軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

説教

「おお! マルティにメルティ! 良くぞ盾を倒し、戻ってきてくれた。所で何故マルティは縛られ、口に布が巻かれているのじゃ?」

城に入るなり、女王はビッチとメルティを先に行かせて俺達は後に続くように指示を出した。他の勇者も後に続く。

俺が勇者の中で先頭なのを気に食わないかのような態度の三人だったが。今回の事件の功労者は俺だと女王が大々的に宣言したので文句も言えない。

ちなみに三勇教のその後も道中、女王がフィーロの馬車に同席して教えてくれた。

教皇の死はまだ完全に城下町に浸透しておらず、三勇教会自体はまだ活動している……様に見えて、既に封鎖状態だそうだ。

関係者は全員捕まえ、輸送中だとか。

「しゃべるとうるさいからですよ。この際、縫い付けますかね?」

女王がツカツカと玉座の間に入り、言い放つ。

メチャクチャ怒っているのかなんか効果音が聞こえてきそう。

女王の後ろに俺が着いて来ているのを理解するなり、クズの奴、怒りに顔を歪ませる。

「そやつが何故ここにいる! 即刻処刑せよ!」

「させませんよ!」

クズの命令よりも女王の方が優先度が高いのか、近衛騎士はクズの指示に従わない。

「ぬ。その女王は偽者じゃ! 捕らえよ!」

「アナタ……私を見間違えるとは……しょうがありませんね」

『力の根源たるが女王が命ずる――』

「ぬお!? この詠唱は――」

『真理を今一度読み解き、彼の者に氷結による拘束を生み出せ』

「ドライファ・アイシクル・プリズン!」

クズの全身を氷で作られた檻が現れて閉じ込める。

檻の中でドンドンとクズが女王に意見するが、声は通らない。

「まったく……どこまで愚かになったのですか」

パンっと扇を閉じると、氷で作られた檻が消え去った。

「その魔力の高さ、質、確かにワシの妻! 一体どうしたというのじゃ!?」

信じられないものを見るようにクズが女王に意見する。

「もしや盾に!」

何でも悪いことは俺の所為にしたいのか!

いい加減にしろ。

だから、この城には来たく無いんだ。

「違います。まったく、アナタはまだ盾の勇者様にそんな力があると思っているのですか……愚かな」

クズに近付いた女王はクズの頬を――平手打ちした。

平手打ちされた事に呆気に取られたクズは、ワナワナと震えながら、何故か俺を睨みつけた。

「イワタニ様の所為じゃないと、さっきから言っているでしょうが」

「うっ!」

再度平手打ち。

クズが何か言う前に女王は平手打ちを繰り返す。

「聞いてますよ。私が国外に居る時だけの王の分際で、権力を行使し続けたとか、再三にわたって勇者を差別しないように指示したにも関わらず無視、アナタは戦争をやりたいのですか!」

「じゃ、じゃが――」

「じゃがもへったくれもありません! 今は人々が一丸となって波に備えなければいけないというのに、アナタという人は!」

反論を許さないというかの如く、女王はクズを叱りつける。

これは他の勇者に、自分の方が偉いと言うのを見せ付けるためだな。

「さて、それでは改めて自己紹介をしようと思います。私こそがメルロマルク国の女王、ミレリア=Q=メルロマルクです。以後よろしくおねがいしますね」

「あ……ああ」

「よろしく……お願いします」

「なんか……すげぇ」

他の勇者共がそれぞれ問答の感想を漏らす。

三人とも完全に呆気に取られている。

「勇者様方には本日から少しばかりのお時間を貰いたいと私は提案いたします」

「何があるんだ?」

「それは会食時にでもお話しましょう。イワタニ様以外の勇者様は客室でゆっくりなさっていてください」

「あの、マインは?」

元康の奴、喋れないように抑えられたビッチを心配しながら質問する。

「少々、国の上に立つものとして話があります。場合によっては別の者を遣わしますので、ご覚悟を」

「は、はい……」

女王の剣幕に押されて他の勇者とその一行は玉座の間から追い出された。

残ったのは俺とラフタリア、フィーロ、メルティの四人。

「ふう……」

勇者に無様な所を見せ付けられて恥ずかしかった、とでも言うかのようにクズが安堵の息を漏らす。

「何が『ふう……』ですか! まだ話は終わってませんよ!」

「ワシは悪くない! 全て盾が悪いんじゃ!」

「そうよそうよ!」

拘束が解かれた瞬間、ビッチがクズの言い分に乗っかる。

本当にうるさいな。

「ママ! 私、そこの強姦魔に強姦しかけられたんだから」

「それがどうかしたのですか?」

「どうかしたのですか……ですって!? ママ、私は初めてなのよ! なんとも思わないの!?」

「元々処女ではないでしょう? 私が知らないとでも思っていたのですか? アナタが処女を喪失したのは――」

ああ、やっぱり最初から無いのか。

考えても見れば、俺に強姦冤罪を吹っかけた時点では一介の冒険者でも、後から王女だって公言したし、王女が強姦された……槍の勇者が救ったから未遂だったとしても、外部への風聞は悪いよな。

そうなると槍の勇者が救ったのは女冒険者で、王女とは別人として世間には扱われていたと考えるべきか。

どちらにしても、ビッチはとんでもないアバズレで、今までのツケが回ってきた訳だ。

最高だな。

「な、なんで知っているのよ!」

「私が知らないと思ったのですか、おこがましい。そもそも、盾の勇者様であるイワタニ様と本当に関係があったというのなら、まだ救いがあったでしょうに……」

チラリと女王は俺に視線を向ける。

俺が? このクソビッチと?

「冗談じゃない!」

「このようにアナタは除外ですね。ここはメルティに期待しましょう」

いきなり凄いことをぶっ放しやがった。

「何を言っておるんじゃ! 可愛いメルティはまだ幼いんじゃぞ!」

「まったくだ!」

クズと意見を同じにするなんて苦痛以外無いが、何で俺がメルティと関係を持たなければならない。

というか俺はこんな子供に欲情するほど落ちぶれては居ないぞ!

「そうです! 何を言っているんですか!」

「何の話ー?」

「フィーロちゃんは知らなくて良い話だからね!」

まあ、コイツ等は放っておこう。

「いいえ! メルティは盾の勇者であるイワタニ様に娶らせるべきです」

「なんじゃと……!」

「本当にわかりませんか? 長年争ってきた宿敵を組み伏す、これ以上に無い絶好の機会だったのですよ?」

「どういう意味じゃ?」

これは俺にも解る。

シルトヴェルトはおそらく、盾の勇者を信仰している。云わばこの国の宿敵だろう。

その信仰対象である盾の勇者……つまり俺をメルロマルクの王女が娶れば、聖人を抱えている国となる。

内心の程は知りようも無いが、少なくともシルトヴェルトの国民を味方に付ける雰囲気を作れるだろう。

何の状況も知らない盾の勇者に媚び諂って、子供でも産めば完璧だ。

後はなぁなぁで敵国の内部を犯していけば良い。

「残念ながら、もはや手遅れだがな」

「でしょうね……メルティ、盾の勇者様であるイワタニ様を落とす為にがんばりなさい」

「い、嫌よ!」

女王の政略縁談にメルティは顔を真っ赤にして嫌がっている。

まあこの年頃で政治に使われるのは嫌だろうよ。

無論、この国を栄えさせる様な行動を俺が取るはずも無い。

というか、諦めてないよな。コレ。

「おや? 影の話ではメルティの方は脈があると聞きましたが」

「節穴だな」

「む……」

「なんだよ。あー……子供として見られていたのが、そんなに嫌だったのか」

面倒な年頃だな。

「やはり脈があるではないですか。どうですか? メルティは将来女王ですよ。この国を内部から壊すには丁度良い傀儡ではありませんか?」

「乗れば逆にお前の傀儡にさせられる。何より、俺はこの世界に骨を埋めるつもりはない」

「問題ありません。……メルティがイワタニ様の子を授かれば良いのです」

……嫌な事を言う。

要するに盾の勇者と王族の間に子供が居れば、俺が元の世界に帰っても良いという事だ。

なるほど、外交が得意と言っていたのはこういう強引な手段も含めてなのか。

凄い発想だな。マンガかよ。

「全ては無能な我が夫と娘が摘み取ってしまった好機の芽。イワタニ様に一人で付いて行くまではよかったのです。そのまま味方に引き入れ、飼い殺してしまえば、アナタは今頃次期女王の座を揺るぎない物としていたでしょうね」

「誰がこんなブサイクと!」

なんだと、このクソビッチ。

今度こそ自分の立場を解らせてやろうか――

「「「ブサイクじゃない!」」」

ラフタリアとフィーロ、メルティが一斉に反論した。

なんなんだ。お前等は。

「なによ? 事実を言っただけじゃない。怒るって事は本当だと思っている証拠だわ」

「そうですね。アナタの処女がもう無い事は紛れも無い事実ですね」

「そんな証拠、どこにも無いじゃない。モトヤス様に聞いてごらんなさい。私は処女だったわよ」

「いや、お前さっき認めたじゃないか。言動が一致していないぞ」

「マルティ、嘘を吐くなら最後まで騙せる嘘を吐きなさい。槍の勇者様は騙せても、私を騙す事はアナタには無理ですよ……そもそも、アナタという人は昔からそうやっていつも人を嵌めて喜ぶ癖が――」

クドクドと女王はビッチに説教を始めた。

しかし、ビッチの方は聞いている振りしているだけで、実際は聞いていないのは誰の目にも明らかだ。

きっとこれまでも女王の説教を常習的に受けていたのだろう。

「妹が陰謀に巻き込まれたというのに、アナタは擁護せず便乗し、あまつさえ教会に引き渡そうとする始末」

え?

ビッチは便乗していただけで教会派じゃないのか? ともすればクズもか?

もしかして、この二人、本当にただのバカなんじゃ……。

「大方、次期女王は私の物とでも思っていたのでしょう」

「ち、違うわ!」

いやぁ……あの魔法詠唱を考えるに思ってるだろ。実はあそこのフレーズは自分を指し示す職位、もしくは自身を指せばよいだけだったりする。

それを次期女王が――なんて発しているのはビッチが国の女王になる確信が無ければ出来るものじゃない。

聞いた瞬間、内心絶句したしな。

「嘘おっしゃい!」

「本当の事よ!」

「……その様な些細な事、もはやどうでも良いのです」

すげー……なんていうか全てを見破ってやがる。

腐っても家族だな。身内の事を完全に把握している。

「次にオルトクレイ」

視線を向けるやクズはビクッと仰け反り気味に後ずさる。

「アナタは何をしていたのですか? 真相を究明せず、この国で特別擁護しなければならない盾の勇者を裸一つで放り出すなんて……呆れて物も言えません。昔のアナタなら内心ではどんなに嫌っていても飼い慣らす度量があったでしょうに……」

「そ、それは盾がすべて悪いんじゃ!」

「マルティは強姦されていません。狂言です。さて……アナタが仰るお言葉は?」

「ぐぬ……盾が悪いんじゃ!」

何処までも俺の所為にしたいようだな、このクズは。

状況的に見て、火に油だろ。

「まったく……昔のアナタならもっと知恵が回ったでしょうに……昔のアナタなら!」

女王が額に青筋を浮かべ、呆れながらも手を当てている。

「どうやら弁護する必要は全く無いようですね」

何処吹く風とでも言うかのようにビッチとクズは視線を逸らした。

俺に謝るとかそんな気持ちが微塵も無いのが分かる。

さすがにイラっとしてくる。女王はどうして俺をこんな場面に立ち合わせたんだ?

コイツ等が反省なんてするはずないだろうに。

「これだけは言わないで済む方法を考えていたのですが、しょうがありません」

扇を開いたり閉じたりしていた女王がビシッと二人に突きつけて宣言する。

「あなた達二人から王族の権限を永続的に剥奪します」

「何!?」

「ママ!?」

クズとビッチがそれぞれ驚愕の声を出す。予想より罪が重くて納得できないようだ。

妥当だな。

あ、なんか楽しくなって来た。もっと見ていたい。

「ナオフミ様……何笑っているんですか」

「わからないのか?」

「わからなくも無いですが……失礼です」

「母上……本気だ」

「んー?」

フィーロは頭を傾けている。話を全く理解していないのが分かる。

なんだかんだで鳥だからな。食べる事と馬車しか考えていない。

「なんでよ!」

「あなた達の行いが寛容に許せる範囲から大きく逸脱しているからです。本気で反省しているのなら、私がどうにかしてイワタニ様に許しを請うことも出来たのですが……」

「許すと思うか?」

「そこを頷かせるだけの賄賂を色々と行うという手段も考えていたのですよ」

賄賂ねぇ……興味はあるが、今の方が楽しい結果になっているぞ。

「私が王族じゃなくなったら、この国はどうなるのよ!?」

「メルティがいます。アナタよりも遥かに優秀ですから、この国は繁栄するでしょう」

まあ、ビッチよりはメルティが継承する方が将来性あるよな。

ちょっと猪突猛進だけど、今回の事件で大きく成長しただろ。

「ワシが王族ではなくなったら関係各所が黙っておらんぞ」

「既に黙らせました。私がこの三ヶ月、何もしていないと思われているのでしたら、大間違いです」

「な――」

クズの奴、メッチャ驚いて声も出ないみたいだ。パクパクと何度も口を開くばかりだ。

「そもそも、どうして独断専行で勇者召喚を行ったのですか! 話はソレからですよ」

「……どういう事だ?」

「イワタニ様も疑問に思いませんでしたか? 国の最高権力者が何故、国から出て外交に躍起になっていて召喚に立ち会えなかったのかを」

確かにそこの所、疑問だったんだよな。

この言動から、そんな重要な事を他人にやらせる様な人物には見えない。

もっと狡猾に俺達を気持ち良く誘導して便利に利用する事だってできたはずだ。

少なくとも、この世界に来たばかりの俺程度なら簡単に操れるだろう。

それこそ第二王女のメルティをうまい事押し付けて、恋愛結婚に見せかけた政略結婚も可能だったはずだ。

「まず、前提として話さなければいけない問題です。この国は……4番目に四聖勇者の召喚を行うと世界会議で決めた国なのです」