軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

凄い訳じゃない

「その手の策略を平然と使う様な奴だからね。間違いなく……ラトさんの研究を潰して追い出したんだ」

「何? そんな事を私はされそうになったって言うの?」

主治医が眉を寄せて不快そうに言いますぞ。

まあ己が不幸になる未来ですからな。

前回までの錬や樹と似た反応ですぞ。

「無いとは言い難いけど、飛躍しすぎじゃないの?」

とはいえ、学者肌だという事もあるのでしょう。

主治医はありえるかもしれない、といった顔をしていますな。

「可能性でしかないかな……どっちにしても何かしらの方法でラトさんが追い出されたのなら、ありえるよ」

「あの子が研究内容で勝負をせず、私の部署を排除する、なんて未来は信じたくないわね」

「俺達がフォーブレイに来た所為で変わってしまった可能性でしかないから、そこまで気にしなくて良いと思うけど……」

主治医はお義父さんの話をあんまり信じたくないと言いたげにしております。

しかしながら事実は事実ですぞ。

タクトとその豚とやらの関係を少しでも考えれば、自然とそうなる未来が見えるでしょう。

俺は主治医がそれ位の事は考えられると信じております。

「とりあえず、ラトさんはここで研究できるなら良いんじゃないかな?」

「そうね……だけど、あの子とはもう少し競いたかったわね」

主治医は嘆くように言いました。

ライバルの喪失に嘆いているのですな。

少しだけ、ほんの少しだけ気持ちが理解出来ますぞ。

フィーロたんのライバルである、ライバルが勝手にリタイアしたら拍子抜けですからな。

「なんかネジが時々飛んでるけど、研究に対しては真摯な人みたいだね」

「それなりに有能ですぞ」

俺とお義父さんは小声で主治医を分析します。

フィロリアル様に注射をする所が嫌ですが、研究に対する姿勢は評価しますぞ。

「ラトさんは競いたかったんだ? 自分を破滅させるかもしれない相手だったのに」

「ん? そうね。正直に言えば切磋琢磨して行きたいと思っていた相手だったのよ」

「タクト達やその子は自分を脅かす芽は摘もうとしていたみたいなのに?」

お義父さんの言葉に主治医は腕を組んで答えますぞ。

「蹴落として何になるのよ?」

「あっちは得になったんじゃない?」

「……そうかもしれないわね。けれど仮にその話が事実だとして、私の部署が無くなってもあの子が凄い訳じゃないわ」

「まあ……確かに」

そうですな。

己のライバルを排除した所で、自分の研究が評価されなければ意味がありません。

「それは私も一緒よ。相手がいなくなっただけで、私の研究が完成した訳でも、認められた訳でもないわ。私だったらそんな事で満足なんか出来ない」

「な、なんだろう。凄く風格がある様な物言いだね」

「常に己との戦いと言っているように聞こえますな」

さすがフィーロたんの主治医ですな。

主治医であるだけの強さを俺は垣間見た気がしますぞ。

最初の世界のお義父さんが主治医を領地に住まわせていた事に納得できますな。

「ところで四聖勇者が鞭の勇者がどうこうって言うのはどう言う事?」

「あ……まあ隠す必要は無いかな? 一応は情報封鎖しているんだけど……」

「喋ると面倒事が増えますが良いですかな?」

一応、タクトの残党を纏めて処分している段階で、フォーブレイ内では現在、情報を封鎖している所が多いそうですぞ。

「私の部署も関わってるなら聞いた方が良いんじゃない?」

「そうなるか……あのね。これは元康くんが未来から来たという事に繋がるんだけど、鞭の勇者であるタクトは――」

俺達はタクトが七星勇者を殺して武器を奪った犯罪者である事とタクトの関係各所を処分している最中である事を説明しました。

ホムンクルス研究所もその一つであり、なにかしらの抵抗がある可能性があるので注意したのですぞ。

「いろんな所の汚職が見つかったとかで取り潰しになっているのはそういう理由があるのね」

「はい。タクト派の者達が権力を使って暴れない様にしている最中なんだ」

「しかし……未来の情報云々はともかく、七星武器を三つも所持ねー……確かにそりゃあ処分されるわね。しかも四聖勇者の声じゃ逆らえないわ」

「出来る限り口外しない様にお願いします」

主治医は軽く手を振って応じますぞ。

「話したら私が消されかねないわよ。そんな事出来ないわ」

「まあ、ラトさんとはこうして知り合った仲だし、元康くん、何か研究に力を貸せたりしない?」

「そうですな。バイオプラントの種を持ってくるのはどうですかな?」

最初の周回でやっていた研究ですぞ。

主治医は熱心に研究をしていたようでしたからな。

俺はバイオプラントについて、簡単に説明しました。

「そんな夢のような繁殖力のある植物があるの? あるなら見せてほしいわね」

「ありますぞ。最初の世界でお義父さんと一緒に様々な亜種の作成をしていましたからな」

「それも良いけど……勇者が育てると魔物が変わった成長をするというのをじっくりと観察したいわね」

「そろそろ波に備えた戦力増強を考えていたから良いかもね」

「フィロリアル様の健康診断もお願いしますぞ」

「私は錬金術師で魔物医じゃないのだけど? まあ……良いわ」

主治医は溜息をしました。

それだけの腕があるのに、何が不満なのですかな?

「では今日中にでもポータルで種を取ってきますかな?」

「そうだね。ラトさんに見てもらえば更に研究が進むだろうし」

「じゃ、話は終わったわね」

主治医は話を終えるとガシッとさりげなく俺とお義父さんの元に戻って来ていた、サクラちゃんとコウの襟首を掴みました。

なにをするのですかな?

「し、しまった! コウ怖い!」

「や、やー! ナオフミ助けてー」

「二人とも、我慢してね。ユキちゃんもやったんだからさ」

「そうですわ。私だけ我慢は許しませんわよ」

「「やー!」」

サクラちゃんとコウの悲鳴が響き渡り、健康診断は問題なく終わったのですぞ。

その日の内に俺がバイオプラントの種を取りに行って主治医に渡しておきました。

当初こそ懐疑的な反応でしたが植えてすぐに芽が出た事で主治医も目の色を変えましたな。

やはり研究者という事でしょう。

「本来は魔物化して暴走するのですぞ。ですからそうならない様に若干調整しておきました」

変異性を下げているので、割と安全な種になっていますぞ。

まずは種を増やしてお義父さん達も扱えるようにしておかなければいけませんからな。

「こりゃあ研究のやりがいがありそうね」

主治医は楽しげにバイオプラントの研究を始めた様ですぞ。

まずは観察記録を取り、葉や幹、そして実の分析をしております。

「種が増えたら四聖勇者に声を掛けてくれれば随時頼まれた様に改良しますぞ」

バイオプラント系の素材で改造に必要な技能は手に入りますからな。

文字の勉強も出来てきたお義父さん達も魔法を着実に覚えて来ております。

その結果、植物改造も俺と同様に出来るでしょう。

誰でも良いから主治医の要望通りにバイオプラントの設定を変えれば良いのですぞ。

「はいはい。わかったわよ」

主治医はバイオプラントに夢中な様ですな。

ちゃんとした機材さえあれば、最初の世界でお義父さんと一緒にやっていた様な事が出来るようになるのではないですかな?

結果が楽しみですぞ。

なんて感じで本日の俺の仕事は終わりました。

ま、なんだかんだで、一週間くらいはそれぞれポータル位置を取りに行った感じですな。

そんなこんなで波が近づきつつある状況ですぞ。

数日中にはとある国で波に挑む予定です。

今日は久しぶりに豚王の謁見を予約していたので、会いに行く事になっているのですぞ。

「何処で波が起こるか元康くんわかる?」

「全然わかりませんな。初参加の波ですぞ」

「となるとぶっつけ本番か」

「どうにかなるとは思いますが、油断はしない様にしましょう」

豚王が出てくるまで待合室で待機ですな。

やがて豚王が起きたっぽいので俺達は呼ばれましたぞ。

「ブフフフ……勇者達よ、久しぶりじゃな」

「一週間ぶり位ですね」

「どうかな? 最近の調子は?」

「近日中に発生する波に参加します。大体のネットワークは構築出来たので、世界中の波に参加出来る状況になりました」

お義父さんが地図を見せて説明しますぞ。

今までここまで上手く纏まって波に挑む状況が構築できたのは最初の世界以外にありましたかな?

「それは何よりじゃ。そんな勇者達に少々問題のあるニュースを伝えねばならない」

「な、なんですか?」

「何か問題でもあったのか?」

樹と錬が豚王に尋ねますぞ。

お義父さんはなんとなく察しているのか錬と樹の肩を軽く叩きます。

「なんだ尚文?」

「たぶん、俺もわかったからさ。錬も薄々は察しているんでしょ?」

「……ああ、それが俺達にも回ってきたって事か」

やはりそうですかな?

と、俺は知ったかぶりをしておきますぞ。

「な、何があるんですか?」

「あのね樹、フォーブレイではタクトの事件から世界中の七星勇者に召集の命令が出ているんだって。七星武器がタクトみたいな奴の物になっていないか懸念してね」