軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61.後処理と合流

『 魔法の矢(マジックアロー) 』

スレイは三発の 魔法の矢(マジックアロー) を上空に向けて、一秒間隔で発射した。

すると、少し距離が離れた場所、おそらくスレイたちが先程まで居た山頂付近で 魔法の矢(マジックアロー) が三発、勢いよく上空に飛ぶのが見えた。

(……よし、一回で反応してくれたか)

遠くで飛んだ 魔法の矢(マジックアロー) はヘンリーが行ったものである。離れた場所で何かあった時はこうやって合図をするように、スレイとヘンリーの間で取り決めがされていた。

『 魔法の矢(マジックアロー) 』

スレイは再び 二発の矢(マジックアロー) を上空に飛ばす。

するとヘンリーから、再び一発の 魔法の矢(マジックアロー) の返答。

それを確認したスレイはようやく脱力し、大きな溜息をついた。

「……ヘンリーと連絡が取れたよ。ここまで来てくれるそうだ。急斜面を登るのも一苦労だし、ここで警戒しつつ合流を待った方が良さそうだな。お疲れさん」

「スレイさん、見事な連携でした。……格好良かったです」

「小道具に頼ったけどな。……ロイドとの連携も魔術も想定通りには働いたが、剣がお粗末だった。剣術の認定詐欺にならないように鍛えておかないとな」

スレイの剣術はBランク認定である。

一度認定を受けた個人の技能は、パーティーランクとは違い、何らかの理由で再審査されない限り取り消される事はない。よって認定はある程度の指標にはなるが絶対的な物差しではない。

獣巨人(トロール) に対する初撃の踏み込みの浅さをスレイは思い起こしていた。ベストなインパクトではない。自己採点するとしたらせいぜい60点だろう。

あの浅い初撃から、ロイドが『ディフェンダー』として動いてくれた気がする。攻撃を受け持つから魔法で援護を頼むといった処だろうか。 獣巨人(トロール) は炎が弱点なので、それをロイドが覚えていたという事もあるかもしれない。

思えば剣を取って戦ったのは『 爆ぜる疾風(ブラストウィンド) 』追放以来、初めての事である。

もう冒険者としては現役を退いたとはいえ、 万能手(オールラウンダー) であった事はスレイにとっての自慢の一つである。錆びつかせないように訓練をしなくてはいけない。

「……折角倒したんだから、コイツを持っていかない手はないな。いい報酬代わりか」

スレイは 獣巨人(トロール) の首に近づくと両角を切断し、 亜空間部屋(サブスペースルーム) にストックした。

獣巨人(トロール) の角は素材である。ポーションの材料にもなるし、 獣巨人(トロール) の指輪あるいは腕輪と言われるアクセサリーを作製する為の材料の一つともなる。いずれにしてもHP再生効果がメインとなる。

変成素材としてアトリエにストックしてもいいし、挨拶の手土産として素材ギルドに持ち寄ってもいいかもしれない。勿体ない使い方だが彫刻用としてもまずまず人気があった。

「……大きなワンちゃん」

「ロイドです。……大丈夫ですよ、普段は大人しいですからね」

エリアが微笑むと、コニーに対しロイドに触れるように促した。

コニーはロイドの身体におそるおそる触れ、何ともない事を確認すると、モフモフとした 大灰色狼(ダイアウルフ) に身体をうずめた。

「コニー君は無事だったんだね。…… 獣巨人(トロール) と戦闘があったのか。大丈夫だった?」

ヘンリーが上空から 飛行(フライト) の魔法で到着すると、 獣巨人(トロール) だったものの残骸に目をやった。

エルフのクラリッサも同伴している。彼女はシルフと呼ばれる半透明の女性──風の精霊を召喚し、飛行を手伝って貰っているようだった。

「問題ないよ。 獣巨人(トロール) 一体だけだしな。他に居ないといいが。……まあ、ヘンリーやクラリッサさんが居るなら楽に狩れそうだけどな」

「単独で襲い掛かってきたなら単独だと思う。群れを成していたら仲間を呼んでいただろうし」

楽観的な気がしたが、怪物の知識が豊富なヘンリーがそう言うのであれば、信頼して良さそうに思えた。

「少なくとも今は安全そうですね。……シルフ、ありがとう。帰っていいよ」

クラリッサが命令すると、シルフはつむじ風を巻きながら姿を消した。シルフを行使出来るならば、クラリッサが 召喚師(サモナー) としてそれなりの使い手である事は間違いない。

ただ、ヘンリーのように 飛行(フライト) を行使し自力で飛行しなかったという事は、魔術Aランク認定相当には至っていないかもしれない。

魔術Aランク認定までの壁は厚い。勉強を少し進めていくとBランクまでの理論がお遊びだったと分かるくらいである。スレイはBランク認定を受けた時、勢いでAランク魔術の勉強に取り掛かり断念した事があった。

「クラリッサさん、朗報だよ。あれを見てくれ」

スレイが淡い輝きを見せる泉の方を指さした。

「……あっ、あれはもしかして、 魔素(エーテル) の源泉ですか?」

「偶然だけどな。ある意味コニー少年のお手柄とも言えそうだな」

「わあ。なんかすごく輝いてませんか。わたしが知っている 魔素(エーテル) より、きらきらしてます」

「錬金術協会が把握していない手付かずのポイントだよ。かなりの 魔素(エーテル) が集積している。ここの一点だけで依頼の一二〇本分は注げると思う。錬金術協会に良い手土産が出来たかな。……クラリッサさん、早速ポーション瓶に注いで持ち帰ろう」

魔素(エーテル) はこの世界と座標が近い別世界との干渉により出現する元素と言われている。

特にルーンマウンテンは 魔素(エーテル) の漂う別世界と接続しやすい土地柄になっているらしい。

湧き出るポイントはずっと固定とは限らない。ある日突然枯れたり出現したりする。

ずっと枯れずに沸き続ける事もあれば、新たに沸いたにも拘わらず一年も持たない事もある。全ては別世界との干渉具合である。

このポイントが何年に渡って沸き続けるかは不明だが、錬金術協会にとっては良い報告になるかもしれない。

現時点でここまで来るのは大変だが、開拓を行ってルートを確立すれば足を運ぶのも容易になるだろう。