軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

熱田の門前町をどうするか。妄想、構想が膨らむwww名物飯もつくりたい。ウナギが取れるなら骨をなんとかして実験やな

熱田神宮の門前をどうするか。

その話になると、博之は珍しく、最初から少し前のめりだった。

尾張へ入り、熱田の周辺を見て回る。伊勢神宮のような圧倒的な人の流れはない。

参拝客はいる。道もある。港にも近い。神宮としての重みもある。

何もないわけではない。

ただ、銭が自然に落ちる形にはなっていなかった。

「……まずは、小さくやな」

博之は、熱田の門前を見ながら言った。

同行していた買い付け隊の者が、荷の量を見て首をかしげる。

「旦那様、今うちが持っている荷を全部置くとなると、かなり広い場所が要ります」

「全部は置かん」

「では、どうします」

「まず、屋根付きの場所を一つ作る」

博之は、手で四角を描くように示した。

「雨が降っても見られる場所や。そこに常設の市を置く」

「毎日ですか」

「毎日や」

周囲の者たちが少し驚いた顔をする。

寺社の市は、決まった日に立つことが多い。だが博之が考えているのは、

その日だけの賑わいではなかった。

「いつ来ても、何か見られる。買わなくても楽しい。まずはそれを作る」

並べるものは、小物でよい。

伊勢の小物。信楽焼の小皿。常滑焼の小壺。尾張周辺の品。熱田付近の土産物。

旅人向けの手ぬぐいや紐。

高価なものばかりでなくていい。

むしろ、見るだけで楽しめることが大事だった。

「まず、“あそこに行くと何かある”と思ってもらわなあかん」

博之はそう言った。

向かい側には、飯の場所を作る。

混ぜ飯。

肉あん。

麦茶。

それから、お花が考えた蜂蜜柚子湯。

蜂蜜柚子湯は甘く、体が温まる。参拝帰りや旅の途中に、少し腰を下ろして飲むにはちょうどいい。

「あと、水はただで飲めるようにする」

「ただですか」

「ただや。ただの水で人を集める」

買い付け役が不思議そうな顔をする。

「それで儲かりますか」

「水で儲けるんやない。足を止めてもらうんや」

博之は周囲を見ながら続けた。

「休憩所を作る。畳を敷いた場所や。そこに入って、ゆっくりするなら二十文」

「座るだけで二十文ですか」

「伊勢は茶一杯三十文やぞ」

そう言うと、同行していた者たちが笑った。

もちろん、最初から伊勢のようにはならない。だが、座って落ち着ける場所には価値がある。

旅人が足を伸ばせる場所。

子どもが少し寝られる場所。

年寄りが水を飲める場所。

荷を置いて、横の市を眺められる場所。

それだけで、人は少し長く滞在する。

滞在すれば、飯を食う。

飯を食えば、小物も見る。

小物を見れば、買う者も出る。

「寄進の元も作れる」

博之は静かに言った。

「飯屋が儲けるだけやなくて、熱田神宮に少しずつ寄進が増える形にせなあかん。

そうせんと、ただの商売人が場所を食ってるだけになる」

門前で商いをする以上、神宮に筋を通さなければならない。売上の一部を寄進に回し、

道の掃除や炊き出しにも使う。そうすれば、ただ銭を取る場所ではなく、人が集まり、

人が助かる場所になる。

「あと、読み書きを教える場所も、いずれ欲しい」

「そこまでやりますか」

「本格的にやるならな」

博之は、熱田の周りを見回した。

「ここに来る理由を作らなあかん。参拝だけやと、人は用が済んだら帰る。でも、

子どもに読み書きを教える日がある。炊き出しの日がある。市の日がある。催し物の日がある。

そうなると、近くの人も来る」

「門前町にするには、日常の理由もいるわけですね」

「そうや」

博之は頷いた。

「伊勢神宮は、遠くから来る人の力が強い。でも熱田は、まず近くの人にも来てもらわなあかん」

だからこそ、炊き出しの場所がいる。

催し物の場所がいる。

雨の日でも人が寄れる屋根がいる。

子どもや年寄りが休める場所がいる。

話し合っているうちに、博之の構想はどんどん膨らんでいった。

同行していた者が苦笑する。

「旦那様、小さく始めると言いながら、だんだん大きくなってますよ」

「いやいやいや。徐々にや。徐々に」

「今の話、もうかなり大きいです」

「でも、最初は屋根付きの市と飯場と休憩所だけや」

「だけ、ですか」

「だけや」

博之は強引に押し切った。

「常に見られる市って、意外とないやろ」

「確かに」

「寺の市も神社の市も、その日だけのことが多い。けど、ここはいつでも何かある。

そういう親しみを作る」

買い付け隊の品揃えも考える必要があった。

瀬戸物は近い。

だから、瀬戸物ばかり並べても新鮮味がない。

「瀬戸物は、むしろ比率を抑える」

「近いからですか」

「そう。地元で見られるものを並べても、そこまで珍しくない。瀬戸物は質のいいものを少し置く。

むしろ信楽焼、常滑焼、伊勢小物を混ぜる」

「熱田付近のものも置きますか」

「もちろん置く。地元のものを外してはいけない」

よそから来た品だけで店を埋めれば、地元の商人に嫌われる。地元の品を置き、

よその品を混ぜる。そのバランスが大事だった。

「……なんとなく見えてきたぞ」

博之は少し楽しそうに言った。

「名物が欲しいな」

「名物ですか」

「熱田らしい飯や」

同行していた者が考える。

「この辺りですと、うなぎは取れますね」

「うなぎか」

博之の目が少し光った。

「うなぎはええな」

「やりますか」

「ただ、骨が邪魔や」

博之は真顔で言った。

「前から思っててん。うなぎはうまい。でも骨が邪魔や。食いにくい。子どもや年寄りには危ない」

「確かに」

「骨をどうにかする試みは、やってみたい」

焼き方を変えるか。

切り方を変えるか。

蒸すか、煮るか。

細かく刻むか。

飯に乗せるか。

タレをどうするか。

博之は、完全に飯屋の顔になっていた。

「実験やな」

「食べ比べですか」

「そう。みんなで食べ比べる。骨が気にならん形を探す。料理うまい奴がおったら呼んでくれ。

一緒に考える」

同行していた者が笑った。

「ここでようやく飯屋らしくなってきましたね」

博之はむっとした顔をした。

「私はもともと飯屋や」

「最近、商いとか国の話ばかりでしたので」

「順番がごちゃごちゃになってるだけや」

博之は腕を組んだ。

「買い付け隊だって、もともとは従業員に買わせるために始めたんや。銭を溜め込みすぎるから、

品を持っていった。そこから信楽焼や常滑焼や瀬戸物になっただけや」

「だけ、で済む話ではないですが」

「飯屋なんやから、飯に戻るんや」

熱田神宮の門前町。

伊勢神宮の真似はできない。

だが、熱田には熱田の流れを作れるかもしれない。

屋根付きの常設市。

混ぜ飯と肉あん。

麦茶と蜂蜜湯。

畳の休憩所。

無料の水。

炊き出し。

読み書き。

催し物。

そして、うなぎの名物。

博之は、まだ何もできていない場所を見ながら、ぽつりと言った。

「……小さく始めるぞ」

隣の者が苦笑する。

「はい。小さく、ですね」

その声には、まったく信じていない響きがあった。