軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【首級の簒奪者】③

「マイナススキル……なのか、これ」

「はい。珍しいですよね。わたしも、他に持ってる人を知らないです」

ココルが、たはは、と笑う。

「これのおかげで、わたしこんなにレベルが高くなっちゃったんですよ。その代わり、どこのパーティーにも入れてもらえないんですけどね」

俺は混乱する。

「待て、どういうことなんだそれは……。そのスキルには、いったいどんな効果があるんだ?」

「このスキルの効果は、すごく単純です。パーティーの他のメンバーがモンスターをキルした時……それを、わたしがキルしたものと見なすんです。必ず」

「パーティーメンバーが……?」

スキルの中には、【付与効果共有】や【博愛神の加護】のように、ステータス画面からパーティー登録した者全員にその効果をおよぼすものもある。

ココルの【首級の簒奪者】も、そういうスキルということだろうか。

だが、俺は首をかしげる。

「それ、何か意味があるのか? 特にマイナスでもない気がするが……。アイテムは普通にドロップするんだろ?」

「アイテムは、そうですけど……問題は、経験値のキルボーナスなんです」

「あっ……」

俺はようやく気づく。

モンスターを倒すと、レベルアップに必要な経験値が手に入る。

パーティー内の誰かが倒せば経験値は全員に入るのだが、キルした者だけは、他の者よりも多くの経験値が手に入るのだ。

いわゆるキルボーナスというやつで、その量はメンバーが得る経験値の約三倍。

同じパーティーでも戦闘職ほどレベルが上がりやすいのは、これが理由だ。

しかし……、

「パーティー内のキルボーナスを、あんたが独占してしまうスキルなのか」

「はい。あはは……ひどいスキルですよね。当たり前ですけど、わたしがいるとパーティーメンバーのレベルが上がりにくくなっちゃうんです。剣士でも魔導士でも、回復職と同じくらいに」

そりゃそうなってしまうだろう。

俺は恐る恐る訊ねる。

「じゃあ、あんたのそのレベルは……」

「ご想像の通りです。これまでに組んだパーティー全員分の経験値を奪って、ここまで上がっちゃったんですよ」

苦笑いを浮かべながら、ココルは言う。

「わたし、こんなスキルを持っていても神官なので、前はパーティーに入ってたこともあるんです。回復職は、いつだって募集しているパーティーがありますから。駆け出しの頃はもう、冒険のたびにどんどんレベルが上がりました。他のメンバーのレベルなんてあっという間に追い越すほどで。まあ、そうなるとだいたいすぐに追い出されちゃうんですが」

「……」

「そんなことを繰り返しているうちに、ボス戦などに助っ人として呼ばれるようになりました。レベルの高い回復職は希少なので……。ボスモンスターのキルボーナスって、すごいんですよね。普通はある程度のところからレベルって上がりにくくなると思うんですけど、わたしの場合そんなこともなく……気づいたら、こんな数値にまでなってました」

「……」

「ほんと、恥ずかしいです。がんばってたのは他の人たちなのに」

ココルはうつむき、後ろめたそうに言った。

俺はなんと声をかけたものか、迷いながら口を開く。

「そうだったのか……いや、だけどわかるよ。俺も今までパーティーメンバーには迷惑をかけてきたから。だけど……あんたなら、探せばきっと受け入れてくれるパーティーがあるんじゃないか? 高レベルの神官なんて滅多にいないし、スキルだってたくさん持ってる。レベリングしたければ、神官抜きでやることもできるんだしさ」

俺なんかよりは、ずっとマシな境遇だろう。

しかし、ココルは目を伏せながら力なく答える。

「あはは、ありがとうございます。でも……たぶん、ダメだと思います。そういう問題じゃないんです。がんばってモンスターを倒しても、経験値のほとんどを後ろで何もしていないわたしに持っていかれたら、きっと誰だって腹が立ちます。だから……たとえどこかのパーティーに入れてもらっても、今のままじゃまたすぐに追い出されちゃいますよ」

ココルの言葉に、俺は何も言えなくなってしまった。

マイナススキルが感情の問題というのも、言われてみればその通りかもしれない。

俺だって、ついさっき自分のアイテムドロップの少なさにうんざりしたばかりだ。

「それに……【首級の簒奪者】には、はっきりとしたデメリットもあるんです。このスキルがあると、キルした人が【経験値上昇】や【ドロップ率上昇】系のスキルを持っていても、判定されなくなっちゃうんです。普通だったらすごく役に立つスキルなのに、わたしのせいで……」

「……ん?」

慰めの言葉を考えていた俺は、そこで固まった。

【ドロップ率上昇】のスキルを持っていても、判定されなくなる?

それなら、ひょっとして……。

「わたし、実は……このダンジョンには、ボスを倒しに来たんです」

「……」

「アルヴィンさんは知ってましたか? このダンジョンのボスは、スキルを消すアイテムをドロップするという噂があるんです。わたし、それがどうしても欲しくて……。このマイナススキルさえ消せれば、わたしだって、普通の冒険者になれるはずなんです! 誰にも迷惑をかけない、パーティーから追い出されたりもしない、普通の冒険者に……」

「……」

「だから、その、不躾なお願いではあるんですが……アルヴィンさん。わたしと一緒に、ボスを倒してもらえませんか? 本当は一人でやるつもりだったんですが、さすがに神官のソロでは厳しい気がしてきて……。これでもレベルは【80】ですし、 冒険者(プレイヤー) スキルにも自信があります! アルヴィンさんもかなりの高レベルみたいですし、わたしたち二人でなら、きっとこんな小規模ダンジョンのボスくらい普通に倒せると思います! もちろん経験値を奪ってしまうことになるので、パーティーは組んでくれなくても大丈夫です。報酬も、わたしはそのアイテムさえあればいいので、残りはすべてアルヴィンさんに差し上げます。だから……」

「ココルさん!!」

「ひゃっ!? は、はい?」

俺は思わず、ココルの肩を掴んでいた。

正直、あまり話は耳に入っていなかった。

今までの流れを全無視し、俺は言う。

「俺とパーティーを組んでくれないか!?」