軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いざ、出発!

旦那様のお支度を(侍女さんたちが)終えた頃に、マダム・フルールのところから仕立てていたものが届きました。旦那様のお支度にも結構時間がかかっていたようで、気が付けばもう夕方でした。お支度に明け暮れた一日でしたねぇ。

そんなことを思いながら、旦那様と一緒にサロンへ向かうと、

「お待たせいたしました。ご依頼いただいたものすべて出来上がっておりますわ。最後に微調整だけさせていただきたいので、奥様、一度お召しくださいませね」

わざわざマダム自らが納品に来てくれましたので、またまた恐縮です。

「はい、わかりました」

服の入った箱を抱えたステラリアと、サイズ調整をしてくれるマダムとともに私室に入ろうとすると、

「じゃあ、着たところを ぜひ(・・) 見せてください。ああ、そうだ。いちいちサロンに降りてくるのは面倒でしょう。僕の部屋で楽しみに待ってますから!」

と旦那様にお願いされてしまいました。サロンでも旦那様のお部屋でもどっちでもいいわ。面倒加減は一緒でしょ……って、あわわ。本音がダダ漏れてしまいました。いやいや、そうですよ、買ってもらった身なのですよ、断るわけにいきませんですよ。もったいないくらいのキラキラ笑顔もつけてくれましたしね!

「あ……はい……」

こちらはゼロ円スマイルしか返せませんが。

そして最終チェックと称したファッションショーをさせられました。

私室で一着ずつ着ては、サイズ調整をし、そして旦那様のお部屋に行き、旦那様の前でくるりと一回転。そしてまた私室に戻り、次の服に着替えて……以下略。

旦那様にお披露目は、絶対要らない工程だったと思うのですが?

仕立ててもらった中から、明日私が着る服を旦那様が選んでいました。ちょ、私の服を選ぶんだったら、自分の服も自分で選べばよかったんじゃね? という愚痴は心の奥に仕舞い込んで☆

微調整してもらってようやく完成した服を鞄に詰め込んで、ようやく旅行準備ができました。

明日、いよいよ出発です。

いつも通りの時間に起きて、いつもよりも軽めの朝食をとって。

支度をしてエントランスに行けば、使用人さん一同が勢揃いしていました。

「行ってらっしゃいませ、奥様!」

「ちょっとの間だけど、お留守番よろしくね! お土産は買ってこれるかどうかわからないけど。ほら、私ってばお小遣い持ってないし?」

「そんなもの要りません~! ご無事に帰ってくてくださいませ!」

「大丈夫よぉ! 護衛騎士様もいらっしゃるんだし」

旦那様も義父母もいない間は、いつもの雰囲気です。

みんなとしばしの別れを大袈裟に惜しんでいると、

「お待たせしましたね。さあ、行きましょうか」

旦那様が颯爽と階段を降りてこられました。

エントランスを出ると、車寄せにはすでに馬車が待機していました。

馬車は二台停まっています。二台のうち、後ろに停まっている方は前のものより少し小さいです。そちらに旦那様と私の荷物が載せられています。そして前の方、ロータスが扉を開けて待っている方に、私たちは乗り込むんですよね? いつも乗っている乗り心地サイコーの馬車とは少し違うように思うんですけど?

何が違うのかしら? と首をひねっていると、

「長距離移動用の馬車でございますから、いつもより乗り心地はよろしいですよ」

とロータスが教えてくれました。

馬車に長距離用も短距離用もないでしょ?! え? 距離で乗り分けるんですか?! お金持ちは違うんですねぇ!!

と、わけのわからないことに感心してしまいます。

実家にいた時は、もちろん一台しか馬車なんてなかったですよ! さすがセレブ。

車体の色はいつもの馬車と同じ深い臙脂で、フィサリス家の紋章がついています、

いつものよりちょっとサイズが大きいかな?

そんなことを思いながら旦那様にエスコートされて中に乗り込み、椅子に座ると。

「うわぁ、ふかふか!!」

いつもより座り心地の数段いい椅子でした。これなら長時間座っていても疲れなさそうです。おまけにふかふかのクッションもいくつか載せてくれていますし! 至れり尽くせりです!! 旦那様が見ているので、バフンとクッションにダイブすることができないのが残念です。

窓もいつもより大きいようで、これなら流れゆく風景が楽しめますね!

なんでしょう、俄然テンションが上がってきました!!

馬車に乗って一人きゃぴきゃぴとはしゃいでいると、窓の外にはいつの間にか義父母の姿がありました。

「お義父様! お義母様!」

「しばらくゆっくりと旅行を楽しんでおいで。いや、違うな。奥様、ご旅行楽しんできてくださいませ。留守はしっかりと守っておりますから!」

というお義父様は、予想した通り、ロータスと同じような姿になっていました。もちろん眼鏡もかけていますよ! そっとロータスを伺うと、お義父様の姿を見て苦笑していましたが。

「うふふ! はい! ありがとうございます」

「父上。留守はお願いしました」

「まかせとけー!」

旦那様と私が答えると、親指を立て、いい笑顔で笑っているお義父様。う~ん、ロータスはそんなことしませんけどね。

義父母と使用人さんsに見送られて、馬車は公爵邸を後にしました。

荷物などと一緒に、ロータスやステラリア、ローザは後ろの馬車に乗っています。

護衛は、フィサリス家の護衛騎士様たちが騎乗で馬車の前後を守っています。もちろん御者も騎士様で。庶民がふらっと旅行に行くのと違い、やっぱり公爵様の遠出は仰々しいですね~。

きちんと舗装された王都の道を、やっぱりこちらも乗り心地サイコーな馬車に揺られていきます。

実家のユーフォルビア伯爵領は、王都の北側にあります。北に位置するだけあって寒さが厳しくその上痩せた土地だったので収益も少なく、ですからうちの実家は貧乏でした。対して、王都の南にフィサリス公爵領はあります。こちらは温暖な気候で作物もよくなる豊かな土地です。しかも鉱物資源も豊富、おまけに観光資源まであるんですよどんだけ恵まれてんでしょうか?

まあ、それもこれも上手く運用してこその資源。それが上手いからこそ公爵家は繁栄しているんでしょうけどね。ここはちょっと手腕を勉強させていただかないとですよ!

見たことのない風景を、馬車はガタゴトと揺れながら進んでいきます。

「まずは公爵領にある屋敷にいきましょう。そこに滞在することになります」

「いつもはお義父様たちがいらっしゃるところですね?」

「そうです。向こうにも使用人はいますから、不自由はないですよ。今日は移動だけで疲れてしまうでしょうから、領地の案内は明日からにします」

「わかりました。で、ご領地まではどれくらいかかるんですの?」

「そうですね、このペースだと半日くらいでしょうか。あまり飛ばすと揺れがきつくて体によくないですからね」

ゆっくり目のペースでも半日くらいということは、王都を挟んで実家の領地と正反対くらいなんですね。

いちおう公爵領のことは地図で勉強しましたが、実際どれくらいかかるかなんて知りませんし。

「まあ、休み休みしながらのんびり行きましょう。まだ休暇は始まったばかりですし」

のんびりできるのが嬉しいのか、旦那様は微笑んでいます。

そうだ、お休みは始まったばかりでしたよ。

しばらく旦那様とみっちり一緒ですが、大丈夫ですかねぇ?

旅行に行くテンションで、すっかり忘れてましたが。