作品タイトル不明
やる事がいっぱい。
領地の人たちと皆でご飯を食べてから数日。
あれからすぐに農業についてどうするかという話になった。
今回はフローライト領とスフェレライト領から、農業を行っている領民を数名派遣してもらい、元の状態に戻すのと同時に、多毛作法と養蜂をこの領地の領民たちに教えてもらうことからスタートした。
フレデリクお兄様は、そろそろ戻らないとならないということで、エルミーヌお義姉様と一緒に戻っていったが、また近いうちに子供を連れて遊びに来てくれるということだ。
上の子はカイトス、アルナイルと同じ年の女の子で、下の子はステラの一つ下の男の子で年も近いから、話も合うのではないかと期待している。
「さ、てとぉ……やることが山積みね……。」
まずはどれから手を付けていくべきかしら……。
やることがいっぱいな分やりがいはあるものの、不安な方が大きい。
一年で出来ることをまずは考えなければならない……。
これだけ寂れた土地だ。
復興するのは勿論の事、観光客が来るように栄えさせるというのも大切になってくる。
「そうね……この一年は復興に全て使いましょう。」
「農業が上手くいけば何とか税金がまかなえるとは思うし……観光地として使えるようになるのは次の年からでどうかしら?」
フィリベールに話を聞くと、同じことを思ってくれていたようで「いいと思います。」と頷いてくれた。
「まずはこの地に何があるのか視察しておきたいから、明日の朝いちで領地を周るわ。」
「子爵領だし、スフェレライト領の半分もない土地だから、一週間くらいあれば周りきれるでしょう。」
「それに、新しく領主になったと挨拶もしたいしね。まずは現状を確認してから動き出しましょう。」
そして、その翌日。
私はフィリベールと侍女のミナリーと一緒に、領地の視察に出かけた。
本当はエルダを連れて行こうと思っていたのだが、エルダも最近色々と振り回されているのと、年齢がお母様に近いこともあって、少し遠出するのが辛いと言うようになっていて、少しずつミナリーと専属侍女を交代できるよう動いていたらしい。
エルダ曰く、後任を育てるのも私の仕事だと言っていた。
今回の計画は、アクアマリン領の外側から視察し、途中から山間や内側にある町や村を見て回るという計画になっている。
スフェレライト領より北側にある地というだけあって、気候が低めだ。
低めと言っても、秋から冬にかけての気候という感じだろうか。
雪が降るほど寒くなるということはなさそうだし、私的には過ごしやすい気候に感じる。
「アクアマリン領には、海があるらしいですね。」
「今まではこの海から輸出や輸入、それに観光客が訪れて、とても活気があった町のようです。」
「本国で海に面している領地がアクアマリン領だけなため、“外国との扉”という風にも呼ばれているようですよ。」
「それも今では……廃れてしまっているようですが……。」
カルブンクルス国を見て思うが、他国とは大陸でつながっている部分が多く、海につながる面積が非常に少ない。
その唯一がアクアマリン領だったなんて、トンベリー・マラカイトがきちんと領地運営していれば、今頃活気のある領地になっていたのではないだろうか。
それにしても……海ね。
海と言えばどんな魚が取れるのかしら……。
昆布とかも取れたら最高ね。
そしたら出汁が取れるようになるし、さらにお味噌汁がおいしくなるわ……。
それに和食と言ったら焼き魚だもの……朝食に和食……いいわ……。
一人で海を想像しながらにやけていると……フィリベールが「ゴホン」と大きく咳払いを一回した。
どうやら違う世界に行ってしまっていたらしい。
「海ね! 海の町もどんな感じか見たいし、何が取れるのかきちんと把握しておきましょう。」
「それと、魚を取ったときに温泉街まで送れるような流通経路の確保ね……道が舗装されているかも確認して頂戴。」
魚は鮮度が命。
温泉街まで魚を届けられれば、今後料理の幅も広がってくるはずだ。
そのためにも流通経路の確保は必須である。
車とか作れれば最高にいいんだけど……だったら、路面電車にするのもありかもしれない。
温泉街って結構路面電車が走っているイメージあるし。
この辺は今後考えていくことになりそうね……。
「承知いたしました。その辺りも含め確認しておきましょう。」
「それと他に確認しておきたいことは……ございますか?」
「やっぱり、この地の特産となるものが欲しいわ。」
「そのためにも山の中に入って何が取れるか確認しましょう。」
「あとそれ以外にも、どういった野菜が育ちやすいか含めて確認する必要があるわね。」
「場合によっては酪農でおいしい銘柄の豚肉や牛肉を作ることもできるかもしれないし、全てを見て回りましょう!」
スフェレライト領では、どちらかというと農業がメインだった。
堆肥を作るのも結構大変だった記憶がある。
しかし、トンベリー・マラカイトが畑にこれだけの豚や牛の糞をばら撒いているのだから、アクアマリン領にはそれなりに大きい酪農農家があるのではないかと思っている。
「次は牛肉や豚肉にまで手を出すのですか!? それはそれは……また楽しみが増えますね。」
フィリベールの言葉に、ミナリーが頷いている。
まだまだお酒だってこれからだし、やらなければならないことがいっぱいある。
「それだけではないわ!」
「やりたいことを考えたら、きっと一年では足りないもの!」
「今年も二人には色々手伝ってもらわないといけないことがあると思うけど、ちゃんとついてきて頂戴ね!」
それだけ伝えると、二人は頷いて「わかりました」と返してくれた。
色々考えているうちに、あっという間に海のある町にたどり着いていた。