軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お酒が飲みたい……。

「何も無い日なんて久しぶりね。」

蜂蜜ができて数日。

数年ぶりに休みをもらった。

なんでも働きすぎだから休んでくれと、フィリベールにお願いされたのだ。

フィリベールだって働きすぎだと思うのだが、「趣味なので」と言われてしまった。

趣味が領地改革ってどういうこと!? って思ったけど、私も半分は自分が食べたいものとかやりたい事をやっているのだから、趣味に近いのかもしれない。

一日休みはあまりないので、久しぶりに子供たちと一緒に出かけようかと思っていたんだけど、子供たちは数日前からお母様と一緒に王都に行っていて、一人だったことをすっかり忘れていた。

「エリーとラルフお兄様も数日前から王都に行っているのよね。」

蜂蜜ができた日の夜、急に声をかけてきたかと思ったら、

「俺だってフィリベールみたいに仕事できるんだからな!!」

とだけ言って去っていったものだから、吃驚したものだ。

後でラルフお兄様がこっそり教えてくれたが、フィリベールにライバル心を燃やしているらしい。

フィリベールとエリーは立場が違うのだし、そこでライバル心を燃やす意味が全然分からなかったけど、きっと二人には見えない何かがあるんだろう。

「それにしても……今日は暇ね……こういう日はお酒が飲みたくなるわぁ。」

前世では金曜日の夜、子供が寝た後や仕事終わりに一人で晩酌するのが楽しみだった。

そのために美味しい地酒を探しては、こっそりバレないところに隠していたものだ。

「……そうだわ!! ずっと……何か足りないと思っていたのよ……お酒が足りなかったんだわ!!」

この世界にあるのはワインだけで、他にお酒の種類は無い。

麦はあるのにビールは無いし、地酒や焼酎、ウイスキーも勿論ない。

「ビールは麦があるし、焼酎はさつまいもがあるから何とかなりそうね。地酒はフローライト領とホワイトベリル領で生産できるように、フレデリクお兄様に頼んでみようかしら。やっぱり日本人と言えば……地酒だものね!!」

ビールに関しては、カラハナソウというホップになるものが必要だけど、カラハナソウはスフェレライト領で見かけていない。

やはり少し暖かい気候だからだろうか……。

もしかしたら、フローライト領のほうがここより涼しいからあるかもしれない。

図を書いて、フレデリクお兄様に探してみてもらおうと心に決める。

「芋焼酎作るには麹菌も必要だけど、このタイミングで塩麹とか作るのもありかもしれないわね。」

料理の幅も広がるし、少し固くて臭みのあるお肉も柔らかくして美味しく食べることができるようになる。

「んふふ……夢が広がるわ! お酒に合うおつまみも考えてー。月を見ながら晩酌……。これに温泉なんてあったらもう完璧よね。」

「それで、その夢の構想はどのくらいで実現できそうなんですか?」

一人でにやにやしながら妄想に耽っていると、後ろから急に声をかけられた。

「フィ、フィ、フィリベール!? いつからそこに……あっ、もしかして……今の話……」

「『ビールは麦があるし、焼酎はさつまいもがあるから何とかなりそうね。地酒は……』という辺りからでしょうか。」

「もう、それは全部聞いていたってことじゃない! 声をかけてくれればいいのに!!」

どうやら全部聞かれていたらしく、顔に熱が集まってくる。

独り言を話しているのを聞かれるのって、すごく恥ずかしい。

「すみません。途中で声をかけようと思ったんですが、なんだかとても楽しそうだったのと、とても興味がある話をされていたので。ついつい聞き入ってしまいました。それで……? 次は何をしようと思っているのですか?」

話を聞いていたとしても、きっと何をしようとしているのかまでは分かっていなかったのだろう。

この世界ではお酒とは言わず、ワインとしか言わないから……知らない単語が出てきたと思ったくらいなはずだ。

「ふふふ。ワイン以外にも大人が飲めるものを作ろうと思っているのよ! その名もお酒よ!!」

ワインという言葉と“大人が飲めるもの”という言葉で何となく分かってくれたらしい。

「おさけ? ですか……。それはそれは……できたらまた人気が出そうですね。」

そこから私が考えていることを伝えていく。

「お酒の種類は全部で三つよ。一つ目はビールで、二つ目はさつまいもを使った焼酎ね。そして三つ目はお米を使ったお酒よ! 最後のは地酒と呼びましょうか。この三つをこれから一年かけて作っていくわ!!」

話しながら今考えている構想を細かくフィリベールへ伝えると、フィリベールは忘れないように全てメモを取っていく。

本当に出来た秘書だ。

きっとエリオットはフィリベールが居なくなったことで、今頃大変な思いをしているのだろう。

まぁ、今更返して欲しいと言われても返す気は毛頭ないけれど……こんな優秀な秘書を誰が返すものか……!

「分かりました。それで……そろそろ私にだけ教えてくれませんか? よく独り言で言っている“前世”というのが何なのか。」

***

ジェラルディーナの側近として働くようになって半年。

その前から、どうしてそんなに新しいアイデアが浮かぶのか気になっていたのだが、近くにいるようになってから、よく“前世”という言葉を聞く。

“前世”について聞いてもいいものか、ずっと悩んでいた。

だが、側近として働くようになって、私だけでもジェラルディーナの“前世”というのを知っておいた方がいいのではないかと思った。

そうすることで、何かあった時、ジェラルディーナの手助けができるのではないかと思ったのだ。

今でさえ、“前世”という言葉がよく出てくるし、知らない間にボロが出そうだというのもある。

「な、な、なんのことかしら……?」

少し目を泳がせているジェラルディーナを見て、何かを隠していることはすぐ分かる。

しかし今日は、私とジェラルディーナ以外出払っているし、今日しか聞くことが出来ないのだ。

今日聞けなければ、次いつ話せるか分からない。

そう思った私は、追い詰めるように話した。

「とぼけても無駄ですよ。何回も“前世”という言葉を口にしているのです。貴方の側近として、これから働き続けるためにも、私にだけ教えていただけませんか? 勿論、死ぬまで他言しないことは誓います。貴女に何かあった時、味方でいたいと思っているのです。どうかお願いします。」

そう言って頭を下げると……。

大きなため息をついてから、話し始めた。