軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

女傑

「なんか……モンスターをハンティングするゲームの相手みたいな感じだなぁ……二足歩行だけど」

「一枚一枚、雪の鎧を剥いだら面白そうですな」

「うん、部位を破壊していく気持ち良さがあるよね」

「勇者殿達……破廉恥に聞こえかねないぞ」

「言葉だけだとそうだねー」

なんてのんきなやり取りをしているとパンダがやれやれと言った様子で肩を上げてため息を漏らしました。

ちなみにコウもユキちゃんも成り行きを黙って見守っております。

「行くぞお前達! この愚か者の氷像を砕くのだ!」

お義父さんを含めて俺達が全くうろたえる様子がないことが気に食わなかった老マンモスが命令しますぞ。

「「「おう!」」」

マンモス六匹が吹雪の竜巻みたいになっているゾウの居る場所目掛けてその足を進めますな。

ズシンズシンと無駄に足音がでかいですぞ。

しかし、竜巻の中のゾウは氷像とやらになっているのですかな?

『力の根源足る地響きの女王が命ずる。真理を今一度紐解き、彼の者たちを撃ち貫く土の一撃を!』

「アル・ドライファ・アーススパイク!」

ズシンと一際大きな地響きが響き渡ると同時に地面に地割れが起こり、周囲に居たマンモス達目掛けて土柱が噴出しました。

「何――ぐあああああああああ!?」

「ぎゃああああ――」

「そんな――まさか――」

物の見事に全員の鳩尾辺りに土柱が命中して全員を跳ねあげますぞ。

更にズシンと音を立てると吹雪の竜巻が一瞬で吹き飛ばされ、若干雪を纏ったゾウがそこから姿を現しました。

「昔は憧れの気持ちを抱きはしたけどね。世の中を見てたら氷雪系の魔法が使えるか使えないかなんてどうでもいいことだってわかるもんだ。レイニー様が言っていた通りだったよ」

ドスーンとマンモスたちが地面に叩きつけられました。

「ぐううううう……」

「うぐぐう……」

「くうううう……」

マンモス達はその巨体故に叩きつけられる事に関して受身の取り方に馴れがない様ですぞ。

ゾウは……パンダの祖父や老婆相手に器用に投げ飛ばされても受身は取っておりましたから技術面でも上なのはわかりますな。

「ほら、これで終わりじゃ面白く無いでしょ? さっさと立ち上がって来なさい」

くいっとゾウはマンモス共を手招きしますな。

「おのれ……なめるなぁああああ!」

老マンモスではなく、ゾウの兄らしい奴がハンマーを持ってゾウに向かって突撃しますぞ。

……動きがゾウよりも遅いですな。

当ったら凄そうですが、当らない攻撃に意味はありませんぞ。

「ふん!」

ゾウが大きく右足を相手の方目掛けて踏みしめますぞ。

「うお!?」

すると殴りかかっているマンモスの足元に大きな衝撃が走り、若干浮き上がったのですぞ。

そこにすかさずゾウがショルダータックルを腹目掛けてぶちかましました。

「うげ――」

物の見事にマンモスはタックルを受けてピョーンと跳ね飛ばされて行きました。

ドスーンと一匹マンモスがノックアウトですな。

「おやおや、おぼっちゃまには厳しかった? ははははは、笑い物ね。ほら、来なさいよ」

ゾウが吹き飛ばされたマンモスを見て唖然としている他のマンモス目掛けて挑発をしていますぞ。

「は、はあああああああああああ!」

お? マンモスが三匹、腰に下げた鉄球を振り回しながら突撃しています。

しかも鋭い牙による突きまでやる様ですぞ。

やはり単純な手数が多いですな。

「なんていうか重戦車って感じだね。しかも氷魔法まで使う訳だから強いってのはわかるような気もする」

「そうだな……だが――」

「おりゃあああ!」

ゾウはそんなマンモス三匹の突撃を、地面から出した岩を投げつけつつ一匹の牙を掴んで他のマンモスに思い切りぶつけました。

「ぐあああああああ!」

「きゃああああ!?」

「うぐうううう!?」

マンモス三匹が団子状になって転がされますぞ。

それでもどうにか立ち上がろうとするマンモス相手にゾウが貫禄のある表情を浮かべますぞ。

「それだけでは、エルメロ殿には通じない様だ」

そうみたいですな。

あのゾウならばあんな奴等楽勝ですぞ。

なんせ、ゾウは良いゾウですからな。

「ゾウ、行けですぞうーーーーーー!」

「……」

俺の応援にお義父さんがちょっと困った顔をしていますぞ。

隣で突然大声を出してしまったからでしょう。

「ほらほらほら! いつまで地面に這いつくばってんだ! ああ、地面にキスするのが好きなのかい? じゃあこうしてやるよ!」

ずるっと投げ飛ばされて立ち上がろうとしていたマンモス達に地面から土が蔓のように伸びて地面に這いつくばらせますぞ。

「ぐっ……この程度……く……」

縛られたマンモスがその戒めを振り解こうとするのですが全く解けませんな。

そんなマンモスに近づいたゾウが片足を上げてマンモスの頭を軽く踏みつけました。

「ほーら、これが好きなんだろ、変態」

「おのれぇえええええええええええええええええええええええ!」

踏みつけられたマンモスが完全に侮辱として受け取り、怒声を上げますぞ。

おおう……凄い光景ですな。

俺もフィーロたんに踏まれてみたいですぞ。

ご褒美……蹴られた事はありますがな!

「盾の勇者、わかったかい? あれがゼルトブルでエルメロがやっていた見世物さね」

「あー……うん。確かに女王様だね」

確かにそうですな。

俺も知っていますぞ。

そういった癖と言うか演技が入ってしまうのでしょう。

さすがに過去の俺でも恋愛はなかった豚でしたが、そんなおかしな豚を見た事があります。

ともかく、ゾウに踏みつけられたマンモスが拘束を振りほどこうと必死になっております、鼻で足払いとか姑息な事をしようとしているようですが。

「おやおや鼻癖の悪い事で」

ズムっとゾウがマンモスの鼻を思い切り踏みました。

「ぐぎゃああああああああああああ!?」

「ああもう。うるさいねー!」

ドンと踏みつけをやめると同時にゾウが地面を踏みしめると拘束されたマンモスの腹部辺りに衝撃が走ったみたいですな。

「ぎゃ――!?」

それだけで三匹のマンモスは泡を吹いて失神した様ですぞ。

「たわいもない。誰だっけ? 一騎当千とか……ゼルトブルが下賤な国とか言ってたのは? この程度で?」

そう言いながらゾウは張本人の老マンモスに挑発の手招きをしますぞ。

うむ、絶好調ですな。

「ぐ……」

「まさに木偶の坊とはこの事だね。気分はどう? 今まで馬鹿にしていた目の上のタンコブに完全に凌駕される気持ちは」

「調子に、のるなぁああああああああああああああああ!」

老マンモスがハンマーを投げつけますぞ。

ゾウは投げつけられたハンマーを器用に鼻で掴んで一回転しながら投げ返しました。

「何!?」

ゴン! と老マンモスの隣に立っていた……母親らしいマンモスの眉間に命中しますぞ。

「アガ!?」

当たり所が随分とよかった様ですな。

母親らしいマンモスは白眼を剥いてドサッと倒れました。

「ああ、そうそう。アンタのヒステリックの仕返しもしておくか」

で、ゾウはまた踏み鳴らしましたな。

すると地面から土柱が上がり、母親らしいマンモスの顔面をぼこぼこと殴って、跳ね上げられたハンマーがトドメとばかりに牙に降り注いで一本へし折りましたぞ。

「はい、完了。意識が戻った時にどんな叫びをあげるかが楽しみね」

何というか……壮絶な家族内戦争ですな。

もしもマンモス一家とゾウが人だったら物凄い絵になりますぞ。

どっちも容赦がないですな。

「ヒィ……」

老マンモスの他に残っていたマンモスが恐れる様な声を上げますぞ。

「……」

ゾウは一歩、また一歩とズシン、ズシーンと音を立てて残った怯えを見せるマンモスに近寄っていきますな。

やがて……ゾウが目の前に来た事で怯えマンモスが腰を抜かして座り込みました。

「随分とプハント家の者の戦いってのは甘い様ね? これが……世界ってもんなんだよ!」

「ぐあ――」

で、ゾウは腰を抜かしているマンモスに地面から岩を出して投げつけました。

ドスンと岩の下敷きになって怯えマンモスもノックアウトですぞ。

ちなみに死んではいないみたいですな。

「さて、後は……」

残った老マンモス相手にゾウは視線を向けますぞ。

「お爺様、ほら、私の鼻でもへし折ってみなさいな」

「ぐぬぬぬ……こんな事をして許されると思っているのか!」

「思ってなきゃするわけないでしょ? そもそも私はこの家から既に追放された身。赤の他人の一家に恨まれたって知らないね? そもそもここはシルトヴェルト。力でその意志を示す国」

ゾウはつらつらとシルトヴェルトの国としての流儀を言いますな。

「私は正々堂々アンタ達に力で競って勝利した。にも関わらず、権力を行使しようってのは……お笑い草にも程がある。他の貴族達が何て思うのかしら?」

確かに血と力を重視するシルトヴェルトでその様な卑怯な事をすれば嘲笑されてしまうでしょうな。

もちろん裏では卑怯な事をしているかもしれませんが、表沙汰になったら終わりですぞ。

この辺りはメルロマルクやフォーブレイと比べてシルトヴェルトの方が強い気がしますな。

「ほら、さっさとアンタが耳にタコができるくらいに言っていた過去の大戦での強さってのを見せてみな」

「言われなくても見せてやる! そしてお前の牙をへし折ってくれる! 死ねぇええええええええええええ!」

老マンモスが投げ返されたハンマーを持って、ゾウに向かって振り下ろしました。

そのハンマーをゾウは片手で受け止め、流れるようにマンモスの腹に拳を叩きこみ、くの字になったマンモスの頭を鼻で叩きつけ、空いた腕を残った牙に向けて振り下ろしたのですぞ。

「情けない。やっぱ口だけね」

「アガアアアアアァア!?」

バキンと音を立てて老マンモスは倒れ、牙がへし折られました。

なんとも重量級の豪快な戦いでしたな。

これで随分と過負荷を掛けて戦っているとの事なので……このマンモス共は完全に見かけ倒しって事になりますぞ。

まあ、俺達基準で言えば動きが重そうな戦いでした。

対処はそう難しくないですな。

「ふん、こんなものか」

と、マンモス六匹を倒したゾウが勝利の声を上げますぞ。

ハッと我に返ったゾウがお義父さんの方を見て……最近の大人しい感じのゾウに戻りました。

「エルメロすごーい!」

コウが両手を上げてゾウに近寄っていきますぞ。

そんな静寂を遮るようにお義父さんが拍手をしますな。

合わせるようにパンダとエクレアも拍手を始めました。

ユキちゃんもしております。

俺も合わせておきましょう。

すると屋敷の屋根の方からピューピューと音が聞こえてきました。

「あ、あの者達は……って……」

「やったね! エルメロー!」

ゾウに飛びかかったコウをゾウは抱きあげますぞ。

「そうね。ちょっとやりすぎちゃったとは思うけど……すっきりしたわ」

コウを抱き上げたまま、ゾウはお義父さんの下へと来ますな。

それから決闘に参加しなかったマンモス達に鋭い目線を向けますぞ。

「決闘はこれで終わりで良いでしょ? それじゃあ約束通りもう私やレイニー様の件で、関わってくるな」

そう、ドスを利かせましたぞ。

なんとも……女傑って言葉がしっかり来る戦いでしたな。

コウが懐く相手と言うのはどうも意志が強い方が多い様ですぞ。

お姉さんやその友人も、いざって時は意志を見せる方でしたからな。

つまりコウは……おねしょたですな!

よく覚えておきますぞ。

おねしょたですぞ!

「じゃあ手当ては……移動の準備を終えたら最低限って感じで良いね。エルメロさん、持っていく物、連れて行きたい者達の準備が済んだらまた」

「はい、盾の勇者様……何から何まで、お気遣い、感謝申し上げます」

「気にしなくて良いよ。今回の騒動だって俺が原因みたいなものなんだ。むしろ絶縁の原因になっちゃったけど大丈夫?」

「……はい。迷いは振り切れました。どうかお気になさらず今後ともよろしくお願いします」

そう、ゾウはシルトヴェルトの忠義の証とばかりに敬礼し、お義父さんに許可をもらって準備を始めました。

オロオロとケバマンモスがゾウとマンモス、お義父さんを見ておりましたが、お義父さんは完全に見向きもしておりませんぞ。

「俺に近づきたかったら、相応の武勲等の活躍を見せるんだね。正直、君みたいな人は好みじゃないんだ。それじゃ」

おお……お義父さんが物凄くはっきりと言い切りましたな。

随分とプレイボーイにも見えますぞ。

問題は相手がマンモス獣人って所ですがな。

ですが……確かにあのケバマンモスの様相は赤豚を連想して嫌ですな。

赤豚程の邪悪さは感じられませんが、男は女の魅力でメロメロにすれば良いとか浅はかな感じがヒシヒシとしました。

「パンダ」

「なんだい?」

「あのケバマンモスは美人なのですかな? 俺にはピンときませんぞ」

「そうだねぇ……あたいからしても若干ずれそうではあるけど、獣人的感性で言えば顔と体型はかなり良い方だねぇ。美人ってのは間違いないよ」