軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パンダの故郷

「サクラ、ナオフミのお出かけ、しっかりとやり遂げろなの」

「ブー」

ライバルも余裕がある時はお義父さんの送迎によりこっちで食事を取っております。

サクラちゃんは当然、抗議で返しますぞ。

何故お前がサクラちゃんに命令しているのですかな?

四天王なんぞにはなっていませんぞ。

お前など、出てくる食事に悉く毒が混ざるシルドフリーデンで飯を食っていればいいのですぞ。

毒なんて今のガエリオンに効果などない、と言っていたのを俺は覚えて居ますからな。

ドラゴン推進派閥の連中も敵対勢力に襲われそうになることが増えてきています。

タクト勢力ではなく、他のライバルの改革が気に食わない連中からの妨害だそうですぞ。

どうしようもないですな。

まあ、ボディガードの類が優秀だそうで、犠牲者は出ていないそうですがな。

名目さえ立てば駆逐も簡単だとライバルは炙り出しも兼ねて色々と暗躍しているそうですぞ。

どうやらライバルは今回、お義父さんの外出には付いて来ないようですな。

居なくていいですぞ。

「お義父さん、俺も行きますぞー!」

サクラちゃんがお義父さんの隣の座をライバルから奪い取る手伝いをしなくてはいけません。

この元康、その為の協力は惜しみませんぞ。

ライバルがシルドフリーデンでノロノロしている間にお義父さんのハートをがっぽり稼ぎましょう。

目指せお義父さんEDですぞ。

「ふむ……イワタニ殿、今日はどこへ行く予定なのだ?」

エクレアが今日の目的地を尋ねますぞ。

俺もそこまで緊急の用事はないですな。

シルドフリーデンの方ではユキちゃんを筆頭とした優秀なフィロリアル様達がアイドル活動を自主的にしているので、居なくても上手く回り始めております。

「うん、ちょっと行きたい所があってね。休日みたいな感じのお出かけになるのかな?」

「おでかけー、エルメロも来るよね?」

「もちろん」

コウとゾウが楽しげに話しておりますぞ。

「で? どこに行くんだい? ったく、盾の勇者様ってのもマメな性分だねぇ」

パンダがエクレアと同じく、お義父さんにどこへ行きたいのかと愚痴りました。

「それでね。俺が行きたい場所っていうのは……」

お義父さんが地図を広げてサクラちゃんにわかるように見せながら指差しますぞ。

シルトヴェルトの辺境ですな。

こんな所に何があるのですかな?

おや?

そこを指差した直後、パンダが誰の目から見てもわかるほどにパンダなのに眉を寄せていますぞ。

「あんたな……城下町に一人居る、あたいと同郷の奴にでも聞いたのかい?」

「想像に任せるよ。まあシルトヴェルトの人達の話だと隣国らしいんだけどね。有名な保養地でもあるらしいんだ。ちょっと位ゆっくりしても良いんじゃないかってね」

お義父さんがなんとなくワザとらしい口調で言いますぞ。

しかし、パンダに同郷が居たのですな。

お義父さん曰く、何か店を営んでいるらしいですぞ。

「行きたくないとあたいが言ったら?」

「別に来なくてもいいよ? その場合はラーサさんは城で部下の面倒を見ててよ」

「行かないって選択はないのかい?」

「その選択肢がシルドフリーデンを立て直させたいと思う俺の好奇心にあると思う?」

エクレアとゾウ、俺、サクラちゃんをはじめとしたフィロリアル様達や城の者達、ライバルが交互にお義父さんとパンダを見ますぞ。

このやり取りからしてここはパンダに関係のある場所なのでしょうな。

パンダがこれでもかと怒りを押し殺しているのか歯がゆいのか、拳を握っておりましたが諦めたように握りを解きますぞ。

「わかったよ。たくっ……相変わらず物好きな勇者様だね!」

「ラーサさんには色々と助けてもらっているからね。フィロリアルやみんなの面倒も見てもらっているし、挨拶くらいはしたほうがいいでしょ?」

「そんな気を使うほどでもないっての」

「なるほど……つまりラーサ殿の故郷なのだな?」

「そのようですね。よくわかりましたね?」

「そこは色々とね。ラーサさんの立場とかの関係で城の人達も経歴調査をしたみたいだから別に余計な出費はないそうだよ」

「こんな事に余計な人材を割いてどうするってんだい。まったく……」

パンダがお義父さんの護衛になった時点で調査が入っていたって事ですな。

そこはシルトヴェルトも国家という事でしょう。

そもそもパンダがここにいる時点で問題ないと判断されたという意味でもありますからな。

「俺もそこまで根掘り葉掘りは聞いてないけど、報告くらいは行ったほうがいいでしょ?」

「多少は覚悟してたけど、ここまでとはねー……驚きだよ」

パンダがぼりぼりと頭を掻きます。

「別に調べられて恥ずかしい過去とかはないし、会わせたくない相手がいるわけじゃないけどね。あんまりいい気分にはならないよ」

「それだけ盾の勇者様に興味を持って頂いているのだぞ。誇りを持つがいい」

シュサク種の代表がパンダを注意しますぞ。

お前、居たのですな。

「はいはい。わかってたけど面倒だね」

パンダは非常に怠惰な様子で手を振って立ち上がりますぞ。

「んじゃ、行くとするかい?」

「うん」

そんな訳で俺達はパンダの故郷に向かってサクラちゃんとコウに馬車を引かせて移動したのですぞ。

「ここがラーサ殿の故郷か……」

目的地近くに辿り着き、馬車を降りてエクレアが周囲を見渡して言いますぞ。

竹林が多い、山脈地域と言った場所の様ですな。

なんとなくパンダの生息地のような地形としか言いようがありません。

不思議なのは道中に雪山があって行く手を阻みかけた事でしょうかな?

サクラちゃんやコウの足にかんじきが必要な時がありました。

ユキちゃんだとその羽毛の色から見分けるのが大変な位一面が白かったですぞ。

「途中すさまじい雪山だったけど、うん、なんか想像通りの地域だね」

本当、周囲は竹林だらけですぞ。

山々が鋭い岩で、こう……秘境という言葉しかないですな。

なんとなく冒険心が疼きますぞ。

ドライブモードしたくなりますな。

「ったく、あたいの故郷ったって、物心付いた頃はここに住んじゃいなかったんだけどね。ここに戻ってきたのもそれなりに大きくなってからだよ」

「そうなんだ?」

「人の過去に興味あるのかい? 物好きだねぇ」

「ラーサさんってどういった経緯で傭兵になったのか位は聞いてみたいとは思うけど? もちろん、話したくなかったら言わなくてもいいんだからね?」

「本当、好奇心旺盛な勇者様だよ」

なんて話をしながら俺達はパンダの故郷の集落らしき所にやってきました。

するとそこには沢山の村人や豚、そしてパンダが居ますぞ。

「ん? そこにいるのはラーサズサじゃないか!」

パンダの一匹が俺達の方に居るパンダに声をかけてきますぞ。

村人パンダと区別しておきましょう。

村人パンダは親しそうな雰囲気を纏っています。

「国の方で大手柄を取ったって聞いたけど、一体どうしたんだ?」

「ああ、その手柄で盾の勇者様の護衛仕事を手にしたんだけどね。その勇者様があたいの家に興味があるんだとさ」

「なんと!」

村人パンダがお義父さんの方を見ますぞ。

盾を持っているから一目瞭然ですな。

お義父さんはそんな村人パンダに言いました。

「盾の勇者をしている岩谷尚文です。ラーサズサさんには色々と助けてもらっていて、一度お礼にと思ってきました」

「は、はあ……誠に恐縮でして、ありがとうございます。えっと……ちょっと村の者達に説明をしてきますので、お待ちください」

「ええ」

おずおずといった様子で村人パンダはお義父さんに頭を下げてから駈け出して行きますぞ。

「大変だー! ラーサズサが盾の勇者様をお連れになって凱旋だぁああああああああああああああああああ!」

何と言いますか、大騒ぎになっていますな。

昔、金持ち豚と田舎に行った際に似たような出来事に遭遇した事がありますぞ。

あの時は彼氏扱いで俺が連れていかれましたからな。

よく考えるとおぞましい記憶ですぞ。

樹や錬がよくやっている、黒歴史として封印しましょう。

「はぁ……まったく、これだから嫌だってのがあったのにねぇ」

パンダが頭を抱えるようにして言いますぞ。

「で? 盾の勇者様? わかってるのかい? これで下手にあたいの立場が悪くなると帰りづらくなるんだからね」

「なんとなく覚悟はしてたけど……そこは大丈夫な様に気を使うよ」

「どう気を使うのか不安だねぇ……」

「なんか騒がしくて楽しくなってきたね、エルメロー」

「楽しいかはわからないですが、ラーサの珍しい顔が見れるのは良いですね」

「お前な……」

パンダがゾウを睨みますぞ。

この二人はいつもこんな感じですな。

「ラーサ殿の種族は希少種族と聞くが、思ったよりも居るのだな。一家庭かと思っていた」

エクレアは逆に感心したように答えますぞ。

「さすがにそれは少なく見過ぎなんじゃないかい?」

「すまない。私の知る希少種というか幼少時に尊敬していた師とも思える者が最後の生き残りだというのがあってな」

「そこまで壊滅的だった訳じゃないよ」

「ある意味、イワタニ殿とは因縁が深い者だな」

お義父さんと因縁の深い者ですかな?

それは初耳なので記憶しておきましょう。

いずれ何かの役に立つかもしれません。

「へー……どんな人?」

「最初の盾の勇者の仲間をしていたリザードマンと呼ばれる種の原種の末裔だ」

「それは凄い人なんだね」

「ただ、その者も波の被害で父と町を守ろうと老体で無理して亡くなった……父が紹介した妻も間に生まれた子供もおそらくは……」

やや空気が重くなりましたな。

「まあ、あたいも今まで外の世界を見て回ったけど、あまり見かけないのは事実だねぇ」

パンダが空気を察したのか話題を戻しますぞ。

何だかんだで配慮の上手いパンダですな。

「クマ獣人は結構いるみたいだけどね。パンダはさすがに少ないよね。ここはパンダ好きの人には楽園に思えるかもしれないね。ただ、亜人も多いんだね」

「獣人化を習得してない奴等さね」

ああ、そういえばパンダは豚になれるのでしたな。

キールと同じですぞ。

ですが、男も混じっていますな。

どのような原理なのか不思議でしょうがないですぞ。

「んー?」

サクラちゃんは小首を傾げてパンダの集落が大騒ぎになっている所を見ています。

それから、村を挙げて宴会をしようと提案する村の者達にお義父さんが困った様子で相手をしていました。

集落きっての大事だったようで、みんな緊張している様子ですぞ。

「ラーサ……おかえりさ……」

すると、そこにクジャクのような尾羽が派手な獣人と老けた感じのパンダがやってきました。

クジャクのような獣人がやや涙ぐんだ様子でパンダに駆け寄ってきますな。

それから熱い抱擁をしますぞ。

「ああ……ただいまさね。お父さん。それと爺さん」

「おかえり、随分と立派になったようだな」

老けたパンダは背中に大きなキセルを背負っていますな。

それは武器か何かですかな? 鈍器みたいですぞ。

「そんなんじゃないよ。ただの仕事の延長線上さね」

「それでも……ラーサ、お前が生きてここに帰ってきた事を、みんな嬉しく思うぞ」

「ああもう……」

パンダは居心地が悪いといった様子でクジャク獣人の抱擁を受けたまま頭を掻いておりました。

で、老人パンダがお義父さんに向かってシルトヴェルト流の敬礼のポーズをとって挨拶をしますぞ。

「盾の勇者様とその一行の皆さま、この度は我らが集落への来訪、誠に感謝する次第です。どうぞ気が済むまで滞在くださいますよう、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそよろしくお願いします」

最近、お義父さんは権力を持つ者としてあんまり下手に出過ぎてはいけないと注意された手前、良いとばかりに頷きました。

「そうだ。ラーサ、お腹が空いているだろう? せっかくだからワシの作った料理を食べて行くと良い。待っていてくれ。すぐに作るから」

クジャクの獣人が抱擁をやめて料理をすると出て行こうとしますぞ。

フッ……お義父さんの前で料理とは、運の悪いクジャクですな。

「いや、別にそこまで腹は減っちゃいないんだけどね……」

「しかし……」

「本当、大丈夫さね」

「そうかそうか。たまーにラーサからの手紙が来るだけだったから不安になっていたけど、大丈夫なようで何よりさ」

うんうんとクジャク獣人が頷いていますな。

このクジャク獣人、お義父さんが目に入って居ないようですぞ。

「えっと、ラーサさんのお父さんですか? 盾の勇者をしている岩谷尚文です。よろしくお願いします」

若干気を使った様子でお義父さんが声をかけて握手を求めると、お義父さんを見てクジャク獣人が絶句したように驚きの表情になってから恐る恐るといった様子で握手をしました。