」

フードをかぶっていたので、気付いてなかったらしい。

ドワーフというと、エルフと仲が悪い種族なんてイメージもあったわけだが、全然そんなわけもなく普通に敬っている模様。

剣は、装飾の凝った細剣を作るという話で落ち着いた。

やっぱエルフといえば細剣。

俺はそういうお約束を守る男だよ!(単純にヘタレぽいディアナに重い剣を持たせる気がなかっただけともいう。魔法要員だしな)

防具も装飾過多な方向性になりそう。大親方は話がわかる男である。

趣味装備に理解ありすぎ。

エレピピ。

「……よろしくお願いします」

相変わらずダウナーな感じでペコリと頭を下げる。

酒も入っているはずだが、あまり変化は感じられない。案外、うわばみなのかもしれない。

そういえば、レベッカさんもマリナも強めだったな。

騎士天職者は酒が強いなんてのもあるのかも……。

「あ、この子のはメイン武器としての片手剣になるので、実用性重視して欲しいんですよ」

エレピピだけは、携帯用片手剣ではなく、メイン武装だ。

片手剣と盾という勇者スタイルである。

なぜか攻撃特化型が多いうちのメンバーでは、唯一の盾持ちだ。

エレピピには、安定した戦力となることを望む。

なにせ、人んちの子だしな。迂闊に怪我もさせられないよ。

というわけで。

モンスターや魔獣と戦う可能性も考慮して、少々無骨なものを打つという形で落ち着いた。

まあ、まだエレピピは始まったばかりだ。

剣に合わせて訓練するような形でいいだろう。

盾も軽くて強いのを用意してくれるとのこと。

ミスリルと魔獣の革と鋼と木材とを上手く組み合わせて作るのだそうだ。

エトワ。

「私にも作ってもらえるんですか?」

そりゃ、騎士隊の一員だからな。仲間はずれにはしないさ。

「この子のは短刀を2本という形がいいかなと思っているんですよ。どう思います?」

「そうだな。カナン族は力が弱ぇ。手数で勝負というのは良さそうだ」

じゃあそれで。

最後に俺。

「……むぅ。手を見る限りじゃ、それほどの使い手には思えんがなぁ」

「て……天才型だから……。あ、力もあんまりないですし、実用性もいいけど、見た目もカッコイイ軽くて片刃のやつにしてください」

「了解した」

――というわけで、全員分見てもらい、防具のほうも注文した。

今は見積もり待ちだ。

まあ、大親方が半分くらい趣味で打ってくれるそうなので、そこまでの金額にはならないだろう。

いずれ増えるであろう隊員用の剣も打ってもらおうかと思ってたが、どうやら本人合わせで打つもののようなのでやめた。

いやぁ、とりあえず当初の目的は果たせた。

どんなもんになるのか、楽しみだな。

なんか忘れてるような気がするけど――

「あ、そうだ。思い出した」

俺は「さびついたつるぎ -2」をインベントリから取り出した。

エリシェの鍛冶屋で見てもらった時は、「こんなにサビたのは無理だよ」と断られたものだが、ドワーフならと思い持ってきたものだ。

激しくサビつき、到底修理できそうもない剣を大親方に渡す。

もう錆びてるというレベルを通り越して、錆鉄の塊みたいになっている品だ。

「裏山で出土しました」って感じ。

俺には「真実の鏡」という鑑定能力がある。

だからこそ、こんなに錆びてどうしようもなさそうな剣でも修復可能だとわかるわけだが、普通に考えたら「こんなの捨てろよ」というレベルである。

まあ、無理なら無理でも、タダで手に入れたものだから全然問題ないけどね。

ちなみに、真実の鏡ではこう表記される。

――――――――――――――――――――――

【種別】

近接武器

【名称】

さびついたつるぎ -2

【解説】

激しく錆付いた剣

真実の姿は名剣か駄剣か

【魔術特性】

【精霊加護】

【所有者】

ジロー・アヤセ

――――――――――――――――――――――

あからさまに怪しいだろ。

大親方は錆び錆びの剣を受け取り、ひっくり返したり曲がりを見たりひと通り確認してから、俺に向き直った。

「……こいつは、俺の手には負えねぇな」

あら、やっぱり無理か。

いくら腕がいいと言っても限度ってもんがあるからな。

「……いや、勘違いしないでくれ。普通の錆びならどうにでもなるんだが、こいつは普通の錆びじゃねぇ。魔が染み込んでやがるのよ。さすがに、こうなると鍛冶屋の領分じゃねぇ」

「魔が染みこんでるんですか……」

ドワーフの目にどう映ってるのかわからんが、普通の錆びではないらしい。さすがの「-2」ということか。一筋縄ではいかないな。

「無理ってことですか?」

無理なら無理でも別にかまわない。

錆びが取れたら凄い剣になった! というファンタジー的なお約束を期待していなかったと言えば嘘になるけど……。

「いや……。魔には魔を……な。なんとかならないこともないが……、少し金が掛かるぞ。魔結晶が必要だ」

「魔結晶が?」

金は余裕あるから大丈夫だろうが、魔結晶は持って来てないな。

屋敷に戻れば小さいのと大きいのと持ってるんだが。

「知り合いならおそらくこいつを直せる。だが、どうする? 魔結晶を買わなきゃならんから、かなりの金額になるぞ」

魔結晶っていくらくらいするんだっけ? サイズによって違うはずだが……。

でもまあ、いいか。ロマン優先。

「直せるものなら直したいですね。知り合いって鍛冶師じゃないんですか? 魔結晶ってなんに使うんです?」

どうも研師に頼むという雰囲気でもない。

魔結晶を砥石に加工して研げば直る! というわけでもなさそうだし……。

「……秘密というほどでもないが、知り合いに魔族がいてな。魔族の術ならば、この剣を復活させることができるかもしれん。魔を込めたり祓ったりするのは、かの種族の専売特許だからな」

魔族! そういえばそういうのいるって前にも聞いたっけな。

緑色の肌で、口から卵産んだりするのかな。怖いな。

確かに、服と剣をサービスしてくれたりするし、錆び剣をマトモにするのくらいお茶の子サイサイかもしれん。

てか、魔族ってことは、魔術が使えるのでは。

おお、ついに俺の魔術師の天職が陽の目を見るか? 魔術教えてくれないかな。

「どういう方なんです? よかったら一度会ってみたいですね」

「魔族にか!? 変わってるな」

変わってんのかな。

魔族ってちょっとやっぱ少し怖い種族なんだろうか。

「いや……。紹介するのもヤブサカじゃねぇがな……。ちょっと事情もあってな。ダンナは敬虔な大精霊の信徒か? いや、エルフ様を奴隷にしてるぐれぇだ、ロクデナシか」

ロクデナシとか……。全くその通りです。

「ロクデナシですね。精霊さんにはいつもチクチクと罵倒されてますしね」

「そうか。なら……いいか。ただし、ダンナだけだ。それでもよければ会わせよう」

「ふーむ。ワケありってわけですか」

「…………」

まあ、ワケありでもワケなしでもあまり関係はない。

せっかくだから会っておこう。

旅先での出会いは大事にしたいものだからな。

そういうわけで、さびついた剣を見せに、魔族のところに行くことになった。

魔族はこの工房から、歩いて30分ほどのところに住んでいるらしい。

案外近所だな。