軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

足長おじさんの懇願

その後、何度かループし、お姉さんからお叱りを何度も受けました。

まあ色々ありました。

ほんの些細なミスでも最初の世界通りになりません。

お義父さんにだけ密かにお金を持たせたりなど、色々と画策したのですが、尽く失敗しました。

調整しようとすればする程、ズレてしまいます。

面倒なのでお義父さんの味方になって以前の様なループをしていたら一ヵ月程でお姉さんが現れ、お説教と共にループさせられました。

段々と俺に対するお姉さんの評価が下がって来ているような気がしますぞ。

なのでループを繰り返す内に、お姉さんに評価してもらおうと目星を付けました。

俺は赤豚の陰謀に乗り、胃に穴を空けながらもお義父さんを弾劾してから、ある程度放置しました。

そんなある夜の事ですぞ。

「……ふう」

やっとお義父さんがお姉さんを奴隷として購入し、火の番をさせて仮眠をしている時に俺は仮面をかぶって袋を担いで現れました。

「……?」

小さなお姉さんがお義父さんを起こそうとするのを止めて内緒とばかりに指を立てます。

そして薬と食べ物を差し出しました。

「プレゼントですぞ。元気になるのですぞ」

「あ、ありがとうございます……?」

更にお義父さんの力になれる様にちょっとした機材とお姉さんにおもちゃを与えて俺は去りました。

「死ねぇええええええええええ!」

「うぐふ!?」

今度はお姉さんの一撃をもろに喰らって俺は吹き飛ばされてしまいましたぞ!

やはり場所はメルロマルクの城ですな。

俺の隣にはこの周回のお姉さん(焼け焦げ)が倒れております。

脈を測った所、もう息はしておりません。

どうしてこうなったかと言うと……。

「貴方は……私達にプレゼントを配ってくれていた足長おじさんだったんですね!」

「ち、違いますぞ!」

「その声に聞き覚えがあります! なんでこんな事をしているんですか?」

親しげにこの周回のお姉さんは俺の腕に腕をからませてからお義父さんの方を見ました。

「ナオフミ様、この人は――」

お義父さんはお義父さんで親しげに俺に擦り寄るお姉さんを見て、赤豚に嵌められた時と同じ表情を浮かべていました。

……直後にお義父さんの方から憤怒の炎が噴出し、観衆を含めて辺りを焼き払いました。

まあ、俺は耐えきれましたが、錬や樹、赤豚やクズは瀕死ですな。

ゆらっとお義父さんは周りに脅えるのか怒りで何も見えなくなっているのか誰もいない所を睨んでゆらゆらと歩き始めております。

「……ここは……地獄だ。悪意で作り上げられた世界……全てが俺を……こんな世界、滅んじまえ! 寄るな! 消えろ! 誰も……俺を信じてくれない……悪夢……だ」

憤怒の感情に飲みこまれ、いないはずの幻想の相手に拳を振りかぶっているように見えました。

もはや俺とお姉さん以外、まともに動ける者はいない状況ですぞ。

俺はお義父さんやお姉さんの力になろうと、お義父さんが就寝してお姉さんがうつらうつらとしている時に毎晩色々とプレゼントを施していたのですぞ。

波でお義父さん達が死ぬかもしれないからですな。

不安を解消しようとしたらこんな結果になるとは思いもしませんでした。

お義父さん達は見知らぬ援助者がいる事を知って、少しだけ楽しげにLv上げを始めた様に見えました。

どこの誰かはわからないみたいですが、もらえる物はもらっていました。

お義父さんも少しだけ喜んでいましたな。

そうしてお姉さんは密かに物をプレゼントする俺を足長おじさんと呼び始めました。

まあ俺の脚は平均よりも長いですが。

お義父さんも徐々に味方がいるかもしれない、と言った雰囲気を出していました。

中々に良い状況ですな……と思ったのですが。

波が終わった後、予定通りに赤豚から話を聞いてお姉さんを解放させるための決闘をしたのですぞ。

予定通りに赤豚の横やりが来るように俺が追い詰められてお義父さんに勝ちました。

俺の頬を叩いたお姉さんが俺に詰め寄ろうとした直後、ですぞ。

何やら女の勘なのか、はたまたお姉さんの能力なのか、俺がお義父さん達に援助している事を気づかれてしまって親しげに声を掛けられてしまったのですぞ。

後は上の通りですぞ。

「さて……懺悔の時間です。貴方は一体何を仕出かしたんですか?」

「違いますぞ違うんですぞ! 俺は誠実に行動したんですぞ。誤解ですぞ!」

これだけ強くなったはずなのにどうして俺はお姉さんに手も足も出ないのですかな。

「その言い訳は聞き飽きました。私がいるのは良いとして、どうしてこうなったのか問いただすとしましょうか」

お姉さんはまるで最初の世界のお義父さんの様な、厳しい視線を俺に向けました。

ハンマーで風を切っておりますぞ。

返答を間違えたら、今度こそ殺されてしまうのではないですかな?

「ですから誤解なのですぞ!」

俺は経緯をお姉さんに説明しました。

お姉さんの瞳から光沢が消えていますぞ。

凄く怖いですぞ……。

というか……お姉さんが出てくるタイミングが絶妙でしたな。

「――という感じですぞ」

「……それをナオフミ様に見られ、私が貴方に鞍替えした様に勘違いされた、という事ですか」

そうですな。

現にお姉さんはお義父さんに向かって話しかけようとしていました。

続く言葉が「今までありがとうございました」だったら絶望でしたが、きっとお姉さんですからな、俺が足長おじさんである事をお義父さんに伝えようとしたのだと思いますぞ。

「これは私に対する挑戦ですか? 私の堪忍袋を破壊しようとしている訳ですね?」

「違いますぞ! そんなつもりはなかったんですぞ!」

「じゃあなんで私がナオフミ様を裏切ったかの様な誤解をさせたんですか!」

「ですから不幸な偶然が重なってしまったのですぞ。というよりもお姉さんの勘と能力が高い所為ですぞ」

「つまり私の所為だと?」

お姉さんの怒りがMAXになりつつあります。

ここは宥めてから再度ループする方向が良いですぞ。

「さて、言い訳は聞きました。では、死になさい!」

「うぐ!?」

ボンと一瞬でお姉さんが俺の目の前に移動してハンマーで俺を吹き飛ばしたみたいですぞ。

気が付いたらメルロマルクの城から遥か空の彼方まで飛ばされていて、俺の背後にお姉さんが浮かんでいました。

しかも反対方向にハンマーで殴ろうとしている最中でした。

「世界侵入の反発が強めですから予定通りにやっていると思ったら……よりにもよって私がナオフミ様を裏切って貴方に鞍替えしたと思われる屈辱を見せつけるなんて! リファナちゃんの決意もガエリオンさんの思いもみんなの気持ちも、全て台無しです!」

ガツンという衝撃と共に俺は地面に叩き付けられていました。

「ぐあっ……! お、俺は、真面目に取り組んでいるんですぞ!」

「努力の方向性が間違っています!」

「ですからお姉さん、やはりサクラちゃんはフィーロたんではないのではないですかな?」

「……もういいです」

正論を述べる俺にお姉さんは背を向けて浮かぼうとしております。

もういい、とはどういう事ですかな?

「ナオフミ様には貴方を回収する事は失敗しました、と報告しましょう。石橋を叩いてあの女神を仕留めたかったのですがしょうがありません」

な、なんですと!

そしてゴミを見る様な眼でお姉さんは俺を蔑んでいます。

「みんなで女神を倒すまで、無限に等しい牢獄の中、永遠にフィーロに会えずもがき苦しんでください。仮に運よく生き残れたとしても私がナオフミ様と一緒に直々に貴方を殺しに来ます。覚悟していてくださいね」

フィ、フィーロたんに二度と会えないですとな!?

嫌ですぞぉおおおお!

俺は反省しているので、許して欲しいですぞぉぉぉおおおおお!

「わ、ワンモアチャンス! ワンモアチャンスですぞお姉さん!」

俺は必死にお姉さんの足にしがみついて懇願しますぞ。

ラフ種の姿なので足だけでなく、ほぼ全身ですがな。

「放してください! 貴方に与える時間が惜しいです!」

お姉さんは俺を振り払おうとしています。

このままでは逃げられてしまいますぞ!?

「もう絶対にお姉さんの言う通りに最初の世界通りに行動しますぞ! ですからお願いしますぞ! 最後の願いですぞぉぉぉおおおおお!」

全てをかなぐり捨てて俺はお姉さんに向かって懇願します。

するとお姉さんは何度か困ったかのように怒りと困惑を繰り返してから、深く溜息を漏らしました。

「……このループする世界で頑なにナオフミ様を助けようとした、という所は評価します。今回だって力になりたくて余計な真似をしたのでしょう」

お姉さんはもう一度、本当にふかーく息を吐きました。

これは首が繋がったという事で、良いのですかな?

「……本当に最後ですからね。何だかんだで、ここに入るのはとても難しいんです。特に私がちゃんと生きていると入るのに時間が掛るんですからね。まあ……どうやら殆どのループでも仮死状態みたいですが」

おや? お姉さんは生きているのですかな?

それは知りませんでした。

覚えておいた方が良い情報ですな。

「今回に至ってはいきなり入れたので驚きましたよ」

そういえば反発とか言っていた気がしますな。

「ああ、槍の勇者が間違ってもありえない発想ですが、フィーロの生まれる卵を壊せばフィーロが入れるかもしれないと思うかもしれませんが、出来ませんからね」

「そんな事思いませんぞ!」

非常に怪しいですがサクラちゃんの卵を壊すですとな!

そんな事、天地がひっくりかえっても出来ませんぞ。

「ともかく、次が最後ですからね! ちゃんとフィーロに会うんですよ! 上手く行けば綻びから貴方を引きぬけますから」

「はいですぞ!」

「では……」

お姉さんが何故かハンマーを両手で持って振りかぶっておりますぞ。

まさか……!?

「ナオフミ様から私を寝取ったと思わせた恨み!」

ガツーンと激痛と共に俺の意識はブラックアウトしたのでした。

これが樹が言っていた、俺が死んだ事によるループですな。

段々と乱暴になって来ている気がしますぞ……とにかく、次こそ俺は絶対に成功しないといけません。

という事で、俺は最後の周回に挑む事になったのですぞ。