作品タイトル不明
プレゼンのお時間です2
「はい。つまり1人の子どもに対し、複数の貴族の方々や裕福な平民の方々に、里親になっていただくのです。里親というよりスポンサーといった方が的確かもしれません」
「スポンサーって……あぁ、パトロンのことね!?」
パトリシア様が思いついたように手を叩く。私は彼女に向かって大きく頷いた。
「そうです! パトロンの方が馴染みがあるでしょうか。画家や音楽家、俳優など、芸術家を支援する貴族の方々をパトロンと呼びますが、孤児院の子どもたちにもそうしたパトロンを募集するのです。パトロンとなった方たちにはその子の“親代わり”として、その子の支援を行ってもらいます。もしシリウスの親代わりになったとしたら、彼がやりたいこと——つまり音楽活動を支援してもらうのです」
「音楽活動の支援というのは、稽古代を払うとか、そういうことかね?」
父の質問に私は曖昧な笑みを返した。
「それでもよいですが、“親代わり”の皆様には、それぞれができる範囲のことをしていただきます。たとえば家に楽譜が眠っているという方ならその楽譜を寄付してもらえばいいし、サロンなどを開いておられる方なら演奏場所を提供してあげるのもいいでしょう。調律師がお知り合いにいるならそれを派遣してあげるのでもよいですし……支援は何もお金だけとは限りません。その子の活動につながるものなら、モノでもコトでも、なんでもいいんです」
私がこのプランのヒントにしたのは、前世のとあるボランティア団体だ。アフリカなどの貧しい国の孤児たちを、先進国に住みながら支援できるというプロジェクトを推進していた団体で、そこでは毎月数千円を一口として、孤児たちを支援してくれる里親を募集していた。実際にその子を引き取って育てることはできないけれど、小額のお金や物資などを送ることはできるという人は一般人の中にも大勢いる。そこでは孤児とそうした支援者のマッチングをしており、支援者のことを“里親”と呼んでいたのだ。
通常、海外の孤児への支援となると、どこかの窓口に寄付をするというのが一般的だが、そうした”全体”への支援でなく、1人の、顔も名前もその背景もわかっている子どもに対する支援としたのが、その団体の面白いところだった。そうすることで支援者は名も知らぬ相手ではなく、目に見える1人の子どものための支援なのだと認識できる。そして支援者のお金や物資が、必ずその子のためになっているのを知ることができ、満足度もあがる。
私の知人にも2人の孤児の女の子の里親になっている人がいた。子どもたちからは定期的に手紙が届くという。この制度のいいところは、孤児と支援者が必ずしも1対1ではないところだ。1人の子どもに対して複数の里親がつくこともある。そうすることで仮に1人の支援者がなんらかの事情で支援できなくなったとしても、ほかの人たちが支えることができるので、長期的な支援につながる。
そんな記憶を頼りに、複数の支援者の存在が長期的な支援につながることも説明した。シンシア様が何度か頷いてくれたところをみると、納得してもらえたようだ。
この制度の立案には当然シリウスのことが念頭にあったが、たとえばルルやほかの子どもたちでも応用できる。シンシア様のように優秀な子には家庭教師を、ミシェルやギルフォードのように騎士になりたいという子どもには入団試験の訓練をなど、その子が望むものに対して支援したいという人が現れればマッチングが可能だ。ようは子どもの夢や未来への支援を募るのだ。
私は今一度全員の顔を見渡した。誰もが驚きながらも好意的な表情をしている。
(第一段階はOKってとこかしら。このまま次に進んでしまおう)
気を良くした私は次の計画のプレゼンへと駒を進めた。