軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

虚言

「え?」

その時、ラフタリアは俺に注意されていて、考えない様にしていた物が出てくるのを感じた。

フィーロはあれで洞察力はある方だ。

というよりも本能で生きている所為か、そういう機微に敏感というか。

ラフタリアは今までの不可解な事象が全て繋がった様な感覚を抱いたという。

「な、なんの事を言っているのですか?」

これはアレだよな。

樹が本当に手を抜いていて、ラフタリア達がピンチになるのを待っていたとしたらアレに似ている。

少々強引だが、アニメなどで味方が数秒後に敵の刃によって死ぬ、その瞬間に駆けつける主人公の様な、そんなシチュエーションが俺の頭に浮かんだ。

俺もこの世界に来る前はオタクだったし、そういうシーンはかっこいいと思う。

だが、そういう場面って現実だとそうそう現れないよな。

「フィーロがわからないと思ってるの? さっきからずっと弓の人は力を抜いていたよね」

「ですからなんで力を抜かなきゃいけないのですか」

「槍の人や剣の人、ラフタリアお姉ちゃんもごしゅじんさまも力を抜く事はあるけど、弓の人はそれよりもずーーーーっと抜いてるよね? それじゃあ抜き過ぎてて、どうやっても倒せないよ? 矢がへろへろだったし」

フィーロは手羽で波を描く様に矢の軌道をジェスチャーした。

樹は冷や汗を垂らしながら反論したという。

「ですから、僕は力を抜いていません」

「ならなんでさっき使ったスキルを早く撃たなかったの?」

「そ、それはSPとかクールタイムがあってですね」

「じゃあなんで事前に準備しないの? それなら考えて戦った方が早いよ?」

フィーロの質問攻めはここから始まった。

既に半ば確信に近い疑念を抱いていたラフタリアはフィーロを止めない。

「フィーロ知ってるよ。弓の人、ラフタリアお姉ちゃんがピンチになるまで弓を引かずに待ってたの」

「なん、ですって?」

「違いますよ! 僕がそんな事する訳ないじゃないですか」

「じゃあ何で本気で弓を引かないの?」

「いや、引いてますよ」

「違うよ。だってさっき、スキルを撃った時に引いた時より弓を引いてなかったもん」

次々とフィーロの質問は樹を追い込んでいく。

そうしてフィーロの口から樹の問題が出るわ出るわ。

「最初はそういう武器なのかなーって思ってたの。でもさっき撃ったスキルで違うって分かったの。ねえねえ、なんで手加減してるの?」

「ですから僕は手加減なんてしてません!」

「あと、お姉ちゃんが攻撃を受けそうになった時、少し楽しそうにしてたよ。なんで?」

「……なんでですか?」

沸々と、俺に注意されていたから押さえ込んでいたフラストレーションが湧き出していくのをラフタリアは感じていた。

フィーロ……子供の詰問みたいな発言を止めない程度には。

「違いますよ。なんでこんな事を言うのですかこの子は」

「ねえねえ。なんで教えてくれないの?」

興味津々と言った表情で頭を傾けてフィーロは樹に尋ね続けていた。

やがてラフタリアは感情を殺し、フィーロに便乗して樹に詰問する。

「……あれだけ強力な攻撃が出せるなら、何故最初に撃たなかったのですか?」

「ですから、クールタイムとSPに問題があってですね――」

「回復するまでの間なら私達が時間を稼ぎますよ? 先に撃てば戦闘が楽になりました。それとも普通に弓を強く引くのに関わりがあるのですか?」

「そ、それはありますよ。矢を撃つとSPが減るんです」

「ねえねえ。なんでホントの事を言わないの? 弓の人は嘘を言ってるよ。フィーロわかるもん」

「……だそうですが。どうなんですか?」

怒りによって魔力が放出されるのをラフタリアは感じていた。

多分、樹には髪が逆立っていくラフタリアの怒気がありありと身に染みただろう。

「本当に、矢を撃つと何かが減るのですか?」

「い、いえ……」

「それに減るのなら回復もします。ナオフミ様から聞いていますよ。SPは思いのほか回復が早いと」

樹の攻撃回数から察するに、そこまで減るのが早いにしても、限度がある。

連続でスキルを放って、敵を一掃出来るほどのSPがあるのだ。これまでの道中で手加減していたにしても理由が足りない。

「ねえねえ。もしかして槍の人みたいにカッコつけてるの?」

「ち、違います! 僕が元康さんみたいにカッコをつける人に見えるんですか!」

先ほどの困惑した表情とは打って変わって、樹は強く否定した。

のだけど、勘の良いラフタリアには図星に聞こえた。

「えっとね。フィーロとお姉ちゃんがピンチになりそうになると目が輝いたりしてるから、そう思ったの」

フィーロが弓を引くポーズを真似して、目をキラキラと輝かせる。

その視線の先にはラフタリアがいた。

「でね。お姉ちゃんやフィーロが対処すると残念そうに弓を引くのを弱めるの」

「そ、そんな事する訳ないじゃないですか! 僕は勇者ですよ!」

「なら教えてください。さっきのスキルはどれくらいの力を消耗して、どれくらいの冷却期間が必要なのかを」

「えっと……1度撃つとSPの半分以上が削れて、15分は撃てません」

「目が泳いでるよ? 弓の人、ホントの事を言わない時にさっきからその目してる」

ラフタリアはキッと樹を睨みつける。

嘘を吐いたら殺す、とか言い出しそうだな。

いや……さすがにラフタリアもそこまでしないと思うが。

「う、嘘じゃないですよ! ほんと、この子は何を言っているのでしょうね!」

「……じゃあ次にこの敵が出てきた時には最初に撃ってもらいましょう。一掃出来るのですから私達は見ていましょうか」

「な、何を言っているのですか!」

「本当かどうかを確かめたいのです。信じていますよ。矢が出せなくなるまでSPを使ってみてください。そうしたら私達が守ります。その後は安全な所まで下がってから休憩しましょう」

「ぼ、僕にだけ戦わせるつもりですか!?」

「問題ありませんよ。弓の勇者様がどれくらい強いか見せていただきたいだけなのです。槍の勇者様もしてくださいました」

と、ラフタリアは樹を詰問しながら、戦わせた。

そして現れた新手のカルマースクイレルファミリア。

ラフタリアは隠れて、自分の心拍を数えだした。

群がって来るカルマースクイレルファミリアに、樹は善戦した……というかアローシャワーを放って半壊させた。

「先ほどよりも随分と威力が高いようですね」

「た、たまたまですよ。おかしいなぁ」

「さっきより弓を引く力が強いよー」

フィーロが見張っている為に樹は徐々に追い込まれていく。

そして。

「ファルコン・ストライク!」

カルマースクイレルファミリアを樹は一人で全滅させた。

ふう、と樹は汗を拭った。

「アウトです」

「は?」

「先ほどの問答から6分しか経ってません。話をしている時間を5分としても符合しません」

「き、気のせいじゃないか?」

「もう結構です。私は嘘を吐くアナタを信用できません」

ラフタリアはそのままパーティーを抜けた。

「な、勝手に帰るんですか?」

「信用できないアナタに背中を預けられません。私はアナタに助けられる為に前に出ている訳では無いので」

帰るまでの道のりに危険は無い。ラフタリアだけでも行けるだろうし、フィーロも居る。

そう思ったのだが、フィーロは樹が手を抜く理由がえらく気になった様で、パーティーを抜けないと言い出した。

「お姉ちゃん。フィーロ、弓の人と戦ってるね」

「そうですね。ナオフミ様を困らせない為にその方が良いかも知れません。ですが信用してはいけませんよ」

「はーい」

こうしてラフタリアは1日目で樹の元から離れて一人でLv上げをしていたらしい。

湧き上がる怒りを魔物にぶつけて感情を鎮めたという。

その怒りの幅は元康や錬よりも高いと俺は感じていた。

嘘が嫌いなんだな。

というかラフタリアは体育系だからな。手を抜かれるのが嫌だったんだろう。

「一時とは言え、仲間に嘘を吐くアナタを私は信じたくないですし、背中を預けたくありません」

ラフタリアは樹に向ってそう言い放った。

その表情は場が凍り付く位冷たい。

というか目が死んでいる。

こんなラフタリアは初めてみるな。

「貴様! イツキ様になんて暴言! 許さんぞ!」

鎧が切れてラフタリアに掴み掛かる。

その腕をラフタリアは無表情で見つめ。

「プライドだけの暴力は嫌いです」

ガシッと鎧が伸ばした腕をラフタリアは力強く握った。

ガントレットからミシミシという金属の曲がる音が響いている。

別に俺が怒られている訳でもないのに怖く感じた。

それだけラフタリアが怒っている事の現われなんだろうけど。

「な、コイツ、強い」

何だかんだでラフタリアは腕力があるからな。

普段あれだけ自己鍛錬していればこうもなるさ。

「いい加減にしてください」

最終警告と言うかのようにラフタリアは樹に向けてドスの効いた声で言い放った。