軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

たけのこご飯。

山間の町に来て二日。

はじめは町の人たちも私たちのことを遠巻きにしか見ていなかったが、いつからか向こうから声をかけてくれるようになっていた。

二日かけて山の中に何が自生しているのか確認していくと、梅以外にも思わぬ収穫があった。

それはタケノコだ。

この辺りでは梅もタケノコも食べる習慣がないらしい。

梅は食べ方しだいで毒素があるから気をつけなきゃいけないのはわかるけど、タケノコを食べない理由は舌がピリピリするからということだった。

タケノコにはアクが多いから、生では食べれないと聞いたことがあったけど、この世界にはあく抜きという調理法が存在しないため食べることができなかったのだろう。

「サンリードさん! 色々見させてくださりありがとうございました!」

「これからのことを考えて、私から頼みがあるんですが……皆さんが食べない、青い実。これをおいしい食べ物にしませんか!?」

青い実は、下処理をきちんとすればおいしい梅干しにすることができる。

それ以外に梅酒を作ることも可能だ。

山間の町は農業をしているわけでもなく、山の中にある木や竹で商品を作って売っているらしい。

しかし、それにも限度があるようで収入が安定しているようには見えなかった。

「この実は食べれないと教えたはずだが……何にするというのだ!?」

少し不安そうな顔を向けるサンリードさん。

それもそのはずだ。

作り方を知らなければおいしい梅干しにはならないのだから……。

「ふふ。それはまた後日作り方を教えますわ!」

「もう少ししたら焼酎が出来上がる予定なのです。それがあれば、とーってもおいしい梅干しを作ることができます。」

「それだけじゃありません! 梅のはちみつ漬けや、梅酒だって作れるんですよ。」

「これは私の持論なのですが……“食材は作り手次第で毒にもおいしい食材にもなる”のです。」

「その証拠に今回はこのタケノコを使っておいしいご飯を作ります!」

竹林で見つけた大きなタケノコを持ってきた。

まずはタケノコのあく抜きからだ。

穂先の頭を斜めに切って、鍋の中に水と米ぬかを入れる。

フレデリクお兄様がスフェレライト領に遊びに来た時に、面白いものができたと持ってきたのが、まさかの米ぬかだったときは驚いたものだ。

「今入れた粉が、タケノコを茹でる時に大切な魔法の粉なんです。これから約一時間くらい煮ます。」

「なに!? そんなに茹でるのか!?」

恐らく料理をするうえで、そんなに時間をかけて造るということがないのだろう。

しかし料理をするうえで時間をかけるのはとても大事なことなのだ。

この下ごしらえがきちんとできているかどうかで……料理がおいしくなるかが決まるのだから……。

「いいですか! 何事も焦りは禁物です。」

「必ずおいしいものを作りますから……明日を楽しみにしていてください!」

今日すぐに食べられると思っていた町の人たちは、明日まで食べれないと聞いて期待半分不安半分というような顔をしていた。

「あ、あと、それとは別に、竹を使いたいのですが……竹を切ってもらうことはできますか?」

今回はたけのこご飯を作ろうと思っているのだが、ご飯を炊くのに竹筒を使ってご飯を炊いてみようと考えている。

これは絶対に美味しいに違いない!

町の人たちに竹を切ってもらって食べる準備をしていると、あっという間に一日が終わり、次の日を迎えていた。

***

この町に生まれ、この町で育ってきた我々にとって、領主というのはさほど重要ではない。

別に誰が領主になったところで、何かが大きく変わるわけではないからだ。

しかし、お嬢さんが領主になる前のトンベリー・マラカイト。

あいつだけは未だに許せないでいた。

ここで生活をしていく上で大変なのは、ここで作った物を他の町まで卸に行くということだった。

月に一度馬車を出し、他の町までいく。

それも獣道の荒れた道を馬車で走らなければならないからか、行きたがる人はほぼ居らず、仕方がないから順番で回すことにした。

せめて街道だけでも整備してもらおうと何度かトンベリー・マラカイトに頼みに行ったが門前払い。

もう街道整備は諦めた方がいいだろうと思った時。事件は起きた。

その日たまたま他の町へ行った若い衆が泣きながら帰ってきたのだ。

話を聞くと、一緒に行った若い女たちが全員領主に捕まったという話だった……。

何をした訳でもない。

ただ、腕を掴まれそうになって怖くなって振り払っただけのことらしい。

その後は物騒にも剣を持ち出し、歯向かうなら殺すぞと脅された若い衆は泣く泣く戻ってきたのだという。

それから、若い女たちを連れて外に出るのをやめたため、連れ去られることはなくなったが、未だに連れ去られた者は戻ってきていなかった。

そしてそれから月日は流れて、今目の前には若い女が領主として立っている。

名前はジェラルディーナ・アクアマリン・スフェレライト。

長すぎるからお嬢さんと呼ぶことにした。

お嬢さんは頭がいいのか、次から次へと新しいこと考えていく。

挨拶もそこそこに放った言葉は、

「まずはここまでの道のりを早急に整備します。」

だった。

あの時は皆ポカーンと口を開けていたほどだ。

あれだけ頼んでも変わらなかったことが、領主が変わるだけでこうも変わるのか。

それから今まで使い道のなかった青い実とタケノコを食べれるようにするというのだから、誰だって頭がついて行かないものだろう。

手始めに、タケノコを食べれるようにすると言って料理を始めた時は、「本当に貴族なのか?」と吃驚したものだ。

青い実は梅と言うらしく、タケノコと梅を食べれるようにするには下処理とやらをきちんとせねばならんらしい。

タケノコの下処理には時間がかかるという事で、翌日皆で食べることになった。

朝起きて外に出ると、既に沢山の人が集まっている。

その中央にはチャカチャカ動くお嬢さんの姿が……。

皆が挨拶をしてくるので一人一人に返しながら前に進むと、お嬢さんがこちらに気づいた。

「サンリードさーーん! おはようございます! たけのこご飯ができましたよぉぉぉ!!」

いつもよりさらにいい香りが漂っているのはタケノコだったようだ。

皆が昨日頑張って作ってくれた竹筒に、タケノコごはんが入っている。

ご飯と言うのを初めて見たが、匂いだけで食欲がそそられた。

「タケノコごはんとタケノコのお味噌汁、それとタケノコのお刺身ですね。お刺身はお醤油を少しつけて食べると美味しいですよ。」

そう言って黒い液体を少しかけてくれる。

黒い液体に少し抵抗があったが、匂いは悪くない。

「ふむ。折角お嬢さんが作ってくれたんだ。頂こう。」

皆に行き渡ったのを確認すると、ゆっくり口に入れた。

「……んまいな……これがあの舌がピリピリとするというタケノコなのか……。」

ずっと伝承で食べてはならぬものと伝わってきたから食べたことがなかったが……。

まさかこんなに美味しいものだったとは……。

「ふふ。美味しいでしょ?」

「料理って色々作り方があるんですよ。手間もかかるし、大変なのも多いけど、その分美味しくなるんです。」

「領地も同じだと思いません?」

「誰かが変えようと動かなければ変わらないですし。手間をかければかけるほど良い方向に進んでいくと私は思っているんです。」

「だから力を貸してください。サンリードさん。」

貴族のお嬢さんが領民に頭を下げるなんて。

いや……だから皆が着いていきたくなるのかもしれないな。

周りの皆にもお嬢さんの話が聞こえていたようだ。

「あぁ、こちらからもお願いするよ。良い領地にしていこう……。」

お嬢さんに一言そう告げると、残っていたタケノコ料理を食べた。

うん……。

タケノコ。うまいな。