軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レティと騎士団メンツ

旦那様に言ったように、七日間なんてあっという間です。

バイオレットが生まれる前も、使用人さんたちとワイワイ仲良くやってたらいつの間にか七日なんて過ぎてましたけど。

旦那様たちからも特に緊急の連絡がなかったので、任務はつつがなく遂行されているのでしょう。

帰宅予定の日は、朝からいろいろ準備しました。

旦那様の身の回りのもの——着替えや寝具——をふかふか快適に整えるとか、旦那様の好物を揃えるとか。以前なら使用人さんたちと一緒に走り回れたのに、今回は指示するばかりでなんだか物足りないです。

そうこうしていると、休憩がてら午後のお茶をしているところに、

「フィサリス副隊長は、この度の任務をつつがなく終え、帰途につきました。先ほど王宮を出られましたので、しばらくすればこちらに到着するかと思われます」

いつものように先ぶれの方がやってきて、旦那様の帰還を教えてくれました。無事にお仕事が終わってよかった……と言いたいところですが、任務はお家に帰るまでが任務です!

さっき王宮を出たということは、晩餐前にはお屋敷に着く感じですね。

「レティ、お父様はもう直ぐ帰ってきますよ〜。お迎えの準備をしなくちゃですよ〜」

ロータスとバイオレットと一緒に先ぶれの口上を聞きました。さて、旦那様が帰ってくるまでにお仕事完成させちゃいましょう。

「帰ってきてすぐにお食事は重たいでしょうから、先にお茶を出しましょうか。食前酒あたりも必要かしら。ロータス、用意はある?」

「もちろんでございます。どのようなリクエストにでもお応えできますよ」

「さっすが! じゃあ、お茶とお酒と、軽くつまめる何かを用意しておいてね」

「かしこまりました」

ロータスは軽く一礼すると厨房に消えていきました。

「お部屋の準備は大丈夫ね。さっき一緒にお支度したもの」

「ええ、大丈夫でございますよ。湯殿の方も、いつでも使えるようになっております」

こちらはダリアが頷いています。

「よ〜し、後はご本人が帰ってくるのを待つだけですね!」

果報は寝て待て。——違うか。

「まだかな〜? もうすぐかな〜?」

「もうそろそろでございましょう。ああ、外が騒がしくなってきましたね」

そろそろかなぁと思う時間にエントランスに出て旦那様の帰りを待っていると、扉の外から賑やかな話し声が近付いてきました。いつもはこんなに騒がしくないんだけど? 今日の護衛さんはおしゃべりな方なのかしら?

「やけに騒がしいですね〜?」

「確かに」

ロータスも訝しんで扉を見ていると、ゆっくり開いたそこから旦那様の姿が見えました。

私たちの姿を見つけるとうれしそうに微笑んだ旦那様でしたが。

「ただいまもどっ……」

「奥様、お久しぶりです〜!」

「副隊長を無事にお届けしましたよ!」

「きゃあ、こちらがバイオレット様? かわい〜!!」

「お会いしたかったです〜!」

どやどやどやどや。

騒がしい護衛さんの正体は旦那様の部下さんたちでした。

旦那様のただいまを言う声を搔き消した部下のみなさんは、旦那様よりも早く私の元に来てあっという間に囲んでしまいました。おっと、この感じ、久しぶりですね! わらわらと囲んでくださるのはいいんですけど、バイオレットがいるからお手柔らかにお願いします!

「まあ、みなさま! ご無沙汰しております」

「ほんとですよ〜! もっと早くにお会いしたかったのに、副隊長が会わせてくれなくて〜」

「だから今日は無理やり押しかけちゃいました☆」

「そんな感じですね」

だって旦那様の顔が——部下さんたちにはじき出されて輪の外にいる——すごいことになってますもん!

「旦那様〜! おかえりなさいませ!」

部下さんたちの間から旦那様に声をかけたんですが、時すでに遅し。

「ヴィー、レティ……ただいま」

私を囲む部下さんたちをじとんと見る旦那様。拗ねちゃったようです。

予定外の部下さんたちの出現に、使用人さんと私は密かにてんやわんやでした。

「大至急お茶とお酒の用意を追加して! 特にお酒はたくさん用意しないと、すぐに足りなくなっちゃうから!」

「りょーかいです!」

「カルタムに晩餐の追加をお願いしてきて! 量がないなら品数で勝負よ。大丈夫、カルタムならなんとかできる!」

「わかりました!」

「サロンの接待役と配膳のお手伝い、侍女さんをうまく配分してね」

「かしこまりました」

とりあえず お客様(部下さんたち) をサロンに押し込め……げふげふ、案内して、廊下では次の指示を飛ばしていきます。スピード勝負です。

だいたい指示し終えたところで、私もサロンに入りました。

「レティ様、待ってました!」

お姉様方が私とバイオレットがサロンに入ってきたのを見つけるとすぐさま飛んできました。

「ほっぺたプニプニ〜! おててちっちゃ〜い」

「う〜ん、お父様とお母様、どっち似かしら? まだふにゃふにゃだからわかりにくいですね」

お姉様方はバイオレットの手を握ったり頬をツンツンとつついては『きゃ〜!』と歓声をあげています。

「髪や瞳の色は旦那様に似てるんですよ。顔は……どうでしょう? 私の妹の小さいときに似てると思います」

「そうなんですね。ねえ、奥様、レティ様抱っこしてもいいですか?」

「いいですよ〜」

「待ってアンゼリカ! その上着は今日一日着て汚れてるんだから、レティ様には毒になるんじゃない?」

私がバイオレットをアンゼリカ様に渡そうとしたら、ハッと我に返ったカモミール様がアンゼリカ様を止めました。

う〜ん、そこまで神経質にならなくてもいいような気もするんですが、お姉様方が気を使ってくださいます。

「手も洗わなくちゃ」

「上着は脱ごう! それで大丈夫なはず」

「レティ様に何かあってはいけないものね」

お姉様方は侍女さんが持ってきてくれた手洗い水で綺麗に手を洗い、制服の上着を脱ぎ、準備万端でバイオレットを抱っこしてくれました。

「かっる〜!」

「いいなぁ、次、私ね!」

なんてきゃっきゃと華やかな笑いに包まれている私たちの隣では。

「俺も俺も、レティ様抱っこさせてください!」

「ほら、僕らも綺麗に清めましたよ〜」

男の部下さんたちが抱っこさせてとアピールしてきたんですが、

「男どもは却下だ!」

「「「「「副隊長のけちー」」」」」

旦那様が全部却下していました。

「副隊長ったらお土産を真剣に選んでたんですよ」

「あら、そうなんですか」

「ロージアではあまり見かけないものがたくさんあったから悩んでましたよ〜」

「そんなお土産屋さんなら、私も見たかったです」

「僭越ながら私たちもアドバイスさせていただきました!」

「どんなお土産なのか、楽しみにしておきますね!」

私とお姉様方はバイオレットを囲んで和やかに女子会です。

一方旦那様たちはというと。

「俺、レティ様が大きくなったらお婿さんに立候補していいっすか〜?」

「うわずっり、俺も俺も」

「僕は次男なんで、いつでも婿養子に入れますよ!」

「誰がお前らみたいなむさ苦しいヤローにかわいい娘をくれてやるかっ!! それに、レティが年頃になった時、お前ら立派なおっさんだろうが」

「「「「「おっさんとか、ひど〜い!」」」」」

いつも通り仲良く戯れる旦那様と部下様はおいときましょう。

部下さんたちは晩餐も一緒にとり、お酒もたくさん召し上がったので、そのままお泊まりしてもらうことになりました。

「まったくあいつらときたら。僕を屋敷まで送るだけって言ってついてきたのに、ちゃっかり泊まりやがって」

「まあまあ。これでお姉様方や部下さんたちのレティに会いたいって気持ちは落ち着いたでしょうから、よかったんじゃないですか?」

「あいつらは落ち着いただろうけど、僕が落ち着いてないよ。まったく。せっかく土産を買ってきたというのに」

「カモミール様たちからお聞きしてました。それで、何を買ってきてくれたんですか?」

「特産の糸を使った織物だそうだ。ヴィーにはこれ、レティにはこれを」

そう言って見せてくれたのは、王都ではあまり見かけない、エキゾチックな模様の織物。私にはえんじ色、バイオレットには淡いピンク色です。

花をモチーフにした幾何学模様はよく見るととても手が込んでいて、見るからに高そうな代物です。

とても柔らかくふんわりしているので、ストールにするのもよさそう。

「素敵な織物ですね! 柔らかくて肌触りもいいですし」

「店主もそう言ってた。柔らかいから赤ちゃんの肌にも安心だって。とりあえず反物だから、明日にでもマダム・フルールを呼んで何か仕立ててもらおうかと思ってるんだけど」

「あら、お忙しいマダムをわざわざ呼ばなくても、レティの服なら私でも縫えますよ!」

「あ〜、そういえばヴィーは裁縫得意だったもんね。そうしようか」

「はい!」

今は時間がたっぷりありますから、いくらでも縫っちゃいますよ!

とにかく、旦那様は無事に出張から帰ってきてよかったです。

お姉様方(と騎士団メンツ)がバイオレットに会ったと聞いたら、アイリス様たちが黙ってなさそうですね! ——しばらくは面会攻めかしら。