軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6.婚約破棄

「ルートヴィッヒ、私達あと三ヶ月で結婚よね。」

「あぁ。」

微妙な表情で頷くルートヴィッヒの胸には先程の暁色の薔薇があった。

その薔薇が先程見た出来事が夢ではなかっだことを示していた。

「私ね。好きな人が出来たの。だから、この結婚を取りやめに…」

ええ。苦しいくらいに好きよ、ルー。だから……。

「好きな人?どういう事だ?この結婚は政略結婚だ。そんな事が出来るわけが……。」

先程までと一転してこちらを射殺さんばかりに睨みつけて語気を荒らげたルートヴィッヒがユリアンナに詰め寄る。

政略結婚。その事実を改めて突きつけられるのは辛すぎるわ。それに番が出来たら、婚約者をすげ替えるのは王族の常識じゃない。

「王族に番が出来たら、すぐに破談になるじゃない。だったら…」

今、解放して。所詮は番が現れるまでの繋ぎに過ぎないのを自覚する度辛すぎるのよ。

ルートヴィッヒだって、早く番に会いたいってさっき呟いてたじゃない。今婚約破棄したらあと三ヶ月のリミットは延びるのよ。

「ユリアンナ、君が言ったんだ。大人になったら結婚しようと。」

ええ、言ったわ。子供の戯言を今更持ち出すの?いつも冷静で無口なルートヴィッヒが珍しく食い下がる。

「ええ。子供の頃にね。」

ユリアンナは心が凍えるのを感じた。ユリアンナの温度ない表情を見てルートヴィッヒが諦めたように笑った。

「君から、その約束を反故するんだね。」

ルートヴィッヒは極めて冷静に、しかし瞳の奥には怒りが見えた。

それには気付かないふりで「ええ。」 と続けた

「だったら、僕は被害者だよね。」

くそルートヴィッヒめ。できる限り有利な条件で婚約破棄しようとしているのね。

「ええ、そうね。」

でも、引く気は無いわ。

「ユリアンナは後悔しない?」

一生叶わない想いを抱いて、番を諦めて抜け殻のようなルートヴィッヒと形式だけの夫婦になるより、今きっぱりと手放すほうが良い。後悔なんてしないわ。

「ええ。後悔しないわ。」

「そう。わかったよ。」

ルートヴィッヒが見たことないくらい鮮やかに笑った。

その笑顔にユリアンナの頭に血が上るのがわかった。私の有責で結婚が流れてさぞ嬉しいのでしょうね。

内心怒りを抱えたユリアンナの瞳に、ルートヴィッヒの銀糸のような艷やかな髪が映った。

悔しい。婚約破棄は私の有責で、ルートヴィッヒは喜んでいて。番が見つかったら、この髪をささげて…。

ユリアンナは、ルートヴィッヒの髪を一筋、指に巻いた。大切な髪を人質に取られてルートヴィッヒはガチガチに固まった。

「ユリアンナ、何を?」

掠れる声すら、色っぽいだけなんて、神よ、コイツがハゲ散らかしますように。

いえ、神よ慈悲深き子羊はそこまでは求めません。せめて頭の天辺のみがザビエルのようにハゲますように!アーメン!!

ええ、良いわ。神よ供物に世にも珍しい髪を捧げます。

懐の刀を取り出す。

これは何かあればこれで喉元を掻っ切って死ぬよう王妃教育担当老婆から、持たされた短刀。

切れ味最高のそれをルートヴィッヒの髪に押し当てた。