軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

助っ人は?

「五年か……短いわね……」

お父様と話した翌日。

仕事があるということで、お父様は直ぐに王都へ帰った。

そう、帰ったのはお父様だけで、お母様は残っている。

一緒に帰らなくていいのか聞いてみたら、帰ってもやることが無いらしい。

だからもうしばらくここに残るということだった。

きっと、お父様に残るよう言われたこともあるんだろうけど、私が心配とかではなく、カイトスとアルナイルと一緒にいたいという気持ちの方が強いのだろう。

今だって執務室に来ることなく、双子達のところに行っているくらいだ。

「そうですね。取り敢えず助っ人を呼んでくださるという事でしたが……一体誰が来るのか」

お父様が帰り際、領地経営に詳しい人をこちらに寄越すと言っていた。

一体誰が来るのか……何となく見当はついてるけど……。

「そうね……気にはなるけど、今は目の前のことに集中しましょう。まずは領地の状態を確認したいから領地視察に行くわ。できれば一ヶ月以内に全ての領地を回りたいのだけど……スフェレライト領の地図はあるかしら?」

双子をこのまま置いていく訳にはいかないし、少し長くなってもいいから安全な工程で進めるように組まなくてはならない。

スフェレライト領は公爵家が所有している領地ということもあり、かなり広大な土地を有している。

安全な工程で行くとなると、一ヶ月で回るにはかなり難しいだろう。

それでもタイムリミットは一ヶ月が限度だ。

この数年、誰も視察に赴いていないということは、どの辺が危険なのか。

領民たちが公爵家に対してどんな感情を抱いているのか……。

恨んでいる人だっているだろうし、下手したら見限って別の領地に行ってしまった人もいるだろう。

「どこが安全な地域なのか。地図だけじゃ分からないわね……」

山に囲まれている領地ということもあり、地図を見る限り交通便は良くなさそうだ。

エルダが用意してくれた地図を見ながら考えていると、執務室の外からお母様が声をかけてきた。

「ジェラルディーナ。入るわよ~」

お父様と約束してしまったことが、思っていた以上に大変だと悩みに悩んでいたというのに、お母様のゆるっとした話し方を聞いたら力が抜けた。

「全くぅ~ジェラルドの思った通りねぇ~。気持ちばかり焦っていて、いつもの貴女らしくないじゃない~。もう少し力抜きなさい」

確かに、お母様の言う通り気持ちばかり焦っているのはわかる。

だって五年しかないのだ。

本当にどうしたものか……。

「お母様の仰りたいことはわかります。でも時間が……」

考えれば考えるほど後ろ向きな言葉しか出ない私に、お母様が痺れを切らして扇子でパチンと軽く頭を叩いた。

「はぁ……本当に変なところばかりジェラルドに似てるんだから。うだうだ考えてたっていい事ないわ! やると決めたなら前に進みなさい」

「しかし……」

一人であればどこに行くにも自由だけど、今は双子がいる。

育てること自体は前世で慣れているし問題は無い。

けど、道が舗装されているのか、道中盗賊などはいないのか。

分からないことだらけの今、不安ばかりが募っていく。

「だってもクソもないわ! 何のために私がここに残っているのか考えなさい。そうね……一ヶ月。カイくんとアルくんの面倒は私が見ます。その間に視察に行ってきちゃいなさい」

手をハエでも払うかのようにシッシッと動かす素振りをするお母様。

いつの間にか、カイトスとアルナイルに渾名まで付けているし……。

今もブツブツ何か言っている。

「一ヶ月は短いわね……子供の成長は早いから、三ヶ月、半年? いえ……一年くらいここにいようかしら」

……。

「ここまできたら、五年間ここにいるのもありかもしれないわ……そしたら一番可愛い二人を見逃さないものね」

…………。

「そうね。王都からスフェレライト公爵家まで半日もかからないもの。何かあればジェラルドがこちらに来てくれればいいんだわ。どうせ、オディロンも帰ってこないみたいだし。いい考えだと思わない?」

真剣に考えているお母様を見て、少しばかりお父様が不憫に思えた。

お父様……お母様は、お父様よりカイトスとアルナイルと一緒にいたいようですよ。

娘の私を心配している……という感じもないようです。

別に構わないのだが……こういったサバサバした性格は、お母様を見習わないといけないとつくづく思う。

「そ、そ、そうですね。お父様が助っ人を呼んでくださるそうなので、その方が来たらエルダとパウルを連れて領地を回ってこようと思います」

若いながらも私に意見を言えるパウル。

まだ知らない事も多そうだけど、伸びしろも有りそうに感じる。

今後、カイトスやアルナイルの専属従者になってくれる可能性もあるだろう。

“成長しそうな人は早めに目をつけて育てていく”

フローライト伯爵家の家訓の一つでもあり、お父様に口酸っぱく言われ続けて来た事だ。

「それがいいわ! そうしなさい! カイくんとアルくんは私が面倒見ているから安心してくれていいわ。私の侍女も連れてきているしね」

元からここに長居する気満々だったのか、お母様が来た時は驚いたものだ。

すごい荷物に、侍女五人。

まるでどこかに旅行にでもいくのではないかと思ったくらいである。

「ありがとうございます。お母様。それでは早速準備に入ります。引き続きカイトスとアルナイルのことをよろしくお願いしますね」

私は双子を連れていかなくて良くなったこともあり、一番最短で回れる領地視察の日程を組むことにした。

それから数日後。

お父様が頼んでくれた助っ人が到着した。

「久しぶりだな! ジェラルディーナ」

「お久しぶりです。ラルフリードお兄様……お父様のことですから、ラルフリードお兄様かフレデリクお兄様が来てくれると思っていました」

ラルフリードお兄様に挨拶をすると、お兄様の後ろからお兄様の声とは違う別の人の声が聞こえてきた。

「やぁ。結婚式以来かな。久しぶりだね、ジェラルディーナ」

…………ん?

なぜ、この方がここにいるのか。

少し不思議に思いながらも、相手の方が格上な方なだけに急いで言葉を返す。

「お久しぶりです。エリオット殿下。お元気そうでなによりです」

お兄様の後ろには、この国の第二王子殿下であるエリオット・カルブンクルス様が、少し胡散臭い笑顔で立っていた。