軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

招集

「これで耳打ちすらも拾う者はおるまい」

「後は風の魔法で音を遮断するのですぞ」

「わかった。こちらで用意しようではないか。ぶふふ……してどんな話なのじゃ?」

豚王の興味は随分と高まっている様ですな。

大臣臭い奴が異議を唱えるように一歩踏み出しますぞ。

「王! このような怪しげな勇者の言葉を――」

言い終わる前に王が視線を兵士に向けて大臣臭い奴を取り押さえました。

「そいつ解任、何か怪しい」

「は……はっ!」

ガタンと大臣っぽい奴は連れていかれましたな。

なんと、たった一言で無職ですかな?

場所と状況を弁えないからですぞ。

仮にも四聖勇者を怪しいなどと言う輩はこうなるのが当然ですな。

大方タクト派の奴が不穏な気配を察したとかですぞ。

「では」

風の魔法で音すら遮断された空間内、まあ拾われる可能性を排除するために、俺自身も魔法で強引に音を消す様にして豚王に囁きました。

すると豚王はカッと大きく目を見開いております。

……成功ですな。

「もちろん、王は半信半疑で良いですぞ。まずは……証拠を提出するのが先ですからな」

その日の晩。

何だかんだでフォーブレイの公務の時間は夜にもあるそうですぞ。

まあ、謁見自体は夕方で終わりですがな。

俺の話を聞いて期待したフォーブレイ王が、夜の遊びを先延ばしにしてくれているのですぞ。

溜まった仕事を全て片付けるとか言っていましたな。

やがて城の客間に案内された俺達にタクトからの使者が執拗に何度もやってきました。

ノコノコと俺達が向かうと、一斉射撃してくるのですぞ。

「タクト様が四聖勇者様の歓迎会と、昼の一件での謝罪をしたいとおっしゃっています。どうか来てくださるようお願いします」

「断る。お前が謝罪に来い。フォーブレイ王も昼間の一件で話があると言っていただろ」

タクトの歓迎会は中庭の先にある王族関係者が住む城壁内の町で行われている様ですぞ。

ですがフォーブレイ王が招集したのですから、タクトの方が来るのが筋ですな。

錬が最初に断ると、使者も渋々帰って行きました。

「本当に来たね」

「ああ、元康を疑う訳じゃないが、あそこまで露骨だとは思わなかった」

「ですがもしも知らなかったら渋々行ったんじゃないですか?」

「なんでも戦いは質と量、そして戦略らしいよ?」

「つまり戦略で誘き出して、のこのことやってきた所を大人数で一網打尽ですか」

「知っているとこうも滑稽に見えるもんなんだな」

「そうかもね。ところでフォーブレイ王、どう思う?」

「どうもこうも……」

「貞操の危機を感じましたよ……」

確かに錬や樹を見る目がやばかったですな。

あれはどう見ても狙っていますぞ。

俺としても他人事ではありません。

なんせ豚王はユキちゃん達を凝視してましたからな。

「尚文、あんな王と結託して本当に大丈夫なのか?」

「僕も不安になって来ました……」

「う~ん、ちょっと話しただけだから適当な事は言えないけど、見た目より頭が回る方だと思うよ。特定の部分は特にね」

「それは陰謀とかですか?」

「そうだね。何よりあの人の年齢とこの国の治安を見た方が良いよ」

豚王は結構な年齢だと聞いた事があります。

あのクズより年上らしいですぞ。

そしてフォーブレイの治安ですが、勇者の国という事もあり、かなり良いそうです。

まあ豚王が善政をしているとは思えないので、部下に任せているのでしょうが。

「……あれで回っているという事ですか」

「考えてみれば必要経費については、かなり出していたな。異世界に来て一ヵ月だが金額にビックリした」

「うん、本当に愚かな王だったなら国民が革命を起こすでしょ?」

そうですな。

前回のメルロマルクの様に国民の怒りが爆発する事だってあるでしょう。

しかしフォーブレイではそういう話を聞きません。

精々最初の世界でタクトが政権を奪った程度ですな。

しかしタクトは一応末端の王族だと聞いた覚えがあります。

つまり革命と言うよりは政権交代と言った所でしょうか。

「なるほど、味方では無いが、敵にさえしなければやり様があるって事か……」

「だからこちらも、これから利用価値を見せる訳ですね」

「そうなるね。まあ厄介な相手なのは確かだけどさ」

お義父さん達はそんな話をしていました。

しばらくして豚を連れて別の使者がやってきましたな。

「どうか、タクト様の主催する宴に来てください。フォーブレイ王の主催する歓迎会には、絶対に間に合います」

「ブー!」

「しつこいですね。謝罪するのも公の場で顔出しするのも立場的にそっちでしょうが! 何様のつもりですか! それとも貴方達は四聖勇者を蔑ろにするというわけですか?」

今度は樹が使者としばらく問答をしました。

やはり使者はかなりしつこく食い下がってましたな。

「かなりイラついてるみたいだったね。唇を噛んでたよ」

「見え見えの罠ですよね。最悪、翌日に持ち越してくるかもしれませんよ」

「それならこっちも同じ事をするまでだよ。例え根競べになっても、どうにかして逆に誘き出すだけさ」

俺達に向けて再度使者が、タクトの豚を複数連れてやってきました。

本当にしつこいですな。

「どうか来てください! 四聖勇者様の、これまでの活躍、お耳にしたいとタクト様もおっしゃっております!」

「ブー!」

「ブー!」

「ブヒー!」

「だーかーら、七星勇者なんだから、そちらがこっちに来るのが筋でしょうが!」

お義父さんは不快そうに豚共を連れた使者に怒鳴りました。

不機嫌であるのを強調しますぞ。

しかし豚共がブーブーとうるさいですな。

錬と樹に続き、しばらくお義父さんが問答をしていましたが、使者もさすがに無理だと悟って帰って行きました。

そんなこんなで国の兵士達が豚王の命令でタクトとその一行を招待しました。

さすがに豚王と真正面からの対立を避けたいのか、タクトは渋々やって来た様ですな。

俺達は豚王達と共に城の後宮にある神殿で待っていますぞ。

「王の命です。タクト様一人で来るようにとのご命令です」

「わかった。ったく、なんなんだ?」

で、タクトはここに来る前に後宮内の入り口近くにある待機所で、取り巻きの女共を数人待機させたそうですぞ。

現在、城中の監視カメラっぽい装置……映像水晶を改良した物を作動させているのを、俺達は王の近くで見させられております。

こんな機材もあるのですな。

魔法で画面が映し出されていますぞ。

さすがは技術の国ですな。

タクトが一人……自分が毎度やっていた不自然な分断に対して警戒もせずに歩いております。

お前の運が悪かったのは出会った相手がクラスアップの出来ていないサクラちゃんとライバル達、そして一見すると強さを測りにくいお義父さんだった事ですぞ。

「タクト=アルサホルン=フォブレイ、フォーブレイ王の命により招集に応じました!」

神殿の前にやって来たタクトはノコノコと招待されて一人で顔を出してきたのですぞ。

フォーブレイ王とその周りにいる警護の騎士、そして俺達ですな。

ま、さすがに俺達はお前の様に一斉射撃なんて愚かな事はしません。

最初の世界のお義父さんならばこう言うでしょうな。

もっと、酷い方法だと。

タクトは謁見するために俺達を一瞥してから豚王に会釈しますぞ。

「ぶふふふ、良く来た鞭の七星勇者……いや、違うか?」

「ん?」

タクトは首を傾げておりますな。

しかし、豚の様に愚かな王とでも思っているのか、すぐに表情を戻しました。

そんなタクトにお義父さんが声を掛けますぞ。

「さて、昼間はお世話になったね」