軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

庭園完成

お仕着せに続いてなんと、使用人さん用ダイニングで賄いをいただくのまでも解禁となりました! ただし旦那様お留守時に限る。でもこれで旦那様の急なご帰宅に対してもアリバイ……おっと、バタバタしなくて済むようになりました。

一時は諦めかけていた楽しい使用人さんライフは、寛大な旦那様のおかげで継続することができました。よかったです! しかし、いざという時(離縁されて出戻った時)にと身につけた使用人スキルですが、どうやら発揮する場面がなくなったような気が。こうなったら 公爵家(ここ) で発揮しましょうそうしましょう。

「そろそろ花を飾りたいんですけど、まだ庭園に出ちゃダメでしょうか?」

庭園の工事に入ってもう十日くらい経ちます。

その間『危ないから庭園に出ちゃダメ』と旦那様以下みんなに言われているので飾る花を調達できず、今お屋敷中から花が消えているのです。

いつも綺麗な花を生けている花瓶が、空のままで寂しそうです。

ベリスたちはわかるけど、侍女さんたちだって庭園に出入りしてるのに。私はむしろ 侍女さん(そっち) 側だと思うんだけど?

しびれを切らした私が旦那様に直接聞いてみたのですが、

「う〜ん、もう少しで完成するからもうちょっと待って」

と、完成してから見せたいとかで却下されました。

「本当にもう少しなんですか?」

「そうだよ。明後日には完成するから、一緒に見に行こう」

あら、明後日ですか! それなら我慢できますね。

「一緒にって、お仕事はいいんですか?」

「休みだから大丈夫」

「は〜い。わかりました」

旦那様肝入りの庭園改装だからか、お休みなのにわざわざ案内してくれるそうです。掘り返してあちこち穴ぼこだらけにしての大工事。いったい庭園はどんな感じになったんでしょうか。楽しみにしておきましょう。

そして旦那様の言っていた明後日がきました。

いつも通り朝ご飯を食べてから旦那様と一緒に庭園に出ました。

久しぶりの庭園、しかも大規模改装後とあれば、どんな風に変わったのかワクワクテカテカ。私は興味津々できょろきょろあちこち見渡すのですが。

パッと見た感じ、変わってないというか……?

そんな、そこら中を穴ぼこだらけにして大規模な工事をしたように見えません。

「サーシス様? あまり変わった感じがしないのは私だけでしょうか?」

私の手を引き隣を歩く旦那様に尋ねれば、

「この辺りはあまり、というか全然いじってないですからね。改装をしたのはもう少し向こうです」

「向こう?」

「そう」

向こうってどこよ?

そこが聞きたかったのに、旦那様ったら適当にはぐらかして答えてくれません。そのままズンズン別棟の方に向かって歩いていきます。

つか、全面的に工事してなかったのなら、私が庭園に出て行っても大丈夫だったんじゃね?

ちょっと不審な目を旦那様に向けつつ、でも黙ってついていくことにしました。

「あ、別棟がよく見える!」

別棟は、これまで高い木々で囲い上手く周りから見えないようになっていたのですが、それが低木に植え替えられ、庭園からもよく見えるようになっていました。

ああ、この辺りをいじってたんですね。なるほどなるほど。植木がごっそり入れ替わってるから、工事は結構大変だったんじゃないでしょうか。

別棟の、特に池に面した芝生のあたりがよく見えます—ええ、以前はウッドデッキがあったところですよ! これはもう、やましいことできませんね旦那様! って、違うか。

「別棟が庭園から丸見えになりましたね。これなら本館からも見えるんじゃないですか? でも明るくなって、よくなりました」

「うん、これで別棟にいても庭園が眺められるようになったね」

「デバガ……げふげふ、垣間見しにくくなりましたね、こちらもはっきり見えるんで」

「……何を言ってるのかな、ヴィーは……」

私が真剣な顔で言ったものだから、旦那様が苦笑しています。

それから別棟を回って裏手に出ました。

ここは私のお庭があるところじゃないですか。植え放題、適当万歳なワタシ庭園。ベリス作の見事な庭園の隅っこで、こぢんまりと楽しんできたのですが、それが……。

「え!? ナニコレ立派になってる!!」

びっくりしました。ワタシ庭園がいろいろバージョンアップされてるのです!!

まず広さ。

以前よりも倍くらいに広くなっています。いや、倍よりも広いかも。とにかく広がっているんです!

きちんと低木で囲われているので、ちゃんとした庭に見えちゃう不思議。

しかもすでに土が入れられているので、いつでも新しい種や苗を植えられるようになってるし。もちろん元からある花たちは、これまで通りきれいに咲いていますよ、むしろそのまま手付かずで置いていてくれてますね。

ちょっとくつろぐ時のスペースにと芝生を植えてあったのですが、そこには。

「東屋、建ってますね」

「建てました。これでゆっくりくつろげるでしょう?」

芝生のスペースはそのままあるのですが、その後ろに東屋が出現しました!

八角形の形をしているそれに壁はなく、腰高の柵が巡らされています。屋根は三角です。全体的に白を基調としていてかわいらしい感じに作られています。

「素敵な東屋ですね〜。おお、ソファまである」

中に入ってゆっくり見渡せば、ふかふかソファが置かれてありました。八角形の三辺に合わせた面白い形のそれは、三人は余裕で座れる広さ。これなら作業に疲れたときにお昼寝もできるね!

屋根が大きく作られているので軒下が広く、雨でも東屋の中に入ってしまえば濡れなくて済みそうです。屋根は大きいですが高さが十分にあるので、そんなに中が薄暗いこともありません。

私が物珍しさにキョロキョロしていると、先にソファに座った旦那様に手を引かれ、隣に座ることになりました。

「ここでゆっくりするのもいいなと思って。もちろん今まで通り芝生の上に寝転ぶこともできるし」

「ええ! いいですね!」

元からある芝生スペースも気に入ってましたからね。残してくれていてうれしいです。

「気に入った? ヴィーが喜ぶといいなって思いながら作らせたんだけど」

「もちろんです! ありがとうございます!」

東屋でちょっと休憩とか、ちょっとお外ランチとかお茶とか、いろいろできますね。旦那様、いいもの作ってくれてありがとうございました!

「大規模な工事っていうのは、ヴィーを庭園に出さないための嘘だったんだ。ごめんね。でもびっくりさせたかったから内緒にしてたんですよ」

そうか、そういうことだったのか〜! ちくしょう、許しちゃいますよ!!

「びっくりしたけどうれしいです。サーシス様、本当にありがとうございます」

私は旦那様の手を取りぎゅっと握りしめ心からお礼を言うと、旦那様もうれしそうに微笑んでくれました。

「庭園の改装は喜んでもらえたことだし、さ、もう一つのサプライズといきましょうか」

旦那様が先に立ち上がり私を引き起こしながらそんなことを言いました。

え? もう一つのサプライズ?

一つ目はこの東屋ですよね。もう一つって何!?

私が何のことかさっぱりわからず盛大にクエスチョンマークを飛ばしていると、

「ヴィーを頼んだ」

旦那様が東屋の外に声をかけました。

いったい誰に声をかけたの? ロータス? ダリア?

すると、

「「「「はーい!! おまかせくださいませ!」」」」

「さあさあ、奥様。部屋に戻って軽く湯浴みをしましょうか」

「それから極上マッサージですよ」

「今日も綺麗になりましょうね」

とかなんとか口々に言いながらやってきたのは、愉快なエステ隊ではありませんか! ちょ、あなたたち今までどこに潜んでたの!? 確かさっきまで旦那様と二人っきりだったよね!?

笑顔で現れた侍女さんたちは、

「はいはい、奥様、行きますよ〜」

私の両手を引いてどこかへ連れて行こうとしています。

「え、ちょ、ちょっと待って、何が起こってるのこれから何が起こるの誰か説明してぇ!!」

わたわたと抗う私。でも誰も何も説明してくれません。そうしている間にも私は侍女さんたちにガシッと捕まえられたままズルズルと引きずられていきます。

エステ隊の登場といったら、たいていが夜会など社交前です。でも今日はそんな予定ないよむしろ旦那様と庭園を散歩するしか予定入ってないよ!?

まさかのシークレットパーティーとか!? いやいや、直前まで招待状来ないなんて、さすがにそんなの聞いたことないな。

え、でもほんとこれ一体なんなんでしょう?

「サーシス様!?」

「大丈夫だよ、ヴィー」

旦那様に助けを求めたのに、笑顔で躱されたし!?

突然のことにパニクる私をよそに、

「後は頼んだ。ヴィオラはいつでもかわいいんだが、今日はとびきりスペシャルにしてくれ」

旦那様が真面目な顔でエステ隊に注文つけてます。何その特上コース。

「「「「了解いたしました! 腕によりをかけてピカピカにしてきます!!」」」」

喜んで〜と旦那様の注文に応える侍女さんたち。

なにこれ、旦那様以下みんなグル? 私だけハブ?

この後何が起きるの? 誰かこの状況を説明して〜っ!!