軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

タクト被害者の会

「なのー」

ライバルは助手に言いたい事が伝わっていないといった様子で声を出しますぞ。

「何ならガエリオンがお姉ちゃんをもっと強くなれるようにしてあげるなの。それとも色々と勉強するなの?」

ライバルは更にシルトヴェルトやフォーブレイへの留学斡旋等の話を提案していますぞ。

そういえばそんな学校の類なんかもこの世界にはあるのでしたな。

「そうじゃないわ。もっと……私自身の力で頑張らないといけないってわかったの! 姉として妹に負けてなんかいられないの」

「なの?」

ライバルは助手が何を言っているのかよくわからないって顔をしております。

逆にそのやり取りを見ていたお義父さんは何かを察した顔をしていますな。

「ガエリオンちゃん。ウィンディアちゃんはLvでも知識でも経験でもなく、姉として何かをしたいみたいなんだ。好きにさせてあげたらいいと思うよ」

「ん? そうなの?」

「そうよ。よくわかってるじゃない」

助手が身の程を知らずにお義父さんに向かって上から目線で言いますぞ。

若干苛立ちますな。

「その一歩の為に私は家に帰るの。送るくらいはして」

「でも……お姉ちゃん大丈夫なの?」

「何度も言わせない!」

おお! 助手がライバルに敵意を向けました。

やーい! 嫌われ者ですぞー!

「ガエリオンちゃん。ウィンディアちゃんはね。喧嘩した――」

「ヴヴヴヴぅううう……ガウ!」

お義父さんが何か言おうとしたところで助手が殺気を放ってお義父さんに唸って吠えますぞ。

何だかんだ助手は野生児ですからな。唸るのでしょう。

「ああ……わかったなの。じゃあ送るなの。なおふみ、ちょっと留守にするなの」

「家の近くに降ろしたら貴方はすぐにこっちに戻っていいわ。アレ……お父さんには私が話をしておくから」

「いいなの?」

「ええ、だけどちゃんと約束するのよ。貴方がしなきゃいけない事が全部終わったら、しっかりと帰ってくるのよ!」

「もちろんなの!」

どうやら助手はライバルを見限った様ですな。

ライバルが好き勝手やらかして挫折した後に説得を図る算段になったようですぞ。

こうして会議を終えたその場でライバルはメルロマルクから東の山脈に向かって飛び立つ事になったのですぞ。

で、出発の直前ですぞ。

見送るお義父さんに助手が声を掛けますぞ。

「私は我慢するんだから、ガエリオンに何かあったら許さないんだからね! しっかりと面倒をみなさいよ! 泣かすような事をしたら許さないわ!」

むしろライバルをどうやったらこれ以上泣かせるのですかな?

既にお義父さんの童貞はないですぞ。

ですが、処女を奪われないように警戒しなくてはいけませんでしたな。

「当然、泣かせてやりますぞ! フハハハ!」

そう答える俺に助手が何故か不思議そうに眉を寄せて俺を見ております。

「あの人、前からおかしいと思ったけど、絶対何か勘違いしてる気がするわ」

「あー……うん、気にしないであげて。悪い人じゃないし、元康くんのお陰で俺とガエリオンちゃんは出会えた訳だからさ」

「否定しちゃ可哀そうなの」

「とにかく、あの人もそうだけど許さないわよ!」

「うん。わかってるよ」

「じゃあ出発なのー!」

バサァっとライバルは羽を広げてそのまま空高く羽ばたいて行ってしまったのですぞ。

ふふ、これでしばらく静かになるのですぞ。

「さあ、サクラちゃん! ライバルが撫でられた十倍、お義父さんに撫でてもらうのですぞー!」

「サクラちゃんならさっきメルティちゃんの所へ行っちゃったよ?」

「なんですとー!」

サクラちゃん、こんな時こそお義父さんとの友好度を稼がねばならないのですぞ。

くっ……ですが、この自由なところこそ、フィーロたんでもあるサクラちゃんの良いところなのかもしれませんな。

なんて感じに霊亀に関する問題は解決をみせたらしいですぞ。

確かにライバルの言う通り、本来俺達が何もしなかった際に発生する霊亀復活の出来事が起こりませんでしたな。

そんなこんなで俺達はシルドフリーデンの問題と錬の捜索を続けながら日々は過ぎていったのですぞ。

もちろん俺は独自にフィロリアル生産者の牧場をあんなにした奴の追跡を行いました。

が、手がかりらしきものは見つかりませんでした。

それからしばらく経ちました。

色々な案件が俺達の所に舞い込んで来たのですぞ。

その中でも大きな案件に俺達は行く事になりました。

「あそこがタクト残党が潜伏しているであろう島かー……」

「そうらしいなの」

俺達は船の甲板から目標の島を確認していましたぞ。シルドフリーデンから東に向かった島の一つですぞ。

それは昨日の事でした。

タクトの残党が高確率で潜伏しているであろう場所が特定されたとライバルが俺達とお義父さんを招集して伝えたのですぞ。

「よく居場所が掴めたね」

「これもタクトの被害者の会からの情報提供なの。この情報を提供してくれた奴はそれこそ聞くも語るも涙の被害者なの」

ライバルはそういうと情報提供者をお義父さんに紹介しますぞ。

かなり草臥れた様子の男性ですぞ。ですがその眼光には最初の世界のお義父さんの様な鋭い何かが宿っているのを感じますぞ。

この眼光……間違いなく信用できる者の目ですぞ。

「これは盾と槍の勇者様方……本日は私、トミー=ミスティラの話を耳にして頂き、ありがとうございます」

「う、うん」

お義父さんは最初の世界のお義父さんに似た眼光を宿す男性に若干気圧されたように頷きますぞ。

「この情報を元にタクト残党を根絶する事、よろしくお願いします。それだけが私の望みであり、同様の被害者達の求める事であります」

「えっと……」

お義父さんはライバルに向かって問うように視線を向けますぞ。

「タクト残党を仕留めるのは当然の事ですぞ」

俺が男性の証言に頷くと男性は信頼しているとばかりに大きく頷き、俺に頭を下げました。

「槍の勇者様のお陰で私はこの場に居られるようなもの……どうか、そのお力で邪悪な者達に神の鉄槌をお与えください」

おお! なんとも話がわかる奴ですぞ。

タクト残党の豚など駆逐すべき害獣ですからな。

これは揺るぎようがありませんぞ!

「えー……色々と話を聞いた方が良さそうだね」

何故かお義父さんが困り顔で言いました。

まあ、これ程の目をするのですから、深い事情があるのでしょう。

「それをお話すると少々お時間が掛るかと思います。まずは……一刻も早く神の鉄槌を下す事を優先してくださる事が、私……いえ、私と志を共にする者達の望みであります」

「な、なんか沢山の人が動いている感じ? 国の捜索以外で」

「はい。タクトによって人生を歪められた被害者達が力を合わせ、各国で動いているのです」

「はぁ……色々と凄い組織になってそうだね。で、タクト残党の潜伏先を突き止めたって話だけど……」

「はい」

情報提供者は世界地図を広げ、とある場所を指差しますぞ。

海にある島みたいですな。

「この島にタクト残党は潜伏していると見て間違いありません。生前のタクトはこの島を買い切ってセブン島と改名したそうですが、現地では魔王島や七裂き島などと呼ばれています」

「ず、随分と物騒な話だね」

「ええ……何でも過去の伝説で七星勇者達が魔王を倒した場所らしいのですが、その魔王は不死で蘇る性質を持っており、止む無く七つに引き裂いて島中に埋めたことで封印したと語られています」

恐ろしく物騒な話ですな。

いかにも伝承の残る島と言った感じですぞ。

「不死の化け物ですかな? そんな奴であろうとも俺は対抗できる術がありますぞ!」

「そんなのを倒せると豪語出来る元康くんはある意味凄いね」

「ま、不死みたいにタフな魔王を騙った奴って事だと思うなの。そんなのは勇者の討伐対象になるのは当然なの。理を無視しているからなの」

「……そういえばガエリオンちゃんって元康くんがいる限りは不死みたいなものな気もするね」

「それがドラゴンであり、ガエリオンなの」

「そもそも不死とやらも魂までは不死ではないでしょうから引き抜いて殺せば良いですな。ライバル、お前を殺せたら苦労しないですぞ」

「フフフ、なの」

俺の槍に寄生する化け物ドラゴンですぞ!

どうしたら浄化出来ますかな!?

「とは言ってもガエリオンの場合は擬似的な不死で、体と魂自体は滅する事は出来るからちょっと違うなの。竜帝の生態でしかないなの」

「それでも十分だと思うんだけどなぁ……」

「まあ、本物の不死であろうと俺は殺せるのは否定しませんぞ」

神すら殺せる0の槍を俺は持っておりますぞ。

最初の世界のお義父さんが言ってました。

不死や不老な奴に効果的なんだそうですぞ。

「確かに槍の勇者なら不老不死であろうと倒せるのは間違いないなの」

ライバルは何故か肯定してきますぞ。

嫌がりながら認めるのではないのですかな?

「倒せる宣言するのもいろんな意味で凄いとは思うけど……」

「そう言った怪しい化け物を屠れると言い切れるキタムラ殿は確かに……勇者なのかもしれんな」

エクレアが納得していますぞ。

物わかりがよくなりましたな。

「まあ、最初の世界のなおふみがしてくれた事の恩恵みたいなものなの。ガエリオンもそれは感知出来るから間違いないなの」

「へー……って島の伝承に関してはこの際、置いておこうか」

「それが良いと思うねぇ……こう、こいつは一刻も早くタクト残党を殺してくれって顔をしてるし」

パンダが情報提供者の男性を困った様な顔をして見ておりますぞ。

そうでしたな。

怨みを抱える者を待たせるのは無粋ですぞ。

「えーっと……どうしてそこまでタクト残党の掃討に力を?」

お義父さんが男性に事情を知りたいと尋ねていますな。

まあ、きっと想像の範疇だと思いますぞ。

「……語れば長い話になります。自分だけでなく、他の者達も似たような者が多いのですが――」

そうして男性は語り始めました。

何でもこの男性はシルドフリーデンで堅実な仕事に就き、日々真面目に、誠実をモットーにして生きていたそうですぞ。

美人の妻に恵まれ、可愛い娘も育ち、順風満帆だったそうです。

ですが不幸が訪れたのだそうですぞ。

何でも妻が病に倒れ、その病を治す為には冒険者でさえも採りに行くのが難しい薬草が必要だったとか何とかですな。

妻を助ける為に男性は必死に金銭を工面して冒険者ギルドに依頼を頼んでいたそうですが、薬草を手に入れたとの話は届かず……名のある冒険者に直接頭を下げにに行くこともあったそうですぞ。

ですが、場所が場所……グリフィンとドラゴンの巣にその薬草は生えているんだとか何とか。

まあ、普通の冒険者では難しいでしょう。

俺達は容易く仕留める事は出来ますが、この世界の連中では中々難しい相手だったりしますぞ。

俺も強化方法が中途半端だった頃はそこまで危険な地域においそれと行きたいとは思いませんでした。

思えばゲーム時代だったら危なすぎる所も狩り場にありましたが……今の俺だと雑魚も良い所ですぞ。

そう考えるとインフレが凄い話ですな。

ともかく、そんな危険な場所に生える薬草が妻の治療に必要だったそうですぞ。

で、機会というか不幸に不幸は重なり、娘の顔の良さに釣られてタクトが話を聞きつけて来たんだとか何とか。

ここでタクトが普通に薬草を採ってきて妻の病を治してしまえば、話は大きくこじれる事もなく不幸が去った、で済んだのでしょう。

ですが、まあタクトですからな。

一癖も二癖もある反吐な解決方法をしたらしいですぞ。

薬草を採ってきたまでは良かったのですが、この男性の前で『雑草を採ってきちまったぜー』と露骨に薬草をチラつかせながらドラゴンの餌にしていたらしいですぞ。

どうか譲って欲しいと男性は懇願し、全財産を出して頭を下げましたがタクトは一向に頭を縦に振らなかったそうですぞ。

やがてその場を立ち去ろうとした所で男性は追い込まれて行きました。

この機会を逃したら妻は助からないかもしれない。

そんな所でタクトは薬草を一枚、目の前で踏みにじりました。

男性は我を忘れて薬草に向かって手を伸ばしていました。

その直後、男性の意識は飛んでいたらしいですぞ。

次に意識が目覚めた時には国の留置場に男性はおり、激昂してタクトに向かって殴りかかったとの罰で捕えられていたんだとか。

確かに飛びかかったのは事実だけどそんなつもりはない、との意見を兵士達は聞き入れる事なく裁判が行われ、男性は強盗罪などの様々な罰で財産は没収され、強制労働の罰が下ったそうですぞ。

ですが、それでも男性はせめてもの祈りとばかりに妻と娘の身を案じました。

そこにタクトは回復した妻と娘を連れて面会にやってきました。

男性は事情を察したタクトが妻の命を救ってくれたんだと安堵しましたが、地獄はここからだったそうですぞ。

何と妻と娘は男性を捨ててタクトに鞍替えしたとの話で、絶縁状を男性に叩きつけて笑いながら去って行ったらしいですぞ。

『私が病で苦しんでいる時に貴方は何をしてくれたの? 命がけで薬を採りに行ってくれたタクトさんの方が何倍も素敵だわ! そういうわけだから、さようなら、情けない人……貴方と一緒だったって思うだけで反吐が出るわ』

『さようなら、カッコ悪い犯罪者のお父さん。カッコいいタクトさんが私達の面倒を見てくれるから、二度と近寄らないでね』

妻と娘の最後の言葉はこれだったそうですぞ。

ここで男性は全てを察したそうですな。

タクトは妻と娘が目当てで近寄り、男性にありもしない罪をでっちあげたのだ、と。

であると同時に必死に妻の為にがんばっていたのに、タクトに乗り換えた妻への殺意を男性は覚え、強制労働を強いられていたとの話。

とんでもない豚ですな。

過去の俺と同じく、そんな奴を妻にしていたこの男性の目が腐っていたのではないですかな?

ですが自業自得とは思いませんぞ。

「という訳で、タクトの正体が白日の下に晒され、こうして私は無実を証明されました。ですがタクトは死んでいても、その残党は残っている! なので私はタクト残党へ復讐する事を誓い、こうして手がかりを見つけて報告した次第です。私の願いは、あの女とその娘にこの世の地獄を味わわせる事です!」