軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最初の世界の模倣

「次はサクラちゃんだね」

「むー……」

そんな様子を見て頬を膨らませてサクラちゃんは睨んでおりますぞ。

当然の権利ですぞ。

ライバルとキスするなど、あってはならない事ですからな。

「ナオフミがガエリオンとキスしたー……サクラもして欲しかったー」

「ごめんごめん、サクラちゃん」

お義父さんがサクラちゃんを撫でますぞ。

まあ、背格好は殆ど同じなので同世代の女性の頭を撫でている様な不思議な感じになってしまいますがな。

「サクラちゃんが元康くんの好きなフィーロって子と同じ存在なんだってさ」

「うん。それはわかったー……でもサクラはナオフミが一番ー」

「それで良いと思うよ。サクラちゃんはサクラちゃんだって元康くんが言う通りなんだから」

「メルちゃんを呼んでくる?」

「いや……いいんじゃないかな。知らない方が良い事もあるよ。それよりもサクラちゃんは何か無いの?」

「んー……サクラもナオフミにチューして欲しい」

「まあガエリオンちゃんにしたら、そうなるよね……」

お義父さんはサクラちゃんの願いに応えてライバルと同じくキスをしてあげました。

うんうん、これが正しい姿ですぞ。

やはりライバルとのキスは間違っていたのですぞ。

「わーい」

「今まで俺を守ってくれてありがとう。今の俺は、フィロリアルの中でサクラちゃんが一番だよ」

「うん! サクラもナオフミと一緒ー」

むむ……複雑な心境ですぞ。

俺はフィーロたんも大事ですが、サクラちゃんも大事なのですぞ。

しかしこの世界のお義父さんはフィーロたんを知らないので、しょうがないのかもしれませんな。

「……そうだね。俺も最初の世界とは性格が違うみたいだし、サクラちゃんがフィーロって呼ばれる子なのと同じだね」

「サクラはリファナやガエリオンとは違うから……大丈夫ーだからガエリオンの事は大目に見るー」

「ありがとうね。サクラちゃん」

「うん」

お義父さんは元気に頷いたサクラちゃんの頭を撫でました。

そしてお義父さんはお姉さんの友人に顔を向けました。

「さっきもラフタリアちゃんに話しましたが、夢のような奇跡の時間でした」

「そう、だね。俺も罠に掛けられた時に思ったよ。元康くん達に助けてもらった、信じてくれた時が奇跡だって」

「同じですね」

「……うん。リファナちゃんは、本当に良いの?」

「はい。ラフタリアちゃんとも話をしましたし、大丈夫です」

お義父さんはお姉さんの友人の頭を優しく撫でます。

お姉さんの友人はイタチの姿になってお義父さんによじ登って盾の上に乗りますぞ。

「何かリファナちゃんにしてあげようと思ったんだけど、何か無い? あんまり卑猥なお願いは出来ないけど、俺に出来る事ならなんでも叶えるよ?」

「大丈夫です」

「だけど……」

「では、今の私を撫でて……くれませんか」

少しだけお姉さんの友人が震える様な声を出している様に聞こえました。

「リファナちゃん……」

こっちの世界のお姉さんが声を掛けます。

お義父さんがとても優しげな瞳でお姉さんの友人の頭を撫でました。

お姉さんの友人はとても気持ちよさそうな声を出しております。

何故ですかな? その光景を俺は何処かで見た様な気がしました。

「ラフタリアちゃんも何かある?」

「わたしは……」

お姉さんはラフ種のお姉さんに視線を向けます。

「既にナオフミ様、勇者様方からもらっています。みんなを助けてくださってありがとうございました」

ペコリと頭を下げてからラフ種のお姉さんに声を掛けますぞ。

村は復興しましたな。

最初の世界に負けない発展をしていると思いますぞ。

「あの時、リファナちゃんを亡くしてしまったわたし……貴方がどんな想いをして、どんな道を進み、どんな苦楽をナオフミ様と共に歩んで来たのかはわかりません。ですが、ナオフミ様を見る目とリファナちゃんを見る目を見てて思いました……ああ、今のわたしには辿り着けない想いを抱いて進んで来たんだって」

とても眩しいとお姉さんはラフ種のお姉さんに語りかけます。

「だからどうか……目的を達成する事を祈っています。みんなを不幸にした波を……敵をどうか倒してください」

「ええ……必ず、倒して見せます。こんな非道を行なった犯人を、必ず!」

お姉さんとラフ種のお姉さんは握手をしましたぞ。

それからお姉さんはラフ種のお姉さんにポツリと呟きました。

「あの……別の世界の貴方の本当の姿って今のわたしと違いますか?」

ラフ種のお姉さんはその反応に小首を傾げながら優しい目で頷きました。

「じゃあ……ほんの少しだけ、外見を魔法で見せますよ?」

と言って、パチンと指を鳴らしました。

するとラフ種のお姉さんが光って数秒だけでしたが、最初の世界のお姉さんが見えました。

そうそう、こんな感じでしたな。

「……あんまりやると弾き飛ばされそうですね。危なかったです」

「わぁ……」

お姉さんの目が輝いていましたぞ。

何やら素晴らしい物を見た様な反応ですな。

「ラフタリアちゃん、とっても美人だったね」

お姉さんの友人の言葉にお姉さんが頷きます。

「うん!」

「他に何かありますか?」

ラフ種のお姉さんの言葉にお姉さんは首を横に振りました。

「あれって本当でしょうか?」

「若干理想が入っているかもしれないぞ? 自分とはいえ子供には夢を見せたいだろうしな」

樹と錬がお姉さん達には聞こえない位の声で話しています。

理想など微塵も入っていなかったと思いますぞ。

最初の世界のお姉さんはあんな感じでした。

ラフ種のお姉さんは聞こえている様ですが、余裕の表情ですな。

「仮に事実だとしたらフィーロさんと同じく、条件でもあるのかもしれませんね」

「条件か……まあ成長期に尚文に対して恋愛感情を抱いた、とかが無難か?」

「あー……ありそうですね」

この二人は空気が読めませんな。

おや? 何か自分に跳ね返っている様な気がしますぞ?

などと考えているうちにお姉さんとラフ種のお姉さんは話を続けています。

「ありがとうございました。がんばってください……もし、この世界が存命したら、貴方みたいな大人になれる様にわたしもがんばります」

「うーん……自分に励まされるというのも不思議な気持ちになりますね。なんて言いますか、私自身、結構汚れてしまっている様な気がしてきました」

なんかラフ種のお姉さんががっくりとしていますぞ。

何かありましたかな?

「大分話も決心も出来たかな?」

「本音を言えば、思う所はある」

「まあ……そうだろうね」

「これまでがんばってきた事がなかった事になるんですから、そこはしょうがないですよ」

「ああ、だが召喚されてから今日まで大変だったが、悪くはなかった。不謹慎かもしれないが楽しかった」

「……そうですね。自分の異能力に絶望して腐っているよりは良かったと思います」

「こんな気持ちになれたんだから、最初の世界とやらの俺よりも幸せな自分だと思う事にする」

錬が神妙な面立ちで言いました。

ふむ、錬や樹も色々と考えているのですな。

「元康さん、僕達も我慢するんですから色々とがんばってくださいよ」

「当然ですぞ!」

「……今はいいか。元康、波を起こしている奴を絶対に倒せ。この世界を無かった事にするんだ。それ位任せても良いだろ?」

「もちろんですぞ!」

錬と樹は微妙そうな顔をしましたが、納得してくれました。

「まあ俺達の独断で決めてしまった様な気もするが、どうせ元康がフィーロって奴に会わないと消える世界なんだ。受け入れるしかない」

「まあ、そうなりますよね」

そう言って錬と樹はラフ種のお姉さんの言葉を待ちました。

ラフ種のお姉さんもそれを察したのか、俺に言いますぞ。

「では槍の勇者、準備は良いですか?」

「良くは無いですぞ。俺はお義父さんを見捨てたくも諦めたくも無いのですからな」

「貴方らしいと言えばそうなんでしょうね。その全てがフィーロに集約しているのを私もある程度は知っているつもりですから」

ラフ種のお姉さんは毒がある様な言い方をしますな。

最初の世界のお義父さん仕込みですな。

「最初の世界ではわかりませんでしたが、お義父さんが本来はとても優しい方だという事を知りました」

「そう言われると照れるね……」

「そして錬は黒歴史で、樹は毒舌だったのですな」

「なんだと……! お前は最後まで!」

「誰が毒舌ですか!」

「まあ、最初の世界では赤豚に騙されて変わる前の錬や樹を見ていましたが、もっと知る事が出来たと思いますぞ」

と、答えると錬と樹は怒るのをやめて呆れた目で俺を見ています。

何か思う所でもあるんでしょうな。

「ああ、そうだな。元康のお陰で今の俺達は変われたようなもんだ。結局、尚文と同じだ」

「そうですね。本来はゲーム知識を頼りに自分こそが正しいと貫くダメ人間ですよ。そんな事わかってますよ。元康さん、あなたが色々と助言してくれたお陰で、今に至るんです」

素直じゃないですなー。

などと思っているとお義父さんや錬、樹が答えました。

「フィーロって子も同じだよ。環境でサクラちゃんが変わっていくんだ」

「それを忘れない様に、尚文に最初の世界と同じ道を歩ませれば良い」

「ええ、それが元康さんが元の世界に帰る為の手順です」

「そして……俺達の事を忘れないで欲しい。俺達といた時間を覚えていて欲しい。例え夢だったとしても、ね」

お義父さん達がみんな揃って俺に手を振りますぞ。

これでラフ種のお姉さんが槍を発動させられなかったら恥ずかしいですな。

「では槍に干渉しますね」

「出来れば成功させてほしいですぞ」

「わかってますよ。発動しなかったらリファナちゃんやこちらの私、皆さんに顔が立ちませんよ」

「がんばって、元康くん、ラフタリアさん」

お義父さんの応援にラフ種のお姉さんが頷き、俺の槍に向かって魔法を唱え始めました。

「では行きますよ」

カッとラフ種のお姉さんが魔法を発動させましたぞ。

槍がカタカタと振動しております。

「あ、今気付いたんですけど、失敗したら元康さんを仕留めればループするんじゃないんですか?」

「うわ! 樹は最後まで――」

お義父さんの呆れた様な声が途中で止まりましたな。

視界にループする時に浮かぶアイコンが出てきました。

世界は今、灰色ですな。

……こんな俺ですが、何となく物悲しい気持ちになりますぞ。

「それでは次の周回でフィーロに出会える事を祈っています」

ふと視線をラフ種のお姉さんから逸らしてライバルを見ますぞ。

やはり奴は色が付いております。

「がんばるなの。特別にガエリオンも応援してやるなの」

く……ライバルに応援されると途端にやる気が落ちますな!

時計の針が逆回転を初めました。

ですが赤豚の罠に乗っかって、本当にお義父さんを追い詰めるのですかな?

それは……やりたくないですぞ。

俺じゃなくても……錬や樹でもきっとお義父さんはフィーロたんに出会わせてくれると、今俺は思ったのですぞ。

そうして俺は最初の世界に戻るべく、再度ループしたのでした。