軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第158話  3日目はスピードランの香り

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【種別】

手袋

【名称】

ミダス王のてぶくろ

【解説】

ウガルルが稀に落とす、触れたものを金色に変える魔法の手袋。

効果時間は30分。

色が変わるだけのネタ装備

娘を金色に変えて嘆くミダス王プレイが熱い!

防具としては紙だぞ!

【魔術特性】

なし

【精霊加護】

なし

【所有者】

ジロー・アヤセ

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「なんだこれは……」

ドロップアイテムの手袋を『 真実の鏡(ザ・ジャッジメント) 』で鑑定した結果がこれだよ!

まさかの面白アイテムだった。いやまあ、実用品よりもある意味レアだけどもさ。

さすがは、この世界のネタ元が「エメスパレット ~探して、あなただけの色~」なんて名前のゲームなだけあるのか? 色に関するアレコレはもともと多いとは思ってたけど。

手袋をはめて、さっそくミダス王プレイを――といきたいところだが、さすがに戦いが終わった直後からふざけるわけにもいかないか。

俺は手袋を「取ったどー!」と振り回して、勝利のおたけびの代わりとした。

ちょいとヤバい局面もあったけど、無事に2日目を終えられて心底よかった。

だが、まあ1日ある。遊ぶのは3日目が無事に終わってからだな!

◇◆◆◆◇

戦闘終了後の片づけと明日の準備を終えてから、みんなで食事をしながら明日の作戦会議を開始した。

他のスポットを手伝いに行っていたメンバーも無事に全員帰ってきている。

なんとか2日目までを死者ゼロでクリアーできたわけだが、問題は最終3日目である。というか、3日目が本番と言っても過言ではない。

そして、今日までの戦いを通して思うことはひとつ。

「今日のラストモンスター見て思ったんですが、これ、明日は他のスポット多分無理ですよね。ボスが連続してポンポン出てくるみたいですし、とても対応しきれないでしょう」

みんなが渋い顔をする。

うちだから比較的苦戦せずに倒せただけという話で、他は必ず破綻する。まあ、楽観的に考えれば、もちろん大丈夫である可能性もあるが……。

だが、普通に考えて今日のボス、ライオン頭より弱いモンスターばかりということはないだろう。

少なくとも他のスポットで出たデュラハンと同程度のモンスターは湧くはずだ。

それが連続して湧いてくるという。

まともに戦っても無理なんじゃあるまいか。死人が無駄に増えるだけだ。

エリシェの周辺には4つのスポットがある。

他のスポットのことは知らないが、かなり厳しい戦いを強いられているのは想像に難くない。

他のスポットで出たデュラハンは、呪いの魔術みたいのを飛ばしてくる難敵だったらしいが、攻撃手段が比較的単調なモンスターだったとかで、なんとか押し切ることに成功したのだそうだ。

元傭兵団員たちも、さすがに苦戦はしたそうだがエルフの精霊魔法によるサポートもあり、なんとか無事に討伐することができたと、戻ってきたミヤミヤから報告を受けた。

だが、それでも結局ギリギリだ。

とにかく、なんらかの作戦を考えなければならない。

「だから、提案があります」

俺は切り出した。

本当はやりたくない、逃げ出したいけれど、もうそんなこと言っちゃいられない。

みんな、黙って俺の言葉を待っている。

「明日はうちのスポット以外は防御に徹して、うちでラストモンスターまでを倒し切っちゃいましょう。おそらく……というか、間違いなくうちが一番戦力あるでしょ? 前回の記録では、夢幻の大魔導士がラストモンスターを倒したら、他のスポットのボスも消滅したらしいじゃないですか」

たぶんだが、ゲーム時代の名残なのだろう。

3日目はボス攻略のタイムアタック的なものだったのか、最終ボスを倒すと他のスポットのボスも消えて、それゆえに『此岸巡り』でも被害が抑えられたらしいのだ。

夢幻の大魔導士の名声もそれでまた大きく上がったとかなんとか。

「もちろん、世界中のスポットでヒトツヅキを戦ってるんでしょうし、うちよりも早くクリアしてくれるところがないとも限りませんけど、うちでラスト前まで早めに倒しきっちゃえば、他の場所への応援にも行けますし、いずれにせよ悪く無い作戦と思うんです」

実際には出たとこ勝負な作戦だ。

だって、どういうモンスターが出るかわからない。

サイクロプスみたいな動きの遅いモンスターならいいけど、素早くて攻撃力のあるモンスターが最初に湧いたらいきなり詰むという、穴だらけな作戦だ。

まあ、その場合はみんな必死こいて戦ってくれとしか言いようがない。

だが、勝ち目のない戦いを続けて消耗していくよりも、守りに徹してしまったほうがマシだろう。

倒せるなら倒すに越したことはないが、時間が稼げるモンスター相手になら、ひたすら逃げの一手を取るのは悪い手段じゃあない。

「というか……現時点では、もうすでにこのヒトツヅキは破綻寸前ですよね。ギャンブル性高い作戦なのは自覚してますけど、上手くすれば犠牲をかなり減らせると思うんですよ。……まあ、仮にうちが壊滅したらそこで終わりなんで、当然我々の両肩にかかってくる責任は大きくなってしまいますが」

俺だってやりたくはないが、一番戦力があって、一番準備をしてきたのはうちだ。

精霊石だってまだある。エルフだって二人もいる。

他が当てにならないなら、さっさとこっちで終わらせてしまえばいいのだ。

「ジローがこんな勇ましい作戦立てるなんて、初めて会ったころからは考えられないわねー」

「わはは。男ってのはそういうもんだ。1年もあれば、別人みてぇになるもんさ」

レベッカさんとシェローさんがしみじみと苦笑交じりに言う。

変わった――という自覚はないが、ずっと剣を振って訓練してきたから、ただただずっとネオニートしてたころとは、別物ではあるだろうな。

健全な精神は健全な肉体に宿るとかなんとかって話も聞いたことあるし、今はいろんな意味で健康だ。

「ジローさま。今回は私が知るどんなヒトツヅキよりも、強力で変則的なモンスターが湧いています。これは私の勘ですが、我々だけでラストまで戦い抜けるか……五分五分といったところでしょう。私も本気で当たらせていただきますが」

へティーさんが言う。

五分五分か……。

俺もそれくらいかなと思う。

要するにわからないってことだ。

生きるか死ぬかのフィフティフィフティだ。

百戦錬磨のへティーさんでも、不安なのかな。

どれほどモンスターが強力だと言っても、人間同士の戦争よりかは圧倒的にマシかなと思うけど。

いや、それは俺がこれがゲーム世界だと知っているからか。

「大丈夫ですよ。うちのメンバーでもダメなら、誰がやったってダメです。なんとかなります。自分で言うのもなんですが、最強のメンツですよ」

「そうであります! マリナもがんばるんでありますよ!」

「私も力の及ぶ限り尽力することを誓おう」

「わ……私は戦闘はできませんが、みなさんが危なくないようにたくさん考えます!」

みんな怖気づくことなく戦意は上々だ。

「私も今日までは、あまりやることがありませんでしたが、明日はたくさん頼って下さいね。せっかくジローさんが精霊石を用意してくれましたし。防御と回復は任せてください!」

神官ちゃんは戦闘補助の要だ。

回復と防御、特に魔法防御ができるのがデカい。

さらに、うちはディアナがいるから最悪神官ちゃんがやられても回復できるというのもデカい。他のスポットでは回復役のエルフを前線にはやれないだろうからな。

「神官さまのことは頼りにしてますよ。明日はかなりハードな戦いになると思いますが、よろしくおねがいします」

「はい!」

「……それと、ディアナも。明日はお前の時間遡行による回復魔法も使うことになると思う。今日まで使わずに凌げたのはラッキーだったけど、明日はそこまで甘くないだろうからさ」

「わかっているのです。任せろなのです」

「頼むぞ、ほんとに。死ぬ一歩手前まで待たなくても、重傷だったら使っちゃっていいからな。つねに全員が十全に戦闘力を発揮できるように立ち回ってくれ」

「明日は……私にとっても重要な1日になる予感がするのですよ、ご主人さま。絶対にこれを凌いでみせなければ」

「よくわからんが、頼むぞ」

謎の決意を滲ませるディアナの肩をたたく。

実際、明日……というより、このヒトツヅキを無事に終わらせることは重要だ。

作戦そのものには、みんな了承してくれた。

というより、結局うちでやることはそう変わらない。他のスポットに無理して倒さなくてもなんとかすると伝えるだけだ。

責任は重大。ダメでしたでは済まないだろうが、うちでダメなら他のスポットだってダメだ。やれるだけのことをやろう。

なにせディアナとマリナにプロポーズしちゃったしな。

死亡フラグなんてぶっ飛ばして、絶対に勝ち取ってやろうじゃないの!

そうして、2日目の夜は更けていった。

3日目のヒトツヅキがやってくる。

◇◆◆◆◇

3日目。

よく晴れた……というか、相変わらずの灰色の空模様。曇天というのとは違う、空色そのものが青から灰に変化している。

ヒトツヅキの間、これが続くらしい。

月は相変わらずふたつがひっついて、ひとつになって浮かんでいる。

神官ちゃんを通じて、4つのスポットには作戦を伝えてある。

エリシェ周辺に住んでいる住民は、全員、一人残らずエリシェへの避難を完了している。

ボスの強さにもよるが、冗談抜きで壊滅もありえる。

だが、ほどほど強いモンスターが大量に出てくるよりは、一体だけ強ボスが出るほうが、対応しやすそうというのもある。

足止めもしやすいだろう。

4つのスポットのうち、ふたつはうちで対応する。

対ボスパーティーの選定は、単純に所持武器による攻撃力で決めた。

サイクロプスの例を考えると、普通の武器では効率的にダメージを与えるのは難しいだろうってことでメンバーはこうなった。

俺、レベッカさん、シェローさん、へティーさん、マリナ、シャマシュさんの6人が前線。

神官ちゃんとディアナがサポートだ。

シェローさんの武器は、普段の狩りで使っているものとは違う、巨大な鉄塊とでもいうべき両手剣。

へティーさんは薙刀だ。本人によると槍の一種らしいが。

ちなみにこっそり鑑定してみたら、シェローさんのはドワーフ作だった。へティーさんのはマジックアイテムだった。

訊くと、昔、実家からかっぱらってきたということらしい。

さて、まずスタート前にシャマシュさんには4つのスポットすべてに飛んでもらい、それぞれの場所にモンスタートーチを渡してきてもらった。

モンスタートーチはモンスターを引き寄せる黒い炎が灯った松明だが、これが地味にチートなアイテムである。

それを使って、上手にモンスターを誘導しながら時間を稼ぐのである。

騎士隊の新人メンバーは3日目には全員エリシェに避難させた。

エレピピとイオンは元傭兵団に合流させている。

エトワだけは指揮官として残ってもらっている。もうトランシーバーを使う余裕はないので、ずいぶん前に使ったマイクとマイクスピーカーを使って指示を出してもらう。

まあ、ボス戦じゃあ、ひたすら戦う以外になさそうではあるが、上から状況を見てくれる者がいるだけでも違うだろう。

「時間ですね」

時計を見ると、現在9時目前。

長丁場にならないように、迅速に一体一体狩っていかねばならない。

問題は一体目のモンスターだ。

願わくば、動きの遅いモンスターが出てくれ――

時間が来て、モンスタースポットに光の柱が立ち昇る。

ディアナによると、昨日のウガルルほどではないボスという話だが、楽観はできない。

繁みを割って、そのモンスターは飛び上がった。

「キャォオオオ!!」

甲高い鳴き声を響かせて、巨体を空中に躍らせる。

エトワがマイクを使って叫ぶ。

「一体目はドラゴン……空を飛ぶドラゴンです!」

空を飛ぶドラゴン。

巨大な空を飛ぶ竜。

ワイバーンというやつだ。