作品タイトル不明
登城。
実家に帰ってきて翌日。
私はカイトスとアルナイル、それにお母様と一緒に王城へと向かっていた。
「お母様は家にいてくださってよかったんですよ」
私はカイトスを抱き、アルナイルはお母様が抱っこしながら馬車が王城に着くのを待つ。
二人とも王都に来るのが初めてだから、窓から外を覗いて道行く光景を楽しそうに眺めていた。
「いいのいいの。私はディオナから久しぶりにお茶をしましょうと誘われて着いてきただけだから。カイくんとアルくんも一緒に連れて行くから安心しなさい」
ディオナ様はエリオット殿下の母親であり、カルブンクルス国の王妃だ。
ディオナ様とお母様は、お互い結婚する前からの知人同士だったらしい。
仲良くなったのは子供が生まれてからで、エリオット殿下が病弱だったことをお母様に何度か相談しているうちに、自然と距離が縮まったと聞いたことがあった。
「そうですか……。では二人をよろしくお願いいたします。二人とも母の私より、お祖母様っ子になってしまって。お母様が毎日家にいてくださる間はいいですが、お母様が実家に帰ってしまった後が大変そうですね」
「ふふ。それは仕方ないわ。貴方たちだって、親の私やジェラルドよりも、お祖母様やお祖父様が大好きだったじゃない」
昔のことだからあまり覚えていないけど、お祖母様やお祖父様が隠居してからは、いつも一緒に領地に引きこもっていた記憶がある。
きっと子供ながらに、お母様やお父様が忙しいということをわかっていたのだろう。
それに、私的には都会よりも田舎の暮らしの方が合っていたのだ。
今だって、できれば領地から出たくないほどである。
「そうでしたね。それでは私はここで降りて国王陛下に謁見してまいります」
私は王宮の正門で馬車から降りる。
カイトスとアルナイルは笑顔で手を振ってくれた。
「「まんま~! ばー」」
まだバイバイとは言えないようで、バーしか言っていなかったけど、その姿がとてもかわいい。
ちょっとだけ……「一緒に行きたい~」と泣いてくれるかなと思っていたけど、それよりも真新しいところに来たことに夢中のようだ。
私は二人に手を振り返すと馬車の扉を閉めて、王城の中へと入った。
王城の中に入ると、ラルフお兄様と、エリー、それにフィリベール様が立っている。
それにしても、あの三人が立っていると、一人だけ場違いのところに来たようだ。
三人ともイケメンだから目の保養にはなるけど、できれば近くに居たくない……。
私は三人が待っているところに早歩きで向かった。
「お待たせして申し訳ございません」
「いや、そこまで待っていないから大丈夫だ。国王陛下が謁見の間で待っている。来て早々悪いが、そのまま謁見の間に向かって構わないか?」
ラルフお兄様の言葉に頷き、三人の後を追う。
こうやって見ると、三人とも足が長い……。
私との身長差も二十㎝くらいあるから、三人の一歩が私にとって三歩くらいにあたる。
お陰で着いていくのがやっとだ。
謁見の間の扉の前に着くと、三人は先に中へ入っていった。
謁見の間に入るとき、召集された場合は名前を呼ばれるまで中に入っては行けないという決まりがあるのだ。
今回召集されたのは私一人で、ラルフお兄様とフィリベール様はエリオット第二王子殿下の側近として来ているのだろう。
お兄様達が中に入り暫くすると、中から宰相の声が聞こえてくる。
「ジェラルディーナ・スフェレライト。中へお入り下さい」
「はい、失礼いたします」
名前を呼ばれて返事をすると、扉が開いた。
扉が開いてすぐ、カーテシーをする。
それから前を向き、ゆっくり進んでいったら、国王の前で口上を述べた。
「ジェラルディーナ・スフェレライト。本日、クリストフ・カルブンクルス国王陛下の命に従い、馳せ参じましてございます」
片膝をつき、胸の前で手を交差して頭を下げる。
「よい。面をあげよ」
国王陛下の言葉に、ゆっくりと頭を上げて前を向いた。
「久しいの。ジェラルディーナよ。また、一段と美しくなったのではないか。これなら、エリオットが帰ってこないのも頷けるな。ハハハ……」
「国王陛下! 私は別にジェラルディーナと一緒にいたいから帰ってこなかった訳ではございません!!」
国王陛下の言葉にいち早く反応したのはエリーだ。
確かに同じ家にはいたけど、エリーはエリーで仕事をしていたし、どちらかと言うとカイトスとアルナイルと一緒にいたくて残っているって感じだった。
「そうですわ! 国王陛下。エリオット殿下は私の子供に興味があって残っていたのです。いつも必死にパ……「あ、あああー。ゴホン。それよりも本題に入らなくていいのですか?」」
必死にパパと呼ばせようと頑張っていたと伝えようとしたら、私の言葉に被せてエリーが話し出した。
「ハハハ。そうだな。ここはエリオットの言う通り、本題に入ろうか……」
先程までのおちゃらけた雰囲気は無くなり、空気が張り詰めたように感じるほど冷たい顔でこちらを見る国王陛下。
自分の心臓の音が聞こえるのでは無いかと思うくらい、ドキドキしていた。