軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ラストチャンス

ラストチャンス。

そう、お姉さんが並行世界から迎えに来た後、数々の失敗の末に見放され、もうフィーロたんに二度と会えないと突きつけられてしまったのですぞ。

お姉さんが最後の慈悲とばかりにチャンスを与えて下さいました。

あの時の事を思うと、チャンスを望む者には少しばかり俺も慈悲を与えようかと考える時が稀にあるのですぞ。

「へー……」

「あのチャンスをどうにか出来なければ俺は永遠にフィーロたんに逢えず彷徨っていたかもしれませんな」

「今も会えていないんじゃない?」

「ぐわああああああああああああ!?」

お義父さん、なんて無慈悲な事を言うのですかな!?

ああ、俺はどうしたらこの世界でフィーロたんに逢えるのですかな!

最初の世界のお姉さん! どうか俺をフィーロたんの下へ導いてくださいですぞ!

「フィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたん!」

「元康様! 落ちついてください!」

「ごめん、口が滑った。元康くん落ちついて! 俺が悪かったから戻って来て! ほら、サクラちゃんだよ」

お義父さんが座って休んでいたサクラちゃんを抱きかかえて俺に差し出しますぞ。

「んー?」

「フィーロたん……お義父さん、サクラちゃんはフィーロたんじゃないのですぞ。サクラちゃんはサクラちゃんなのですぞ」

「アッサリと我に返ったのは良かったと思うけど、元康くんも面倒な性分だね……」

「コントをよくやるねぇ……」

「もはやギャグ扱い……まあ良いや。これくらいが元康くんの平常運転なんだろうし」

お義父さんはサクラちゃんを再度座らせてから振り返って俺の方に顔を向けました。

「ともかく、元康くんも成長しているって事なんだね。無慈悲に皆殺しを提案するかとヒヤヒヤしてたよ」

「それとこれとは別ですな」

俺の慈悲を無下にしたらそれこそデストローイの時間ですぞ。

タクトや三勇教の様にしてやります。

「なに……俺が本気になってリベレイション・ファイアストームⅩなどを連射して行けば、この程度の国、あっという間に焦土に変えれますぞ。それとも開発中のリベレイション・メルトブラストの試射でもしてみますかな?」

威力を限界まで引き上げた広範囲殲滅魔法ですぞ。

雑魚共を蹴散らすには丁度良いですな。

「何か不吉な魔法名が聞こえるなぁ……目から極太ビームを放つし、国を焦土に変えるとか平気で言うし……」

「試しますかな?」

「しなくて良いよ」

何やらお疲れのお義父さんが俺に命じますぞ。

残念ですな。

「ともかく、シルドフリーデンに来る前から覚悟はしていたんだ。これからが大変なんだから色々と踏ん張り所だよ」

そうでしょうな。

タクトの息の掛かっていた国なのですからダメダメで当然ですぞ。

とはいえ、意外にも今日のお義父さんは強気の態度でしたな。

「お義父さんも改善を意識してか強気でしたな」

「あー……まあね。あそこでテロリストが現れたからしょうがないよ、と許すと相手の思う壺だからね」

「何かあるのですかな?」

「なんていうのかな、敗戦国の代表達が空港に出迎えに来ない時点で邪推しちゃうかなぁ」

ふむ、確かに奴等は城で待っていましたな。

そういうモノだと思っていましたが、現在のシルトヴェルトとシルドフリーデンの関係的には少々対応として不自然かもしれません。

テロリストが現れてもおかしくないと考えていた、あるいは繋がっている、とお義父さんは考えているのでしょうな。

だからこそ、それを解決して乗り込み、高圧的に相手をしているのでしょう。

ここで引いて調子に乗られる方が困るという事でしょうな。

「まあ盾の勇者が政治屋をして上手く行くか見物だね」

「どっちかと言うとその辺りはシルトヴェルトの人達任せにする予定だよ。俺達の目的は脅威となる波やタクト派閥の根絶なんだから」

「その為に来たんだったねぇ。いきなりの歓迎でどう国を変えて行くのかって思っちまったよ」

「まあ……少しは口を挟むかもね。じゃあ会談まで休んで、挑むとしようか」

なんて感じで俺達は少しばかりの休憩をしてからシルドフリーデンの者達との会談をする事になったのですぞ。

シルドフリーデンの者達はお義父さんや俺を会議場に案内し、会談の席に着きますな。

俺は極力黙る方が効果があるとの事で方針等の指示はお義父さんが行う事になりました。

「えー……盾の勇者様、シルドフリーデンへの視察の件、こちらも出来る限りの歓迎とパレードを行いたいのですが、どういたしましょう?」

「戦勝国の凱旋には必要かと思います」

シルドフリーデンの者達は元よりシルトヴェルト側の者達も同様に提案していますぞ。

パレードですか。

ここは一発、お義父さんの威光を宣伝するのも良いですな。

「ここに来るまでにやったんじゃないの?」

「アレは移動して頂いただけなので……実行する場合、もっと大々的に行います」

お義父さんを歓迎するパレードですな!

ワクワクしてきますぞ。

最初の世界を救った時の様に盛大にやりましょう。

「来国早々に眉間に向かって狙撃された方からしたら延期をしたい、食事も無差別に毒物を混ぜられる可能性だってありそうだ。俺達が来たからこんな事件が起こるんだって名目にされそうだし、強行するのも良いけど、もう少し時期を見てからでも遅くは無いはずだ」

「わかりました。勇者様の意見ももっともでしょう。パレード等は事が終息してからに致しましょう」

最初の議題はアッサリと先延ばしになりました。

残念ですがどうやらパレードはしないみたいですな。

「で、前代表であるネリシェンだっけ? タクト派閥のアオタツ種でシルドフリーデンの大統領の消息はどうなってるの?」

「えー……詳しく経緯を説明しますとシルドフリーデン軍がシルトヴェルトへと進軍をした際、後続で作戦担当をしておりました。ですが勇者様方によって飛行機などの兵器が殲滅され、更に軍が壊滅的な打撃を受け、撤退……本国に帰還後、突如姿を消しました」

「戦争に負けた事を悟って雲隠れしたのでしょうな」

豚らしい逃げ足ですぞ。

怠け豚に匹敵する逃げ足なのではないですかな?

いえ……怠け豚は不穏な気配を即座に察して俺の射程外へと逃げ果せるので、それ以下でしょうな。

アヤツの危機回避能力は神がかっていますぞ。

「シルドフリーデンから出国したかどうかは判明しているの?」

「各地で厳重な検問を行っていますが引っかかる様子はありません」

「とは言っても……検問を張っているのはシルドフリーデンの者でしょ? 身内可愛さに庇っているんじゃない?」

「と、とんでもない。国家の代表であるにも関わらず他国の者と内通し、私怨による戦争を引き起こした重罪人を逃す理由などありません。我等が国が生き残るにはネリシェンの捕縛は責務と言えるでしょう」

お義父さんの言葉をシルドフリーデンの者達が汗を拭いながら否定しました。

まあ、その通りですな。

シルドフリーデンの者達からすれば、逃がす=自国の終わり、となってもおかしくない以上、血眼になって捕まえようとすると思いますぞ。

「どちらにしてもこの国で俺達も独自調査を行う予定だから、癒着の証拠が出てきたら容赦しないよ」

「肝に銘じております」

「シルトヴェルトからも鼻の利く者を派遣して追跡を致しますので、どうかご安心を」

「ああ、どちらにしても工作までして無駄な争いを起こしたんだ。報いはしっかりと受けてもらわないとね。潜伏場所の特定も急ぐように」

「「「は!」」」

しっかりと皆、敬礼しておりますな。

そうですぞ。お義父さんをもっと敬えですぞ。

「次は……手荒な歓迎をしてくれた連中と犯人、それに協力した者の特定は済んだ?」

「狙撃手に関しては既に槍の勇者様によって即座に無力化……龍刻の砂時計でLvリセットを行いました。その状態で尋問しております。ですが……まだ時間が掛りそうです」

「幻覚魔法が使える者にタクトに見える幻覚を施してやれば良いのではないですかな?」

最初の世界は元より、前回の周回でお姉さんによく俺が魔法でフィーロたんと思わされた事が多かったのですぞ。

お義父さんが『えげつないな……』という顔でこちらを見ました。

それも一瞬の事ですぐにシルドフリーデンの者達にお義父さんは言いました。

「ああ、タクトの配下なら効くかもね。実は生きていて助けに来たんだ! だから仲間の居場所を教えてくれ! って感じで」

「はい。そちらも併用して行う予定です。しばらくお待ちを……ですが、作戦の失敗により指示した者は逃げている可能性が高いでしょう」

「だろうね。シルトヴェルトでも似た結果だったしね。内通者の特定は? アレだけの爆発物を設置するとなると相当数になると思うけど」

「狙撃者とは通じていなかったのではないかとの意見が出ています」

「まあ、それぞれ別の派閥が各々罠を仕掛けていたって可能性はあるね。協力か個別か双方の可能性を視野に入れて調査を」

「そして情報を全て吐かせた後に、実行犯は元より関係者は勇者様の前で全て公開処刑を行い、見せしめと致します」

「い……!? わ、わかった。これ以上無駄な抵抗は無意味だとわからせるには良いか」

お義父さんが僅かに声を漏らしました。

何だかんだお義父さんはお優しい方ですからな。

最初の世界でも公開処刑を行う際にウンザリした顔でタクトと豚共の処刑を見ておりました。

なんでも、アレはやらねば示しが付かないそうですぞ。

世界を玩具にした罪は重いのですな。

仮にやらなかった場合、悪しき前例になるそうですぞ。

あるいは甘すぎる処分と糾弾される事になるでしょうな。

「爆発物に関してですが、部品類はタクトが監修した代物である事までは特定出来ております」

「ラーサさんが解体したけど、その辺りはわかる?」

ボディガードをしているパンダにお義父さんが尋ねますぞ。

「いいや? あくまでアタイは爆発物の解体を知ってるだけで、どこの製品なのかまでは知らなかったねぇ。言える事と言えば、魔法に重きは置かれていない事くらいかねぇ」

「タクトが監修していた工場とかか……となるとフォーブレイ製?」

「いえ、ネリシェンと親しい間柄だったタクトとの共同出資によって領地内に作られた工場です」

ズブズブではないですかな?

そういえばタクトは前回の周回でケチであるという話を聞きましたな。

つまり何かをする時、自分ではなく相手から金を出させているという事でしょう。

「一応シルドフリーデン製か……ここに来るまでにちょっと見たけどフォーブレイと同じくガンショップがあるみたいだね」

「はい。我が国シルドフリーデンが、ネリシェンの指示に因って、大々的に作らされていた工場があります。視察されますか?」

「そうだね……その手の技術者がどれくらい流出しているのか、特定すべきだろうし」

最初の世界では婚約者や女王、クズ等の者達が解決した案件をお義父さんがやらねばならないのでしょうな。

しかも前回のループの様な勇者としてのポジションだけではいけないという、お義父さん自身の役割もかなり様変わりしているみたいですぞ。

何でしょう……碌でもない事がまだまだ起こるイヤな予感と言う奴をヒシヒシと感じますな。

「あの……」

シルドフリーデンの者達がお義父さんの顔色を窺う様に声を掛けて来ました。

「何?」

「盾の勇者様達、シルトヴェルトはシルドフリーデンをどのように改革をしたいのか、その方向性をお聞きしたく申し上げます」

「……」

ここに来て、どうしたいのかと聞いて来るとは……やや呆れた表情でお義父さんは若干眉を寄せた後、少し溜息を吐きました。

「一番の目的はタクト派閥の殲滅。フォーブレイが世界中に懸賞金を掛けたけど、それで駆逐するには奴等は逃げ過ぎた。どこかで潜伏し、宗教の如く仲間を増やしながら機会を窺っている。波で世界が危機に陥っているのに復讐なんて真似をしようとね」

お義父さんがウンザリした口調でシルドフリーデンの者達に説明しますぞ。

そうですな。

今後の事を考えれば、本来はタクトの残党を構っている余裕などありませんぞ。

「タクトの罪状はわかっているよね?」

「は!」

シルドフリーデンの者たちもそこは理解しているのか力強く頷きましたな。

「世界を玩具にした癖に残された者達がその罪を理解せずに権力や利益を利用しよう、復讐をしようと動いているんだ。それは正直、君達からしてどう?」

「許し難い大罪だと心得ております」

「そう。そんな連中の撲滅が第一の目的になっちゃってるね。で、この国に来る時に考えていた、二番目になってしまった目的はシルドフリーデンの波を俺達が鎮めないといけないから確認に来たんだ。で、一番の理由に重なるんだけど、波に参加するドサクサで襲撃されたり、シルドフリーデンの者達に妨害されない様に今の内に手を打ちに来たんだ」

なんと、そんな深い訳があったのですな。

さすがお義父さんですぞ。

これにはシルドフリーデンの者達も感謝の気持ちで一杯でしょうな。

でなければ俺が感謝したくなる様に教育してやりますぞ。

「それは……勇者様方の使命への認識、感謝いたします」

「三番の目的はシルドフリーデンの治安維持と賠償金支払いの見張り、それとタクト派閥と関係を築いていた者達の掃討。国民の意識調査なんかもしておかないと勇者としてまともに行動できない」

お義父さんの皮肉が混じった考えの提示を聞いてシルドフリーデンの者達も一様に理解した様ですぞ。