軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

非道な選択肢

錬と樹、俺が一歩踏み出して構えますぞ。

そうですぞ。

俺だって今まで遊んでいた訳ではありません。

敵がどんな存在であろうと倒して見せますぞ。

そしてお義父さんとお姉さんに認められて、フィーロたんと真の愛を築くんですぞ。

「俺は審判役をするかな」

「何やってるのー?」

騒ぎを聞きつけてサクラちゃんが婚約者と一緒にやってきますぞ。

「えっと、別世界からラフタリアちゃんらしい子が来たからどれだけ強いか試してるって所だよ。黙って見てて」

「はーい」

という感じでお義父さんが事情を説明してから、合図を送りますぞ。

「それでは見合ってー……勝負……開始!」

「行く――」

「まずは――」

「俺も速攻で行きま――」

ラフ種のお姉さんがピコピコハンマーを右手に持ち、左手で指を鳴らしました。

……ただ、それだけ、でしたな。

俺にはお姉さんが僅かにぶれて急接近した所までしか見えませんでした。

直後、俺達の体に連続で打撃音が響き渡りました。

痛みは無いですが衝撃が体を突き抜けて行ったのですぞ。

「な……!?」

「今のは!?」

「見る事すら出来ませんでしたぞ!」

ラフ種のお姉さんは元の場所に戻って既にハンマーを腰に戻しておりました。

「今のは手加減に手加減をして手抜きまでした段階です。どうでしたか?」

「え? あ?」

お義父さんは俺達とラフ種のお姉さんを交互に見ておりました。

完全に見えませんでした。

「強さとかそういう次元じゃないじゃないですか。くっ……ずるいですよ……」

「ええ、勇者様方風の表現で言うならチートを超越した強さです。勝負などという次元じゃありません。これでもこの世界のルールに合わせたんです」

「僕達の敵はどれだけの存在なんですか……。というか、それだけの技能が出来るという事は」

「ええ、言ってはなんですが敵を倒す算段が付いた事になります」

ラフ種のお姉さんは樹の質問に頷いて答えます。

「話を戻しますね。この世界は未確定。その意味がどんな事であるか」

「そんな化け物を相手に勝てるんですか?」

「勝てませんよ。入ってこられない様にするのが大前提です。入ってこられたら詰みですが……残された手段があるのが、この世界となります」

ラフ種のお姉さんの言葉にライバルが頷きますぞ。

「神と同等の力を持つラフタリアに聞くなの。お前は何のためにここに来たなの?」

「もちろん、神を僭称する敵を倒す為に槍の勇者を迎えに来たんです」

「おお! つまり最初の世界に俺は戻れるのですかな?」

「結果的に言えばそうなりますね。ですが……」

お義父さん達がラフ種のお姉さんに視線を向けますぞ。

……むむ? 何かあるのですかな?

「俺達はどうなる?」

「……」

ラフ種のお姉さんは沈黙をしております。

こ、これは困りましたな……。

この世界のお義父さん達はどうなるのですかな?

「並行時空とも違うってどういう事なの? ラフタリア……さんと言うべきかな?」

「その呼び方で良いです。私もナオフミ様の事をナオフミさんと呼びます」

なんとも距離感のある関係ですな。

言ってはなんですが、お義父さんとお姉さんはもっと近い距離感だったと思いますぞ。

「ナオフミ様もそのような優しげな表情をしている時があるんですね」

「え……うん。元康くんの話だと随分と辛い経験をするらしいね」

「はい……話を続けますね。この世界の存在理由は世界の延命……ただその一言に尽きます。時間経過も本来の世界よりも遥かに早く過ぎて行ってます」

ラフ種のお姉さんがふわりと浮かんで説明しますぞ。

完全に飛んでますぞ。

「ナオフミさんにわかりやすく説明するとなると分岐する世界と言うのはそのまま分離する訳では無く……ゲームで言う所のルート分岐です」

「だからそれで並行世界が生まれるとかじゃないの?」

「どんなにセーブデータや分岐があっても、ロード出来るデータは一つ……がこの世界です」

「!?」

意味を察したのかお義父さんが目を見開きながら頷きましたぞ。

俺も意味を察し、魔界大地でも同じように複数のセーブがあってもプレイできるのは一つというのを思い出しました。

きっとそういう意味なのでしょう。

一つしか認められないのですな。

あくまで分岐したルートを本来のセーブデータ箇所に上書きする。

それがこの槍の力なのでしょう。

「この世界はまだ生まれる前の卵と評したのは、そういう意味があります」

「どういう事?」

「神に乗りこまれ、既に詰み掛っているこの状況で世界を延命させる緊急手段、それがこの世界であり龍刻の長針という槍の力……分岐する世界の効果です。上手く行けばこの世界が……最初の世界を上塗りして神を世界からはじき出せます」

「おお……」

「じゃあそれをやれば良いんじゃないか? 最初の世界は既に詰んでいるんだろ?」

その言葉にラフ種のお姉さんは胸に手を当てて握りこぶしを作り頷きます。

「もちろん……それも一つの手だと、この状況を一目見た今なら思います。例えその条件が……世界生命の三分の二と融合先の世界を全て犠牲にしたとしても……ですが」

賛同するお姉さんの言葉に顔を合わせて笑顔になるお義父さん達でしたが、後半の言葉に唖然としております。

三分の二とは……前々回のアレですな。

しかし融合先の世界とは?

「ど、どういう……」

「分岐する世界の発動条件なの。四霊による結界の生成……それが槍の目的でループする意味、決定権は槍の勇者が握っているなの」

ライバルが苦々しいとばかりに説明しましたぞ。

四霊の結界ですな。

あれは二つ前の周回で四霊全部と戦った際に起こった事でした。

「ガエリオンは四霊の応竜の欠片と槍の中から情報を理解したなの。だから推測が出来るなの」

「ええ、もしも発動したなら私がいた最初の世界を上塗りする形で事象が塗り替えられます。結果、世界は波の脅威から解放される事になるでしょうね」

「だ、だけどそれで世界を救う事が……出来るんですよね……?」

樹が迷う様にラフ種のお姉さんに尋ねます。

「一応……気づかれる前にはじき出せるかもしれません。私やナオフミ様が世界消去の妨害をするので成功確率は高いでしょう」

「産まれる為に犠牲を強いる……俺達が決めて良い事じゃない。いや、みんなで抵抗するのが必須な案件だと思う」

「世界規模の活性化の影響で戦力は十分に整っている状況だぞ。それこそ勇者が世界の為に先導しなくちゃいけない状況になりかねない」

「……そんな非道な決断、僕は絶対にしたくありません」

「あの……その書き換えに貴方は……別世界のラフタリアちゃんはどうなるの?」

お姉さんの友人がラフ種のお姉さんに尋ねますぞ。

するとラフ種のお姉さんは懐かしい物を見る目で答えます。

「既に私はその輪から外れた存在……ナオフミ様も含めて変化はありませんし、はじき出された神を僭称する敵と戦うだけです。逃げられるかもしれませんが、私達が必ず追いかけて倒します。そして、この世界は安全になります」

「……」

ラフ種のお姉さんの言葉に友人は沈黙しましたぞ。

「じゃあその……元康くんを迎えに来たっていう方の作戦だとどうなるの?」

「四聖の力が神を僭称する者を縛りつけ、不正な力を封じ、逃げられない様に世界を縫いつける事が出来ます。確実に、倒す事が出来ると思います……ですが……槍の勇者がいなくてもこの手で抑えられるとは思います。あくまで念の為です」

「かと言って、神を僭称する者を倒した後は……この世界はどうなるの?」

「ずっとこの世界は存在する訳ではありません……私達が神を僭称する者を討伐した後に消えると思います」

「くっ……どっちつかずじゃないか」

この世界を生かすには多大な犠牲を出す必要があり、最初の世界を生かすにはこの世界を破棄しないと行けない。

「身近な人達の幸せを守る為に多大な犠牲の上に、というのも一つの選択ではあると……私も思います。ナオフミ様を初め、剣の勇者、弓の勇者、槍の勇者はどちらの世界でも生きる事が出来ます……ここにいる村の人達も沢山……むしろ、こっちの世界の方が生きている人も多いです」

ラフ種のお姉さんの目が泳いでおりますぞ。

困惑という色合いが強いと思います。

「既に最初の世界でも多大な犠牲が出ている手前、差は無いかもしれません。ナオフミ様も許容してくれると思います。ですから――」

という所でお姉さんの友人がラフ種のお姉さんの頬に手を当てますぞ。

「……ダメだよラフタリアちゃん。貴方が何に悩んで、何に迷い、何を委ねようとしているのかはわかってる。だけど、この世界と貴方がいた本来の世界を天秤にかけちゃいけないわ。ここは……夢の世界みたいな物なんだから、夢と現実を一緒にしてはダメ」

「……」

お義父さんがその様子を見て言葉なく俯きました。

夢の世界……ですか。

「……勇者様達が助けに来てからずーっと思ってた事があったの。あまりにも出来過ぎな奇跡の時間だって……」

お姉さんの友人はラフ種のお姉さんに背を向けて話し始めました。

お義父さんに瀕死の重傷から助けてもらってから、これまでの出来事を。

「一分一秒が奇跡だった。その理由が槍の勇者様のお陰だって話も聞いてた。まるで夢のような時間……だけど夢は夢……いずれ覚める時が来る」

「リファナちゃん……貴方は……」

お姉さんの友人はニコッと笑い掛けますぞ。

「ラフタリアちゃんが私達にとって都合の良い事を言ってるのはわかるの。この世界の三分の二と融合した世界を犠牲にして残る人員よりも、この夢から覚めて敵を倒した世界の方が人は多いんでしょ?」

「……すいません」