軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しいことだらけ

アルピニアとツェルンベット。みんな待ち侘びた新しい家族がまさかの双子! しかも男児!! ……誰も言わないけど、でも、多分……いや絶対、密かに期待されてたと思うんですよ。だって、ほら、超名門公爵家ですから。元気だったら男の子でも女の子でもどっちでもいいって思ってたけど、まさか一度に二人は想定外だったわ。

公爵家総出の大急ぎでいろんなものを追加してなんとか双子に対応していますが、〝ナニー問題〟だけは未解決のままです。

「ミモザにみてもらう……のはさすがに無理よね」

「はい……。かわいいお子様方をお育てしたいのはやまやまなんですよ〜。でも、たいっっっへん心苦しいのですが、私一人では手が足りません!」

「だよね〜」

ミモザも嘆いています。

いくらバイオレットが大きくなったといえど、バイオレットのお世話をしつつ、その上ふにゃふにゃの赤ちゃんを二人も見るのは至難の業ってもんですよね。てゆーかそこまですると仕事押し付けすぎ。とりあえずというか、緊急の処置として、侍女さんたちが交代でお世話を手伝ってくれている状態が続いています。

「一人でも先に来てくださったらよかったのに」

ロータスたちが言うには、候補はかなり絞られていたんだそうです。

今の公爵家内では適任がいなかったのは初めからわかっていたので、新しくナニー(いずれは使用人)を雇う手筈をしていたそうなんですが、最終決定に至らないところに生まれてきたのが双子だったので、もう一人を大至急考えているということでした。

「ロータスとダリアでサクッと決めちゃって、すぐにきてもらうのはどうなのかしら?」

これまでは基本、使用人さんはロータスとダリアが決めていたそうなんでね。ほら、旦那様がアレだったんで。あ、でも、最終的にはちゃんと旦那様には報告してたそうですよ! 聞いてたかどうか知らないけど……って、ごめんね旦那様。また黒歴史ほじくり返しちゃった。言えば言うほど旦那様に不利になるからこの辺でやめとこ。

それでもって、今回も決めちゃってくれたらよかったのではって思ったんだけど。

「それでは奥様との相性がわかりませんわ」

二人で決めない理由を、ステラリアが教えてくれました。

「なぜ?」

「単なる使用人ならまだしも、乳母ともなれば、奥様との関わりが深くなるじゃないですか」

「あ、そか。そりゃそうだわ」

そんなこと、すっかり失念しちゃってました。

「いくら優秀な人物でも奥様と性格が合わないと——」

「最悪ですね。うん、理解。納得」

確かにステラリアの言う通りです。ミモザは私が公爵家に来てからずっと付いてくれていたので、すでにお互いによく知ってるという関係性があったから、ロータスたちと旦那様が決めてくれたんですよね。

「う〜むむむむ……適当な誰かって訳にもいかないもんねぇ。レティの時はほんとに運が良かったわ」

バイオレットの時はたまたまミモザが〝いろんな意味で〟適任ということであっさり決まりましたが、今の公爵家にはそんな適材がいません。

「もう少しお待ちくださいませ。現在、公爵家の使用人総出で探しておりますので」

「ちょっと待って。それはさすがにないでしょ」

公爵家総出って。一瞬、使用人さんたちが国内のあちこちに散らばっていく様が想像されちゃったわ。違うだろけど。

「総出というのは少し言い方が大袈裟でございましたが、まあ、総力を上げて探していることには変わりませんわ」

ステラリアがくすくす笑いながら言いました。

「でも、使用人さんたちが寄って 集(たか) ってって、どういうことなの?」

「それはですね——」

ステラリアたちが言うには、今回は急なことなので『推薦制』にしたということです。要するに、すでに公爵家からの信用を得ている使用人さんが、適任と思われる候補者を連れてくる、ということだそうです。もちろん推薦されたからと言って身辺調査的なものがパスされるわけではないですが。

「——ということで、集められた候補者を絞っているところですのよ」

「まだたくさん候補者が残ってるの?」

「そうでございますねぇ……先日聞いたところでは、もう数名には絞られたようでしたけど」

「最終的に決めるのはロータスなの? それとも旦那様?」

「いえいえ、もちろん奥様ですわ」

「あ、そうだった」

どんな方が来るんでしょうか? 会う日が楽しみになってきました。

そんなこんなで数日後。ロータスとダリアから、新しい使用人さんを雇ったという報告がきました。

「使用人さん? 子供たちの乳母じゃなくて?」

「はい。最近少し人手が足りないと思うところがありましたので、旦那様とも相談の上、採用させていただきました」

「旦那様公認だったら、私からはなんの問題もないですね」

「ありがとうございます」

旦那様、ちゃんとお家の仕事もしていてよかったです。変なところで安心してしまう。

ダリアが連れて入ってきたのは全部で五人。全員女性でした。

五人も一度に? と首を傾げていたら、

「ピエドラの大旦那様からも数名使用人を手配してほしいとのことでしたので、少し多めに採用いたしました」

ダリアはちゃんと私の心を読んでるのね! って、そんなところ感心してないで。なるほど、そういうのも含んでいたんですか。

「あら。でも、ピエドラで採用しないの?」

「あちらには、元からこちらにいた数名を派遣する予定でございます。慣れた者の方がいいと、大奥様がおっしゃいまして」

「そういうことなのね」

「ピエドラの使用人は長年お勤めしているものが多く、そろそろ引退したいという者が数名出てきたそうです」

あちらでお勤めしている使用人さんたちは、義父母様たちがピエドラに隠居した時に一緒について行った方たちばかりなので、そろそろいいお年頃です。しかもお義母様付きの侍女だったアマリリスがロータスと結婚したことで、ロージアに来てしまってるから、そもそも欠員だっちゅー話もありまして。

「ベテラン精鋭ばかりですもんね、あちらは」

「はい。私どもも、いずれはあちらに行けたらと考えておりますわ」

そう言って穏やかに微笑むダリア。私どもって、ダリアとカルタム、二人ともあっちに行っちゃうの!?

「待って! まだこっちにいて!!」

「まあ! ふふふ、まだまだ先のことですよ」

「先とは言わず、もうずっとここにいて! 私が許さないんだから!」

「ありがたきお言葉。嬉しゅうございます」

「ロータスもよ!」

「ありがたき幸せ。奥様が『ロータスなんて要らない』という日まで、お仕えさせていただきます」

「よしよし。もう、焦っちゃったじゃないの。——それで、誰が行くか……は、きっとお義母様から『ご指名』が来てるんでしょうね」

「はい」

「じゃあそちらはお任せするとして……新しく来た方たちを放置してごめんなさい。紹介してくださる?」

「はい。ではこちらから——」

ダリアが次々に紹介していきました。いつもお馴染みの専門学校を卒業したばかりの人から、違うところから転職してきた人など年齢は様々。でもみんな二十代の若い方ばかりでした。第一印象や自己紹介している姿では、みんな優しそうな感じです。

「私が使用人さん用ダイニングに行っても、仲良くしてくれるかしら? 引かないかな?」

「良家の奥様が心配する内容ではございませんね。仲良く……はともかく、まあ、軽く引きはするでしょう」

「うそん!?」

新人さんたちがダリアに連れられて部屋を出ていく後ろ姿を見送りながら呟いたら、ロータスに苦笑されました。

「ご心配せずとも、 公爵家の特別な事情(・・・・・・・・・) につきましては、きちんと事前にレクチャーしておきます」

「ありがとう〜」

それなら安心して賄いランチ食べに行けるね! って、私が使用人さんのテリトリーに出没(そして混じる)ことを『特別な事情』って言わないで……。

新人さんたちとはすぐ、顔を合わせることになりました。あ、安心してください。使用人さん用ダイニングでの遭遇じゃないですよ! 私はまだ産後で寝室の住人なんで、寝室にお掃除に来てくれたり、双子のお世話をしてくれたりってことですよ。今のところお掃除スキルしか見てないですけど、さすが公爵家に来るだけあって、手際よくささっと終えちゃいます。

で・も!

私が特に驚いてるのが、みなさん若いのに赤ちゃんのお世話が上手なこと。抱っこも不安なければ、あやし方も上手。オムツの交換なんかもあっという間に完璧なんです。今だって、アルピニアが泣き出したのを見るとサッと寄ってきてオムツチェック、か〜ら〜の、交換。そのまま服を整えたらヒョイっと抱き上げ優しく背中トントンで、アルピニアはすぐにまたねんねしてしまいました。なにこの流れるような無駄のない動き!

「すごく手慣れてますねえ。双子たち、まだふにゃふにゃだから触れるのも怖いくらいなのに」

私だってシスルが赤ちゃんの頃、怖々やってた時期もありました。ま、そんなもの、あっという間に慣れたけど。

感心して声をかけたら、

「よく兄弟や親戚の子供のお世話をしていたもので、すっかり慣れてしまいましたの」

「まああ! ご兄弟の?」

「はい」

微笑する新人さん……クローミア。ちょっと! 私と同じじゃないですか!

「私もね、弟妹が歳離れてるもんだから、いつもお世話してたんですよ」

「奥様が、ですか?」

「そうよ〜。二人とも、もうすっかり大きくなっちゃったけど。それでもやっぱり今でも可愛いんですよねぇ」

「それ、すっごくわかります!!」

似た境遇にすっかり盛り上がってしまい、お互い『いかに弟妹が可愛いか』について白熱した論議が交わされました。いやぁ、熱く語ってしまったわ。

クローミアだけでなく、他の新人さんたちも子供の世話経験ありということでした。中にはすでに結婚していて、自分の子供がいる方も。知らない間に公爵家の使用人さん必須条項に『子育て経験あり』が加わっていたようです。