軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

乗り物酔い

二時間後。

「いやー、夜でよくわからない所もあったけど、月明かりでも見えるもんだねー」

「グア!」

お義父さんがご機嫌で帰ってきました。

俺はすぐに駆け付けて迎えますぞ。

「お帰りなさいですぞ。経過はどうですかな?」

「んー……サクラちゃんが道行く魔物を俺が乗ったまま倒してくれてね、Lvが10も上がったよ」

「順調ですな」

「昼間にやりたいね。こう……いろんな景色を楽しみたい」

「ふむ……少々不安だったが問題が無い様で良かった」

エクレアがホッと安堵していますな。

俺とフィロリアル様を一緒にするな、ですぞ。

フィロリアル様がそんな危険な所に行くはずありません。

理性と野生を融合させた狩りを実現しているのですぞ。

「それでだな、イワタニ殿」

「どうしたの? 錬や樹達に何かあった?」

「いや、そうではなく、浴場に関してなのだが……人間の風当たりが強くて使用できなかった」

「あー……うん、それはしょうがないね」

そういえば前回はシルトヴェルトで宿泊する事は殆どありませんでしたな。

前々回は盾の勇者として国に来たのでシルトヴェルトの闇に関わっていませんぞ。

精々メルロマルクで革命があった時に時間つぶしに滞在した事はありましたな。

秘密裏に勇者達が滞在しているのが明らかになったのか、それともメルロマルクの暴走とお義父さんの活躍で人間の扱いが向上したのか、浴場の使用は出来ていたのですぞ。

「人間専用の浴場も無い訳じゃない様なのだが、ずいぶんと足元を見ていて治安が悪そうだった。お勧めできん」

「じゃあどうしようか? さすがに三日も風呂に入って無いのはちょっとね」

「私の様に水と布でどうにかするしかないかも知れん」

「魔法で湯を沸かしますぞ。なーに、岩をくり抜けば容易く風呂を確保出来ますからな」

「ああ、だから浴場の使用を拒否された後に、準備を整えていたのか」

「準備は万端ですぞ。後で川辺でバーベキューを交えながらやりますぞ」

「わあ……なんか楽しそうだね」

「もちろん、肉を焼いたり等の調理はお義父さんに任せますが」

「え? 俺がすんの?」

お義父さんが首を傾げながら聞いてきますぞ。

何かおかしなことを言いましたかな?

「元康くんは?」

「俺よりもお義父さんの方が料理は遥かに上手ですぞ」

「それもキタムラ殿の言うるーぷなる知識か?」

「ですぞ。これは俺が努力しても、この世界に来た直後のお義父さんに勝てない技術ですな」

「ほう……」

エクレアに見つめられてお義父さんが恥ずかしそうにしてますぞ。

するとお義父さんは謙虚な言葉を紡ぎました。

「いや、別に俺はそこまで料理得意な訳じゃないけど……」

「グア!」

サクラちゃんも涎を垂らしていますぞ。

楽しみですな。

何せ、お義父さんの料理を食べた者は口をそろえて美味しいと言いますからな。

あの錬や樹も村での食事に欠かさず参加していたのですぞ。

「まあ、元康くんが持ってきた素材の中に食べられそうな物があったからやってみる……かな?」

「毒物かどうかは俺が目を通しますのでご安心を」

お義父さん達はまだ目利き等の技能を習得していません。

なので俺が毒のある物は事前に撤去してあります。

まあ……加工する事で毒が抜けるモノなどもあるらしいですが、それは後々という事ですぞ。

「うん、じゃあ下ごしらえをしておこうか?」

「はいですぞ」

俺達は川辺に移動して食事の準備をしますぞ。

「川の水を直接飲んでも大丈夫なのかな?」

「井戸水が最適ですな。さすがに俺の魔法でもろ過までは出来ませんぞ」

こういうのは水魔法か土魔法の管轄なので、錬か樹じゃないと難しいですぞ。

精々俺が出来るのは熱殺菌程度ですな。

「まあ、井戸水くらいはシルトヴェルトでも手に入るよね。宿でも水は使わせてもらえたし」

「では後で取ってきますぞ」

「お願いするね。じゃあ簡単にバーベキューでもしようかな。エクレールさんとサクラちゃんは辺りを警戒しててね」

お義父さんが手際よく肉を裁断していきますぞ。

「野菜とかもあれば良いけど、今日は肉が多いからそれで良いかな? 異世界の魔物の肉だからどんな焼き具合が良いのかわからないし、臭みもあるだろうけどね」

「毒があるのは省いてありますぞ。毒があっても前回のお義父さんは解毒をさせて調理してましたな」

「どんだけ前回のループの俺は食を追及してた訳? まあ……システムと言うか世界のルールを理解したら出来るのかもしれないけど」

などと言いつつ、手慣れた様子で肉の筋を全部切っていくお義父さん。

一目で分かるのは才能ですな。

「本当は少しくらい時間を置いた方が良いんだろうけどね。血抜きも中途半端なのが多いし……あ、エクレールさん、紐とか用意できる? 元康くんの持ってきた素材にハーブ類があったから燻製にしてみるよ」

「あ、ああ……」

「では燻製窯を作りますぞ」

岩を削って組み立てますぞ。

確か前回のお義父さんも似たような物を俺に作らせましたからな。

この槍はこんな事にも使える便利な槍ですぞ。

「ありがとう。後は吊るして、燻すだけだね。元康くん、任せられる?」

「お任せを!」

そんな調子で錬と樹を乗せたユキちゃんとコウが帰ってくるのを俺達は待ったのですぞ。

丁度、お義父さんが肉を切り終えた頃だったと思いますな。

「「グア!」」

「「う……」」

ユキちゃんとコウが一緒に帰ってきましたぞ。

背中に乗せていた錬と樹が転がる様にして降りると同時に倒れこみました。

鎧に関してはしょうがないので脱がしましょう。

俺が鎧を脱がせても、錬と樹は呻いて動きませんな。

「錬、樹、おかえり。ご飯の準備は出来てるよ」

「うう……」

お義父さんが新妻の様な事を言いましたが、錬も樹も呻いて動きませんな。

チョンチョンと木の棒で二人をつつきますぞ。

「大丈夫?」

「うう……気持ち悪い……」

「何度失神したかわかりま……う……食事を取っていないのが幸いでした」

呻きながらも樹と錬は顔を上げて言いますぞ。

食べていたら今頃リバースですな。

「尚文は……平気なのか?」

「何が? まあ、乗り心地は悪くて尻がすれて痛いけど」

「痛いで済んだんですか!?」

言い切る前に樹がガクッと力尽きるように一度頭を地面に付けますぞ。

お義父さんに頭を垂れている様にも見えますな。

「あまりにも乗り心地が悪くて何度か失神したぞ! 尚文、お前を乗せたフィロリアルが優秀なんじゃないのか!?」

「がくがく揺れはしたね。乗り心地自体は良くなかったと思うよ?」

あんまり変わらないんじゃないかとお義父さんは錬と樹に答えました。

「……とりあえず明日、尚文さんの乗っていたフィロリアル……サクラさんを貸してください」

「待て、サクラに乗るのは俺だ」

何やら錬と樹がサクラちゃんに乗る順番を争い始めましたぞ。

まあ、二人とも倒れたまま動かず、口だけでですが。

「う……気持ち……悪い」

「この話は回復してからにしよう……」

ぐったりと錬と樹は喧嘩すらやめて倒れこみました。

「うわ! 急いで介護しなきゃ」

「では軽めの回復魔法を施しましょう。お義父さん、錬と樹を仰向けに寝かせるのですぞ」

「エクレールさんは水を絞った手ぬぐいを準備して!」

「あ、ああ!」

錬と樹の額に手ぬぐいを乗せてから俺は軽めの回復魔法を掛けましたぞ。

これで多少は効果があるでしょうな。

しかし、錬と樹はもやしでは無いですかな?

フィロリアル様の乗り心地は夢心地なのですぞ。

徐々に慣れてしまってその夢心地に辿り着けなくなります。

俺はもう夢心地を楽しめなくなってしまいました。

非常に残念ですぞ。

お義父さんはこの気持ちを理解できないようですな。