軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7.後釜の狂戦士

「……スレイの後釜は、ガンテツという『アタッカー』だ。……有名人だけど知っているかな?」

言い辛そうにしながら話すヘンリーの出した名前に、スレイは驚くように目を見開いた。

もし知っているガンテツの事なら、とてもではないがパーティーの雰囲気に合わない人物だったからである。

「知ってるもなにも、そんな特徴的な名前は一人しかいないだろ。……あの 狂戦士(バーサーカー) って呼ばれてる、Sランク『アタッカー』のガンテツか?」

「そのガンテツであってるよ。……スレイはどう思う?」

「そりゃ、強さだけで言えば確かなものなんだろうが……あの手の輩に一体どういうツテがあったんだ」

まさかの名前に、驚きを全く隠そうとしないスレイ。

ヘンリーは後釜に対して、良くない思いがあるのか大きく溜息をついた。

「なんでも、ブリジットの先輩盗賊の知人らしくてね。飲みでたまたま同席してて、ブリジットがスレイをディスりつつ冗談めいてスカウトしたら、真に受けちゃってトントンと話が進み、今回の追放劇につながったみたいな感じらしくて」

「……あのクソアマ、俺を酒の肴にしてんじゃねえよ!」

スレイは拳を握り締めたが、辛うじてのところで、壁ドンするのを堪えた。

「ったく……それにしても、ガンテツって滅茶苦茶ガラが悪くて、おっかないバケモノみたいな風体してただろ。……大丈夫なのか?」

その質問はヘンリーに対して悪かったかもしれない。実際顔を合わせた上で一緒に依頼をこなさない限りわかるはずもないからである。

「……大丈夫かどうかは僕が聞きたいくらいだよ。大丈夫であってくれという思いで一杯さ。……少なくともスレイほど気配りが出来るタイプでは無さそうだね」

ヘンリーは先程からしきりにずれてもいない片眼鏡を指で調整している。不安で一杯なのが良くわかった。

スレイはガンテツの姿を思い浮かべた。直接会話をした事はなく、何度か冒険者ギルドや酒場で顔を合わせた程度の関係であるが、レイモンドに近いくらいの巨躯で、スキンヘッドで目の近くにどデカい傷が縦に入っていた気がする。顔の彫りは深く、目はギョロっとしていて、さながらやくざ者みたいな様相だった。実際そうなのかもしれない。

人は見かけによらないという言葉がある。ただ、スレイをディスりながらブリジットとお酒で盛り上がっていたと考えると、どの道ろくでもない気がしてならなかった。

「……しかしあの馬鹿女、本当にロクな事しねえな」

「全くだよ。……ガンテツがフリーだった理由なんだけど、以前パーティーでトラブルを起こしたって噂があってね。詳しい事までは分からないけど」

どうやらというかやっぱりというか、ガンテツはあまり良くない噂があるらしい。

トラブルメーカーという意味ではブリジットもそういった側面がなくもないが、喧嘩はからっきし弱いブリジットに比べ、パワーに優れるガンテツのそれは洒落にならない可能性があった。

(……まあ、Sランク『アタッカー』がフリーだったって事は。何らかの事情がある可能性が高いよな。売れっ子ながらあえてフリーって奴もいるが)

彼ほどの有名な『アタッカー』ならば、純粋な戦闘力だけで考えれば、引く手あまたのはずである。

もし、そうではないという事は、いわく付きの物件と推測してしまうのは当然の流れだった。

そして、ヘンリーの語った事が本当なら、やはり追放劇の発端としてブリジットが元凶と言えるのかもしれない。

ブリジットによるガンテツのスカウト加入が先にあり、その後、ローランドとレイモンド二人のエリアをきっかけとしたスレイ追放への想いが爆発した感じだろうか。この辺りは想像でしかないので、違う可能性もあるが、ガンテツを引っ張ってきたのはブリジットで間違いなさそうだった。

(……心配になってきたな。あまり聞かない方が良かったか。ただ後釜が決まってるとなると、俺が戻るのは難しいって事ではある)

スレイを追放を決定した三名には正直もう思い入れはない。

ただ、目の前にいるヘンリーと、追放の理由に使われた感じのあるエリアについては、どうか無事であって欲しいと願うばかりである。

「……エリアの事を頼むぞ。ヘンリー、お前だけが頼りだ」

「自分を守る事で精いっぱいかもしれない。頼まれたいのは山々だけど。……一応、ゴーレムとか壁役になる魔術を模索してみるよ」

スレイの頼みごとに対し、ヘンリーの歯切れは悪かった。

言った通り、自分の事で精いっぱいというのは本音だろう。

「まあ、一応、ローランドやレイモンドも実力でいえばSランクの前衛なんだ。ガンテツにいいようにはさせないだろ」

「僕としてもその辺りを期待しているね。いいようにされるような事があれば、いよいよ『 爆ぜる疾風(ブラストウィンド) 』も終わりだ。別に看板にこだわりがある訳ではないけど」

ヘンリーは言い終えると、眠りについた 大灰色狼(ダイアウルフ) のロイドの身体を撫でた。

彼もロイドには何度も守って貰ったり身体に乗せて貰ったりと、それなりの情が湧いていると言っていた。

「……それじゃあスレイ。君の錬金術師としての道が明るい事を願っている。故郷で開業するのかい?」

「かなり先の話になるが、最終的にはそのつもりだ。ヘンリー……死ぬなよ」

ヘンリーが去り、部屋はスレイとロイドだけになった。

何となく聞いてしまった後釜の話は、スレイにとって微妙な印象を残していくことになった。

──結果的に悪い予感は的中してしまう事になる。

スレイの悪い想像通り、ガンテツという後釜の狂戦士は、『 爆ぜる疾風(ブラストウィンド) 』にとって、とんでもないトラブルを巻き起こしていくのである。