軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第40話  Gカップは特注の香り

地下室からソッと這い出すと、まだ工事は続いており業者の青年が俺を見てギョッとした顔をする。ま、向こうからすれば賞味2時間は地下室に篭ってたように見えるんだろうから仕方がない。

外に出てみると、もうそろそろ日が傾いてきており、業者も帰り支度をはじめている。16時かそこら……というところだろうか。

話は変わるが、こっちの世界とあっちの世界は1日の時間が全く……かどうかはわからないが(数分とか数秒の誤差はあるかも)、だいたい1日24時間なのは同じで、さらに不思議なことに 日の高さまでも(・・・・・・・) 向こうと同じのようである。

まず、一日の長さが違っていると――例えば、こちらの一日の長さが36時間だったりすると――、地球との行き来はかなりやりにくいものになってしまうだろう(利点もあるだろうが)。なにせ、向こうに戻ると朝だったり深夜だったりしてしまうわけだからな。ちゃんと計算すれば問題なくいけるだろうけど……。それに一日の長さが変わると体調も崩しそうだ。

日の高さってのは……うまく説明できないけど、つまり、こっちが12時ならあっちも12時で、あっちが6時ならこっちも6時ってことで、要するに、全く別の場所のはずなのに――これもちゃんと確認したというわけではないが――、時差のようなものが全くなく、感覚として日本にいるのと変わらないのだ。

何度行き来しても時間の感覚にズレがないし、これは間違いなさそう。

こっちの世界の季節の移ろいのことはわからないけど、少なくとも(ここが地球と別の惑星だとするなら)地球と自転周期が同じで、さらに日本と経度が同じ……ということになる。

話が上手すぎるというか、異世界だから仕方がないというか……。まあ、考えても仕方がないことだけど、ラッキーっちゃラッキーかもな。感覚的にズレがないってのはさ。

外を少し探すと、厩舎のところで業者と話をしているヘティーさんを発見した。話しかけて一緒にレベッカさん家に寄ってもらって宿に帰ってもいいけど……、せっかく気付いてないようだし、コッソリ戻るか……。

屋敷の整備作業は外側に関してはもうだいぶ出来てきているように見える。厩舎もほぼ完成しているようだし、屋敷ももうほとんど問題なさそうだ。井戸まわりもキレイになっており、すでに業者が何度となく使用している模様。ずっと放置されてた井戸って水質とかどうなのか少し心配ではあるんだけど……。今度水質検査キットでも買ってくるかなー。

テクテク歩いてレベッカさんの家に戻ると、ディアナが乗馬の練習をしているところだった。マリナは……なんかハルバードを一心不乱に振り回している……。レベッカさんの特訓なのかな……。

マリナの素振りは――。

左半身になり、

両手でしっかりハルバードを中段に構え、

力一杯横薙ぎにし、

振り下ろし、

突き、

振り回し

また振り下ろし……。

まあ、一見するとぶっちゃけメチャクチャなわけだが、レベッカさんの指導によるものなのかな……。素人にはわかりにくいところだけど……。

「物干し竿流であります!」

素振りが一段落したので、近づいて聞いてみると即答してくれるマリナ。前も聞いたなこれ。要するにチャンバラ遊び……メチャクチャってことか。

「レベッカさんからなんか言われてやってたんじゃないのか?」

「とにかく感じるままに、そこに敵がいると想像しながら振れとタイチョーどのに言われたであります! 物干し竿みたいにはなかなか振れないけど、少しだけコツが掴めてきたところであります!」

ハルバードをマリナから受け取り少し振らせてもらう。

…………重い……。そりゃあ物干し竿のようには振れないよなこんなの。

それにまだ錆を取ってないからみすぼらしい……。

ブンッ……

ブンッ……

ブンッ……

……うーむ。

重すぎてとてもマリナのように連続して振ったりできない。柄が木製であまり重くない(木にしては重い素材だが)のに、先端の金属部分がそこそこ重いから、どうしても振り回される格好になってしまうし。

マリナのハルバードは全長は2mほど、先端部に「槍として使える穂先」、サイドに「斧」が付き、その反対側には「ピック」が付いたポールアームとかいう種類の武器だ。当然、三種類もの武装が付いているわけなのだから、先端部の重量はかなりのものだ(10kgはないだろうけど、5kgくらいはありそうだ)。

逆側の先端である石突きには直径8cmほどの球状の金属が取り付けられており、これもそれなりに重く、重量のバランスが取れるようになっているようだ。先端から50cm程度まで、金属で補強もされているし、こちら側でも叩いたりして攻撃ができる仕様なんだろう。

ちょっと考えるだけで、槍部で突く、斧部で切る、ピック部で突き刺したり引っ掛ける、石突き部で叩いたり突く、なんて使い方が出来そう。

使いこなせば剣なんかよりずっと強いだろうな。

「……でもやっぱ重いし、大振りにならざるを得ないな。威力は相当にありそうだけど」

「タイチョーどのは『速く大きく振れ』と言ってたです。しばらく振ってみたけど、振った後に止めてまた振りかぶるより、グルグル回っちゃったほうが速く大きく振れるような気がするであります」

グルグル回る……か。子供の喧嘩殺法みたいだなぁ……。

でも人間相手ならともかく、魔物みたいなもん相手だったら、そんなんでもいいのかもしれないし……、なんとも言えないな。所詮俺は素人だし……。そのへんは、シェローさんやレベッカさんの指導に従っておこう。

つか、元傭兵団の副団長で対人間のスペシャリスト、さらに現役のモンスターハンターで、なおかつ狩人ともなれば師事するのにこれ以上ない人材なんだよなシェローさんて。レベッカさんもそれなり以上の腕前なんだろうし、ひょっとするとヘティーさんも協力してくれるかもしれない。そうなりゃもうオールスター軍団ですよ。

戦闘力に不安がなくなれば、他の町にも買出しや散策に行けるしかなり異世界で自由に振舞えるだろう。単純に人数の点では不安があるけど、儲かれば護衛はまた増やせるのだしな。

◇◆◆◆◇

「明日は僕にも馬と剣を教えてください」とレベッカさんに頼んでおき、俺とディアナとマリナはヘティーさんの馬車で宿へ戻った。屋敷さえ完成すれば、いちいち街まで戻らなくてもいいんだけど、こればかりは仕方がない。

「ではまた明日の朝、ロビーで」と言い残しヘティーさんは部屋へ消えた。なんならまた夕飯いっしょに食べてもよかったが、あの人もあの人でやりたいこともあるんだろう。

さて、俺もやることやるべ。とても大切な仕事なのだぜ。

「……さてディアナ、マリナ。今日俺が午後に留守にしていたのは君らの為に普段着を買ってきたからだ。いつまでも、一張羅のドレス姿ってわけにもいかないしね。なにより勿体無いし。で、まあ、持ってきたから、早速試着してね」

などと言いながら、ユニ○ロで買ってきた服類をバッグからガサガサと部屋のテーブルにぶちまける。

やっぱ現場で試着しながら買ったわけじゃないからさ。返品もできるしさ。やっぱ早く試着するの必須だと思うんだよね!

ちょっと参考に写真撮ったりもするかもしれないけど、あくまでサイズ確認! サイズ確認のため!

あと……、喜んでもらえれば嬉しいってのも当然あるけれどもな。せっかく選んで買ってきたんだから。

「こんなにたくさん私たちのために買ってきて下さったのですか? それに……、どれも新品のようなのです」

「そりゃ新品だよ。下着もあるし……。あと運動しやすいのと、少し可愛い系の服も選んでみた。こういう薄手の服ってここらであんまり見かけないし、2人共きっと似合うと思うぞ」

「新品の服なんて……、マリナはじめて……であります。ど、奴隷として買われたら着る物があるだけ有り難いって言われてたし……、主どの、本当にあたし、着させてもらっても良い、の? ……でありますか?」

こういう時の反応で育ちの違いが出るというか、ディアナはやはり王族というか根がお姫さまなのか、礼儀的に申し訳なさそうにしてる感じ。対して、マリナは軽いパニックを起こし、必要以上に恐縮していちいち顔色まで悪くする。……心底慣れてないんだろうな。

まあ、そんなところがウザくもあり、可愛くもあるわけだけど。

サイズ別にディアナ用とマリナ用に分けてやる。

2人とも身長は同じくらいだけど、体型がけっこう違うんで、サイズについては少し心配な部分もある。ディアナは大丈夫だとしても、マリナがね、ホラ。

「じゃあ俺は向こうの部屋に行ってるんで、適当に着替えたら呼んでくれ」

そう言って部屋を出る。

せっかく新品だし、風呂上りにしたほうが良かったかな? ま、こっち比較的乾燥してるし、エルフの汗の臭いとかそれはそれでご褒美だから問題ないか。

しばらくすると「できましたー」と呼ばれたので、ドキドキの期待とデジカメを胸に抱いて部屋に入った俺の目に飛び込んできたのは……。

「………………」

「……あ、あのどうでしょうか、ご主人さま」

ディアナは、ジーンズを履いて、上にネズミ色のスウェットを着ている。

パチンコ屋にいるオッサンかお前は。あれだけいろんな種類の服買ってきたのに、どうしてそういう組み合わせのチョイスになるんだか……。しかもスウェットがちょっと大きかったらしく、ブカブカしてるのがスレンダーなディアナに致命的に似合わず本当に残念な感じ。

一方マリナはというと……。

「マ……マリナ、こんなに可愛い服はじめてでつい調子に乗ってしまったであります」

そう言って頬を紅潮させる。

ボーダーのレギンスを履いた上からスカートを履き、トップスは若草色のチュニック。頭には中折れ帽まで乗っけとる。

な、なんでマリナはマリナでこんなにしっかり着こなせるんだ……。ファッションセンスの違い……なのか?

でもマリナはファッションなんて言葉すら知らないレベルのはずなんだけどなぁ。それとも騎士ともなると見栄えの良い格好するのに長けてる……なんてのがあるのかな。

「なんつーかね……、対照的すぎる……」

「そうなのです。マリナはゴテゴテしすぎなのです。私のようにシンプルに着こなすのが美しいのです。だいたいマリナは、せっかくご主人さまが買ってくれた胸当ても『ちょ、ちょっとこれは苦しいであります。これはきっと姫用であります』とかなんとか言っちゃって、くぬ! くぬくぬ! くぬ!!」

「ひゃあ! やめてください~~」

なんであのセンスで自信があるんだよ……ディアナ……。

◇◆◆◆◇

結局、マリナのブラジャーはサイズ……というかカップが合わないということで返品。ディアナはスウェットだけワンサイズ下げる為に交換する予定だが、他の服はどれもピッタリ。2人ともパンツ裾上げ無しで問題ないあたりが、さすがと言わざるを得ない。

マリナのブラジャーについては、ちゃんと測定してネット通販で買うことにしよう……。まあ、例のブラの機能もあるキャミソールがキツイながらも一応着れるということなんで、しばらくはそれで頑張ってもらうことにするべ。

いやー、ご主人さまは奴隷の衣食住の面倒みなきゃならないから大変だわー。下着の用意も万事抜かりなくしなきゃならなくて大変だわー。

今度返品しに向こう行ったら、今度は靴も買ってきてやるかな。ついでに、こっちでも売れそうな安全靴でも仕入れてきてもいいしな……。

いや、それより鏡からいっしょに向こうに行って3人で買い物なんてのもいいかもしれん。試着もできるし。……なんて、それはいくらなんでも目立ちすぎるか。