軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔が差した

「押しちゃ逃げるなの。本当に欲しいならしっかりと引かなきゃダメなの! わかったなの!?」

「ガエリオンちゃんもなんて言うか、変わった所があるよね……」

「勝者の余裕って事にしてほしいなの。ガエリオン、なおふみが好きなのは間違いないから嫌わないで欲しいなの」

「わかったよ。それでガエリオンちゃん、酔っぱらっていて覚えていないかもしれないけど……お願いするよ」

「覚えているから安心してほしいなの。目的を達成したガエリオンが次にやる目的として、しっかり遂行するなの」

「うん……お願い。元康くんの為にもね」

ドンとライバルは胸に拳を当てていました。

「ま、シルドフリーデンの神様であるドラゴン様とシルトヴェルトの神様である盾の勇者が仲良くしているのは良い事さね。ただ、この事実はシルトヴェルト側からすると後々揉めそうだねぇ……盾の勇者様は他にも気を使うべきなんじゃないかい?」

放心している俺の前でお義父さんがライバルと仲睦ましい話をしている中でパンダがそう注意しますぞ。

お義父さんは近くで控えるシュサク種の代表に視線を向けた後、ライバルを見て、ライバルはパンダに視線を向けました。

「う、うん。もう世界情勢は大分安定してきているし、波の終わりも見えてきたもんね……その、ラーサさんは……俺は嫌?」

お義父さんの言葉にパンダがため息をしますぞ。

「はぁ……アンタはアタイでいいのかい?」

「エルメロさんやエクレールさんもそうだけど、凄く頼りになるし、俺は一緒にいて凄く楽しいよ……その……」

「はいはい、わかってるよ。当初からその辺りも込みで請けた関係だしね。槌の勇者に選ばれちまったし、国の為ってのは除外してもアンタは退屈しないし、いい加減身を固めるのに良い相手かもしれないさね」

今夜、部屋に行ってやるよっとパンダは言ってますぞ。

ライバルもお義父さんの背中を押してパンダへと誘っていますな。

「パンダァ! 何もかも遅いのですぞ! それならもっと早くやれですぞ!」

「うるさいねぇ! いい加減、アタイをパンダと罵るのをやめて欲しいんだけどねぇ!」

「えーっと……」

「んー? エルメロー、何の話だったの?」

「コウさんには少し早い話でしたね」

「うむ……私は生憎と所属国家の所為で関われんな……」

そそくさとゾウとエクレアはそんなやり取りをしているお義父さん達を聞き流して食事に入ったのですぞ。

「貴族の面倒事な政治も混ざる話ですわね……元康様、ユキは元康様一筋ですわ!」

「ぶー……サクラよくわかんない。ナオフミ、サクラは?」

「絶対ダメ!」

「ダメですぞ!」

サクラちゃんがお義父さんと、ですかな!?

絶対にさせられませんぞ!

「ぶー」

と、サクラちゃんが唇を尖らせて食事をしている中、俺は心の底から叫びました。

「お義父さんのバカー!」

ライバルに純潔なんて捧げちゃダメだと言ったのに、捧げちゃったのですぞ!

もう知らないですぞー!

うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

……こうして、この世界での日々は色々と過ぎて行ったのですぞ。

ちなみにお義父さんは俺やライバルの意見を元に大きいフィロリアル様の遺跡で龍刻の長針と同じ様な物を手に入れようとしましたが、出来なかったのですぞ。

そうして今までと同じく波を乗り越え、最後の波を突破し……世界は平和になっていったのでした……。

どれだけ過ぎたのかやはり曖昧なのですぞ。

……。

…………。

………………。

サクラちゃんを婚約者の所に行かせる。

虎娘を優遇する。

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第一座標・hard…………参照…………照合…………遡行開始――

……。

…………。

………………。

この脳天を貫く鋭い痛み!

思い出しましたぞ! っとこれはもう二度目ですな。

くるくるッと俺は新たにループが行われた事を認識し、スタッと華麗に着地しました。

「ここは……」

感覚的な覚えからして、きっとフィーロたんに初めて出会った際に蹴られたのでしょうな。

ニヤッと笑っていたお義父さんが舌打ちした様に見えました。

「ブブブブー」

何やら赤豚が騒いでおりますぞ。

相変わらず醜いですな。

今度もぶち殺すのは確定ですが、もう少し秘密裏に消さねばいけません。

新たなループをしてからコイツの処理の所為で手間取る事が増えましたからな。

それを前々回のお義父さんに注意されておりますぞ。

「ガウ――!?」

「……ん?」

聞き覚えの無い声の方向を見ると……何故かリユート村にいる様ですぞ。

おかしいですな。

俺の記憶が確かならフィーロたんと運命的な出会いを果たしたのは草原だったはずですぞ。

「ここは……?」

フィーロたんがいて、お義父さんとお姉さんがいて、リユート村の者達が俺を若干忌々しそうに見ております。

そして何故か赤豚は兵士を連れておりますぞ。

ここで赤豚を消すのは難しいですな。

で……何故かドラゴンがフィーロたんと睨み合いをしていた様ですが、俺を見て眉を寄せております。

なんとなくですが、ライバルが宿っている様な気がしますな。

こんな情景は初めてですぞ? 全く覚えのないループですぞ。

「一体どうなっているのですかな?」

「何言ってんだ、お前」

ここは上手い事、状況を把握しなければいけませんぞ。

「け、蹴られたショックで何が何だか……」

「ブブブブー! ブブヒブブ!」

何やら赤豚が鳴き喚いておりますが、訳がわかりませんな。

しかし、このままお義父さんをお義父さん呼びすると警戒されてしまう可能性が高いですぞ。

なので、ここはお義父さんを呼び捨てにしましょう。

その上でここはお義父さんに聞くのが一番ですな。

「尚文、経緯を……教えてくれ」

「嫌だ。そのまま記憶でも失ってろ」

うう……お義父さんの俺への風当たりが強すぎますぞ。

当然の事だとは思いますが……しょうがないので赤豚を無視して兵士に聞きますぞ。

「どうなっているのですかな? 経緯を教えてくれですぞ。蹴られた衝撃で記憶が……」

兵士は困惑した様子で赤豚を見た後、口を開きました。

「槍の勇者様がオルトクレイ王から領地を頂き、マイン様と共に統治をしようとした所で、国の密偵がマイン様に書簡を渡した所で盾のフィロリアルと槍の勇者様に授けられた騎竜とで村の統治を賭けてレースをする事になり、槍の勇者様がフィロリアルに近づいた所で蹴りあげられた所でした」

ふむふむ……事情はわかりましたが、そんな事がありましたかな?

少なくともこの様なループはなかったはずですぞ。

ですが、最初の世界で覚えている範囲だと……ああ、クズが俺に報償を渡そうとしたのでしたな。

俺はこの際、領地よりもお姉さんに注意された事を気にして奴隷を購入して自由にさせたいとお願いしたのでした。

そうこうしている内に、何やら赤豚がしばらく焦った様に誰かと話をしていたのは覚えていますぞ。

もしかしたらその順序の違いか何かが起こったとかですかな?

どちらにしても既にリユート村には統治者がいるはずですぞ。

そんな権利、俺には不要ですな。

ただ……ここでふと、前回のお義父さんがライバルに童貞を差し上げてしまい――仲良くしていた光景が脳裏をよぎってしまいました。

目の前にはフィーロたん。

間違いなく数日後にはフィーロたんですぞ。

既にサクラちゃんの色合いではなく、フィーロたんの姿をしております。

つまり条件は揃っています。

そして懐には……報奨金が全額ありました。

後で思うのですが、魔が差したというのはこういう時に言うのでしょうな。

「思い出してきましたな」

俺はその場の空気に合わせて我に返った振りをしながら俄然やる気になってフィーロたんに乗っているお義父さんに向けて近づきますぞ。

「なんだ? さっさとお前も乗れよ」

「冷静になって考えたらこんなレース、する必要ないと思わないか? 何なら俺の負けで良いですぞ」

「ブブブヒーブブブ! ブブブ!」

赤豚が喚いてうるさいですな!

黙れですぞ!

どうせ赤豚がお義父さん達に無意味な喧嘩を吹っかけたのでしょう。

そんな事お見通しですぞ。

ですから俺が付き合う必要は全くないですぞ。

「なんか奇妙な語尾をしているが、何を企んでやがる」

「企むとは心外ですぞ。この前のおね――ラフタリアちゃんの件を謝罪する意味も込めて、お前からフィロリアルを買って精神的苦痛の賠償しようと思うのですぞ」

「どうだかな……」

「ガウガウガウ!」

ドラゴンが何やらここで抗議の声を出している様な気がしますが無視ですぞ!

俺は持っていた金銭を全てお義父さんに向かって投げ渡しますぞ。

「誰がお前なんかに売るか――売った」

お義父さんが俺の投げ渡した金袋の中を広げ……脊髄で了承し、フィーロたんから降りました。

脳内の最初の世界のお義父さんが『まあ……この時期ならフィーロに愛着が湧くかなりギリギリのラインだから金を積まれたら迷うだろうな』と仰っております。

作戦成功ですぞ!

「グア!?」

「ええええええぇえ!?」

お姉さんが驚愕の声を上げておりますな。

「ナオフミ様、フィーロを売っちゃうんですか!?」

「――じゃなくて、何を企んでいる!」

ハッと我に返ったお義父さんが俺に眉を寄せて詰問してきますぞ。

「これから俺は真摯な対応をしようと思いますぞ」

赤豚の方を見てから手に持っている書簡を指差しますぞ。

大方女王からの警告か何かでしょうな。

「この前の件もあって、さすがにおかしいと思っていたのですぞ。もう少し俺達の関係を整理する必要があるな、ですぞ」

「ブブヒー! ぶぶぶぶぶ! ブヒー!」

赤豚がこれでもかと鳴き喚いておりますが、知りませんな。

完全に赤っ恥でヒステリーを起こしているのか、それとも言い訳をしているのかすらわかりません。

まあ、わかりたいとも思いませんがな。

ペッ! 赤豚、死ねですぞ。

「ほら、城に連れて行け」

俺の命令で兵士が鳴き喚く赤豚を城へと連れて行くみたいですな。

そのままフォーブレイ王の所まで出荷されればいいのですがな……まあ後で密かに殺しておきましょう。

「……」

お義父さんはそんな俺と赤豚を考え込む様にして見ておりますぞ。

「お前、本当に知らなかっただけ……なのか?」

「さすがにおかしいと思ってきているのですぞ。その謝罪の意味を込めて、お前からフィロリアルを買いたいのですぞ。それじゃあダメですかな?」

お義父さんは深く考え込みました。

それからしばらくして口を開いたのですぞ。

「……良いだろう。下手に頭を下げられるより、気持ちよく金が使えそうだからな」

「グア!? グアアアアア!」

「ガウ! ガウガウガウ!」

「ええい! ドラゴンはうるさいですぞ!」

俺はフィーロたんにこれでもかとすりすりしますぞ!

「グアアアアアア!? グアグア!」

フィーロたんは俺を何度も蹴り飛ばしてきますが、ご褒美ですな!

ありがとうございますですぞ!

「交渉成立ですな!」

「ああ」

「えええぇええ……ナオフミ様、本当に売っちゃうんですか?」

「まあな。元康も謝りたいってのは本当みたいだしな。これで金をただで渡されたなら信じないが、商売となれば別だ。しかもこれだけの人がいて、アイツの顔に泥を塗りながら俺から買うんだ。嘘は通じない」

「そうだと良いんですけど……フィーロの事は良いんですか?」

「最初に育てたら売る事も視野に入れていただろ。心苦しくはあるが、俺達は暇じゃないんだ。高値で買う奴がいるなら売るのも商売だ」

「グアアアア! グアアア!?」

フィーロたんがこれでもかと鳴いております。

確かに心苦しいですが、これも全て前回のお義父さんが悪いのですぞ!

ライバルなんかに童貞をあげたお義父さんなど、もう知りませんぞ!

「そんなに気になるなら、後でまた奴隷商の所で新しい卵でも買って行けばいいさ」

「ですが……」

この辺りの割り切りは実にお義父さんらしいと思いますぞ。

こうしてお義父さんからフィーロたんを正式に譲渡してもらいました。

フィーロたんの魔物紋に俺が主として登録されました。

フォオオオオオオオオ!

俺は念願のフィーロたんの飼い主になったのですぞぉおおおおおお!

やっふぅううううういいいいええええぁぁあああああ!

「じゃあな元康。あのイカれた女がおかしい所をしっかりと理解しておけよ」

「当然ですぞ。アイツは肥え太った豚ですからな。後で出荷しておきますぞ」

「……?」

お義父さんは俺の返答に首を傾げながら背を向け、金袋をジャラジャラと振りながら歩いて行きました。

お姉さんは何度かフィーロたんの方を心配そうにチラチラと振り返りつつ、お義父さんに付いて行きました。

「グアアアアアア! グアアアアアアアアアアアアアアアア!」

俺に抱きしめられたフィーロたんがお義父さんとお姉さんに向かって何度も鳴いております。

「やりましたぞ! お義父さんからフィーロたんを譲って頂きました!」

後は赤豚を秘密裏にこの世から消し、タクトを惨たらしく苦しめて殺すだけですぞ!

これからのバラ色の日々が幕を開けたのですな!

俺の人生は明るいですぞぉおおお!

「グアアアアアアアアアアアアアアア!」

フィーロたん! ゲットですぞぉおおおおおおー!

と……俺はウキウキ気分で、フィーロたんとのこれからの日々を思い描いておりました。

結果的に言えば……前回のお義父さんに大きく助けられ、俺はその優しさを真に理解し、同時にこの周回で長く続く深い心の傷を負う事になったのですぞ。

……。

…………。

………………。

選択遡行

サクラちゃんを婚約者の所に行かせる。

虎娘を優遇する。

虎娘を優遇する。

虎娘を優遇する。

ランダム遡行←

第一座標…………参照…………照合…………遡行開始――

……。

…………。

………………。

「アレはしてはいけない事だったのですぞ……アレはしてはいけない事だったのですぞ……アレはしてはいけない事だったのですぞ……」

アレはしてはいけない事だったのですぞ……。

うう……お義父さんが!

フィーロたんが――あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

うううぅぅぅぅぅ……。

ふと俺はまたもループしたのだと判断しました。

ですが今はそれどころではないのですぞ。

うう……フィーロたん、恐ろしい……うう……俺はどうしたらいいのですぞ。

あのフィーロたんがまた出てくるかもしれないと思うと恐ろしいのですぞ!

あぁぁあああぁああああ!?

ううう……。

ガチガチと震えるように俺は周囲を見渡しますぞ。

落ち着きませんぞ!

フィーロたんはどこにいるのでしょうか!?

いえ……ここはどこですかな?

パッと見、メルロマルクの城ですぞ。

なんで俺はこんな場所にいるのですかな?

視界に浮かぶ砂時計のアイコンから数日内に波が起こるのがわかりますが……。

自然と癒しを求め……俺は城のフィロリアル舎に足を運びました。

「これは槍の勇者様! 雛の成長は順調ですよ!」

フィロリアル舎に入ると管理をしている兵士が、俺に向けてそう声を掛けてきました。

雛……?

ここはどこのループで俺は何をしていたのですかな?

ですが雛と聞いて俺は頷き……いえ、奇妙な確信を持って……記憶の中にある、懐かしきあの場所へ向かいました。

「ピヨ!」

「お……おおおおおおおおおお……おおおおおおうううううう……ううぅうううううぅう……」

するとそこには……俺は、思わず嗚咽を漏らして涙を流してしまいました。

それも当然ですぞ。

何故なら……何故なら!

「フレ……オン……ちゃん」

それは可愛らしい雛の姿をしたフィロリアル様。

炎の様な鮮やかな赤い色をした羽根。

そして羽根と同じ色をした、宝石の様に綺麗な瞳。

元気に俺に向かってご飯を強請る……俺にとって初めてのフィロリアル様……フレオンちゃんを思わず俺は、抱きしめていたのですぞ。

「ピヨ~~!」

フレオンちゃんを抱きしめて少しばかり精神が回復してきました。

直後、俺はハッとこれから起こる出来事に血の気が引いていきますぞ。

そうなのですぞ。

フレオンちゃんはこのまま成長していくと謎の変死を遂げてしまうのですぞ。

最初の何も知らなかった俺はフレオンちゃんの変死に関して悲しみはしましたが、原因を深く究明しませんでした。

ですが、この話をした際に答えてくれたお義父さんと婚約者の話を参考にすると赤豚が犯人であるのは明白。

まずは赤豚からフレオンちゃんを守らねばなりません。

その為には、まず……赤豚を殺す事でしょうな。

ですが、赤豚は下手なタイミングで殺すと面倒になりますぞ。

俺はフレオンちゃんの所有権利をしっかりと確認しますぞ。

く……赤豚め。

しっかりとフレオンちゃんの所有権利を所持しておりますぞ。

しかもフレオンちゃんは高位魔物紋を施されております。

簡単に解除出来ませんぞ。

波での騒動もありますし、赤豚も消し辛い……どうしたらいいですかな?

薄ぼんやりと思い出せる範囲だと、おそらく今は近日中の波に備えて休息を取っているという所でしょう。

とりあえずこの場から離脱を優先すべきですぞ。

じゃないと今夜か明日にはフレオンちゃんは殺されますからな。

「ピヨ!」

「フレオンちゃん、お散歩に行くのですぞ」

「ピヨ!」

俺の言葉を理解したのか、フレオンちゃんは俺の後をついてきますぞ。

フフ……微笑ましいですな。

「ちょっとフレオンちゃんと散歩に行ってきますぞ」

「どうぞ」

フィロリアル舎の管理をしている兵士に挨拶をしてから俺は庭に出ますぞ。

「……ポータルスピア」

そっと俺はフレオンちゃんを巻き込んでポータルでメルロマルクから緊急離脱しました。

まずしないといけないのは何があっても生き残れる土台でしょうな。

ですから短い間ではありますが、徹底的にフレオンちゃんの強化をするのですぞ。

「行きますぞ、フレオンちゃん! 俺の肩に乗るのですぞ!」

「ピヨー!」

フレオンちゃんがパタタっと器用に俺の肩に飛びあがって乗りました。

なので俺はフレオンちゃんを肩に乗せて颯爽と走りだしたのですぞ。

フレオンちゃん、この世界では必ず俺が守ってあげますからなーーーー!