軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

来客

好きなものを好きなだけ買って、ローザはご満悦だった。

ポーチで馬車を降りると、エントランスで執事がローザの帰りを待っていた。

応接室にアレックスが来ていると告げられる。

ゆっくりとお茶でも飲みたかったが、父がすぐ来るようにと言っているので仕方なく応接に向かう。

ローザが応接に入ると、アレックスが父と談笑していて、がっかりした。

「クロイツァー嬢すっかり元気そうだね。今日は買い物に行ったんだって?」

挨拶がすみローザがソファに座ると、向かい側にいるアレックスが品のよい笑みを浮かべている。

「ええ、お手紙にも心配ないと書きましが、本日はどのようなご用向きでいらしたのでしょうか?」

ついついぶしつけな物言いになってしまう。

もちろん、ローザも笑顔ではあるが、残念なことに彼女の笑顔はデフォルトで怖い。

「ローザ、そのような言い方をするものではない。殿下は今日大切な話が合っていらしたんだ」

嫌な予感がしつつもローザは、自分の前に置かれた熱い紅茶に口をつける。

実はアレックスからは、週に一度は便りが来るようになっていた。

もちろんそれはケガ見舞いと、謝罪ではあるが、問題なのはその次に続く文言で、けがが治ったら観劇や舞踏会に出ようというお誘いだ。

ようは詫びにデートをしましょうということである。

「ローザ、僕と婚約してくれないか?」

「はい? なんでですか?」

アレックスに不意打ちのように言われて、ローザは目を見開いた。

するとさすがにアレックスも、戸惑ったような視線をローザに向けてきた。

「いや、その君に思いの人がいなければの話ではあるが……」

これは困った展開になってしまった。このまま思う人がいないと答えれば、ローザは窮地に陥ることになる。

「いえ、あのちょっと気なる方はいます」

「え?」

「ローザ何を言い出すんだ?」

アレックスも、父も驚いたような顔をしてローザを見る。

(そうなるわよね。さんざん執着してアレックス殿下を追いかけていたのだから)

「あの、殿下、何度も申し上げますが、責任を取っていただくような傷ではありませんのよ?」

ローザは何回目かの断り文句を口にした。

漫画ではローザが無理やり婚約決める運びだったが、現実世界は少し違うようだ。

王族にも世間体やクロイツァー家の手前もあるのだろう。

アレックスと出かけたことが原因で、顔に残るけがを負った侯爵令嬢を彼は立場上放ってはおけないのだ。

ローザはときおり見舞いに来るアレックスに、愛想笑いを浮かべならも、デートの誘いも舞踏会のエスコートもすべてその場で断ってきた。

ローザの反応に父母は驚きを隠せない様子で、アレックスは困惑した笑みを浮かべていた。

その後、家族そろってアレックスをお見送りした。

クロイツァー家の晩餐の席には燭台がともり、真っ白なクロスが敷かれたテーブルに色鮮やかな前菜が並ぶ。

今日は父も商談がないらしく、家族全員そろっている。

「ローザ、なぜ、殿下からデートの申し出を断ったんだい?」

「お父様、殿下は責任を取って私と結婚しようとしているのです。そんなの嫌です」

ローザの言葉に、母が驚いたような顔をする。

「どうして、あなたは殿下をお慕いしていたのではないの?」

「馬に蹴られたせいか忘れてしまいましたよ」

ローザがあっさりとして口調で言うと、兄が愉快そうに笑いだした。

「そうだな。もともと殿下はお前を気に入っていなかったようだしな」

「おい、フィルバートなんてことを言うんだ」

父が兄を叱る。

「いいんですよ、本当のことですから。お父様、私もそれとなく気づいていました。いやいや結婚していただくのは私も本意ではありませんし、それでは殿下も、私も幸せになれないと思うのです」

すると母が突然目頭を押さえる。

「お母様どうなさったの?」

ローザがびっくりして尋ねる。

「ローザ、あなたも大人になったわね。ついこの間までわがままばかり言っていたのに、いろいろと周り見えてきて、思いやりが育ってきたのね。いい娘になってよかったわ」

しみじみとかみしめるように言う。

そんな母を見て、ローザは恥ずかしくなってきた。

今日は調子に乗って、家の金でさんざん豪遊してしまったから、なんとなく決まりが悪い。

改めて、家族が没落の憂き目にあわないよう。アレックスとは婚約しないと、ローザは固く心に決めた。