軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

究極の贅沢

「槌と投擲具の七星武器辺りならできますかね。フライパンは鈍器向きですし、包丁は投げる武器としてギリギリ入ってそうです」

おお……お姉さんも出来るのですかな?

何となくですがお姉さんもお義父さんの料理の腕の前にかなり引いておりましたからな。

お義父さんのフライパンをコピーすれば近づける事は出来たのかもしれませんぞ。

ですがー……記憶の中のお姉さんは渋い顔をして首を横に振っておりますな。

謙虚ですぞ。

「とにかく錬さん、これにて闇の料理界の大会荒らしケルススは終了ですよ」

「そ、そんな! たまには良いだろ?」

「全然懲りてませんね。そんなに料理をする事の楽しさを知ったんですか」

「え? ……」

錬はそこで黙ってしまいました。

料理が好きと言うより勝つのが好きになってしまっているのが分かっているようですぞ。

「このままじゃ転生者と似たような状態になりますよ、錬さん。それで良いんですか?」

「良くない……けどな樹、何も悪い事ばかりじゃないんだぞ。料理関連で潜伏していた転生者をあぶりだして捕まえる事は出来たんだ」

「まあ居そうですよね。料理でパワーアップとか、洗脳とか意のままに食わせた相手を操って好き勝手しそうな勢力とか」

「ああ。アイツ等審査員すら買収したりしてたんだけど尚文の包丁の力で審査員が手のひらを返したりして、面白い位、簡単に捕まえられたんだ」

錬の言葉に樹が深いため息をしました。

「何でしょうね……転生者達の異能力を超えるチートを授けてくれる尚文さんの包丁って……いえ、正確には剣の聖武器でしょうかね。なるほど、あの頃錬さんが妙に転生者を捕縛するなーとは思っていたのですが納得できました」

そうですな? 俺やライバルの助言を込みにしても驚くくらい手早く錬は捕まえてきていました。

フレオンちゃんと再会したループの錬と同じく動きが早かったのでブラックサンダーのおかげで覚醒が徐々に進んでいると思っていましたな。

「どちらにしても錬さんが荒らした所為で根絶したでしょう。最悪尚文さんに闇の料理界で暴れておいてもらいましょう」

と言う所で樹は俺に顔を向けますぞ。

「今までのループで尚文さんはそういう事してないんですか?」

「どうですかな? やっていたのかもしれませんが、俺もずっとお義父さんと一緒だった訳ではないですからな。そもそも転生者共を相手に態々対決などしてやる義理はありませんぞ」

「アイツ等負けると暴力に走るからな。何度帰り道で襲撃を受けたか」

「なるほど……消息不明や社会的に抹殺のカラクリはそれですか……」

錬に返り討ちに遭って転生者として捕縛されて処理されたのですぞ。

ちなみにライバルがゼルトブルの連中とコンタクトを取り、メルロマルクの復興資金確保の為に一部の転生者がセブン島での娯楽に消費されたそうですな。

「最初の尚文さんという方が元康さんと距離を取っていたのも今では分かりますからね。このループでは尚文さんにがんばってもらいましょう。錬さん、尚文さんの留守中にあなたが料理をすれば村の子達に受けが良くなりますよ」

「なんでそこで受けを狙うんだ!」

「シングルベルにならないためですよ。今時料理の出来る男性の方が女性に好感を持たれるでしょう? エクレールさんやウィンディアさん相手でも良いですからポイントを稼ぎましょう」

樹の提案に錬も納得したのか何度か頷いた後……。

「だが俺が作ったのに尚文の料理と言われないか?」

「比べると違いますが……まあ、あなた自身の料理じゃないんですからしょうがないですよ」

武器がお義父さんの料理を模しただけですからな。

「再現できるだけでも価値はあると思いますよ。作っている所さえ見せれば皆さんも気にしないでしょう」

「だがなー……尚文みたいにみんなの雑務担当になるのも……」

「錬さん、なんだかんだ尚文さんに頼る癖にちょっと馬鹿にしてません? あの方がああして気を配っているからここは持っているんですよ。蔑ろにすると転生者ではありませんがざまぁされますよ」

「うーん……」

ここでお義父さんがポータルで村に帰ってきましたぞ。

「ただいまー! もうみんな村に帰って来てたんだ」

「お、おう。尚文、おかえり」

錬が言葉を選ぶようにお義父さんを出迎えましたぞ。

「なんか錬が大会荒らしだって言われてたみたいだけどー……」

「えー……料理界に潜伏している転生者を倒す為に参加していたそうです」

「へー。錬も料理出来るんだね。今日は錬が作る?」

「い、いや。尚文が作ってくれ、作りまくって疲れた」

「そう? じゃあ何作ろうかなー」

お義父さんはエプロンを着けて厨房に立ちますぞ。

「みんな、何かリクエストある?」

お義父さんが何やら通い妻の様な事を言っていますぞ。

しかし、この世界のお義父さんは既にお姉さんのお姉さんやパンダと結ばれていますぞ。

つまり人妻ですな!

昔……料理の下手糞な豚がこんな感じの事をしようとして失敗していたのを覚えております。

最終的に何故か俺が料理を作る事になるのですぞ。

さすがお義父さん。奴等のやろうとしていた事を息をするかの様に成功させるのですな!

「そうですねー……この前スパゲッティーナポリタンもゴールデンウサピルのシチューも作って貰いましたからねー……尚文さんに作って貰う最高の贅沢を味わうにはどんなメニューが良いでしょうか」

「どうしたの樹? なんかいつにも増して言葉の命中というか鋭さが酷い気がするけど」

「錬さんの料理レパートリーを増やす意味で尚文さんの料理はいい勉強になるんですよ。錬さんや元康さん、何かありませんか?」

「え? うーん……」

錬は腕を組んで悩み始めましたな。

「計測中……処理中……処理中……」

ラフミが何を作るのが良いかの計算をずっと続けてますぞ。そのまま壊れろですぞ!

とは思いますがここは俺がお義父さんにお願いする最高の贅沢を錬や樹に叩き込んでやりますぞ。

「ではお義父さんにお願いするメニューを俺が提案しますぞ」

「何かあるんですか?」

「なんだ?」

「なんか妙な空気だけど……何食べたいの?」

ふふふ……究極の贅沢とはこういう事なのですぞ!

「お義父さん、カップラーメンを再現してほしいですぞ」

「な……」

「いや……」

錬と樹はここで絶句していますぞ。

ふふふ……お前たちはお義父さんの凄さがまるでわかっていませんぞ!

「お義父さん、錬も樹も故郷の味が忘れられないのですぞ。そのために色々と技能を上げて試行錯誤していたのですな」

「あー……そういうのあるかな? わかったよ。じゃあ作ってくるね。あとで元康くんと錬、炎と水の魔法をお願い」

「お任せくださいですぞ」

「あ、ああ……」

「あ、味付けは、しょうゆ? シーフード? カレー? それとも限定商品?」

「しょうゆですぞ」

「OK」

そう言ってお義父さんは厨房の奥へと行きましたぞ。

ここで樹と錬がお義父さんに聞こえないように近寄って小声で尋ねてきました。

「何ですかその、最高の食材に最高の料理人を揃えておきながら最低の料理を作らせるような暴挙は……」

「これが究極の贅沢というものですぞ。最初の世界の錬や俺が不意につぶやいた時にお義父さんも食べたかったそうで再現してくださったのですぞ」

『ジャンクフードって時々食いたくなるよな。現代に帰れないとそう思う時もある』と言ってお義父さんは作っていたのですぞ。

お義父さんはジャンクフードなどに偏見はないらしいですぞ。

なんでも一度現代に戻った際にお姉さんとファミリーレストランに行ったとかなんとか言っていましたな。

自分で作った方が遥かに美味しい物が作れると思うのですが、ジャンクフードにも良さがあるという事でしょう。

そういえば俺の世界の大富豪が某量販店の激安ハンバーガーを愛食していると聞いた事がありますな。

つまり、そういう事なのでしょう!

「いや……尚文さん、一度食べた料理は大体再現できるって聞きましたけど、あの味と麺まで出来るんですか?」

「カップ麺は油で揚げると聞いた事はあるが……フレーバーの再現とかどうやるんだ?」

「食べてみれば分かりますぞ。凝ったお義父さんの場合は容器まで再現してくれましたな」

「どこまで……」

期待と不安を前に錬と樹はお願いした料理が出来るのを待っておりました。

途中俺も呼ばれてお義父さんの料理の手伝いをしましたぞ。

やがて……トン、っと錬と樹、そして俺の前にもコップに入ったお湯を入れる前のカップラーメンが出てきました。

もちろん、お湯を入れたヤカンも持って来てくださいましたぞ。

「……」

錬と樹はごくりと唾を飲んでからヤカンのお湯をコップに入れて三分待ちましたぞ。

それから恐る恐る箸を手にして麺を掴んで口へと入れました。

「――!!」

「――くっ……!!」

錬も樹もお義父さんの料理の凄さが分かったようですな。

「どう? 二人の世界のカップラーメンが同じ味かわからないけど俺の世界だとこんな味だよ」

「だ、大丈夫ですよ。味は元より食感から何まで完全に同じですから……むしろ日本からカップラーメンが召喚されて出て来たって疑うくらい、同じ味ですよ」

「勇者召喚でカップラーメンが呼ばれたら笑えるね。麺の勇者って感じ?」

などとお義父さんがニコニコしながら冗談を仰っておりますが錬と樹は揃って顔色が青いですぞ。

何か引いているようですが、なんですかな?

「これが元康様の故郷の味ですの?」

「そうですな。俺の世界だととても安い庶民的な料理ですぞ。ですがこの世界では再現の難しい凄い料理なのですぞ」

「そうなのですわね!」

ユキちゃんに説明すると理解してくださいましたぞ。

「尚文さん、謎肉まで再現されてますけど、この肉何なんですか?」

「ああ、俺も知らないんだが……」

「樹と錬は知らないの? 食べれば大体わかるんだけどね、これは――」

ふ、お義父さんの前にインスタント食品の材料など容易く看破できるのですぞ。

お義父さんはカップラーメンの謎肉の製造法を錬と樹に詳しく教えて下さいました。

途中で魔法を入れるのがこの世界で簡単に再現する方法なんだそうですな。

「とまあこんな感じ。完全に寄せるには練習あるのみって所かな。色々と条件を付けて失われた味を再現ってのも大変なんだよね」

「尚文さん、そういった再現とか日本に居た頃もやっていたんでしたっけ?」

「教授とか講師に頼まれるんだけど、大本を食べたことがないのをお願いされて困ったこともあったね。かなり際どいのだと、ねればねるほど~の駄菓子シリーズの絶版になっているのを再現してとか頼まれたっけ。実際アレは料理というより化学だよねって思ったなー」

「はぁ……剣の聖武器の判断は正しいのでしょうね。錬さん」

「そうだな……」

「何が?」

お義父さんが首を傾げていらっしゃいましたが、錬と樹はそれ以上の説明はしませんでしたぞ。

ともかく、さすがお義父さんという事ですぞ!

「まあカップラーメンはともかく、錬も料理に興味があるなら作ってくれると助かるよ」

「あ、ああ……気が向いたらな」

なんて感じで時々錬がお義父さんの料理を気まぐれに作るようになりましたぞ。

ただ、やっぱりどこかお義父さんの料理に比べると味が劣るのが難点と言えば難点でしたな。

そもそも普段の錬は武器屋の親父さんの所で色々と教わっている訳で、本当に時々なのでしたな。

こうして闇の料理界荒らしの討伐と料理関連の転生者の根絶が進んだのですな。

「だーだー」

「キャッキャ!」

「樹、何時まで抱き上げてるんだよ。俺にも抱かせろよ」

「まだですよ錬さん。そもそもこの子たちすごく元気すぎて地味に持ちづらいんですよ」

今日はみんなでパンダの村で生まれた赤ん坊たちを見に来たのですぞ。

「ちゃ、ちゃんと持ってあげてね。元気だけどまだ生まれたばかりだから」

「ラーフー」

「え、えっと……」

お姉さんやラフ種、モグラなどが心配そうな顔で樹や錬が抱き上げる元気な赤ん坊を見ております。

「いやぁ……お腹にいる時はどんな化け物が生まれるかと思いましたがいざ生まれてみると驚くくらい元気でかわいい赤ん坊達ですね」

「完全に赤ちゃんパンダだもんな!」

樹も錬も今回ばかりはと言った様子で赤ん坊を抱き上げて愛でておりますぞ。

その愛でをフィロリアル様にも向けてはどうですかな?

雛フィロリアル様も可愛らしいですぞ!

「だー!」

バチバチと赤ん坊の手が光って地面からタケノコが生えてきますぞ。

樹は困惑しながら詠唱妨害の魔法を放ってタケノコを霧散させますぞ。

「……元気なのは相変わらずのようですね」

「キャッキャ」

バチバチと……お姉さんのお姉さんの赤ん坊も周囲に静電気を発生させておりますぞ。

「可愛いのは間違いないけど……いきなり立って走り出しそうで怖いな」

「あらー」

ちなみにお義父さんの話だとお姉さんのお姉さんの赤ん坊の方が早く生まれたそうですぞ。

日課の散歩とばかりに軽く一泳ぎに出かけたお姉さんのお姉さんが水中で産気付く……ともいえるのか自覚がない位、驚くほどあっさり出てきて、そのまま抱き上げて帰って来て驚かれたという話ですぞ。

パンダの方はしっかりと産気付きましたが大して時間もかからず産まれたとの話でシルトヴェルトから派遣された産婆と村の産婆がここまで丈夫にあっさりとしたお産は初めてだと舌を巻いたそうですぞ。

そういえば最初の世界でも似た感じでしたな。

勇者の子供は頑丈で母体も問題ないという奴ですぞ。

「うわ……この子生まれたばかりなのに腕力が結構ありますよ」

パンダの赤ん坊が樹の腕を掴んでぶら下がろうとしております。

その様子は完全に熊ですが、時々人の赤ん坊姿にもなったりするのですぞ。