軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63.エーテル採取

コニーを送り届けたスレイたちは再び 魔素(エーテル) の源泉の下へ向かった。

急斜面は先ほどと同じくクラリッサの召喚するシルフに頼って下っていく。

これで三度目の召喚である。何度も呼び出されているシルフも流石にうんざりしているかもしれない。

『 小妖精(ピクシー) の隠し部屋』

魔素(エーテル) の源泉に到着すると、クラリッサはコマンドワードを唱え 亜空間部屋(サブスペースルーム) を開くと、収納されているポーション瓶を次々と取り出していく。

スレイ、エリア、ヘンリーの三人が空き瓶を受け取り、 魔素(エーテル) の採取を行う。

ロイドは一人身を屈めて身体を休めつつ、見張り番をしていた。天を仰ぐような大きなあくびを見せる。

「……これで一二〇本分です。はあ……流石に疲れました。腕とか!」

クラリッサが最後の一瓶を渡し終え、息をつくと大きく背伸びをした。

疲れるのは無理もない。肉体的にもそうだし 亜空間部屋(サブスペースルーム) を繋ぎっぱなしにしている事の消耗もある。加えて先ほどの三度のシルフの召喚。また斜面の昇りでシルフに四度目の世話になりそうだった。

「……ここまで来るのも簡単じゃなかったしな。自力で素材を仕入れるっていうのは、それだけ大変って事か」

「私は好きですけどね。……スレイさん、冒険者の頃を思い出しませんか」

「そう言って貰えると気が楽になるよ。……また何かあれば、エリアに手伝って貰っていいかな」

「はい。私も冒険で得た能力をさび付かせるのは勿体ないと思っているので。……それにスレイさんと一緒だと楽しいですから」

スレイの提案にエリアは快く承諾してくれた。

ほっとした表情で泉に目をやると、集積していた 魔素(エーテル) の輝きは薄まり、ほぼ枯渇した状態になっているのがわかった。

錬金術協会の地図を見る限りでは、おそらく今まで手付かずだったスポットであり、時間を置けば 魔素(エーテル) が異世界の歪みから漏れ出て溢れるのは早いはずである。

「ヘンリー、どの辺りかわかるか?」

「俯瞰してみた感じだと、ここかな。……ほら、太陽の落ちる西が向こうで、あっちが山頂だから」

スレイが錬金術協会から借りている地図を広げると、ヘンリーが指さして丸で囲った。やはり赤い印も青い印もない未踏地帯である。

「別の道と繋がっていそうだが……今はとりあえずいいか。クラリッサさんの依頼分は収集が終わったし、山頂に戻ったらすぐ下山しよう。日が落ちる頃にはアトリエまで戻れそうだな」

「スレイ、山頂にあるっていう縁結びの祠は? エリアと寄っていかないのか」

「……それは、また後日機会があれば。……仲を取り持つって、お前の事だから物理的な協力かと思ったんだがなあ」

スレイとヘンリーの小声での会話をエリアが不思議そうに見ていた。

「スレイさん、また 魔素(エーテル) を採取しに来ませんか? わたしを護衛として雇っていただけると嬉しいですね。 風精霊(シルフ) に頼れば簡単にここまで来れますよ」

クラリッサは少しテンションが上がっている様子だった。目の前のお宝スポットに興奮しているといった処だろう。

今は枯渇しかけているが、もう数日すれば同じ量の 魔素(エーテル) の採取が可能かもしれない。また同じ量の 魔素(エーテル) を収集出来る見込みがある。

「すまないが俺としては錬金術協会にこのスポットを教えて、マジックポーション作製は一旦終わりにしたい。……どうも、この分野は厄介な利権が絡んでそうでな。……とりあえず今の処はクラリッサさんの一件だけで」

「厄介な利権……それは、もしかして近頃の高騰に関係ありますか?」

「ああ。でかい声では言えないが、それを主導してる上級錬金術師が居るっぽくてな。……まあ、手を出すにしても正しく状況を把握してからにしたい。自分一人だけの問題じゃないからな」

スレイが伝えると、クラリッサが頭をがっくりと落とし落胆していた。

彼女がタチの悪い教授と揉めて特待生を打ち切られたとヘンリーに聞いた。お金が必要なのだろう。

「その代わり、別の素材を拾いに行く機会があればクラリッサさんを護衛に雇うよ。 召喚士(サモナー) とは初めて組んだがなかなかのものだな。急斜面の昇り降りがこんなに楽とは思わなかった」

「……本当ですか?」

「嘘は言わないさ。もちろん金貨二〇枚の護衛依頼で赤字にならない仕事に限るけどな。だから、一人でここまでこっそり採取に来ようなんて思うなよ。危険だからな」

スレイはクラリッサに次の依頼を約束をしつつ、釘を刺した。

彼女からはどうも危なっかしさを感じる。おそらく冒険者としての経験のなさだろう。

「スレイさーん、ありがとうございます!」

クラリッサが一転して明るい表情を見せ、スレイに抱き着こうとしたが、スレイは慌てて両肩を掴み、接触寸前でなんとか押し留めた。

先ほどからの喜怒哀楽の切り替わりもそうだが、エルフにしては色々なものが豊かである。もしかして耳が長いだけの人間ではないかと思った。

山頂に戻ったスレイたちは、そのままルーンマウンテンを下山し、アトリエに帰ってきた。

既に日は西空に沈み黄昏時を迎えた頃である。

山頂での一泊はする事になるだろうと漠然と考えていたので、予定より順調に行ったといっていい。

コニー少年の捜索を行った事によって、かえって依頼達成が早まり、コニー少年の父パトリック、ルーンサイド魔法剣士団の隊長エドガーといった、ルーンサイドとの人々との繋がりも出来た。

善意の手助けにより、物事が二重に好転するのは気分が良かった。滅多にない事でもある。

「皆は夕食にでも行ってきたらどうだ。俺は変成の作業があるから。集中したい」

スレイは休息を取っている三人を気づかう様に伝えた。

ここから先の作業はスレイ以外関わる事が出来ない。待たせておくのは忍びなかった。