軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ストーキング

翌朝、フィロリアル舎で起床した俺はお義父さん達に合流しました。

「なんか元康が臭くないか?」

お義父さん達は俺の匂いに関して怪訝な目をしていましたぞ。

何度も言いますが、俺は臭くありません。

これは高貴なフィロリアル様の香りですぞ。

「夜中、夜風に当たりたくて城の庭を歩いていたら馬小屋にフィロリアルという魔物がいたので、撫でていたら、いつのまにか寝ていたのですぞ」

ここも怪しまれない様に注意すべきですぞ。

まだ、お義父さん達は俺のフィロリアル様への愛をご理解なさいませんからな。

「え? どんな生き物?」

「あの馬小屋っぽい所にいた奴じゃないか? この世界だとそんな名前なのか」

何やら錬はフィロリアル様をゲームに居た似た魔物と重ね合わせている様ですな。

確かに似た魔物は居ますが、全く異なる性質を持っていますぞ。

あんな、ペットと一緒にしないでほしいですな。

「じゃあその動物……この世界じゃ動物も魔物なのか? で、そのフィロリアル? を可愛がっている内に寝たのか。それじゃあ動物臭くもなるよな」

「動物好きなんですよ、きっと」

「あー、確かに元康はそういうオーラあるよな」

「興奮が冷めないとは……子供だな」

絶対に寝不足だった錬が言う事ではないと思いますぞ。

最初の世界で、ワクワクした顔をしていた癖に一番に寝たお義父さんを見習うべきですぞ。

などと待っていると城の連中に呼ばれて四人で玉座の間へと行く事になりましたぞ。

「勇者様のご来場」

これも何度目ですかな?

今回、俺は目立つ行動を極力避けていますので、間違いなく最初の世界に近い仲間交換になるでしょう。

何せ、燻製すらも暗殺していませんからな。

「前日の件で勇者の同行者として共に進もうという者を募った。どうやら皆の者も、同行したい勇者がいるようじゃ」

まったく……最初から決まっているお義父さんを仲間はずれにするこの出来事は何度立ち会っても反吐が出ますぞ。

「さあ、未来の英雄達よ。仕えたい勇者と共に旅立つのだ」

お義父さん達が唖然とした表情で瞬きをしています。

俺も最初は思いましたな。

選ぶのはそっちなのか? と。

この場合は勇者の方が偉いのですからこちらが選ぶはずです。

今なら声高々に言いたいですぞ。

それに……何度も思いますがこの中で俺の記憶の最後まで残った奴等はおりませんからな……。

赤豚は元より、他の連中も碌な連中がいません。

俺の仲間になった奴も、割とすぐに抜けて赤豚が牛耳りましたからなぁ。

で、仲間になりたいと言う八百長の連中はぞろぞろと並びますぞ。

錬、5人

俺、4人

樹、3人

お義父さん、0人

これまた最初の世界通りですな。

赤豚も来て、吐き気がしますぞ。

おや? 燻製が錬の後ろにおります。記憶違いですかな?

あー……確か割とすぐに俺の方へやってきたかと思ったら樹の所へ行ったと思いますぞ。

俺はあの頃、豚の機嫌ばかり見ていましたからな。

錬とは反りが合わず、俺は気に入らなかったのでしょう。

最終的に自分勝手をしやすかった樹の元へ下ったのでしょうな。

この辺りの記憶は曖昧ですぞ。

「ちょっと王様!」

お義父さんが異議を申し立てますぞ。

ああ、お義父さん、今しばらくの辛抱ですぞ。

その先には、今までのお義父さんが歩んだ未来よりも良い結果を俺が手繰り寄せて見せますから、我慢をしていてください。

代わりの俺も自らの腿を抓って怒りを抑えます。

「う、うぬ。さすがにワシもこのような事態が起こるとは思いもせんかった」

「人望がありませんな」

そこの男! 大臣でしたかな?

俺の喋りを真似するとはどういう了見ですかな?

後で殺すリストにあの大臣っぽい奴を入れておきますぞ。

で、最初から決まっていたにも関わらず、クズが配下と耳打ちをしておりますな。

「ふむ、そんな噂が広まっておるのか……」

「何かあったのですかな?」

ま、知ってはいますがな。お義父さんが城内で最弱の勇者なのではないかと言う根も葉もない噂が広まっている等というやらせを。

「ふむ、実はの……勇者殿の中で盾の勇者はこの世界の理に疎いという噂が城内で囁かれているのだそうだ」

「はぁ!?」

「伝承で、勇者とはこの世界の理を理解していると記されている。その条件を満たしていないのではないかとな」

怒りを抑えるので精いっぱいの俺の代わりに樹がお義父さんの肩を叩いて呟きますぞ。

「昨日の会話をきっと聞かれていたのですよ」

かと言って、勇者ですぞ?

知らないなら教える、国が援助金を支払うという状態にも関わらず、仲間が来ないというのは幾らなんでも不自然だと今にして思いますぞ。

ですが……この頃の俺はお義父さんを出し抜く相手、蹴落として自分達を称賛するだけの存在と内心は下に見ていましたぞ。

もちろん、人に言う程では無いですが、心のそこではそう嘲っていました。

ここで、お義父さんの負担を少しでも削減する為に仲間を分けるなどと言っても問題は無いかもしれませんが……。

「つーか錬! お前5人もいるなら分けてくれよ」

しかし……錬は剣の勇者だからか、この頃は人気がありましたな。

外見は少々幼い感じでしたが、落ちついて見えますし、頼りになる様に見えたのでしょう。

実際は他者とのコミュニケーション能力に欠如したぼっちですがな。

錬の仲間になりたいと言う連中……最後までいた試しは無いですが、お義父さんから避けるように錬を盾にしていますぞ。

確か……錬の仲間は国の息こそ掛っていますが普通の冒険者が多かったと思いますぞ。

燻製は除外ですがな。

何人かメンバーを変えたのですかな?

良く見ていないので覚えていません。

錬は何やら面倒そうに頬を指で掻いています。

「俺はつるむのが嫌いなんだ。付いてこれない奴は置いていくぞ」

置いて行く所か、置いて行って狩りをさせますな。

完全に冗談にしか見えません。

「元康、どう思うよ! これって酷くないか」

「まあ……ですぞ」

国の陰謀と喉まで出そうになりましたが必死に堪えました。

「偏るとは……なんとも」

俺は豚共を一瞥します。

どいつもこいつも臭くて鼻が曲がりそうですぞ。

ブーブーと呼吸するだけで大気を汚染している自覚があるのですかな?

そもそも世界を救う為の戦いに身を投じるパーティーにしては豚が多過ぎるのではないですかな?

前回の怠け豚の様な例があるので、差別はしませんが作為的なモノを感じますぞ。

きっと豚を使って勇者を篭絡すれば良い……などと考えているのでしょう。

そうはさせませんぞ! 今回も必ず防いで見せますぞ!

「均等に3人ずつ分けたほうが良いのでしょうけど……無理矢理では士気に関わりそうですね」

「だからって、俺は一人で旅立てってか!?」

いいえ、事が上手く行けばお義父さんは一人じゃありません。

例え失敗したとしても俺がお義父さんの味方をしますぞ。

そうなったらまたフィロリアル様……サクラちゃんはお義父さんに懐いていましたから一緒に行きましょう。

「ブー!」

む! 赤豚が俺の素敵な未来予想を遮って手を上げました。

何処までも不快な存在ですな。

しかもお前はフレオンちゃんの仇なのですぞ。

今回も絶対にこの世から消し去ってみせます。

「お? 良いのか?」

「ブー」

お義父さんが赤豚を見て照れておりますな。

騙されてはいけません!

そいつはこの世に居てはいけない存在なのですぞ!

くっ……本当は今すぐにでも助けに行きたいのですが、これまでの経験からしてはいけないと理性が言っています。

全ての世界のお義父さん、必ず救い出し、赤豚を血祭りに上げるので、今は知らないフリをしている俺を許してください……。

「他にナオフミ殿の下に行っても良い者はおらんのか?」

最初から決まっている募集なのですから付いてくる者など出てくるはずもありませんな。

何度体験しても不愉快極まりないですぞ。

「しょうがあるまい。ナオフミ殿はこれから自身で気に入った仲間をスカウトして人員を補充せよ、月々の援助金を配布するが代価として他の勇者よりも今回の援助金を増やすとしよう」

「は、はい!」

若干、ムッとしているお義父さんがクズの言葉に素直そうに頷きました。

そんな苛立ちを人に当てる事もしないお義父さんの優しさをこの元康、ちゃんと知っていますぞ。

「ナオフミ殿には銀貨800枚、他の勇者殿には600枚用意した。これで装備を整え、旅立つが良い」

「「「「は!」」」」

「「「ブー!」」」

豚が多くて反吐が出る!

とりあえず、今日の夜まで自由行動が出来る様になりましたな。

自由に行動できる内に、あの計画の準備を進めますぞ。

さて、今までの経験からお義父さんへと近付こうとすると豚共が邪魔をしますぞ。

前回のループから学んだ点……お義父さんや錬、樹達の泊った宿を知っている所でしょうかな?

多少の差異はあれど、きっと間違いは無いですぞ。

ですが……問題は樹ですな。

あの虚言癖のある樹が本当の事を言うか怪しい所があります。

なので、それとなくストーキングして裏を取りましょう。

ですから、ユキちゃん達を購入しに行くのは後になります。

買いに行っていたら樹を見失ってしまいますからな。

幸い、お義父さんに近付かなければ、勇者同士が話し合いをする事や近くにいる事に関しては適当みたいですからな。

「「「ブブー!」」」

豚共が何か言ってますぞ。

まったくわかりませんな。

ここは少々最初の世界の対応とは異なりますが、錬と同じ様にクールを気取る事で回避できるはずです。

「では皆さん、これから色々とありますが、まずは装備を整えてから出発しましょうか」

などと樹は自らの仲間達を連れて城から出て行きます。

錬は……必ず走って城から出て行きますな。

スタートダッシュを決めるという感じでしょうか?

そういえば一人だけ、今夜は城の外……二つ先の村の宿で泊るのですぞ。

地味に遠いですな。

まあ、樹が宿に泊って備え付けの酒場を利用するのを確認したら急いで行きましょう。

ステータスでドーピングした俺の足なら計画の予定時間までに間に合うはずですぞ。

さて、俺の方はどうやって豚共をまきますかな?

色々と方法はありますから拘る必要は無いでしょう。

樹の後を追う様にゆっくりと俺は歩いて城下町の広場まで行きますぞ。

それからさり気なく樹が向かう先を追い掛けて、曲がり角で豚共が追いつけない速度を出し、急いで曲がります。

「「「ブ!?」」」

今ですぞ!

時間にして三秒くらいですな。

クローキングランスを使って、即座に姿を消します。

まあ、これだけでは見つかる可能性もあるので念には念をでドライファ・ファイアミラージュを重ねがけ……燻製を仕留めた時と同じですな。

すると豚共は俺が一瞬で消えたと勘違いしたのかオロオロと辺りを探し始めますぞ。

ま、貴様等に見つかる訳にはいきませんからな。

これで騒ぎが大きくなってお義父さん達が余計な動きをする可能性もありますが……前回の知識を見るに問題ないでしょう。

前回、俺はポータルでユキちゃん達の卵を手に入れに行ったのですから。

さて、専門用語でスニークと言うのでしたかな? の状態で俺は樹を追跡しますぞ。

冒険者ギルドの方へ行きました。

俺はこの時、何をしていましたかな?

あ、確か豚共と美味しい食事をするには何処が良いのかとか雑談をしていた気がしますぞ。

錬は何をしていたのでしょう?

確か……俺が目撃したのは城下町の裏路地辺りにある安値のポーション屋を探していた気がしますぞ。

ゲームにはありましたが、そんな名店は存在しないのでしたな。

おや? 樹が冒険者ギルドから出て武器屋に入りましたな。

すれ違いざまに錬が出て行ったのを見ましたぞ。

お義父さんも確か武器屋には来たとか。

いつ来たのかわかりませんが、さりげなく武器屋の親父さんに聞いてみましょう。

樹達が出て行ったのを確認した後、隠れるのをやめて店に入りますぞ。

段々思い出してきました。

確か豚共を引き連れてハイテンションで武器屋の中に入り、店の武器をコピーした後、品揃えが良くないと馬鹿にしながら出て行ったのでした。

「いらっしゃい」

お義父さんを色眼鏡に掛けることなく贔屓にしてくださる武器屋の親父さんですぞ。

「おや? その格好は、アンタも勇者か?」

「そうですぞ」

俺は槍を見せつけました。

すると俺の正体がわかったのか感心した様子で親父さんは口を開きました。

「ほー、槍の勇者か。見た所一人か?」

「そうですな。今の仲間は不必要なのですが、うっとおしく追いかけて来ていると思いますぞ」

「なんだか込み入った事情がありそうだな」

親父さんが眉を寄せていますぞ。

「で、槍のアンちゃんは何か買って行くのか?」

むう……ここで鎧などを買っても使うか怪しいですな。

かといって、コピーをする必要もありません。

「買いたいのは山々ですが、余裕は無いのですぞ」

「おや? 勇者は国から金をもらったんじゃねえのか?」

親父さんは勇者に関して耳にしている事は多そうですな。

では情報収集に少し尋ねてみますぞ。

「アンタもと言う事は俺の前に来たのですかな?」

お義父さんと錬、そして樹がきっと来たのでしょう。

「そうだなぁ。盾のアンちゃんが最初に来て、次は……アレは剣の勇者か? 剣を物色したかと思ったらすぐに出て行ったな。で、次に弓の勇者を名乗ったアンちゃんが来たな」

「ほう」

まあ見ていたのでわかりますぞ。

秘匿癖がある所為か、何やら挙動が怪しかった気がします。

キョロキョロと店の外でもわかるほど、辺りを確認していましたな。

きっと、ウェポンコピーは僕が見つけた抜け穴だとか思っていたのでしょう。

「弓のアンちゃんは盗みを働きそうな怪しさをしていたな」

ここでコピーの話をするのも良いですが、拗れそうなので黙っておきましょう。

前回の世界で沢山の恩を受けているので、いつか恩返ししますぞ。

「そうですな……では安物のローブを二着欲しいですぞ」

「あいよ」

そういえば前回のループでこの武器屋の親父さんには結構迷惑を掛けましたな。

色々と優遇してもらいました。

最後はメルロマルクの城下町が応竜の手で大変な事になりましたが……武器屋の親父さんは無事だったのでしょうか?

いや、それよりも今は樹ですぞ。

「ではそろそろお暇しますぞ」

「あいよ」

俺は再度クローキングランスを使いますぞ。

武器屋の親父さんが突然消えた俺に何度も瞬きしておられました。

さて、樹は……っとまだゆっくりと市場の方を歩いていますな。

仲間の足が遅い所為でしょうか?

そのまま俺は樹をずっと追跡をしました。

草原へと出る正面の門では無く、別の方の門ですな、少々離れた所にある森を目指している様ですぞ。

確か……俺はあまり行った覚えはありませんが、ただのバルーンが生息する森だったかと。

少し奥まった所にちょっと強めの魔物が少数生息するのでしたかな?

あんまり動かない植物型の魔物がいた覚えがあります。

樹からしたら効率の良い雑魚でしょうな。

俺は翌日に、別の狩り場に行く予定で通称、バルーン島と呼ばれるメルロマルクの城下町の近くを通り過ぎる川の上流にある少しだけ盛り上がった丘へと行ったのでしたな。

ふむふむ……確かに最初の世界での打ち合わせ通りに行動している様ですぞ。

錬の方は二つ先の村でしたな。

きっと危険な狩りが好きなのでしょう。

基本的には敵が強ければ手に入る経験値も多いですからな。

で、お義父さんは確か……草原でバルーンと戦ったとか言っていた覚えがありますぞ。

盾の勇者であるお義父さんが一人で稼ぐのは難しいので、適性とは言いがたいですがな。

ですが、あの赤豚がお義父さんに経験値を恵んでやるとは思えません。

ああ……早くお義父さんを救いたいですぞ。

しかし、今は樹を注意深く監視する必要があります。

前回のお義父さんに錬と樹も救うと約束しましたからな。

そんな風に考えながら樹を眺めます。

「あれ? 魔物を倒したのに経験値が入りません……」

樹が辺りをキョロキョロと見渡しております。

残念でしたな。

そういえば昔、最初の世界でお義父さんが勇者同士の反発現象で経験値が入らないのは半径1キロくらいとか言っていたような……。

近くにいる事を勘付かれてしまいそうですが、ここで樹を見逃してしまうと計画を進行出来ないので悪いとは思いますが樹には我慢してもらいましょう。

さすがにこの元康、1キロ先から樹を目視で監視するのは難しいですぞ。

まあ、城門の近くで待っていれば捕まえられるかもしれませんが。

「おかしいなぁ、ちゃんと四人で活動範囲を決めたはずなのに……錬さんや尚文さん、もしくは元康さんが近くに居るのかな? 探して注意しましょう。あっちも効率が悪いはずだし、きっと気付いているはずです」

樹が仲間と共に首を傾げておりますな。

ははは、俺はここですぞ!

そんな感じで樹は俺を探し始めました。

やがて日もくれた頃になると樹は狩りを切りあげて宿の方へと向かいました。

少々不快そうにしていますな。

狩りをしたのにLvが上がらなかったので当然ですが。

しょうがないですぞ。お前は嘘を吐くのが癖ですからな。

で、樹が……前回話した通りの宿に入ったのを確認しました。

ちゃんと部屋に入っています。

前回の樹が嘘を吐かなかったとは、ちょっと意外ですぞ。

ぶっちゃけると俺が泊まる予定の宿から大きな道を挟んだ反対側の宿ですぞ。

声が届きそうですな。

よし! 樹はその後、酒場で仲間と結成パーティーを開くでしょうから、ここで俺は追跡を中断して錬を追い掛けるとしましょう。

その前に……泊る宿の受け付けを済ませておきますぞ。

じゃないと赤豚が来るかわかりませんからな。