軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バックアップ

「この国の山奥……もう少し南の方にもいるから丁度良いはずだってー」

「人里近くに生息するドラゴンという問題なのであったな」

「弱いから山奥から追いやられてあの様な場所に住んでいるのですぞ」

俺の口撃を喰らえですぞ!

嘲笑う様に言ってやりました。

さあ、悔しがれですぞ。

「ガウガウ」

なっ……ライバルはすんなりと頷きました。

悔しくないという事ですかな?

なんと薄情な奴ですぞ。信じられません。

「親をバカにされてもビクともしてないね」

「なんて言うか……槍の勇者よりも反応は大人に見えるねぇ」

「うーん……個人的に今はドラゴン退治はしたくないかな。失礼な感じになってしまったけど、さっきまで喋るドラゴンと話をしていた訳だし、ドラゴンを育てる為にドラゴン退治をするのもね」

「ではどうするのですかな?」

「メルロマルクで売ってたりしない? その手の素材とか」

「あるとは思うが偽物が多いと聞くぞ」

エクレアが説明しますぞ。

確かに聞いた事がある話ですな。

「ガウ、ガーウ」

そんな話をしている間にライバルが自分の手を軽く噛んで血をしたたらせつ、額と胸に何やら紋様を描いて行きますぞ。

何をしているのですかな?

「何をやってるんだろう?」

「これは……魔物紋じゃないかねぇ? 見覚えがあるよ。魔物自身が描くなんておかしな話だけどねぇ」

「ガウ!」

それからライバルはお義父さんを指差して鳴きました。

「ぶー……やだー」

サクラちゃんがここぞとばかりに抗議しています。

一体どんな事を言っているのですかな?

「んー……この反応とか元康くんがフィロリアルの卵とかにしていた事を考えると、俺を飼い主として指名って所かな?」

「ガウ!」

コクコクとライバルは会話が出来ない癖に頷きました。

おのれ……喋れなくてもボディランゲージで会話をするとは、姑息にも程がありますぞ。

「ナオフミ、ドラゴンの飼い主になるのー?」

「そうなるね。この子が望んでいるみたいだし」

「ぶー……」

サクラちゃんが頬を膨らませていますぞ。

考えてみればこの世界ではサクラちゃんの主として登録されているのは俺なのですぞ!?

つまりフィーロたんのごしゅじんさまである、という事でもあります。

うっ……急激に頭が熱くなってきました。

ブハッ!

「い、いきなり元康くんが鼻血を滝の様に噴出させた!?」

「ガウ!?」

ライバルが距離を取りました。

「キタムラ殿は己の血を使って不意打ちで主従契約を奪い取ろうとしたのだろうか?」

「今の元康くんならやりかねないけど……どこまでも邪魔しようとするし」

「ち、違いますぞ。考えてみたらサクラちゃん……フィーロたんの主を俺がしている事に気付いたのですぞ!」

念願のフィーロたんのごしゅじんさまに!

俺は今!

なっているのですぞ!

「ぶー……サクラ、ナオフミもごしゅじんさまにしたい」

「複数契約も出来た筈だねぇ」

「ガウ! ガウガウ!」

ライバルがここぞとばかりにお義父さんに飛び跳ねて自己主張していますぞ。

この反応は……俺は過去のループからライバルの行動パターンを解析し、理解しました。

「お義父さんの初めてを狙っていますぞ! そうはいきませんぞ!」

「卑猥な言い方を……キタムラ殿、まずは鼻血を止めるのが先決ではないか?」

「ははは! フィーロたんのごしゅじんさまとなっている俺からしたらその程度、造作も無いのですぞ」

「いや、割と危険な勢いで鼻血が出てるよ?」

おふ……フィーロたんへの愛で目眩がしてきました。

ですが、しょうがないですぞ。

俺の想いが膨れ上がった結果、血という形で現れたのですからな。

つまりこの血は俺の愛なのですぞ。

「とりあえず元康くんに回復魔法を掛けて……」

お義父さんが俺にツヴァイト・ヒールを施してくださいましたが、すぐに鼻血が出てきました。

ああ、俺の止め処ない愛が溢れているのですぞ。

「回復したその場でまた飛び出してる!? 元康くん! しっかりして!」

「元康様! しっかりして欲しいですわ! ユキ達を遺して逝ってはダメなのですわ!」

「んー?」

ユキちゃんとサクラちゃんの声に俺はハッと我に返った気がしますぞ。

……なにやら頭がすーっとしていますな。

「興奮が冷めてきた気がしますぞ」

「血が抜けて物理的に下がってるんじゃないかい?」

「槍の勇者様は……その、色々と変わった方だと、今日だけで理解できました」

ゾウが何やら俺を理解したつもりで呟いておりますぞ。

そんなゾウ相手にコウが後ろから登ろうとしております。

やはりコウは少々空気が読めない所がありますな。

そんな所もかわいいですがな!

「とりあえず元康くんは大丈夫そうだから、この子が望む通りの登録をしてあげようか。サクラちゃんに関しては後で元康くんと話をして決めようね」

「ぶー……」

サクラちゃんは不満とばかりに静かに抗議していますが、お義父さんはライバルの方を優先してしまっていますぞ。

「もっと自己主張しないといけませんぞ、サクラちゃん!」

「ぶー……!」

俺の提案を受けてサクラちゃんがさっきよりも大きく声を上げました。

その調子ですぞ!

「あのね、サクラちゃん、元康くん、この程度で大騒ぎをしない様に。ここに来るまでの間で話をしていたからわかっているはずでしょ? 俺が世話をするのは決まってたんだからさ」

「わかってたけどー……なんかやー……」

「ですぞ!」

「もう……良いから、登録の順番位は我慢する。元康くん、サクラちゃんの主登録に関して後で俺を入れるか話をしようね」

む? お義父さんの提案に考えますぞ。

悪魔元康が俺の耳元で囁きました。

『元康、お前は今、フィーロたんのごしゅじんさまになっているのだぞ。それをごしゅじんさま達にして良いのか?』

なっ……それはどういう事ですかな?

ここで天使元康が現れて反対側の耳元で囁きます。

『元康、お前は愛の狩人。お前の独占欲でフィーロたんを閉じ込めて良いのか?』

『邪魔をするな天使! 誰にも譲れない想いも愛だ!』

『そちらこそ悔い改めなさい! 愛とは平等の奇跡! 愛天使を鳥籠に入れるとは許されざる罪!』

『燃え盛る様な想いもまた! 愛なのだ! 天使め! お前は愛を分かって居ない!』

悪魔元康が天使元康にブリューナクを放ちますぞ。

『ぐあ!?』

『そのまま消え失せろ!』

天使元康が悪魔元康に負けてしまいましたぞ。

決定ですな! フィーロたんのごしゅじんさまと言う念願の状況を独占しますぞ!

『まだ……だ』

何!?

天使元康が起き上がってボロボロになりながら答えますぞ。

『お前の愛はフィーロたんだけなのですか? ではお義父さんはどうなるのですか? それでは守る意味すらも揺らぎます。お前の愛したフィーロたんは、お義父さんが居て初めて完成するはず!』

『ぐあああああああああ!?』

天使元康がF=エヴァンジェルスピアで悪魔元康を刺し貫きますぞ。

『これぞ愛……独占欲も愛として認めはします。ですが……しっかりとフィーロたんを構築するものを蔑ろにして良いものでは無い。そんなだからサクラちゃんは殻から出ずフィーロたんの正体を隠しているのです』

なんと! くうう……サクラちゃん!

だからフィーロたんになってくれないのですな。

この元康、深く反省しますぞ!

『く……良いだろう。だが覚えておくが良い。第二第三の悪魔元康が現れ、いずれ貴様に勝利する時が来る事をな! フハハハハ!』

そう言いながら悪魔元康は消滅して行ったのですぞ。

『例え何があろうとも、最後に愛が勝つ!』

天使元康が綺麗に纏めました。

悪魔が勝つ展開が多い印象ですが、今回は天使が勝利しましたぞ。

これも俺の愛の成せる業ですな。

なんてやり取りを脳内でしている内にお義父さんはライバルに主従契約をしてしまいました。

「ぶー」

サクラちゃんはずっと不満を声に出しています。

「サクラちゃん、帰ったらお義父さんもごしゅじんさまの登録をしてあげますぞ」

「わーい、わかったー」

「ガーウ!」

ここぞとばかりにライバルが俺達に勝利の声を上げていましたが、ここは我慢しますぞ。

あの状態の奴には色々とハンデがまだあるのも事実ですからな。

そんな訳で俺達は足早にメルロマルクに戻ったのですぞ。

城に戻った俺達を婚約者が出迎えてくれました。

それから話を円滑に進める為に竜帝の核石を取り寄せたのですぞ。

シルトヴェルトの方は盗まれてしまっているので、メルロマルクの宝物庫から提供されたのですぞ。

何個かは外れだった様ですが、当たりが何個か見つかりました。

そんな竜帝の核石をライバルが弾いて食べていますぞ。

ああ、もちろん、その間にサクラちゃんの主登録をお義父さんと共有しました。

そして、ライバルと話をしているとユキちゃん達が抗議して話が進まないだろうとの事で、ユキちゃん達は婚約者に預けられ、別室で待機させられてしまいました。

「ガウガ……てすてす……うん、喋れる様になったなの。う~ん……やっぱりループ直後はガエリオン不便なの」

ライバルがここぞとばかりに口をモゴモゴさせてから喋りはじめました。

相変わらずの媚びた言動にイラッとさせられますな。

「えっと……君が元康くんの槍の中に記憶を寄生させてループに便乗するドラゴンで良いんだよね?」

「そうなの! ガエリオンなの! あ、でもワイルドなおふみはメスリオンって呼んでいたなの!」

確かに最初の世界のお義父さんはそう呼んでいましたな。

なんでも同じ名前で面倒だとか。

「なんで?」

「メスのガエリオンだからなの! ワイルドなおふみの世界じゃガエリオンは二匹いるなの。そっちはオスなの」

「へー……じゃあなんて呼べば良いのかな?」

「どっちも大切な名前だからどっちで呼んでも良いなの! このループのなおふみだけの呼び名でも良いなの!」

「ここぞとばかりに取り入ろうとしてもそうはいきませんぞ!」

俺がライバルに槍を向けて威嚇しますぞ。

「まだ自己紹介の段階なの。取り入るなんてはしたない真似はしていないなの」

ここぞとばかりにライバルは猫を被っていますな。

俺はわかっているのですぞ。

コイツがお義父さんを狙っているのは間違いないですからな。

警戒するに越した事はないですぞ。

「まあまあ元康くんも落ちついて。というか、今回の件が発生してからまったく落ちつきが無いから、厳しめに言うと……落ち付け」

ややお義父さんが声のトーンを下げて注意してきますぞ。

これは! 俺の行動でお義父さんがお疲れになってしまったのですかな!?

ですが、ここで引いてはいけない様な気がしますぞ。

「キタムラ殿、不服なのはわかるが、必要な事なのであろう? 避けては通れないのだ。問題があるのだったらイワタニ殿だって文句は言わないはずだぞ」

「正直、槍の勇者のワガママも大概にして欲しいねぇ……色々と警戒したいって気持ちはわかるけど、それくらい盾の勇者だって理解してるだろうさ」

「はい。今後の為に協力をしてもらいたいのですよね?」

エクレア達が揃って、まるで俺が悪い様に言っていますぞ。

く……しょうがありませんな。

奴の化けの皮が剥がれるのを待つしかありません。

サクラちゃん、しばらくの辛抱をお願いしますぞ。

どうせ変な事を言ってお義父さんにドン引きされるはずですからな。

その時になったら盛大に笑ってやりますぞ!

HAHAHA!

「とりあえずガエリオンちゃんって呼ぶね」

「わかったなの。いつでも呼び名を変えてもガエリオンは答えるなの」

突っ込みたい衝動に駆られますが、お義父さんの命令なので黙っていますぞ。

静かに、冷静に、クールになるのですぞ。

瞑想して邪念を払う感じですな。

「それで、ガエリオンちゃんはこっちの事情とかわかる? 他にも色々と聞いて良いかな?」

「事情と言われても、ガエリオン……ワイルドなおふみの世界に行ってからはそこまで記憶のバックアップを取らなくなっていたから、ちょっとわからない事も多いなの。むしろ伝説の槍に設定していた物の自動発動を切り忘れていた様なものなの」

バックアップですかな?

こやつの言っている事はよくわかりませんぞ。

「……つまり本来のガエリオンちゃんではなく、しかも更新をあまりされていない感じ?」

「んー……その辺りの説明はややこしいなの。ワイルドなおふみの世界だとガエリオンは死んでいて居ないから、本来なんて無い様な物とも言えるし、こうして喋っているのだからいるとも言えるなの。それに槍の勇者がまたループするなんて想定外なの」

「まあ……そうだよね」

その件に関しては俺もわかりませんぞ。

どうしてループしているのか……まあ前回の様に世界を救えば良いのではないですかな?

わからない事を考えてもしょうがないですぞ。

それよりもエターナルフィーロたん計画の方が100倍大事ですぞ。

「ガエリオンが覚えているのはラフーになってしばらくしていた頃くらいなの」

「えっと、ラフーって何?」

「ああ、このループでは居ないなの? むしろどんな経緯なの? なおふみ、最初から教えて欲しいなの」

「え? じゃあ順を追って説明して行くね。まず俺がこの世界に盾の勇者として召喚されて、その日の内に――」

と、お義父さんはメルロマルクからシルトヴェルトまで行き、それからも色々とあった経緯を説明しました。