軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

南の地。

「お母様、また任せてしまってすみません。子供たちの事、お願いいたします。」

「いいわよ! それにあなたは貴方でやらなきゃいけないことがあるんだもの。この子たちのためにきちんと仕事してきなさい。」

私たちがスフェレライト領に着いた翌日。

お母様とお父様が、カイトスとアルナイルを連れてきてくれた。

カイトスもアルナイルも、一歳違いのステラを見て不思議そうにしていたが、何となく自分たちの妹だと分かったのか、頭を撫でたり手を握ったりしていたのがとてもかわいかった。

それとは逆に、お父様やお母様は険しい顔をしていたけど……。

お父様は一日経つと名残惜しそうに帰っていったけど、お母様は案の定スフェレライト邸に残っている。

今回はエルダをスフェレライト邸に置いて行くことにした。

最近ずっと働き詰めだったし、お母様一人に三人を任せるのは忍びないと感じたからだ。

お母様は大丈夫と言っていたけど、一歳の双子に、生まれたばかりの赤ちゃん……一人では限界があるだろう。

エルダの代わりに、若い侍女のミナリーと、エリオット殿下、フィリベール、ラルフお兄様が一緒に行ってくれることになっている。

「ありがとうございます! それでは行ってまいります。」

お母様たちに挨拶をすると、カイトスとアルナイルがこちらに向かってヨタヨタと歩いてくる。

「「まぁまー! ぎゅぅ~」」

二人に目線を合わせてしゃがむと、カイトスとアルナイルが両側からぎゅっと抱きしめてくれる。

「「がーばー! いーてーて!」」

きっと「頑張って! 行ってらっしゃい」と言ってくれているのだろう……。

こうやって少しずつ話せるようになったり、歩けるようになっていく姿を見ていくのはとてもかわいい。

この言葉だけで数倍頑張れそうだ。

「ありがとう。カイトス、アルナイル。お祖母様の言うことよぉーく聞いて。いい子に待っていてね。すぐ帰ってくるから。」

抱きしめ返すと、二人が頬ずりしてくる。

このまま二人を連れていきたい……なんて思っていると、後ろからエリーが二人を呼ぶ声が聞こえる。

二人にも自分たちを呼ぶ声が聞こえたようで、エリーの方を向いてヨタヨタと歩いていく。

「カイ、アル。パパにもぎゅぅ~してくれ!」

「「ぱーぱーぎゅぅー!!」」

この間まで“ぱー”しか言えていなかったのに、いつの間にか“ぱぱ”と言えるようになったようだ。

エリーもそんな二人の声を聞いて、抱きしめ返していた。

パパと呼んでもらえたことが、とても嬉しかったようだ。

「それでは行ってきます。」

長めのお別れを済ませた後、私たちはスフェレライトの南の地へ向かった。

スフェレライト領は中央に大きな山がある。

その山の右側と左側で、気候が大きく変わっているのだ。

私たちのいる邸は北側に位置している。

理由は王都に近いからだ。

「南の地へ行くには結構距離があるのよね……王都に行く方が近いんだから、同じ領地内なのに吃驚してしまうわ。」

南の地へ行くには山を越えないといけないから、迂回しなければならない。

だから王都に行くよりも距離があるのだ。

山にトンネルでもあれば別なんだけど……。

…………

「そうだわ! 山に穴をあけましょう。トンネルを掘るのよ。そしたら迂回しなくて済むし、時間も半減できる。今まで南の地から収穫したものを運ぶのにも時間がかかっていたし、物によっては腐ってしまっていたりしたのよ。トンネルさえあれば、腐る前に運ぶことも可能になると思うわ!」

私の言葉を聞いてから、ラルフお兄様やフィリベール様が呆然としていたので、二人の前で手を振る。

「おーい! 聞こえていますかーー? ラルフお兄様? フィリベール様? 大丈夫? 私……何か変なこと言った?」

時間にして五秒くらいの間だったけど、二人そろって同じポーズで止まっていたから、妙に長い時間止まっていたように感じる。

「あ、あぁ! すまない。お前の話を聞いて、吃驚していたんだ。そんな考え、今まで思いもしなかったと。」

「私も同じくです。ですが、スフェレライト領の南の地以外でも、山に囲まれていたり、挟まれていたりするところがあるので、もしそのトンネルとやらが上手く掘れれば、他の地域でも試すことができるだろう。それに、トンネルを掘るとなると……」

そこまで深く考えずに発言したのだが、フィリベール様は何かに取りつかれたように、ブツブツとずっと独り言を言っていた。

「あぁ、フィルがこうなるのは初めて見たか? 集中したり考え事したりすると、こうなるんだ。だから気にしなくていい。」

フィリベール様がこんなに話す姿を初めて見たのもあり、吃驚していると、エリーがいつもこうだということを教えてくれた。

「そうですか……ならいいんですが。取りあえずトンネルについては考えてみます。トンネルを掘るとなると、それなりの人数も必要ですしね。仕事がない人へこの仕事を勧められる制度でも作れれば、うまく回る気がしますが、何をするのでも予算は必要ですので。」

誰だって無償で働いてくれるなんて優しい人はいないのだ。

それに、南の地に住む人たちがあまり仕事できていない状態ということであれば、猶更である。

「そうだな。その前に南の地がどういった所なのか、どういったものが収穫できるのか、考えなくてはならないだろう。まずはそちらから話し始めようじゃないか……」

エリーの言葉に皆頷き、そのまま馬車を走らせること五日。

スフェレライト領で一番南にある村へ着いた。

「こ、ここが……最南端の町……?」

地図を見るとここに町があると書いてあるが、見たところ畑はあるものの育ちは良くない。

それに、住んでいる家も掘っ立て小屋のような、大きな竜巻や台風がきたらすぐ壊れそうな家ばかりだ。

「南の地は日照り続きなこともあって、なかなか作物が育たず、生きていくのがやっとなんだ。稼ぎがギリギリということもあって、若い者達は出稼ぎに出ている状態だ。」

エリーの話では、南の地はスフェレライト領以外でも似たようなものなのだろう。

町を歩いている人たちもやせ細っていて、生きていくのでやっと……と言ったような感じだ。

それに、子供や老人たちが多い。

正直、別の地域にでも移った方がいいんじゃないかと思うけど、そんな簡単なものでは無いのだろう。

「そうですか。以前来た時は税金の納付が行われているかしか考えておらず……細かい所まで見られておりませんでした。北と南でここまで差があったとは。勉強不足でした……。」

自分が食べたいという理由で味噌や醤油を作っていたが、そんな場合じゃなかった……。

しかし、以前のことを悔いても仕方ないだろう。

くよくよしている時間は無いし、前に進むしかないんだから……。

自分の頬をパチンと叩くと、思った以上に音が響いた。

三人が私の方を吃驚した顔で見ている。

「よし! 反省する時間は終わりました。南の領地をじっくり回りましょう。突破口が開けるかもしれません!!」

こうして私たちは、村長や町長に街の状態を聞きながらゆっくり回った。

そして回りきった頃には、邸を出て一ヶ月という月日が過ぎていた。