軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 転生者に転生した転生者

「マジかよ……」

ふと、気づいた時、俺は見知らぬ屋敷の部屋に居た。

一体どうなっているのかと周囲を見渡す。

何となく覚えがあるような、それでありながら見たこともないような不思議な感覚に支配されていたのは間違いない。

で、なんか着た覚えの無いジーパンにジャケットを着てて……髪が俺の知っている色じゃないので更に驚く。

一体どうなってんだ? 気を失っている間に俺は髪を染められてこんな格好にさせられているのか?

ともかく自分の姿がどうなっているのか気になって部屋にあった鏡の前に立ってみた。

そこには……なんか金髪碧眼のいけ好かない顔立ちの男が立っていた。

誰だよ! と、最初に思ったのは間違いないが……なんだろう、見覚えがあるような無いような不思議な感覚だ。

一体誰に似てるんだ?

なーんか見覚えがあるような……。

そもそもだ……えっと、ぼんやりとだけど思い出して来た。

俺はブラック企業勤めの会社員をしていた……はずだよな。

もしかして睡眠不足で寝てしまって夢の世界に落ちて変な夢でも見てるのか?

頬を抓って夢かどうかを確認するが、痛みがしっかりあるので夢……じゃないんだと思う。

ともかく、なんかよくわからないけど妙に顔の良い姿に俺はなってしまっているのは間違いない。

少なくとも俺の覚えのある俺の姿とは違う。

あれか? これって転生って奴? 夢でも良いからこういうのって良いよな。

どこかの誰かの体に憑依してしまったとかそんな状況って事で一旦置いておく事にすべきだ。

そう思いながら俺はさらに自分の状況を確認するために体を弄る。

とにかく、俺はどこの誰さんになってしまったのかを確認しなくちゃいけない。

……腰にぶら下がっているのはなんか鞭……持ち手に宝石みたいなのが付いてる。

宝石?

まあいいや、ちょっとこれは邪魔なので置いておこう。

と、鞭から手を放そうとしたのだけど……手から離れない。

え? いや……なんだこの鞭。

呪われた武器とかそんな感じか!?

何度も振るって手から放そうとするのだけど一向に手から離れないぞ。

どうなってんだ?

そう思っていると視界の隅にアイコンがあるのに気づく。

……。

何となくそのアイコンに意識を向けるとスッとステータス表示が出た。

えーっとLvは300を超えてる。これってこの世界基準だと凄く高いのか?

で……色々と装備とかあるんだけどさ。

名前が浮かんできた訳だ。

タクト=アルサホルン=フォブレイ

……どっかで聞いた覚えのある名前だぞー!

本気でどこだったっけ?

いや、なんかすごく嫌な名前で通勤時にイライラすると同時にザマァと内心ゲラゲラ笑った人物名だった気がする。

タクト……鞭……で、しかもステータスには他にも武器項目があった。

ツメ、槌……。

しかもこの三つ……伝説武器って括弧が付いてる。

……なんかこれで心当たりがめちゃくちゃある。いや、確信を持って判明したぞ!

鞭を武器にタクトって名前で金髪、しかもジャケットにジーパン。Lvが300以上ってなるとアイツしかない!

そう思うと、ぼんやりとこの体の持ち主の記憶が徐々に浮かんでくる。

うへぇ……これは間違いない。

盾の勇者の成り上がりというネット小説の作品に出てきたタクトという悪役に俺はなってしまっているのは間違いない。

盾の勇者の成り上がり。

通勤中の俺がスマホでよく見ている小説家になろうというサイトで投稿されていた作品でアニメにまでなった作品だ。

図書館で本を読んでいた岩谷尚文という主人公が本の内容……四聖武器書に描かれていた盾の勇者として召喚されたのはよかったけれど、色々と最初からひどい目に遭いつつ悔しさをバネに理不尽に抗っていく冒険譚だ。

ゲームの世界に召喚されたと喜んだ他の三人の勇者たちに、盾の勇者だからと陰謀を企て迫害して苦しめようとする宗教など、敵が無数にいる世界の話でもある。

俺は結構連載初期から追って見ていて、理不尽な状況に時に怒り、時に悲しみ、理不尽を乗り越えて悪人を倒した時に喜びを覚え楽しんだ。

復讐モノだと言う奴もいれば立身出世ものだと言う奴もいる。

個人的に笑ったのは本を読んでいるだけで死んで転生したとか馬鹿にした知人だったか。

本を読んでいる内に召喚されるってのはファンタジーモノでは割と古くからあるんだぞと言ったら顔を真っ赤にして逆切れしてたっけ。

ともかく、個人での評価が割れる作品であるのは間違いない。

で……盾の勇者の成り上がりは1年毎日連載を続けて終わらせた作品なんだったっけ。

それからしばらくして番外編をやった後に、始まったのが外伝の槍の勇者のやり直し。

かませ役の槍の勇者が途中で改心というかなんというか信じていたクソ女ヴィッチに騙されていた事に気づいて落ち込んでいた所をフィーロって言うマスコット兼ヒロインに励まされて暴走を始めて、それから主人公にまでなった話だ。

最初はエイプリルフールネタで投稿された番外編だったけど正式に外伝になり、槍の勇者北村元康が盾の勇者のラスボスにやられて並行世界にループしてしまったって所から、ループする前の強い状態で始める物語だ。

俺としてはこっちの方が軽い展開で読みやすいと思っている。

この槍の勇者は本編の主人公である岩谷尚文を助けてフィーロって子と再会しようと色々とあの手この手をする作品だった。

とにかく……俺はその盾の勇者の成り上がりの悪役であるタクトという人物に転生……してしまったという事なんだろう。

転生者という設定の人物に転生してしまった俺は一体なんなんだ?

どこかの性格悪い奴が転生してタクトになって、そのタクトに俺が転生して……転生というワードがゲシュタルト崩壊している。

この思考はやめよう。

ま、まあ切り替えが早いつもりはないが……うん。少し考えて行くべきだよな。

えーっと……あ、波の到来時間が表示されている。

この時間内に自身を強化したりと色々とやって行けば良いんだな。

でもさ……タクトって鞭の勇者だけど正式な所持者じゃないから武器の性能を全くと言って良いほど引き出せない。

高いLvによるごり押しが戦術の愚かな人物で、末路も碌な物じゃない。

割と本気で……これが事実だったら絶望しかないぞ。

とにかく、まずはちょっと確認しないといけないな。ぼんやりと浮かんでくるタクトとしての記憶も曖昧過ぎてよくわからない。

何かリアクションをしたら思い出せるかもしれない。

そう思って部屋を出て屋敷内を歩く。

するとメイド服を着た美少女が俺に気づいて声を掛けてきた。

「タクト、何かあった?」

「いや、ちょっと散歩」

「そう。じゃあ一緒に行くわ」

えっと……あ、なんかわかる。

このメイドはエリーって言うタクトのメイドをしている女の子だ。

へー……結構美少女じゃん。

お? 経歴も浮かんでくるぞ。

幼少時は近所の貴族の子で……気が強くて気に食わない奴で、親もクズ……実家の罪を暗躍して明るみにさせて家は没落、仏心を見せつけて懐柔させて調教したと……。

出会った当初から領地の子供を権力で殺した、なんて事もあるとか。

中世風な世界でもかなり殺伐としている腐った家柄の子じゃないか?

よくこんな奴をヒロインに出来たな!

しかも数あるヒロインの中の一人だし、悪事に関して罪悪感を持ったりしないし、暗躍は任せろって神経をしている。

ただ、俺……じゃなくタクトに絶対の忠誠で尽くしてくれる。

だが最近反応が飽きてきて、自己主張するから適度に相手をしている間柄……と、タクト自身も下種なのはわかってるけど、なんていうか幾ら可愛くても俺の美少女センサーには微塵も反応しない。

真・槍の勇者で『ブヒトー!』とか叫ぶしな。

しかし……怪しまれたら困るな。

普段一緒にいるから中身が違うと気づかれて殺されたら堪ったもんじゃない。

ここで断るのはやばいか。

「ああ、ただ……今日は賑やかじゃなくエリーと二人で散歩するか」

タクトらしい行動というのを心がけて言う。

するとエリーは頬を赤らめてちょっと照れ気味に頷いた。

「タクト……わかったわ。あっちはみんながいるから裏から出ましょう」

「ああ」

って事でエリーの案内で俺は屋敷を抜け出して……フォーブレイの街へと歩き出した。

地図は頭に入っている。

地理まで完備なのは助かるな。

それから異世界の街並みってのを違和感のない範囲でエリーを連れて歩いて行くのだけど……エリーが俺の腕に体を絡ませてくる。

む……胸が当たるし、この角度だと大事な所にもあたってるぞ。

おいタクト、お前は女と歩く時にこんな歩き方をいつもしてるのか!

気色悪い!

女好きにしたってもう少し世間体とか考えろよ!

「どこに行く?」

「射撃場はどう? 捕まえたアイツ等の処理をしましょうよ。スカッとしたいって言ってたじゃない」

……なんでそんな血生臭い提案しかできないのかねー。

射撃場で捕まえたアイツ等の処理ってどう考えてもまともな事じゃないのはわかる。

しかも会話の流れから日常的にやっている展開だ。

そんな事を日常的にやっているヒロインは嫌だ……いや、タクトは本気で気付かないんだろうか?

まあ盾の勇者における敵キャラな訳だから、極端な位脚色されたキャラ像なのかもしれないが。

そういう事であってくれ。

もしくはタクトという人間がそれ位、ゲスであるという事だ。

「今はそんな気分じゃねえ。なんか食い物の買い出しとかするか」

「そう? 何を買いに行くのが良いかしら……市場で売ってる新鮮なフィロリアルを絞めて、から揚げでも作る? 沢山苦しめてから絞めると美味しいわよね」

フィロリアルとはこの世界で馬車を引く性質を持つ鳥型の魔物であり、盾の勇者のヒロインであるフィーロ等がその種族である。

食用もいると聞くけどさー……う、やばい。

フィロリアル食なんて聞くと槍の勇者が浮かんでくる。

何が苦しめてから、だ。

外伝だったら卵を割った時よりも酷い殺され方されるぞ。

……食欲が失せたな。

死にたくないからフィロリアルは食えない。

絶対だ。

しかし、何なんだ。コイツ等。

盾の勇者シリーズの作中での描写よりも酷いぞ。

いくら敵キャラだからって生き物を苦しめてから絞めるとか、どんな神経してやがる。

「そういやさ」

ここは不自然でもこっちが会話の主導権を握らないとやばそうだ。

いや、タクトって人間は結構気まぐれな所があるからいきなり変な事を言ってもある程度は受け入れられるかもしれない。

突然スローライフとか言って無人島を買って開拓をしたり、内政チートとか言ってシルドフリーデンで社畜ドリンク作ったりしているみたいだしな。

「波ってのが起こるようになったけど、伝説の四聖勇者って奴は召喚されたんだったっけ?」

「あの豚と他国の奴らが召喚する会議をしてるって話でしょ? まだ儀式をしようって最中じゃないの? 今、各国の奴らを招集してるって話だったはずよ」

あー……確か盾の勇者の成り上がりの設定だとフォーブレイが中心となって呼び出そうとかしているって話だったよな。

だけどその最中にメルロマルクが出し抜いて召喚をする。

それが知れ渡るのは少し後の事。

エリーは俺の質問に関して知っている範囲で答えるはずなので時期は勇者達が召喚される前……か?

うん、盾の勇者の序盤の流れだ。

と言う所でゾクリと背筋に嫌な汗が流れる。

俺が今いるこの世界は盾の勇者の成り上がりの世界なのか?

それとも槍の勇者のやり直しの世界か?

いや……真・槍の勇者のやり直しの世界かもしれない。

盾の勇者の成り上がりならまだ良い。

タクトってのは最終的に痛い目を見るだけで、原作を読んだ事のある俺なら色々とフラグを折って生き残れる手が無いわけじゃない……かもしれない。

少なくともタクトのハーレムメンバーとは縁を切りたい。

どいつもこいつも碌な経歴や性格をしていない。

槍の勇者とか真・槍の勇者で色々と判明しているんだしな。

このタクトの記憶でもハッキリ言ってヒロインと呼ぶのもおこがましい狂気を孕んでいる。

黄色い声で人殺しや内臓が飛び散る様を見たいと提案する様な連中だ。

とてもじゃないがまともな神経をしているなら距離を取りたいと思うだろう。

こんな奴等が普通に生活して世界に紛れているなんて考えたくもない。

それでタクトはこう思っているんだ。

俺が転生してから世界は少しずつ良くなってきている。

冗談じゃない。

お前にとって都合が良いだけだろ。

ただ……タクトの経歴と権威をフル活用できる立場にいる連中だから厄介なのも事実か……上手い事処理しなくちゃいけないけどさ。

気を付けないといけないのは四聖勇者に転生者だって知られて黒幕や俺の内情とかを暴露すると危ないって事だ。

なんかそういった爆弾みたいなのが転生者には仕掛けられているらしく、作中で何人か死んでいる。

タクトにも同様な代物が仕掛けられているのが……書籍版で明らかになっていたはずだ

しかし、元々タクトというポジションがあるので……内情を話さずに勇者達と協力していって勇者達に話せないけど協力をしている風にすれば手が無いわけじゃない。

これはあれだよな……勇者達が勝てそうなクソ女を遣わせて一人一人削って行ってもらえば良いんだよ。

アイツは四天王の中で最弱……みたいなさ。

いや、待て!

これってかなりゲスい作戦だ。やめよう。

完全にタクトの性質が入っている。

お前は記憶だけで性格に混ざってはいけない。

俺がどうにか処理しないといけない案件だよな……世界の為にさ。

なんか強い相手と戦って勢力を削るとかすべきだろうか……改心とかしてくれれば良いけど、そういう事は難しそうな奴だ。

こう……勇者達と協力する! って路線にすると変な所で暴走しそうというかボロを出して結局敵対関係になるというか。

とりあえず盾の勇者の成り上がりだったらって前提の考えはこれくらいにすべきだろう。

逆に槍の勇者のやり直しや真・槍の勇者のやり直しだった場合だ。

こっちは最悪だ。

槍の勇者はループが始まった段階で俺より遥かに強い。

女共を総動員しても勝ち目はない。

単純な戦闘では絶対に勝てない化け物だ。

勝つためにはこの持っている七聖武器に真に認められないといけない。

が……今の俺ではどうやっても鞭は俺の知る原作知識による強化をほぼ受け入れてくれていない。

本気で強化が上手く行かないぞ……少しは強くなっているんだけど……悲しいほどに強化できない。

武器に認められていないってこういう事なんだな……。

槍の勇者のやり直しの初期なら北村元康がタクトの記憶が曖昧なので敵対する前に仲良くするなりして……盾の勇者と友人になれば耳を傾けてくれる可能性は高い。

が……それ以降は最悪だ。

間違いなくいろんな手を使ってタクトの抹殺を行うだろう。

とはいえ……メルロマルク編くらいまでなら、尚文と話し合いで協力関係はギリギリ成立する。

しかし、もしもそれ以降だったらフォーブレイの豚王に不正をチクられた挙句武器を剥奪されて処刑だ。

一行で処理されたりな。

更に真・槍の勇者だったら……やばい。やばいぞ。

どこかのミステリーよろしく、無人島で恐怖体験をさせられるぞ!

犯人が分かっていてもどうにかできないとか、どんな地獄だよ!

スプラッターホラー作品に登場する怪人みたいなのが襲ってくるんだぞ。

君は生き残る事が出来るか? って無理に決まってんだろ! 全滅だよ!

仮に回避したとしてもだ……槍の勇者は隠蔽状態から色々と動き回って俺を追い詰めるために動くのは間違いない。

絶対に勝てない殺人鬼に狙われるとか最悪だ!

こんな武器捨てて顔と髪色と名前を変えて高跳びするのが一番!

ホムンクルスとかでボディチェンジ出来れば良いが……。

だが……そんな真似をしたとしても……ハーレムの女共が追いかけてくる可能性が高い。

なんで俺はタクトなんかになっちまってんだよ!

いや、赤豚ことヴィッチになるよりマシかもしれないけどさ。

アイツこそ死亡確率が付いて回るだろう。

どうせなるんだったら……勇者達にはなれないとして……男なんだから武器屋の親父とかになりたい!

盾の勇者にやさしくすれば良いだけで、鍛冶とかしていればある程度どうにかなるだろ?

なんか書籍とかで色々と謎が明かされたりしてるんだけどさ。

盾でも槍でもそこそこどうにかなるポジションだ。

女だったらエレナが無難か?

モブフィロリアルとして槍の勇者に育てられる展開も良い。

一緒に居るだけである程度どうにかなる。

フィロロロンとか言っていれば良いんだろ?

ただ……この世界、魔物転生をした転生者とか見ないよな……?

掲載されている投稿サイトのパターン的に居てもおかしくないはずだ。

それなのに現状居ない。

何か裏設定とかありそうだな。

没設定とかそういったのが明かされる作品だしさ……。

精々いるのはあの子だけだけど、味方キャラクターだしな。

そもそも掲載サイト的に魔物転生という扱いじゃない気がする。

ともかく……重要なのは盾か槍か真・槍かのどれか、だ。

鞭とか持っている武器でメルロマルクにいけないのか……? 最悪召喚阻止すれば俺の生存率は飛躍的に上がる。

くそ……無い! 一番近いのはゼルトブルか。

それでも数日は掛かる。

けど飛行機とかで行ったら目立ちすぎる。

そもそもこの世界って飛行機が不向きだったはずだ。

……盾か槍か判断する方法がここでもある。

「タクト、どこ行くの?」

散歩兼買い出しを終えて屋敷へエリーを送ってから俺は背を向けて歩き出した。

「ちょっと城へ用事。ついてくんなよ。あんましつこいのは好きじゃねえからさー」

この不愛想な感じで拒絶しないと付いてくるのは間違いない。

それでも念のために鞭の中にあったクローキングって名称のある隠蔽スキルっぽいのを発動させて追跡を撒く事にした。

くっ……あんまり長時間使用できないな。

槍の勇者とか、ポンポンこれを使ってるってのに。

魔法の方も合わせて……普通に魔法を使った方が楽……だけどドライファまでしか使えない。

タクトの魔法適性が何なのかよくわからないけど火の魔法は使えたはずだから行ける。

ともかく、追ってが居そうな中を撒いて城へと俺は辿り着いた。

「よう」

「これはこれはタクト様、この度は何の御用でしょうか?」

城の受付に声を掛ける。

今回は……俺の息の掛かった兵士みたいだ。

「ちょっと聞きたいんだけどさ」

「なんでございましょうか?」

「確か各国の首脳が集まる催しが行われるんだろ? それでメルロマルクの女王様ってのは今、どこにいるかわからねえか? デマでも良いからどんな小さな事でも教えろ」

あくまで極自然に、あのヴィッチを思い出した風を装いつつ城の受付に聞く。

「少々お待ち下さい」

兵士が俺の質問に答えるように城の奥の方へ案内しながら聞きに行く。

個室に案内されたのでとりあえず椅子に腰掛けるのだけど……タクトの奴、癖なのか自分でも驚くくらい偉そうに足を組んでしまっている。

もっと品のある座り方しろよ……と思って意識的に普通に座った。

やがて十分くらいした頃の事……。

兵士が部屋に早足でやってきた。

「失礼します」

「ああ」

なんだろう……果てしなく嫌な汗が背筋に流れるのを感じた。

「その……現在穏便にと言付けを仰せつかっているのですが、どうやら槍の勇者を名乗る者に連れられて、いずこかへと出かけて行ったとの情報が錯綜しております。おそらくデマであるとの事ですがどんな小さな事でもと仰ったのでご報告させていただきました」

槍だったぁあああああああああああああああああああー!

惨たらしく殺されるーーー!

しかも後期だろ! 間違いない!

少なくともゼルトブル後編以降じゃねえかぁあああああああああああああああ!?

数ある周回か、はたまた真・槍の勇者の初期にアイツがループしたのかわからねえけど、この後俺はどうなっちまうんだよぉおおおおおおおおおおお!