軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.代償

サクッ

切れたわ。

ルートヴィッヒが間抜け面して固まってるわ。 ぐっと今までの溜飲が下がる。

ふははは。

番に捧げる前に元婚約者に奪われるなんて、なーんて間抜けなのかしら。

「これは記念に頂いていくわ。」

ビシッと宣言してやる。私の有責で婚約破棄するのだ、行き掛けの駄賃としてもらっていこう。

放心したルートヴィッヒがぼそっと呟く。

「私の髪が欲しかったの?」

うっ。ずーっと欲しかったわよ。でも欲しいって言ったら負けたような気がするから。

とりあえず、誤魔化すわ。さっき子供の頃の話を持ち出されたわよね。だったら、こっちも反撃あるのみよ。

「子供の頃、くれるっていったのは、ルートヴィッヒじゃない。」

ふふん。どうよ。ぐうの寝もでないでしょ。

「そうだね。確かに言ったよ。その手の中の私の髪はその時の返答の変更ということでいいのかな?」

「ええ、婚約同様に気が変わったのよ。これまで婚約者として勤めてあげたんだから、これくらい貰ってもいいでしょ。」

ええ、ここで怯んでは負けるわ。交渉術の先生に言われたわ。あくまで堂々とよ。じゃないと王族に刃物を向けた上に、大事な髪を切って奪ったなんて、処刑ものの一大事じゃないの。

ふと、見上げると。ものすごく嬉しそうなルートヴィッヒが勝ち誇ったように笑っていた。じわりじわりと後ずさる私を追い詰めるように距離を詰めてくる。

あ、詰んだ。

「ユリアンナは私の髪が欲しかったんだね。」

「ええ。」

完全に距離を詰められてルートヴィッヒの強烈な迫力に頷く。NOなんて言ったら噛み殺されそうな雰囲気に縮こまる。

「そう。触りたい?そんなに欲しかったのなら、触りたいよね。」

ルートヴィッヒの手が私の手首を掴む。手にした短剣をひょいっと取り上げられた。

「ひいっ」

サクッと武装解除された。ルートヴィッヒの目は完全に捕食者のそれだ。

「どうぞ、存分に触りなよ。」

ここで、殺されるのか?ルートヴィッヒの手にはキラリと光る私の短剣が……。アレ切れ味抜群だったわよね。

NOなんて言ったら抹殺されそうなくらい凶悪な笑顔にビビる。

あぁ、こんな最悪な状況下で凶悪なルートヴィッヒの笑顔にトキメク私の馬鹿。なんで完璧美形の企み笑顔ってこんなに強烈に魅力的なのよ。

それをこんな間近で見せつけられてトキメクなって言う方が無理じゃない?

良いわ。冥土の土産に思う存分触ってやるわ。

手を差し出した私に、触りやすいようにルートヴィッヒがすっと、片膝をついた。その姿が憧れていた番の儀式に似ていて泣きそうになる。

ルートヴィッヒの手が優しく私の手を取りサラサラの髪に導かれた。その素晴らしい手触りに不覚にも心が洗われる。

ああ、神様。こんなに美しい髪を切り落とした私の罪をお許しください。

サラサラの髪を思う存分堪能した後、手を引こうとした私の手首を掴んだルートヴィッヒから全ての髪を握らされた。ん?

黒すぎる笑顔が猛烈に色っぽいルートヴィッヒを見て思い出した。

昔、社交界で未亡人が連れていたイケメンと評判の男妾の笑顔に似てるわ。ばあやが言っていたわ。

あんな顔で笑う男には気を付けろって。身ぐるみ剥がれて全てを喪うと。

後悔先に立たずって言葉、今の私の為にあるものよね。

でも、ばあや。あの時の男妾なんて目じゃないくらいルートヴィッヒが色っぽすぎるのよ。

ルートヴィッヒ級のイケメンにとんでもなく悪いことを企んでそうな瞳で見つめられたら。

ばあやだって破滅覚悟で全て頷くわ。もうね。危機的状況なのにトキメキが止まらないのよ。

ばあや、不肖のユリアンナをお救いください。

ルートヴィッヒの短刀が一閃した。