軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

良い証拠、悪い証拠

お義父さんとサクラちゃんは商店街を見に行きました。

地域の特産品と料理のチェックをするのだそうですぞ。

錬と樹が若干楽しげにしておりました。

きっと今晩はご馳走だからでしょう。

で、錬とユキちゃんは近隣の調査に出ていますぞ。

俺も全て網羅している訳ではありませんからな。

ゲームと同じような狩り場があるかもしれません。

この辺りにしか生息しない魔物を素材として手に入れることが出来たら能力アップを図れるので、錬はやる気を見せています。

樹はコウと一緒に町を散策してもらっていますぞ。

あんまり町の人に関わり過ぎない範囲で様子を調べるそうです。

何かに巻き込まれないか不安ですぞ。

なので俺は樹と同行しております。

「見た限りでは普通の……町ですね」

「少々中華っぽい毛色のある町並みでもありますな」

「そうですね。ゲームだった時は中世がベースですが、町や国によって差異があるようですね」

「みたいですな」

「ところで元康さん」

「なんですかな?」

「尚文さんや錬さんも不思議がっていたのですが、町の人や冒険者の中に日本人のような顔をしている方々が居ますし、僕達を不思議がらないのは、やはり何かしら理由があるのですか?」

ああ、その話ですな。

俺も召喚された当初、時々思っていましたな。

まあ、人種の坩堝と割り切って行動していましたが、今は答えを知っていますぞ。

「樹、この世界はそれなりの頻度で勇者は召喚されるのですぞ。その勇者達は活躍後にどんな扱いをされますかな?」

「権力があって取り入れられる。そして……なるほど、尚文さんとかが反応しそうな話題ですね」

樹は察したのか納得しました。

まあ、ここまで話せば樹でもわかるでしょう。

「つまり召喚された勇者と婚姻関係を結んで子供が増える訳ですね。自然と日本人顔の隔世遺伝とかも出てくる訳ですか」

「らしいですな。ただ、俺としては日本人ばかり召喚されると言うのに疑問を思い浮かべますな」

「僕達が偶々日本人で召喚されただけで、外国人も居るのではないですか?」

「知りませんな。何度もループしていますが、その辺りの資料は見て無いですぞ」

霊亀の国で書かれていた碑文は日本語でした。

鳳凰の地にあった資料も日本語だったはずです。

お義父さんが日記の様な資料にイラついていたので覚えていますぞ。

「最初の世界でもですか? って……コウさん、僕の髪を凝視するのをやめてください」

「なんでー?」

「僕の髪は貴方のご飯では無いからです」

と、コウを注意してから樹は俺の方を見ますぞ。

最初の世界での事ですか。

「最初の世界ではあんまり祭り事や調査には参加していませんでしたからな。フィロリアル様と世界平和しか考えていませんでしたな」

「それは今もじゃないですか」

はぁ……と、樹は深く溜息を吐きました。

まあそうなのですがな。

俺は真なる平和の為に戦っているのですぞ。

以前はそういった事柄はお義父さん達がやってくれましたが、今は俺が進んでやるべきでしょう。

なんせ、ループ出来るのは俺だけなのですから。

「一見すると平和な町並みなんですけどね……裏ではどんな事件が起こっているかと思う時はありますよね」

「日本でも変わらないのではないですかな?」

「言い得て妙ですね。確かに、一見すると平和ですけど、何処かで事件が起こっている……違いは無いですね」

「俺達は警察では無いのですぞ。目の前で事件があれば多少は力添えするだけの強さを持ってはいますが、まずは大きな問題である波に意識を向けることが重要ですな」

「そう、ですね。下手に肩入れする事で、メルロマルクの様に弱者のフリをして僕達を利用しようとする者達も居るかもしれません。まさに国に一任するしかない訳ですか」

……難しい問題ですな。

俺も少しは覚えがありますぞ。

金に任せて理不尽な要求、賞金首が強さに依る強引な統治をして乗っ取っている町……このような場合は、強引に解決しても良い様な気はしますな。

「ゲームのクエストの様に、正しい答えが用意されている訳じゃない。まさにここは異世界ですが現実なんですね」

「正しいかは個人の問題でもあるのでしょうが、何が良いのか見極める必要はあると思いますぞ」

樹は何だかんだで強い正義感を持っているのですから、そのストレスの解消をしないと暴走するかもしれません。

と、前回のお義父さんが注意していたのを思い出しました。

何でも良いのでストレス解消を出来ると良いのですがな。

「一見すると悪にしか見えない相手でも、話を聞く余裕は持つべきではないかと前回のお義父さんは樹の説得に失敗して呟いていましたな」

「……悪人と思っても聞き入れる。そうですね。人を見た目で判断してはいけない、なんて話もありますし、相手の話を言い訳と決めつけずに事情を聞かねば、真実は見えないのですね」

どうやら召喚された後、樹は正義を行う中毒だったのですかな?

今の樹を見ると意外な答えを言う時がありますぞ。

「難しいですが、尚文さんや元康さんと話をしているとなんとなく分かる様な気がしますね」

「俺とお義父さんですかな?」

「この馬車の旅で尚文さんは店で食材を購入する時に、店側の事情を察してから値引きをしているのですよ。元康さんも気付いてますよね」

「ですな。お義父さんは交渉上手ですぞ」

「アレは相手が譲歩出来るラインを話をする事で聞き出しているんですよ。これって正義と悪の関係に似てると思うんです」

樹なりの見解ですな。

お義父さんが褒められて俺も気分が良いですぞ。

「尚文さんは安く買いたい。店側は出来る限り高く売りつけたい。これを正義と悪に当てはめると尚文さんを弱者として、お金が無いから安く買いたい。そして悪側が店として、高く売る事で私腹を肥やす……」

「かなり強引に当てはめてますな」

「良いから聞いてください。これを拡大解釈すると、弱者は安く買わないと生活できない。強者である店は高く売りつけるので、弱者は絞られているように見えます。ここで僕が何も知らずに立ち寄ったら店が強引に弱者から絞っているように見える」

「ふむふむ……?」

何を言いたいのか良くわかりませんな。

とりあえず頷いて置きますぞ。

「ですが、仮に店側はこの値段で売らないと生活できない、と言う事情が隠されていたら……弱者を助けて、店側を倒して略奪するのと変わりません。これでは正義でも何でもありません。その事実を知ることが僕には必要なんだと思います」

「店側の事情を知るのですな」

「ええ、尚文さんは店側が最大限譲歩出来る、店が損をしない範囲で安く購入するのが得意なんです」

「ですが聞いた話では最初の世界の樹は情報収集をして、失敗をしていたそうですぞ」

樹の話なら、情報をしっかりと集めていれば簡単に間違いは起こらない事になります。

それなのに樹は失敗をしました。

これは何故なのですかな?

俺の返答に樹は再度考え込みました。

「元康さん、何かほかに僕に関して最初の世界で尚文さんや他の方が注意していませんでしたか?」

「あまり覚えていませんなー……」

樹の暴走を抑える為には必要な情報なのはなんとなくわかりますぞ。

ここで良い助言をする事で、樹は暴走しないように出来るのかもしれませんな。

なので俺は思い出しますぞ。

最初の世界でお義父さんやお姉さん、他の者達が何か言ってませんでしたかな?

もしくは、俺自身が樹に思っていた事を素直に言う事が答えになるかもしれません。

あ、なんとなくお義父さんや他の者達が愚痴っていたし、俺が思った事が浮かんできますぞ。

「都合の良い証拠を集めるのではなく、悪い証拠にも目を向けると良いのではないですかな?」

前回、お義父さんが錬と樹の説得に失敗した時……強化方法に関しての事で、似たような話をしていたのを思い出しました。

「強化方法と同じですな。自分が知っているから正しい、他のは信頼していないのですから出るはずが無いのに間違っていると判断する。これもある意味、正義と悪では無いですかな?」

「な、なるほど……確かに、判断材料の中で都合の良い悪を見つける為に証拠を集めていたら、都合の良い真実を見出してしまいますね」

樹は納得した様にポンと手を叩きましたぞ。

「『この値段で売らないと生活できない』と言う情報を知っているのに無視して弱者に見える人を救ったら、何にもなりません。ましてや、お金が無い弱者が、『仕事をせずに怠けていた』からお金が無いのかもしれないと言うのにも目を瞑っていた事になります」

樹は何度も頷いてから町並みに目を向けました。

「出来る限りの情報を集め、都合の悪い情報から目を逸らさずに判断する。ゲームだったら簡単だったのに、難しいですね」

樹がなにやら面倒な事を言っていますぞ。

「ま、俺からしたら歯向かう奴は身の程を叩きこむのが一番だと思いますがな」