軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ベビーカー。

国王陛下から試練を与えられてから早数日。

少しの休暇を満喫するために、実家でゆっくりしていた。

王都には私が最近出店を始めたばかりのお店もあるので、視察と称して街中に出たりしている。

仕事で忙しく、全然カイトスやアルナイルとお出かけもできていなかったから、ちょっとゆっくりした時間が取れたのはよかった。

出店して半年のサンドイッチとおにぎりのお店は人気が強く、出店を始めてから一度も経営が悪化することはない。

他のお店も真似しようと必死のようだが、パンの柔らかさも、お米の炊き方も見様見真似なため、本家の味には追いつけないようだ。

「シュエット商会は今のところ順調のようで良かったわ。あとは、アルカイオス商会ね。アルカイオス商会については明日視察しようかしら。カイも、アルもはしゃぎ疲れて眠ってしまったしね」

アルカイオス商会は、ベビー用品や知育道具、玩具、マタニティ系の洋服や、家族でお揃い服など、飲食とは違うものを商品化し販売している商会だ。

名前は勿論、カイトスとアルナイルから取ってつけた名前だ。

血の繋がらない子供たちだけど、何かの形にして残しておきたいと思っていたので、すぐに決まった。

シュエット商会は金運の意味を込めて、フクロウの名前から取ってみた。

看板も可愛らしいフクロウの絵になっており、お気に入りだったりする。

「そうですね。本当に子供の体力は恐ろしいです。先程まではしゃいでいたと思ったら、パタッと力尽きたかのように寝てしまうのですから」

カイトスとアルナイルをベビーカーに乗せて、ゆっくり馬車へと向かって歩く。

「でも、ベビーカーがあるお陰でお出かけしやすくなったでしょ? 少し値段ははるけど、貴族に人気は出ると思うのよ。今後は子供連れでも入りやすい飲食店を作ってみようかと思っているのよね」

ベビーカーを押していると、色々な人がこちらを見てくる。

試作品ということもあり、まだ商品としては並んでいないのだが、押して歩くだけで宣伝効果は十分だったようだ。

意外にチラチラ見ているのは貴族だけでなく、平民の人達も気になっているみたいでチラチラ見てくる。

今の時代、早くに結婚することもあって、一家庭あたり子供は五人くらいいることが当たり前になっている。

昔の日本に似ているだろうか。

私も前世では子供を五人育てているし、孫も合わせると十人以上育ててきている。

子供を育てていていつも思うけど、出かける時が一番大変なのだ。

あっち行ったり、こっち行ったりしてしまうし、かといってお留守番できる年でもないし……抱っこやおんぶ出来る人数も限られている。

そうなったときにベビーカーがあれば重宝されるのは間違いないはずだ。

私だってベビーカーができてから「こんなに画期的なものがあったなんて!」と嬉しくなったくらいなのだから。

「折り畳み式じゃなければ、もう少しコストを抑えられるかもしれないわね。そしたら、平民の皆さんも買いやすい値段で作れるかもしれないわ! どう思う?」

「いいかもしれませんが、考えて歩くのも程々にしてくださいませ。周りの迷惑になりますから。ここから先はお邸に帰ってからお願いいたします」

思った以上に大きな声が出ていたようで、周りの人達は不思議そうな顔でこちらを見ている。

エルダに言われるまで全く気づかないなんて、相当集中してしまっていたようだ。

私は今考えたことを忘れないようにと、急いで邸に戻った。

そして、邸に戻ってすぐ……。

一人の侍女がパタパタと急ぎ足でこちらに向かって歩いてくる。

「ジェラルディーナお嬢様! お待ちしておりました。至急こちらを渡してほしいとのことで……スフェレライト領から手紙が届いております!」

スフェレライト領から手紙!?

しかも至急渡してほしいなんて、何かあったということだろうか。

今はパウルをはじめとした従者や侍女しか残っていないはずだし……。

何かあれば手紙を送ってほしいと言っていたけど、そんなに急ぎの仕事も残ってはいなかったはずなのだが……。

侍女から手紙を受け取ると、カイトスとアルナイルはエルダに任せて、自室へと向かった。

***

フレイチェ視点。

「ディオナ、久しぶりね。元気そうでよかったわ」

「フレイチェも元気そうで何よりだわ! ずっと王都に帰ってこないんだもの。お茶友達がいなくて寂しかったんだから……」

ジェラルディーナが急遽国王陛下に呼ばれたということで、カイトスとアルナイルを連れて皆で王都に帰ってくることになったけど、よくよく考えれば一年以上王都から離れていたのは久しぶりかもしれない。

カイトスとアルナイルのことを初めに聞いたときは、「何故、ジェラルディーナが育てなければいけないのか」と憤慨したものだが、二人の顔を見た瞬間にそんな気持ちも消え去ってしまった。

寧ろ、オディロンとその愛人に苛立ちが募るばかりだ。

「私の甥が色々迷惑をかけてしまってごめんなさいね。まさかこんな男だったなんて……今頃ディオナも天国で怒っていると思うわ……」

ディオナ・スフェレライト。

ディアナの双子の妹で、前スフェレライト公爵の妻だった女性だ。

不思議な縁なのか、前スフェレライト公爵は現国王陛下、クリストフ・カルブンクルス国王の弟だったりする。

そのこともあって、二人はスフェレライト夫妻が亡くなった後、オディロンの身を案じていた。

「「ばー」」

しんみりした雰囲気を吹き飛ばすように、カイトスとアルナイルが私のことを呼ぶ。

子供がいるだけで場の雰囲気が変わるのだから、小さな魔法使いさんたちには感謝しなくてはいけない。

「はぁーい。おばあちゃまでしゅよ~!」

二人に向けて笑顔で返すと、ディオナがそれをみて「ふふっ」と笑った。

「確かに、色々あったわ。でもジェラルディーナも前を向いて頑張っているし、あの子には強い味方のエリオット殿下がいるから。きっと大丈夫よ。オディロンについてはこれからどうなるかわからないけど……子供を捨てた時点で助ける価値もないと思っているわ……。もう少しだけあの二人を見守りましょう」

エリオット殿下が昔からディーナのことを好きだったのは知っている。

王族という立場だからこそ、ディーナと一緒にいるのを諦めたような人だ。

今はディーナと一緒になれる道ができて、色々動き回っていることだろう。

「そうね……ジェラルディーナが王族に入ってくれてもよかったのだけど、自由にさせてあげたいという思いが強かったから。エリオットがこれからどう頑張るのか、私も楽しみにしていようと思うわ!」

こちらに手を振ってくるカイトスとアルナイルに癒されながら、二人でゆっくりとした時間を過ごしたのだった。