軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話  アレの日は日曜日の香り

神官ちゃんは、すでに俺がディアナとマリナを手に入れたときの経緯を、ディアナから聞いて知っているようだった。

エルフ族的には、ハイエルフを奴隷にしてる男とかどう思うもんなんだろうかと思ったけれど、特別反感を持っている風でもなさそうである。酸いも甘いも知り尽くした年配エルフともなると、そんなことでいちいち動じたりしないのかな。

それともディアナがなにか上手に説明したのかな。

――いずれにせよ、神官ちゃんとはこれからも友好な関係を続けられそうだ。むしろ、ディアナをダシにしてより親交を深めたりできるかもしれないぞ!

それはそうとアレの日のことを聞いてみよう。

「それで……、『アレの日』ってのはなんのことなんです? 実はそのへんの事情に疎くてですね……。答えにくい内容だとアレなんですが……ハハハ」

「生理ではありませんよ」

さすが神官ちゃん!

ハッキリバッサリ言いおったわ!

「こほん。……アレの日というのは、簡単に言うとエルフの安息日のことなのですよ、ご主人さま。人里で暮らすエルフは定期的に『自分だけの場所』でゆっくり休まなければ、いずれ精霊魔法が使えなくなってしまうのです。精霊力の濃い森で暮らすエルフはこういう習慣を必要としないのですが……」

「ゆっくりプレイスか……」

「ゆっくりできれば良いというわけではありませんジローさん。なるべく人の手の入っていない、これからも入らないであろう場所で、なおかつ精霊力の濃い場所、さらに住んでる場所から近いなどの条件があるんです。なので、自分の見つけたアレの日用の場所というのは、エルフにとってとても大切なものなんです」

精霊力の回復の場……みたいなもんかな。パワースポット的な……。ゲームだと「この場所に留まっているとMPが少しづつ回復していくよ」的な……? まあ、そういうことならエルフには必須なんだろうな。まして神官ちゃんは仕事で精霊魔法使いまくりなんだろうからなぁ。

「ですからご主人さま。私だけの場所を見つけるまでは、アレの日だけは単独行動を許してほしいのです」

「ああ、それは構わないよ。神官さまの場所を人間の俺に知られるとまずいんだろう? 神殿のおばさんも『アレの日のエルフの居場所を知っているのは、よほど近しい関係の者だけだ』とか言っていたしね」

「そ、そうなのです。も、もちろん私の場所ができたらご主人さまには絶対教えます! すぐに!」

「うん。無理しなくていいぞ。種族間のそういうのには理解あるほうだし」

そう俺が言うと、また「むぅー!知りません!プイッ!」となってしまうディアナ。

俺が知りたいよ、まったく。

しかし、ま、とりあえずアレの日のことはわかって良かった。発情期じゃなかったのは残念だけど、もちろん本気でそうだなんて思ってたわけじゃないよ! 当たり前だろ!

でもどうして、アレの日なんていうちょっと隠語的な表現使うんだろ。なにか恥ずかしい要素が?

「アレの日にしっかり休ませてあげないと、理性が薄くなるエルフが多いですからジローさんも注意してあげてくださいね」

理性が薄くなるって……。

やっぱり発情期じゃねーか!

◇◆◆◆◇

その後、神官ちゃんも夕飯に誘って食べた。

魚好きらしいマリナはともかく、ディアナも神官ちゃんまで魚料理を注文してるが、こっちの世界における魚料理の立ち位置がよくわからんぜ……。

食事の席でみんなにも聞いてみたんだが、漁獲高があまり高くないという希少性もあるにはあるんだが、話を噛み砕くと結局のところ 「好きなもんは好き」 というだけっぽい。

まあ、俺も魚よりは肉だし、単純にそれだけの話なのかもな。

これだけ海が近いエリシェでも、魚があまり獲れないのは、小さい漁船では海の魔物に対処できないらしく、金属で船底を補強した大きめの商船や軍艦なんかでないと、漁がそもそも難しいからなのだそうだ。

ただ、エリシェの港は深く入り込んだ湾の中にあるため海の魔物が少なく、それでも魚が手に入りやすい土地柄であるらしい。内陸部は言うに及ばず、他の海に面した地域も魚介類はエリシェと比べれば貴重品に類するとか。

とはいえ、それは肉とかと比べた話であって、「肉よりは魚のほうが高い」 というだけの話のようではあるけどな。日本におけるマツタケみたいな高級品ってわけじゃないっていうか。

まあ、この辺にも儲け話の気配が漂っているし、また調査してみるとしよう。

で……、食後。

俺はひとり部屋で寝ている。

あれ……? エルフ奴隷と楽しい同衾はどうなった……? と思われるかもしれないが、仕方がなかったんだよ……。

食事はお酒なんかも飲んじゃって楽しくすすんだんだけど、ワイン2杯くらい飲んだところで、思いのほか酒に弱かった神官ちゃんが早々に酔い潰れちゃって、隣の部屋に運んで「じゃあ神官さまのこと頼むな」とか言っちゃって。

それで……このザマよ。

ああ……、こうやってだんだん「同衾しないご主人様」という既成事実だけが積み重なってくんだなぁ……。お、俺はヤルときはヤル男ですよ! 多分! きっと!

次の日、軽い朝食を食べてから、二日酔いの神官ちゃんを神殿まで送り届け、その後ディアナとマリナの3人で祭り見物に繰り出した。

エルフ少女を左右に侍らせて祭り見物とか、地元だったら伝説になるような行為だよね。だれか俺の勇姿を写真に収めておいてくれないかなぁ。そしたら、額に入れて玄関に飾っちゃうよ俺……。

いやぁ、しっかし目立つ目立つ。ディアナの目立ち方が半端じゃない。どっかで大きめのローブでも買って着せたほうが良さそうだなこれ。今は祭の最中だからいいけど、終わってからも刺青(厳密には違うらしいけど)隠さずにいたら 「いつまでも祭気分の人」 とか噂されちゃいそうだわ。

マリナはこういう大きい街の祭は初めてだそうで、面白そうな出店があるたびに立ち止まって興味を引かれている。ディアナにはまた「マリナに甘い」と言われるかもしれんが、あとでなんか買ってやるか。

ディアナはキョロキョロ忙しないマリナと違って堂々としたもんである。やっぱハイエルフってちょっと違うのかな……?

単純に祭に興味がないだけなのかもしれないが、これだけ人目を引いていても超然としたものだ。

まあ、ハイエルフはエルフの王族って話だからな。庶民に見られたところでなんということもないんだろう。俺みたいに小市民とは感覚からして違うのかもしれないな。

でもね……、ディアナが目立つとついでに俺まで目立っちゃって居心地悪いんですよ。だから隠れ蓑を買いに行くことにしよう。何よりも先に。

祭見物はそれからだ!

そんなわけで前に服買った時も訪れた中古服屋に来た。

今回はここではディアナ用のローブを買うだけのつもりだ。なんせこっちは中古でもそこそこ服が高いからな。

ちなみにディアナもマリナも2日前に奴隷商館で着てた服のまんまである。2人とも替えの下着はいくらか持っていたのでさほど不潔ってわけでもないが、ご主人さまの甲斐性として服くらいは買ってやりたい。

そしてご主人さまの特権で 「好きな服」 を着せたりもしたい。

今着ている服も可愛いけれど、やっぱあんな服とかこんな服とか着せたいからな……。異世界だったら 「見ろよあいつ、彼女にあんな格好させてるぜ……。ガチオタカップルとか世も末だろ」とか噂されずにコスチューム自由自在だし……。

丁度おあつらえ向きの中古ローブが売っていたので買う。

濃い灰色の地味なフード付きのローブである。値段も160エル程度。

……てか、160エルって決して安くはないんだけどな。日本円に換算して、24000円だし、実は気楽に買うって金額じゃないんだよね。

シーツなんかは安く蚤の市で売ってたし、布そのものが高級品っていうわけでもなさそうなんだけど、ファンタジー世界特有の防具に特殊効果が付加されてたりとかするアレでもあるのかな?

あ、こういうときに鑑定すればいいのか。

”真実の鏡”

――――――――――――――――――――――

【種別】

体防具

【名称】

鈍色のローブ+1

【解説】

全職業が装備できるローブ

魔術色『鈍色』により防刃の加護を付加

【魔術特性】

防刃 D

【精霊加護】

なし

【所有者】

ジロー・アヤセ

――――――――――――――――――――――

でた! RPGぽい説明!

普通に中古服屋で売ってるけど、これって魔法の品だよな? さすがのファンタジー世界ぶりだわ。時間があるときに、他の品もいちいち鑑定したら思わぬ掘り出し物があるかもしれないなコレは。

「――今、なにをしたのです? ご主人さま」

「え、なにが?」

「前にもあったのです。エフタの地図を見ているときと同じ精霊力の揺らぎを感じたのですよ」

あーらら。真実の鏡は精霊が鑑定してるからハイエルフ様のディアナにはバレバレなんだな……。

「気のせいだよ……。と言いたいところだがちょっとな。そのうち話すから今のところはひ・み・つ・よ」

ディアナの真似をして誤魔化した。固有職のことはまた落ち着いたら話せばいいだろう。

「……楽しみに、まっていますね」

と、なぜかウットリ微笑んで言うディアナ。

ドキッとする表情するなよ、刺青なしだったら惚れてるところだよ!

買ったローブをディアナに着せる。

サイズもまあ少し大きめだけど大丈夫そうだ。ほぼ全身隠れるからこれで悪目立ちすることもあるまい。

さあ、改めて祭に繰り出そうぜ! 奴隷の首輪は買わないんですぅ? とか聞いてくるディアナは無視してな!

祭はいろいろな出店が出ていて、食べ物の屋台はもちろんのこと、小物の店や縁起物の店、見世物小屋みたいなものまである。

そろそろこっちの金も残り少なくなってきているので、早急に稼ぐ手段を見つけないといけないんだが、祭で使うくらいの余裕はある。

ディアナとマリナに蹄鉄型の髪留めを買ってやったり、屋台でお昼を食べたりして絵に描いたようなリア充時間を過ごすことができた。

さぁて、次は見世物小屋でも入ってみるかな。

「なあ、ここはなんの見世物をやってるんだ?」

直径10m、高さ3mくらいはありそうな真っ黒な大型テントの見世物小屋である。当然文字も書いてるんだが、読めないのでディアナに聞く。

なんか黒いローブを着た魔術師が魔法使ってるような絵が書いてあるけどな。

「ここは魔術師の館なのですご主人さま。多分、魔術師が魔術を見せる小屋なのだと思うのですよ」

ああ、手品か。

どれくらいのレベルの手品なんだか、見せてもらおうか! 異世界のスーパーイリュージョンとやらを!

ま、どうせ帽子からハト出すような程度なんだろうけどなー。