軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

騙る者

「で……あのビッチな王女はどこにいるんだ?」

「いませんぞ。宿で明日のケアと称して肌の手入れでもしているのではないですかな?」

本気で呆れますぞ。

ちなみに怠け豚がどうも俺を怪しんでいる様な気がしますな。

ま、下手な事をしたら消せばいいだけですな。

怠け豚の生存能力の高さは舌を巻くので、余計な事はきっとしないでしょう。

自身の安全のために藪を突かないのが怠け豚だと俺も学びましたからな。

「……姉上らしいです」

「クソだな。それで……襲撃者を返り討ちにした事には一応礼を言うが……」

「ブブブヒ……」

婚約者の近くにいる影豚が何やら呟いてますな。

「お前が出てきた事自体は驚きだが、元康の方が驚愕だっただけだ。で、お前は何なんだ?」

「国の諜報部隊の者ですぞ。女王派の、ですな」

コクリと影豚が頷きました。

「南西の方角を目指すように助言しに来たのですぞ」

「ブブ……ブブブヒ……」

影豚が何か言っていますが、俺には何を言っているのか理解できませんぞ。

それからお義父さんは影豚と何やらやり取りをしておりましたな。

「槍の勇者様、姉上達は一体どこまで私達の動向を把握しているのか教えて下さいませんか?」

婚約者の希少な俺への敬語口調ですぞ。

気が付くと婚約者は俺へ微妙な距離感で遠慮のない話し方をするので新鮮ですな。

「女王派の影の陽動で大雑把な範囲くらいしか把握してませんな」

「ベラベラとよく話すもんだ」

お義父さんの敵愾心が強いのは当然の事でしょうな……ですがここは引いて良い所ではないですぞ。

「元康を含めて助けようとした事は汲み取ってやる。女王に会えば良いんだな? 元康もそれでいいのか?」

「ですぞ。俺には俺の事情があって話せない事も多いですが、おと――尚文、今までの件でお前に非が無いのはもうわかっている」

「……怪しい位物わかりが良いな」

お義父さんの警戒度が更に引き上がったのを俺は感じました。

なんとなくですが、このままだとお義父さんは信じてくれず、悪い方向に行く様な気がしますぞ。

フィーロたんに攻撃命令をされたらどうしたらいいですかな!?

「その問題も、今回の事件が片付いたらしっかりと説明するのですぞ」

「本当か?」

「本当ですぞ。それと……これは教えても良い事ですな。伝説の武器の正しい使い方を説明しますぞ」

お義父さんの眉が僅かに上がりましたな。

どうやらこの流れで行けばお義父さんに信用を得る事は出来る可能性が高いですぞ。

「正しい使い方? ヘルプは確認したぞ」

「それは欠落があるのがわかっているのですぞ。だから、それを教える……ただ、問題があるのですが、それを乗り越えねばこの先の厳しい戦いを乗り越えられませんぞ?」

若干勿体ぶった言い回しにお義父さんが苛立った顔をし始めました。

ですが話自体は聞いてくださりそうですな。

「ふむ……」

「正直に言えばある期日に、おと――尚文達に、メルロマルク南西のある場所に来てくれれば良いだけで即座に国外に送る事も出来るのですぞ。こっちはそこまで難しくないですぞ」

「何? どうやってやるんだ?」

「伝説の武器はポータルスキルを使用できますからな。国もその辺りは把握済みですぞ。生憎 尚文が所持していないであろう事も把握しているからこそ血眼になって探しているのですがな」

お義父さんが苦虫をかみつぶした様な顔をし始めました。

「まあ、ここではいつ追手が来るかわからないので、無難な所でゼルトブルかシルトヴェルト辺りに送りますかな?」

「行けるなら行った方が楽そうだな」

「ブブブヒ! ブブブ!」

ここで影豚が焦る様にお義父さんに何やら鳴きますぞ。

「シルトヴェルトに行くと困るか。困るなら是非とも行きたいもんだがな」

「まあ、盾の勇者である尚文がこのタイミングでシルトヴェルトに行って、メルロマルクを滅ぼせと言ったなら戦争に出来ますな」

「呑気に言うな……お前は困らないのか?」

「生憎、全く困りませんな」

精々思った通りの展開になって困るだけですぞ。

赤豚に報いを受けさせるのは変わりませんからな。

「勇者というのは本来それくらい権力があるのよ。きっと姉上や父上とは異なる権力者と槍の勇者様は繋がりがあるって事なんだと思うわ」

婚約者はお義父さんに後押ししますぞ。

何やら勘違いされていますな?

まあ、豚王の所にタクトの豚共を贈呈する事を前提に取りいるのは非常に容易いですがな。

お義父さんが何やら俺を苦虫を噛み潰した様な顔をして睨んできますぞ。

何故ですかな?

お?

脳内で最初の世界のお義父さんが「そりゃ、お前を苦しめられないのがわかったからだろ」と仰っておりますな。

なるほど!

確かに赤豚を信じていた頃の俺が赤豚の悪行が明らかになって焦ったり怒ったりした際に、お義父さんは機嫌が良さそうでしたな。

それが叶わないのだからお義父さんは不機嫌になってしまったと言う事でしょう。

土下座でもして足をなめたら機嫌が良くなるでしょうか?

なんとなく火に油を注ぎそうなのでやめた方が良さそうですぞ。

お義父さんは不愉快な気持ちを整理する様に一度大きく息を吐きました。

「そんなシルトヴェルトに簡単に行けるなら是非とも行きたいもんだが……」

「ちょっと……」

婚約者がここで困った様にお義父さんを見つめますぞ。

するとお義父さんは無表情で婚約者を見ますな。

「メルちゃん……ごしゅじんさま、フィーロ、メルちゃんを困らせたくない」

「ナオフミ様……」

「はいはい。元康の言う事だしな。下手に信じてどうするんだよ」

肩を軽く上げてお義父さんが俺を小馬鹿にする様に言いましたな。

「じゃあゼルトブルに飛ばしますかな? あそこならきっと三勇教の連中はいませんぞ」

お姉さんのお姉さんに遭遇してしまう可能性はあがりますがな。

「やれるもんならやってみろ。一度だけ信じてやる」

と、お義父さんが言うので俺はお義父さん達をパーティーに誘いますぞ。

もちろん赤豚は既に除名済みですぞ!

「ポータルスピア!」

ヒュンとゼルトブルに俺はお義父さん達を連れて飛びましたぞ。

ゼルトブルは眠らない国なので賑やかな雑踏が遠くから聞こえてきましたぞ。

「これは……」

お姉さんが驚きの声を出しましたぞ。

「……マジか……第二王女、ここはゼルトブルでいいのか?」

「ええ……商人と傭兵の国、ゼルトブルの首都よ。来た事があるもの」

「んー? 賑やかな音が聞こえるね」

「ちなみに盾の勇者の指名手配はメルロマルク国内だけなので安全に入れますぞ?」

「そこまで信じてるわけじゃねえよ。ただ、あっさり国外に出れたのは良いな」

と、お義父さんは警戒気味に答えますぞ。

おかしいですなー……ループを再度してしまった時のお義父さんはもっと俺の言う事を信じてくれていましたぞ。

「逃亡生活で疲れているでしょうから、そこにいる影の案内で宿に行くのが良いと思いますぞ」

ここは婚約者の配下である豚に案内を任せてやれば良いでしょう。

さすがにこの辺りは上手く立ち回ってくれるでしょうからな。

「ブ……ブブ……」

婚約者の配下の豚が困った様な声を上げていましたが頷きましたぞ。

「これで多少は信じてくれましたかな?」

「……わかった。で、元康。お前は俺に何を望んでいるんだ?」

「俺の言う時間にメルロマルクの南西地域に送るので、そこから南西の砦を目指した後に俺と戦闘をしてくれると助かりますな」

「理由は?」

「真の敵を炙り出すのですぞ。もちろん、それ以外の場所で真の敵を倒す事は出来るのですが、俺としてはそのタイミングで倒しておきたいのですぞ」

「妙に引っかかる言い回しをするが……」

うう……非常に歯がゆいですぞ。

ですが俺が望む展開に行くのに無難な行動なのですぞ。

もしかしたらその流れに速攻で行けるのかもしれませんが、どんな要素が介在するか分かりません。

フレオンちゃんと出会えたこの周回で失敗するのは避けたいのですぞ。

まあ……仙人の居場所はもう教えてもらっているので、おそらくフレオンちゃんと出会う事自体は出来ますがな。

「もちろんこの行動の礼は先に払いますぞ。それが武器の使い方ですな」

「……一応、ここで聞いておこう」

「まず無理だと言うだろうけれど、伝説の武器の正しい使い方に、心の底から信じると言う物があるのですぞ。疑ったら出来ませんからな」

「じゃあ無理だろ!」

やはりお義父さんはそう答えますな。

まあ過去の俺がやった事を思えば難しいと思いますぞ。

「ですが、それでこの先の厳しい戦いを乗り越えられますかな?」

「くそ……バカにしやがって」

お義父さんが悪態を吐きますぞ。

「ナオフミ様……」

「ごしゅじんさま? 槍の人、ごしゅじんさまをいじめるのはフィーロ、許さない」

ヒィイイ……フィーロたんが俺を睨んでいますぞ!

やめてほしいのですぞ。

「待ってフィーロちゃん。槍の勇者様は盾の勇者様に色々と力を貸そうとしてくれているだけなの。だから、ちょっと盾の勇者様の心の準備が出来るのを待ってあげましょう?」

何やら婚約者とお義父さんに距離感がありますな。

お義父さんを名前で呼んでおりません。

俺の記憶だとー……そう言えば、婚約者はお義父さんの事を盾の勇者様と呼ぶ事が多いのでしたな。

ですが今回のお義父さんは最初の世界に近いお義父さんなのですぞ。

時期の関係ですかな?

「……とりあえず元康、お前を信じる訳じゃないが教えろ」

お義父さんはこの辺り、ハングリーな精神をお持ちですから割り切るのが早いですぞ。

と言う訳で俺は簡潔に四聖武器の強化方法とドロップ等の基礎的な事をお義父さんに伝授しましたぞ。

「出来るかどうかはおと――尚文の信じる心次第ですぞ。では後日、また来ますぞ」

「……」

俺が手を挙げてお義父さんに別れを切り出したのですが、お義父さんは警戒の態度を見せたまま黙っておりましたな。

と言う訳で俺は一旦お義父さん達をゼルトブルの宿に送り届けてその場を後にしたのですぞ。

それから数日はお義父さんを騙って神鳥の聖人の評判を落とそうとする三勇教の連中に振りまわされる状況が待っているのですぞ。

ここは……そうですな。

どこで出没するのかわかっているので俺が駆けつけるのも良いですな。

ですが槍の勇者の評判が上がってしまうので別路線で行くのも良いかもしれません。

「この街で尚文達が潜んでいるかもしれない。みんな、別れて探そう!」

っと、ここぞとばかりに赤豚達に耳当たりの良い台詞で街で探索を言い渡しますぞ。

「ブブブー! ブブ!」

赤豚も婚約者を排除出来る機会だと言う事でやる気は見せていますな。

何も知らなかった俺はここで妹を大切に思っているんだな、と納得した物ですが、隙あらば殺そうとしていたのは今ならわかりますぞ。

本当に反吐の出る豚ですな。

「よし! 俺はこっちに行く!」

っと、十字路で俺は走り出して赤豚達と別れ、それらしい所で曲がってポータルで飛びますぞ。

狙いはお義父さんを騙る偽者が暴れる場所ですぞ。

ご丁寧に俺達の所在を掴んで悪さをしていたらしいですからな。

絶対に駆けつけられない場所で犯罪を働くのですぞ。

思えばこんな陽動紛いな事をする事に意味があるのですかな?

三勇教側からしても愚かとしか言いようがないですが……もしかしたら内部での争いや末端の便乗犯罪だったのかもしれません。

どちらにしてもお義父さんの犯罪という疑惑を払拭してやりますぞ。

「デュワ! っですぞ!」

俺は隠し持っていたフィロリアルマスクを着用し、事件が起こっている現場に向かいました。

「ブブヒー!」

「フハハハハ! 俺は盾の勇者だぞー!」

っと、仮面で顔を隠し、お義父さんが着ている蛮族の鎧に似せた鎧と盾を着用した犯罪者が出店などの商品を荒らしながら暴れております。

メルロマルクに留まった周回のお義父さんの時にも似た様な連中に遭遇しましたな。

それよりもお粗末な便乗犯ですぞ。

「まてぇい! ですぞ!」

「な、なんだ!?」

俺は屋根のある家の上に降り立ち、犯罪者に向かって大声で呼びかけますぞ。

「聖人の偉業ある所に悪さをし、果ては罪なき者に罪をかぶせ、自らの私腹を肥やそうとする者を俺は許しはしませんぞ!」

「なんだお前は! 俺は盾の悪魔だぞ! 名を名乗れ!」

「貴様の様な奴に教える義理は無いですが教えてやりますぞ!」

くるっと槍を回転させて荒ぶるフィロリアル様のポーズをとりますぞ。

「コロシアムの鳥! フィロリアルマスク参上ですぞ!」

シュバッと飛び上がり、お義父さんを騙る奴の前に降り立ちますぞ。