軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

事務所

ライバルがシルドフリーデンの支持率を稼ぐ為に色々と動きまわっている頃の事ですぞ。

「お義父さん、いらっしゃいましたな」

フィロリアル様達を集めたアイドル活動をしている俺の事務所にお義父さん達がやってきました。

パンダとゾウは既に何か仕掛けられていないか会場のチェックをしていますぞ。

「馬車で通った時には特に意識して見てなかったけど……シルドフリーデンの都市部ってやっぱり俺の知る世界の都会に似てるね。海外映画の都市部みたいな町並みがあって、人々が亜人や獣人が混じっていなきゃ異世界だって忘れかけちゃう時があるよ」

「確かにそうですな」

フォーブレイやゼルトブルに比べるとパチモンな町並みですが、確かにそれっぽい所はありますな。

だからこそ俺はここに事務所を用意したのですぞ。

アイドルを目指した豚共との出来事などを参考に、事務所はこう言う場所に用意するのが多かったからきっと何か理由があったのでしょう。

現に大成功を収めた豚が何人かいましたからな。

さて、ライバルよりも俺の方が有能である事をアピールする時ですな。

妙な国政等はそれこそ議員共にやらせておいて俺達はアイドルとして国民に支持を受ければ良いのですぞ!

ライバルがいない今こそ、お義父さんに見せつける時!

尚、ユキちゃんとサクラちゃんを含めたフィロリアル様達は既にステージの方でリハーサル中のはずですぞ。

「キタムラ殿は変わった所を拠点にしているのだな」

エクレアが俺の案内する事務所のあるビルと呼べる建物を見て言いますぞ。

シルトヴェルトに行く道中でも似た様な石造りの建物はありましたが、それよりも近代的なのは確かでしょうな。

シルドフリーデンにはコンクリートに似た建材があるからですぞ。

まさにビルですな。

夜には魔法で照らされた街灯もあってまさになんちゃって都市ですな。

派手な看板も設置済みですぞ!

「ところで……ユキ達はどこにいるのだ?」

「ユキちゃん達はまだ練習中なので事務所の方に来てほしいですぞ」

俺はビルの階段へとお義父さん達を案内し、二階の事務所へと連れて行きますぞ。

「一階は馬車の駐車場な感じだったけど……二階は事務所だね。なんか子供になった探偵とかの事務所っぽい感じだけど」

「ここは俺達のアイドル業と提携したい人達と話をする所ですぞ」

「ああ、そうなんだ? じゃあ三階かな?」

俺はお義父さんを三階へと案内します。

室内には様々な衣装が積まれていますぞ。

他にも色々と演目に合わせた小道具なんかも収めてあります。

「ここは俺が作ったフィロリアル様達のステージ衣装を収める予備の倉庫になりますな。化粧室にもなっていていつでもお着替え出来ますぞ」

「へー……楽器もあるんだね」

「アイドルと歌は切っても切れない関係ですからな。いろんな曲を用意する為に必要なのですぞ」

「ガエリオンちゃんも凄いと思ったけど元康くんも相当がんばっているんだね」

「何ならお義父さんも着替えて一緒に歌いますかな?」

最初の世界のお義父さんが着ていた鎧なんかも見た目だけは再現しておりますぞ。

俺の記憶を元にしてフィロリアル様のミュージカルに使うかもしれないので作りました。

「いや、俺は良いけど……なんか元康くんの好きを纏めた感じで良いね」

「褒められて嬉しいですぞ!」

「あ、カツラなんかもあるんだ?」

「どんな色合いもありますぞ。フィロリアル様はメッシュを入れるのが好きな子やカラーコンタクトを付けたがる子もいますからな」

クロちゃんみたいなフィロリアル様は稀に居るのですぞ。

それもまた個性で素晴らしいですな。

「ふーん……本当、元康くんは結構博識だよね」

「中高生時代は結構色々な事をやりましたからな。ああ、思えば大学デビューを機にイメチェンを意識して今の髪型にしていましたが、昔はこんな髪型をしていましたな」

俺は前髪が長めのショートの地毛と同じ色のカツラを用意し、髪を外からわからない様に纏めてから被りますぞ。

目元が若干暗くなりますが、中高時代はこんな感じで過ごしていましたな。

「うわ! 何コレ!? 本気でギャルゲーの目元が見えない地味な主人公みたいな感じになった!? どうなってんの!?」

お義父さんが今までにない位のテンションで俺に近づいてマジマジと見てきますな。

でへへ、そんなに見られると照れますぞ。

「へぇえええええ! これってこんな感じになっていたんだなぁ……近くでよくよく確認すると元康くんがイケメンだってわかるし……なるほどなぁ……あの手の主人公って実はイケメンって感じで魅力になってたんだなー」

お義父さんが凄く感心したと言った声で何度も頷いていますぞ。

久々に褒められて俺も鼻が高いですな。

「イワタニ殿、キタムラ殿を見て何故そこまで興奮をしているのだ?」

「え? だってエクレールさんだって驚かない? 今の元康くんって顔が良いのが鳴りを潜めていて一目で判断するのは難しくなってるよ?」

「確かに、変装と言う意味ではキタムラ殿は中々の腕前であるな。近くで顔を確認するとキタムラ殿だとわかるが……」

「これはわかる人じゃないと共感出来ないのかもしれないなぁ……複雑な心境だ」

お義父さんが若干困った様に呟きました。

「目立たなくなったのは間違いないと私は思うぞ」

「そう言うのとはちょっとずれているんだけど……まあいいや」

「学生服なんかもありますぞ?」

俺が前に通っていた学生服なんかも再現しております。

フィロリアル様に学生時代の服を着せてみたかったので思い出を頼りに再現しました。

残念なのは女子用の制服は豚が着ていた件ですな。

「ここまで来るとコスプレな次元になってくるけど、元康くんが通った学校の制服だと思うと感動しか出来ないね……ちょっと羨ましいな」

「通っていたのは豚が大半で服の魅力を引き出せはしていませんでしたがな」

思い出すと気色の悪い場所でした。

しかも三ヶ月通って居たら良い方の学生生活でしたからな。

いろんな理由で転校を余儀なくされました。特に高校生活は。

飽きはしませんでしたが忙しない青春でした。

なので制服もいくつか種類がありますぞ。

「……元康くんの居た日本に行ってみたい気もするけど、俺だとそこ等に居るモブとしか見てもらえなさそうだなぁ……」

「イワタニ殿?」

エクレアが首を傾げてお義父さんに声をかけております。

「お義父さん、居るのは豚ですぞ? 誰に見てもらうのですかな?」

「ああうん……元康くんはそうなんだろうね。こう……夢のような世界がね……俺を現実に叩きつけると言うかね」

「イワタニ殿は恋愛をしたいのか? 引く手数多だと思うが、恋する相手は気をつけてほしいとしか私は……その、申し訳ないが助言できん」

「うん……同情されるのがちょっときついかな。大丈夫、みんなが居るからね。元康くんの世界は俺には厳しいだろうなって思っただけ」

豚が多い世界ですからな。

俺は絶対に帰りたくないですぞ。

俺の世界はここ、フィーロたんとフィロリアル様がいるこの世界ですぞ。

「それで元康くん、ここが事務所なのはわかったけど、サクラちゃん達はどこにいるの? 近くの会場とか?」

「それはこっちですぞ」

俺は階段を下ってビルの地下へとお義父さんを案内しますぞ。

地下には照明を設置し、ステージを用意しました。

シルドフリーデンにいる亜人獣人に合わせて階段は大きめに作ったのでゾウであろうとも入ることができますぞ。

ちなみにパンダは入場口で客の持ち物検査をしている様ですな。

アイドルに不埒なことをする輩がいないとも限りません。

室内は意図的に少しうす暗くしており、ステージを高めに作っております。

「ではお義父さん、しばし待っていてほしいですぞ」

「あー……なんかちょっと不安になってきたけど、わかったよ」

俺はお義父さん達をその場に残してステージ裏のほうにある準備室に行きます。

「声をもっと遠くに出すと良い。こんな感じでー」

何やらゾウがフィロリアル様達を前に発声練習のようなことを指揮棒を持ってしていますぞ。

低い声音ではありましたが、オペラ歌手みたいな声が響いていますな。

「わー」

「すごーい」

「こーお?」

フィロリアル様達も合わせてゾウが指示した発声を再現しております。

「そうそう、上手上手。それができればもっとみんな上手に歌えるようになるわ」

「やったー!」

既に客は徐々に集まりつつありますからな。

グッズ販売は鉄則ですぞ!

最初の世界でもこれでいろいろと人気を稼ぎましたからな!

フィーロたんファンクラブの会員十傑がこのループでも集まるのは時間の問題ですぞ。

「元康様! どうですか? サクラと一緒にやった振付の練習は!」

ユキちゃんはとてもリズミカルに、俺が見せた振付を守って踊っております。

煌びやかでキラキラした雰囲気が実にアイドルらしいですぞ。

「バッチシですぞ! 今日も頼みますぞ!」

「はいですわ!」

「ささ! みんな! お義父さんが来ました! 打ち合わせ通りに準備ですぞ! 開演の時間が近づいていますからな!」

「「「はーい!」」」

というわけで演目が始まりますぞ。

俺がステージの奥で楽器の演奏を始めますぞ。

「あ、ナオフミー」

サクラちゃんがお義父さんに気づいて近寄りますぞ。

フィーロたんが着ていた衣装を模した衣装を着てもらっています。

ですが若干サクラちゃんとは雰囲気が合っていない気がしますな。

気にせずに行きますぞ!

そんなわけで俺達が作った音楽と共にフィロリアル様達が歌って踊る楽しいショーが始まりました。

メインはユキちゃんとサクラちゃんが打ち合わせ通りに踊り始めます。

若干サクラちゃんが遅れ気味ですが、気にせず楽しむことを優先しますぞ。

やがてバックダンサーをしていたフィロリアル様達が代わる代わるに歌を歌い、ショーは盛り上がって行きました。

客が楽しげに光る棒を振り回して合わせますぞ。

「L・O・V・E。ラブー!」

俺が決めさせたファンの振付を客も合わせて行い、会場の心は一つになったのですぞ。

やがて……1時間に渡るショーは終わりを告げました。

パチパチパチとファン達の拍手と声援を終えて……一旦演目が終わり、ステージの幕が下りて客が去って行きました。

これで休憩を挟んで数時間後には再開ですぞ。

「どうでしたかな!」

お義父さんとエクレア達に俺は尋ねました。

十分なショーになったと思いますぞ。

「うん。みんな歌も踊りもレベルが高かったと思うよ」

よし、ですぞ。

大絶賛ですな。

「だけど……」

お義父さんが言葉を選ぶように若干困った顔になりました。

何かあったのですかな?

「なんで地下ステージ? 客も思ったより居ないみたいだね……熱心な人はいるみたいだけどさ」

「何事もこういった場所が始まりであり、ここがフィロリアル様達のライブ会場として聖地となるのですぞ」

「うーん……」

お義父さんの反応がどうも弱いですな。

「元康くんの経験に裏打ちされた感じなのかな?」

「そうですな。この世界に来る前の日本でアイドルをしていた豚などのことを参考にしていますぞ」

フィーロたんのライブツアーを参考にするにしても、あれはすでに誰の目にもわかっている状況でしなければいけないくらいはわかりますからな。

なのでこのような場所でわかる人にはわかるショーをはじめとして、全国展開を目標にやっていくのですぞ。

要は下積みですな。

「地下アイドルとしか言いようがない……」

お義父さんが膝と両手を地面につけて何やら暗い感じで言いました。

何かいけなかったのですかな!?

「ガエリオンちゃんに負けないようにがんばってるんだろうけど、規模で負けてる……」

「ここは奴のホームグラウンドですぞ! フィロリアル様の人気を稼ぐには熱心な信者を集めてから口コミで人気を増やすのが最終的な近道なのですぞ! ファンサービスが重要なのですぞ」

「本当に元康くんはアイドルなヒロインを参考にして、上手く攻略していたんだろうけど……激しく不安になってきたよ」

応援とか心の支えをしていただけなのかな、と何やらお義父さんが俺を疑うような眼を向けてきました。

豚との思い出など投げ捨てたいですが、こういったショーをあの豚はして、めちゃくちゃ客が来たのですぞ!

最終的に大々的な会場を確保して大成功を収めたのですぞ!

すぐにこの場所ももっと客が増えますぞ!

初めはこんなもんなのですぞ!

やがて入場チケットにプレミアがつくのですぞ!

「私はこのような場所の意味はよくわからんが……ダメなのか?」

エクレアがわかりもせずに言いました。