軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

監視

やがて樹も同じように正義面して俺達の方に顔を向けました。

「詰問はまだですぞ」

「何故ですか! アレは泥棒じゃないですか。犯罪ですよ! 現行犯で捕まえましょう!」

「それは無理ですな。奴はこの国の姫ですし、明日にはおと――尚文が強姦魔の罪を被せられて城に連行されるのですぞ」

「なんですって!?」

「黒幕はアイツですぞ。加害者は豚、その豚が強姦の被害にあったと嘘泣きして騒ぐのですぞ。真実を知らない者にはどう映りますかな?」

「ぶ、豚? まあ気持ちは分からなくもないが……」

前回の説明で俺の口は限界を迎えているのですぞ。

錬が考え込み始めますぞ。

「元康、これが見せたかった事なのか?」

「まだありますが、先ほどの説明がまだでしたな」

「いいえ、まだ私の正体を勇者様方に言うのは早いかと思います」

震えていた女王が怒りを押し殺して俺に提案しました。

「そうなのですかな?」

「ええ……メルティ。オルトクレイとマルティに言い逃れされたら面倒です。貴方はこれから盾の勇者様の寝姿を一晩、監視していなさい」

「わ、わかりました」

婚約者は女王の言葉に頷いています。

一晩とは大変なお役目ですな。

「あの……その方は……?」

樹が女王の言葉に唖然としつつ俺に視線を向けますぞ。

「もう少しの辛抱なのですぞ」

「ええ、あの……愚か者の蛮行を見届けてからにしましょう」

「わかった」

「ですが……」

「樹、何やら俺達の知らない所で事件が起こっていて、元康はそれを知っているらしい。茶番にしか見えないが、最後まで付き合ってやろうじゃないか。少しは楽しめるかもしれない」

「錬さんまで、はぁ……わかりました」

「で? この後、何が起こるんだ?」

「俺が酒場で酒を飲んでいると奴が盗んだくさりかたびらを持ってやってきてプレゼントするのですぞ。俺がそれを突っぱねると、奴は今度は樹の所へ行ってくさりかたびらをプレゼントするのですぞ」

「とんだネタばらしだな」

「盗品を渡すなんて……本当ならですが」

「……あの子のやりそうな事ですね」

さて、実際、奴と話すのは反吐が出ますが我慢しましょう。

樹は嫌がりますし錬が居る事を知られたら怪しまれますからな。

「では勇者様方。こちらのローブを」

女王がローブを錬と樹に渡しますぞ。

「キタムラ様、お願いします」

「わかりましたぞ!」

こうして俺達はさりげなーく酒場の方へと向かい、赤豚をおびき出しました。

前回と同じくノコノコとやってきましたな。

「ブブブブブ……」

「そうですな。はは、はいですぞ」

毎度思いますが赤豚を始め豚共はなんで空返事するだけで会話が成立していると思うのですかな?

アレですかな?

昔お義父さんが悪態を吐いている時に豚は男をATMだと思っているんだと言っていた覚えがありますぞ。

そうですな。豚と人間とでは会話が成立しない。

機械の様に定められた動きをする物であれば良いと言う表れですな。

その点で言えばフィロリアル様は面白いですぞ。

このように空返事をしていたらなんでなんでと詰問して来て、最終的にはむくれてしまいますからな。

まあ、その前に俺は相手をしてしまうのですが最初の世界のお義父さんは引きませんでしたぞ。

前回のお義父さんの場合は逆に質問して問題をはぐらかしておりました。

どちらにしてもフィロリアル様の扱いがとても上手な証拠ですな。

赤豚は動かぬ証拠であるくさりかたびらを俺に差し出しますぞ。

ふふふふふ。

「ブ?」

「い、良いのですかな?」

「ブブブブ!」

笑いがこみあげてくるのを堪えて俺は吐き気を催す豚の笑顔を我慢してだまし取りました。

赤豚は満足して立ち去って行きますぞ。

その様子を怒りのオーラを必死に堪えて錬と樹と一緒に女王が隠れて見ておりました。

ガタガタと、ばれない様に錬と樹は震えている様に見えましたな。

俺もそれとなく酒場を後にし、裏路地に向かいました。

もちろん、隠れている奴を炙り出し、音が漏れない様に魔法を唱えましたぞ。

すると錬と樹がすぐに追いかけてきました。

まるで女王から逃げるかのように。

「証拠品をゲットですぞ。そして明け方に奴が俺の泊っている宿にやってきて起こしに来るのですぞ」

「ま、まさか……本当の事だったなんて……これはどういう事なんですか?」

「なんでこんなに言った通りになるんだ? 何かの演技? それともビックリ? いや、幾らなんでもこんな事をワザワザ俺達に見せる理由がわからない」

「いえ、それよりも先ほどからあの方は誰なんですか?」

「では紹介しますぞ。メルロマルクの真の王である。女王ですぞ」

「「は?」」

俺は女王を錬と樹に紹介しました。

女王はローブから顔を覗かせて会釈します。

「初めまして、この国の王をしているミレリア=Q=メルロマルクと申します」

そうなのです。

前回のお義父さんを始め、女王に俺達が召喚された当時、何処に居たのかを聞いていたのですぞ。

連れて来るのが大変だったのですぞ。

豚共を撒いた後、俺はポータルで女王の居る場所に飛びました。

当初、俺は女王がフォーブレイ辺りに居るかと思ったのですが、実際はフォーブレイ近くの少し離れた国で外交をしている最中だったのですぞ。

何でも勇者召喚に立ち合うために滞在していたとかで。

ポータルは取りましたが若干離れた所にある城でしたな。

全部網羅している訳ではありませんし、時間単位で移動しているとの事で最寄りの場所で取ったのが大きなロスとなりました。

「失礼しますぞー!」

「誰だお前は!」

女王がその日、滞在していると言う城へ正面から来訪しました。

すると城の兵士が俺の進路を遮ったのですぞ。

「昨日召喚された四聖の槍の勇者ですぞ。ここにメルロマルクの女王がいるというのは知っていますぞ」

「槍の勇者? たわけた事を言うのはいい加減にしろ!」

ちなみに四聖勇者が揃って召喚されたと言う報はまだ、世界で認識されていなかったらしいですな。

というよりもフォーブレイで発覚して各国に伝達している最中だったとか何とか。

だから遅れているのもしょうがない話だったのですな。

「これでも信じられないのですかな?」

勇者であるのを証明する時に行う、武器の形状をコロコロと変える芸当をしますぞ。

「ふん、その程度なら出来なくはない。勇者を騙る罪は重い! 引っ立てろ!」

兵士共がぞろぞろと出て来て俺を取り囲みました。

信じないとは……面倒極まりないですな。

勇者を騙るのは罪だったのでしたな。

おそらく本物が来る筈がないとか思いこんでいたのでしょうな。

サッサと上に伝達をしろと言いたいですぞ。

「神妙にお縄に付くが良い!」

兵士共が俺に武器を向けて投降を促す様な事を言っていた様な気がしますが、大体がこんな感じでしたな。

「邪魔ですぞ」

槍を強く握って薙いでやります。

それだけで暴風が発生しますぞ。

「うわああああああああああ!」

兵士共が俺の薙ぎを受けて弾き飛ばされました。

「こ、こいつ! 強い! どんな魔法を使っているのか知らんが、国の兵士に抵抗したからにはタダではおかないぞ」

「いい加減にしないと殺しますぞ?」

「かかれー!」

なんて感じに兵士共が増援を呼んで来たので俺は渋々スキルを使う事にしたのですぞ。

「エイミングランサー!」

槍を高らかに投げ、辺りに居る兵士共を貫いてやりました。

殺すと色々面倒なので手加減してやります。

「「ぐあああああああああああ!」」

「「うわあああああああああああ!」」

辺りには兵士共がうめき声を上げながら倒れ伏していましたぞ。

「ぶひぃいいいいいいいいいいいいいい!」

城の前なので通行人臭い豚が悲鳴を上げております。

うるさいですな。

お前も殺しますかな?

「う……うう……」

「し、城に奴を入れるな! 者共、その身を賭して王と来賓の方々を守るのだー!」

「おおー!」

なんて感じに兵士共が出るわ出るわ。

お義父さんから殺さずに女王と話を付けろと言われているのですぞ。

死なない様に急所を外すのは面倒ですな。

「大風車ですぞ!」

俺を中心にして槍を回すスキルを放ちます。

Lvが高いと追加効果の竜巻が発生するのですな。

「ぎゃあああああああああああああ!」

兵士共が竜巻に巻き込まれて舞いあがって行きますぞ。

「死ねぇー!」

弓兵の矢もこれでたたき落としますぞ。

もう面倒臭いですな。

殺さない様に城内へと侵入して行きますぞ。

「パラライズランス! 流星槍ですぞー!」

湧いてくる兵士共を薙ぎ払いながら俺は正面から城内に侵入します。

何故か俺の後方にガラの悪い連中が付いて来ておりますぞ。

「革命派の援軍だな。腐った王政をこれで打開できる。さあ! 共に手を取らないか?」

「知りませんな」

コイツ等は仕留めても良さそうですな。

「ブリューナクⅩですぞ!」

「「「ギャアア――」」」

騒ぎに便乗する馬鹿は何処にでも居るとお義父さんが嘆いていたのを思い出しますぞ。

国を転覆させて良い方向に向かったのは見た事が無いですぞ。

「さあ! 出てくるのですぞー!」

「い、一刻も早く各国の重鎮を逃がすんだ! 化け物が襲って来たぞ!」

俺にはそんなに時間が無いのですぞ。

さっさと女王に会わねばなりませんからな。

しかし、殺さずに進むのは面倒極まりないですぞ。

挙句の果てには儀式魔法で俺を仕留めようとしてくる始末。

もちろんアブソーブで吸収してやりました。

「止まりなさい。貴方が私に用があると言う方ですか?」

なんて感じに俺が兵士共との抗争をしていると、やっとこさ女王が顔を出したのですぞ。

兵士達が道を開けて女王が俺の前にまでやってきました。

話によるとこの国の連中と話し合いをしていたとか何とか。

責任問題等の擦りつけと避難誘導で時間が掛ったそうですぞ。

「待たせてしまい申し訳ありません。どうか武器を収めてもらえないでしょうか?」

「こっちは話をする気で来たのですぞ。にも拘わらず話を聞かなかったのはこの国の兵士達ですな」

女王が若干、緊張している様に見えるのは気の所為ですかな?

俺は紳士ですぞ。

お義父さんとフィーロたんに誠実に生きろと言われていますからな。

「……で、私に何の用でしょうか? そもそも、貴方は一体何者かをお教えください」

「俺は四聖、槍の勇者である北村元康ですぞ。昨日、お前の国であるメルロマルクで召喚されたのですぞ」

女王の目が険しくなりました。

心当たりの無い真実に思考している最中なのでしょうな。

「信じられないですかな?」

「……強さに関してならば確かに伝承に見合う程のものであると判断は出来ます。ですが四聖勇者を我が国が召喚したという事実に関しては若干懐疑的ではあります……」

「どうせ数日中には知れ渡る事態ですぞ。お前の夫とダメな方の王女が三勇教と結託してやらかした事ですな」

「我が国、三勇教は穏便な方の宗教だと認識していますが……」

とんだ認識ですな。

三勇教こそ全ての元凶にして碌な結果しか生まない邪教そのものですぞ。

今までのループで何度煮え湯を飲まされたかわかりませんな。

きっと今まで隠していたのですぞ。

しかし、ループしている事を信じてもらうのは本当に難しいですな。

ですがここで女王を連れていく事でお義父さんへの陰謀をもっと良い方向で弾けるのなら努力しますぞ。

「質問してよろしいでしょうか?」

「幾らでも聞きますぞ。ですが、時間はそこまでありますかな?」

「では……まず、我が国メルロマルクまで、相当な距離があります。昨日召喚された勇者様がどのようにして来たのですか?」

「勇者の技能である転移スキルで瞬間移動して来たのですぞ」

「……」

信じてないのですかな?

女王の反応が静かですぞ。

「次に……召喚直後の勇者はLvが1という伝承があります。見た限り貴方は十分過ぎるほどの強さを持っています。これをどう説明しますか?」

「此処とは異なる似た世界で得たLvを継続しているから、召喚直後でも他の勇者よりも強いのですぞ」

こう説明した方がループしている事を信じさせるよりもまずは信じやすいとの話ですぞ。

何か信頼できる合言葉か何かがあればよいのですが、調べれば分かる事ばかりで決め手に欠けるそうですぞ。

もちろん。その合言葉も俺は女王から聞いていますな。

「そうですか……では槍の勇者であるキタムラ様、私と共にフォーブレイへ赴き、会議に参加を」

「している暇は無いですぞ。お前の夫とダメな王女、そして三勇教は盾の勇者に冤罪を被せる暗躍をしていますからな。挙句、他の勇者に殺させる陰謀を企んでいますぞ。間に合いますかな?」

「配下に命じて停めさせます」

「出来ますかな?」

俺の確信的な態度に女王が扇を広げて思考に更けますぞ。

物分かりが良い方の女王ですからな。

クズの暴走は理解できるでしょうな。

「ちなみに女王、今朝考えていた事は婚約者――メルティにフィロリアルの新しい図鑑と調査資料を与えるか否かですな」

「!?」

女王の目が大きく見開かれていましたぞ。

「なんでそんな事を? 槍の勇者は読心術を持っているのか? ですかな? 違いますぞ」

「……良いでしょう。そこまで知っていて私に何の用があるのですか?」

「これから一晩、俺に同行し、メルロマルクで起こる事件を直接目撃して欲しいのですぞ」

俺はポーンと女王に向けてパーティー勧誘を飛ばしました。

女王はその勧誘を見てしばし考えた後、振り返りました。

「メルティを呼んでください。これから出発するとしましょう」

それからしばらくして婚約者がやってきました。

「母上、どうしました?」

「どうやらこの方は本物の槍の勇者様であるそうです。どちらにしてもこの国に迷惑を掛けない為、私達は人質とならねばならない様です」

「は、母上……!」

婚約者が何やら心配そうな表情をしていますぞ。

そんな悪い話ではありませんから落ちつけ、ですな。

フィーロたんが不安がりますぞ。

「勧誘を了承したらポータルでメルロマルクへ転移しますぞ」

「ではキタムラ様、出発の準備はこれでよろしいのですよね?」

「そうですなー……出来れば女王としての権力を振らずにお忍びの……ローブを羽織っていて欲しいですぞ」

「わかりました。手配させましょう」

「ついでに二着多めにお願いしますぞ」

「承知いたしました」

それから女王と婚約者はローブを羽織り、俺の勧誘を了承しました。

「では、ポータルスピアですぞ!」

城から出た後、俺はスキルを使って女王たちをメルロマルクに連れて来たのですぞ。

後は女王がメルロマルクに来た事をちゃんと確認してからこうして同行してくれたと言う事ですな。