軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

織田信長が伊勢松坂屋に文を出す。瀬戸物買付許可と熱田神宮をなんとかしろ。何とか出来たら尾張全部の商い任せるwww

尾張の城に戻った信長は、その日のうちに猿――木下藤吉郎秀吉を呼び出した。

広間には、伊勢から持ち帰った土産の包みや、常滑焼の器がまだ並んでいる。

信長はそれを見ながら、どかりと腰を下ろした。

「猿。伊勢松坂屋へ文を書くぞ」

「またでございますか」

藤吉郎が苦笑すると、信長は当然のように頷く。

「またや」

「今度は何を」

「まず、瀬戸物の買い付けを許す」

書記が筆を取る。

「瀬戸でございますな」

「そうや。常滑だけやない。瀬戸も見せる。あいつなら、どうせ山ほど買いよる」

「確かに……」

藤吉郎も頷いた。

「信楽焼をあれだけ回したんですからな。瀬戸物なんて見せたら、目ぇ輝かせますわ」

「しかも、あいつは高いもんだけ買わん」

信長は指を鳴らした。

「小皿、湯呑み、飯椀、そういう日常のものも丸ごと買う。だから作る側が潤う」

「それをまた尾張や伊勢で売る」

「そうや。しかも、熱田に流せばええ」

藤吉郎が顔を上げた。

「熱田、でございますか」

「そこや」

信長はにやりと笑う。

「文には、“熱田神宮をなんとかしろ”と書け」

「……え?」

広間が静まる。

「殿、それはさすがに」

「なんや」

「いや、熱田神宮を飯屋に任せるんですか」

「任せるとは言っとらん。なんとかしろと言うだけや」

「それが一番無茶なんですよ」

信長は笑った。

「そもそも、熱田が全然うまくいっとらん」

その一言で秀吉は黙る。

「伊勢を見たやろ」

「はい」

「茶一杯三十文。海鮮焼き二百文。汁物百文。それでも売れる」

「売れてましたな……」

「しかも、みんな嬉しそうに銭を払う」

信長は伊勢での光景を思い出すように目を細めた。

「参るために来てるんやない。あそこでは、“銭を使うために来てる”」

「確かに」

「熱田には、まだそれがない」

信長は続ける。

「伊勢神宮みたいにするのは無理や。歴も違う、格も違う。だが、熱田にも人は来る。

なら、そこに飯、土産、湯治、茶屋、瀬戸物を乗せる」

「それを伊勢松坂屋にやらせる」

「そうや」

藤吉郎は頭を掻いた。

「競合店、ほとんどおりませんからな」

「そこや」

信長は机を叩いた。

「伊勢はもう出来上がっとる。強い店も多い。だが熱田はまだ空いてる。

ゼロから立てるなら、乗る利益はどえらい」

「囲えるわけですな」

「そうや。伊勢松坂屋として、熱田を囲う」

「殿、それ、さらっと言うてますけど、かなり大きい話ですぞ」

「だから面白い」

信長は悪びれもせず言った。

「熱田周りに店ができ、人が集まり、瀬戸物が流れ、飯が売れ、寄進が回れば、

それだけで尾張の銭の流れが変わる」

「うまくいけば、ですが」

「うまくいかんかったら、それはあいつの力不足や」

藤吉郎が吹き出した。

「殿、またずるいことを」

「ずるいとはなんや」

「やらせるだけやらせて、あかんかったら切り替える気でしょう」

「当たり前や」

信長は平然としていた。

「うちではどうしようもないんやから、とりあえず言うだけ言う。できたら儲けもんや」

「でも、旦那はやるかもしれませんな」

「やる」

信長は断言した。

「あいつ、“怖い怖い”言いながら、飯の道が見えたら止まらん」

広間に笑いが起きる。

「で、文にはこうも書け」

信長は少し身を乗り出した。

「熱田神宮周りを、伊勢神宮ほどとは言わんでも、人が集まり、銭が落ち、寄進が増え、

尾張の富になる場へ育てられるなら――」

そこで一度区切る。

「尾張の領地全部を任せてもいい」

「殿!?」

藤吉郎が思わず大声を出した。

「いやいやいや、そんな大きいこと言ってええんですか!」

「“任せてもいいという旨を書け”や」

「いや、それほぼ同じです!」

書記も筆を止めて困った顔をする。

「旦那、腰抜かしますよ」

「抜かしとけ」

信長は豪快に笑った。

「どうせ、“そんな大それたことできません”とか言いながら、考え始める」

「それはそうでしょうけど……」

「だがな」

信長の目が少し鋭くなる。

「この一年、美濃へ送るにも銭がいる」

広間の空気が変わった。

「兵を動かす。飯を炊く。炊き出しをする。寄進をする。美濃に染み込ませる人間を育てる。全部銭や」

「はい」

「猿、お前には、美濃に溶け込む人材を任せる」

「私に、ですか」

「根無し草でもええ。寺育ちでもええ。口減らしでもええ。町に溶け込めるやつを集めろ」

「承知しました」

「で、炊き出しや寄進を覚えさせる。伊勢松坂屋のやり方を見せる」

「飯屋のやり方で、美濃を切り崩すと」

「そうや」

信長はにやりと笑った。

「矛と盾や。攻めるところは攻める。だが、受け入れられる土台も作る」

「そのための銭を――」

「伊勢松坂屋に稼いでもらう」

藤吉郎はとうとう吹き出した。

「殿、ほんまに容赦ないですな!」

「なんや」

「戦費まで飯屋任せやないですか!」

「任せられるやつがおるなら使う」

信長は平然としていた。

「しかも、あいつは銭を“取る”んやない。“流れ”を作りよる。そこが違う」

藤吉郎も真顔になる。

「確かに、あれは不思議ですな」

「瀬戸物を買えば、窯元が潤う。運ぶ者が儲かる。港が動く。店が増える。人が集まる。

そこから税が取れる」

「戦せずに、富が増える」

「そうや」

信長は笑った。

「だから、まずは熱田や」

そして最後に、静かに言った。

「この一年で、尾張の銭の流れを変えるぞ」

藤吉郎と書記は顔を見合わせ、深く頭を下げた。

「承知しました」