軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ネト充

「ちょっと待って樹、他にも元康くんに聞いておいた方が良いと思うんだ。俺達の仲間になる人でそのリーシアさん以外にも助けなきゃいけない人がいるかもしれないからね」

「わかりました……」

「元康くん、他に樹の仲間はいる?」

「ストーカー豚以外はみんな裏切り者ですぞ」

「……嫌な世の中ですね。やはり早く助けないといけませんね」

「それじゃあ他に頼りになりそうな仲間の記憶は無いのか? 俺の仲間にそういう奴はいるか?」

錬にも尋ねられました。

こっちは簡単ですぞ。俺はエクレアと助手に目を向けます。

すると二人に若干嫌そうな顔をされました。

どういう意味ですかな?

「錬の仲間はエクレアと助手ですぞ。他はお義父さんが領地にしていた奴隷達ですな」

「エクレールとウィンディアか……」

錬がエクレアと助手を見ますぞ。

何やらがっかりしているようにも見えますな。

「なんだアマキ殿。私では不服か?」

「私もガエリオンもそこ等辺の奴よりは強くなってる。弱くない」

「そういう訳じゃないが……前にも聞いたな、とな……」

錬がエクレアと助手に不満そうな態度を取られていますぞ。

まあ最初の世界でもこんな感じだった記憶がありますがな。

「最初の世界だと奴隷だけど今までのループとかで仲間になった人とか……そうだな、七星武器の勇者に選ばれた仲間とかを重点的にスカウトすると良いかもよ?」

「道理だな。元康、誰かいないか?」

「確か最初の世界だとツメがフィーロたん、槌がお姉さん、杖がクズ、鞭が助手、投擲具がストーカー豚、斧がみどり、小手がハクコ種の奴隷でしたな」

「三人……三羽がフィロリアルか」

おや? なんで三羽なのですかな?

何か錬が勘違いしている気がしますぞ。

「樹の運命の相手も入っているみたいだね。じゃあ他に、ループ内で所持者が変わったとかある?」

「もちろんありますぞ。とは言っても前回のループでの所持者ですな。あの時は緊急事態だったので正確な所持者か判断出来かねますが、槌がサクラちゃん、投擲具がユキちゃん、鞭が助手、杖はクズ、そしてツメはパンダでした」

「ユキちゃんも候補者かー、というかサクラちゃんが槌? 今のサクラちゃんは武器を使わないよ?」

「選ばれるようにがんばりますわ!」

「んー? サクラ眠ーい……」

「前回のサクラちゃんは背が高くて二刀流の使い手だったのですぞ」

「育成一つでサクラちゃんの姿まで変わる訳ね。ところでウィンディアちゃんの鞭に選ばれる確率について」

なんかお義父さんが若干笑い気味に助手を見ますぞ。

助手はブンブンと鞭を振るうモーションを取ります。

ライバルが何やら頬に手を合わせて絶句しているように見えますな。

絵画の叫びのようですぞ。

「で、ツメの勇者になったパンダって誰?」

「シルトヴェルトでお義父さんと意気投合した傭兵パンダですぞ」

「シルトヴェルト……」

錬と樹が腕を組んで何故か半眼でお義父さんを見ますな。

と、同時に騒がしい声が聞こえてきますぞ。

先ほどからうるさいですぞ!

「「「姐御ー!」」」

「えーいうるさい! 今夜は騒ぐんだよ!」

うるさいのはお前の方ですぞ。

騒ぐなら余所でやれ、ですぞ。

「確か尚文が宿の窓から外を覗きこんでパンダと騒いでいた事があったな。そいつだったのか」

「えっとー……傭兵となると難しいかもね」

お義父さんの目が泳ぎながら、何故か酒場内の一点に視線が集約してきますぞ。

傭兵連中が相変わらず大騒ぎをしていますな。

正直、うるさいですぞ。

「ねえ、元康くん」

「なんですかな?」

「あそこにパンダが居るけど別人?」

俺は言われて良く確認しますぞ。

犬っぽい連中を引き連れたパンダ獣人が豪快に酒場内で食事を取っておりますな。

先程からうるさいのはコイツ等ですぞ。

……見覚えがありますな。

「ああ、確かあのパンダですぞ」

俺が指を指すとお義父さんは若干呆れるように肩を落とします。

そういえば前回、パンダはゼルトブルに行くかどうか悩んでいましたな。

結果的にお義父さんの仲間になったのでゼルトブルには行きませんでしたが、俺達が関わらないとゼルトブルに行く様ですな。

やがて静かな声で樹が言いました。

「偶然とは凄いですね」

「そうだな。尚文、さっそくスカウトしたらどうだ?」

「パンダに興奮したけど……どうやってスカウトしたんだろ?」

「実は少女趣味で可愛いモノに関心があるのですぞ。あのパンダは」

「あー……同行者をサクラちゃんやイミアちゃんみたいに気飾らせていたのかな?」

「かもしれないな。尚文はそういうギャップとか好きそうだしな」

視線に気付いたのかパンダが何やら不快そうに視線をこっちに向けていますな。

俺は気付かないフリをしますぞ。

「とりあえず尚文。どうにかしてスカウトしてきたらどうだ?」

「ええ!? どうしてもやらなきゃダメなの?」

「世界の為ですよ」

錬と樹に諭されてお義父さんは渋々と言った様子で立ち上がりました。

おお、またもや交渉が始まるのですな。

お義父さんなら確実に成功すると思いますぞ。

「わかったよ。とりあえず輪に入って勧誘はしてみるけど、期待はしないでね」

「イワタニ殿、無理をしなくても良いのだぞ?」

「勇者になれるかもしれない人を放置するのもね……がんばって見るよ」

そんなこんなでお義父さんはパンダの輪に近付いて行きました。

「飲め飲め!」

「姐御ー!」

「おー!」

凄く自然に輪に混ざって拍手を始めました。

パンダの威勢の良さに酒場内の冒険者は賑わっている手前、誰とでも酒を飲める雰囲気が出来あがっているのですな。

しばらくお義父さんを観察していたのですが、こっちに戻ってくる気配はありません。

「時間が掛りそうですね」

「知り合う事を前提にしているんだろ」

「うー……ツメの勇者はガエリオンが狙ってるなの」

「とりあえず、どうします?」

「大分夜も更けていますしね」

樹がお義父さんに手でサインを送っております。

お義父さんはそれとなく頷きました。

これは帰って良いという意味ですかな?

「まあ、尚文さんの事ですから上手く知り合って、勧誘してくれると思いますよ。迷惑にならない様に先に帰りましょう」

「承諾は得たしな」

「ええ……さ、皆さん。尚文さんの迷惑にならない様に宿に帰りますよ」

とまあ、俺達は勧誘をお義父さんに任せ、酒場を出る事にしたのですぞ。

帰り道、錬がぼんやりと言いました。

「しかし……こういうのは本来、元康の方が向いてるんじゃないのか?」

「合コンですかな?」

懐かしいですぞ。

高校に上がったばかりの頃、何度か行きましたな。

大学と違って酒ではない、学生らしい合コンだった覚えがありますぞ。

相手が豚であるという点さえ除けば、まあ悪くない記憶ですな。

「何度か経験がありますぞ。異世界に来る前ですがな」

「何度か、なんですか? 失礼かもしれませんが、元康さんみたいなタイプはもっとそういう経験あると思ってました」

「だな。無数に経験してそうだ。外見的な意味で」

「何度か行った後、誰も誘ってくれなくなったのですぞ」

「あー……元康さんは顔はとても良いですからね。合コンで女子を総なめにしたんでしょう」

「なるほど、確かに他の男からしたら誘いたく無くなるな」

「豚ですぞ?」

「今の元康さんは、ですよね。まったく……」

樹が疲れ切った様な表情をしておりますな。

豚など何匹集まっても精々ポークカツレツになる程度ですぞ。

重要なのは数ではなく、質ですな。

フィーロたんの様な神々しく慈愛に溢れた唯一無二の存在に出会える奇跡こそが、重要なのですぞ。

「それにしても尚文は交渉事が得意過ぎるだろ。凄くさり気なく混ざったぞ。本当にアイツはオタクなのか?」

「お義父さんですからな」

「何がお義父さんだ。そうじゃなくて、俺の勝手なイメージだが、オタクってコミュ障だと思っていた」

「コミュ障なのはむしろ錬さんじゃないですか」

「なんだと? まあいい……樹の毒舌にも慣れてきたからな」

そうですな。

樹はさらっと相手の癇に障る事を言うのですぞ。

しかも無自覚なので、性質が悪いですな。

「それで錬さん、尚文さんの場合、リア充では無い様ですが、アレはネト充と言うんですよ」

「そうなのか? 樹も詳しいな」

ネト充……お義父さんはそんな存在だったのですかな?

確かネットが充実している、とかそんな意味だったと思いますぞ。

昔の俺の様なリアルが充実している者のネット版みたいな物ですな。

最初の世界のお義父さんはとても鋭い眼光をして、近づく者に噛みついていましたが、それ以外の世界のお義父さんはみんな優しくて人と話すのが大好きな様ですからな。

カリスマがあるのですぞ。

きっとネット内で知り合った友人達と飲み会とかしていたのでしょうな。

「さすがお義父さんですな」

「また適当な事を……」

「何がさすがなんですか……」

こうしてパンダの勧誘をお義父さんに任せました。

サクラちゃんとコウは運ばれてくる料理を黙々と食べていた様で、満足したみたいですぞ。

ユキちゃんは己を律するらしく、レースの為に我慢をしていた様ですな。

ですがその表情に曇りはありません。

「では、僕はリーシアさんという方の捜索にメルロマルクへ行きます」

「まだ夜なんだが……」

「ここで待っているなんて出来ません」

そう言って樹はポータルで飛んで行きました。

落ち着きの無い奴ですな。

おや? コウもいませんぞ?

そういえばコウは樹を手伝うと言っていましたからな。

そんな感じで夜は更けていったのですぞ。

翌朝、お義父さんはパンダではなく……何故かお姉さんのお姉さんを連れて眠そうに帰ってきました。