軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

裏お見合い大作戦を終わらせます2

「いったいこれはどういうことです? なぜゲイリーさんとガイさんが……彼らは部外者でしょう。それとも、彼らがあの土地を買ってくれるとでも言うんですか? そんなことができるんだったら……」

「できるんだったら、エリザベスさんをお嫁に出しても良いとでもおっしゃいますか? 聞けば、ガイさんとのお見合いが流れたあと、新たなお見合いが予定されているそうですね。多額の融資と引き換えに、親子ほど歳の離れた相手までもが候補に入っているとか。妹を売り飛ばそうとするその行為は、さすがにどうかと思いますけど?」

少々辛辣になってしまったのは許してほしい。だってエリザベスさんの新たなお相手候補は本当にひどいものだった。多額の資金を集めるためにタチの良くないところからお金を借りていたエミールさんは、その高利貸しにエリザベスさんを差し出そうとしていたのだ。ちなみに相手は60過ぎで、妻も子どももいる人だ。

私の指摘に一瞬息を呑んだエミールさんだったが、すぐにこちらを睨みつけてきた。

「お言葉ですが、それは家庭内の事情です。いくら男爵家のお嬢様と言っても、口を出す権利はお持ちでないはず。それに、今日は土地の購入の件での話だと聞きました。その話が進まないのであれば失礼させていただきます。さぁ、エリザベス、行くぞ」

「そんな……っ! ゲイリー!」

「……エリザベス!」

エミールさんに乱暴に腕を取られたエリザベスさんが悲鳴をあげかけたところに、私が割って入った。

「まぁ、早計ですこと。土地の売買のお話しだと申し上げたことに嘘はありませんよ。シュミット先生とガイさんをお招きしたのは、お二人も立派な当事者でいらっしゃるからです。今回のことの行末を知る権利はおありですもの。ですので同席いただこうと思いました。ケイティ?」

「はい。シュミット先生、ガイさん、私の隣にお席をご用意してあります。どうぞ」

そう言ってケイティは彼女の隣にあった2つの空席に彼らを案内した。その姿を唇を噛み締めながら見ていたエミールさんだったが、それ以上の反論を諦めたのか、再びソファに座った。

「わかりました。土地の話をしていただけるのであれば従いましょう。それで? いったい誰があの土地を買ってくださるんですか」

「その前に、先ほど提案した件です。我が領内での貸し馬車業の展開について、ご尽力いただけないでしょうか」

「それは、旦那様方の領地での事業展開に協力することが、土地の購入の条件ということでしょうか?」

「ある意味合ってはいますね。ただ、その事業を行うにあたって、我が領に移住していただくことも条件です」

「うちには弟が2人いますので、1人そちらに向かわせることは考えられなくはないですが、ただうちも人手が潤沢とは言えず……特に今は」

エリザベスさんの2番目の兄は会社で経理担当を、3番目の兄は馬の管理や馬車の修繕などを担っているとのことだった。エミールさんが派手にやらかしたことで失墜しかけているリンド馬車の持ち直しを図るためにも、働ける身内は手元に置いておきたいという気持ちはわかる。

だが、私の当ては違っていた。

「もう1人、リンド家には人材がおいでですよね」

「もう1人? もしかして、父のことをおっしゃっているのでしょうか。しかし父は今、施設で療養中です。現役復帰も難しいのに、他領で新たな事業の立ち上げなど、とても」

「そうではありません。今、あなたの隣にいらっしゃいますよね」

「私の、隣?」

言われて隣を見たエミールさんが、まさか、という顔をした。

「エリザベスのことをおっしゃっているのですか? それこそありえない! 妹に商売の知識など欠片もありませんよ! 子どもの頃から跡取り教育を受けてきたのは私と弟たちだけです。もっとも、弟たちも父や私ほど経営に向かないということで早々にサポートに回ったわけですが、とにかく、エリザベスに商売を任せるくらいなら、まだ弟たちにやらせた方がマシです」

言い切ったエミールさんは乾いた笑いを浮かべた。

「お嬢様は未来のダスティン男爵でいらっしゃいますから、今のうちからお父上に領地経営や商売について多少は学んでいらっしゃるのかもしれませんが、そもそも商売というものはそう簡単に行えるものではないのですよ。新規事業の立ち上げともなると資金も必要ですし、何より経営のノウハウなどは……」

「まぁ、さすがは畑違いの仕事に手を出して、多額の負債を抱えていらっしゃる若き経営者のお言葉ですね。とても参考になります」

「なんですと!?」

前にも言ったが、私はこの人がちっとも好きじゃない。変な欲をかいて会社を潰しかけておいて、その補填としてなんの罪もないエリザベスさんを人身御供にしようとしている極悪人だ。今日ばかりは貴族の仮面を振り翳して嫌味を言ったってバチは当たらないだろう。

そう振り切って、畳み掛けるように言った。