軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

槍の勇者と勇者会議【中】

「で、では……槍の勇者様と弓の勇者様のメンバー交換に関して話しましょう」

婚約者が強引に話の矛先を俺と樹に向けますぞ。

先程から婚約者はオドオドしていますな。

勇者である錬も樹も激高して恐いですからな。

しかもお義父さんが助手を殺されると聞いて、コウの時の様に怒っていますから常人であれば恐怖を抱くでしょう。

おや? 樹が俺を凄い形相で睨んでいますぞ。

まあ……今回の周回で樹と俺は何度も激突していますから、樹がそういう表情をするのもしょうがないのかもしれませんな。

「元康さん、貴方は僕の仲間を何だと思っているんですか! 錬さんではありませんが上から目線で強引に連れ回したそうじゃないですか」

「横殴りや狩り場荒らしをしようとしておりましたし、気に喰わないのか、ボイコットをしようとしたからですぞ」

「だからと言って痺れさせて縄で引き摺るのはどうなんですか!」

「お前と同じく俺がLvを十分に上げてやりましたぞ。どうせ弱いのですからな。回復魔法は十分だったと思いますぞ」

「何だそれは! 尚文! 元康は注意しないのか!」

錬が異議を唱えるようにお義父さんに向けて言いますぞ。

お義父さんは困った表情を浮かべました。

俺が原因でお義父さんを困らせてしまったようですぞ。

すいません、お義父さん。

「その……元康くんだから……俺にどうこう出来るなら既にやってるよ……」

何やら遠い目をしてお義父さんは視線を逸らしております。

「あー……そうか、そうだったな。元康はそう言う奴だった」

錬も先ほどの殺気は何処へやら、静かになりましたぞ。

何故そこで納得を?

ともあれ、続けますぞ。

「正直、樹は宗教でも始めるつもりですかな? 樹の仲間達は俺に樹を様付けで呼ぶのを強要しようとしましたぞ」

「何? それは本当か?」

「ウソではありませんぞ。何なら樹の仲間とメンバー交換をすると良いですぞ」

「ふむ……」

錬が樹の方をじっと見ております。

その視線を不味いと判断したのか、樹は慌てて口を開きました。

「それだけじゃありません! 元康さん、貴方の仲間……正体がフィロリアルでしたっけ? 彼女達は何なんですか! 僕を寄って集って質問攻めにして!」

樹もバツの悪さを感じているのか、矛先を変えようとしておりますな。

そんな事を言われても、俺は冷静に事実を言うだけですぞ。

「素直に答えないからですぞ。ユキちゃん達の知的好奇心が疼いてしまったのでしょうな」

「あれか……」

「何があったんだ?」

「俺が来た時、元康くんと一緒に樹を取り囲んで『なんでなんで』って連呼してた……ちょっと不気味だったかな」

「うわ……飼い主が飼い主なら魔物も魔物か」

何やら錬とお義父さんに妙な信頼感が生まれているのは気のせいですかな?

良いでしょう。この元康、俺が犠牲になる事でお義父さんと錬が友好を築けるのなら甘んじて汚名を被りましょう。

「そういう子達じゃないんだけどねー……見た目通りまだ子供なんだよ。だから樹の行動に疑問を持って聞いたんだろうね。ほら、子供ってなんでなんでって大人に聞くでしょ? あれと同じ感じなんだよ」

「だとしても僕の攻撃を叩き落として邪魔をしますし、手加減してると決めつけてきて、反論を許さないんですよ!」

「俺もその時の事を聞いたんだけど、確かな証拠をユキちゃんは指摘したと思うよ? どうして答えてあげなかったの?」

そんなの決まってますな。

疚しい所があるから、素直に答えられなかったに違い無いですぞ。

「何をだ?」

「ユキちゃんの言い分では、弓を全然引き絞って無かったんだってさ。しかも仲間がピンチになるのを待っていたそうだよ。必ず一歩遅く攻撃していたらしいんだ」

「……なるほど。それが事実なら問題だな」

「片方だけの話を信じるのもアレだし、何か理由があったなら教えてよ。今からでも教えてくれればユキちゃん達には俺から説明するからさ」

「さっきまで喧嘩していた癖に何を分かりあっているんですか!」

樹の指摘に錬がハッとなってお義父さんを睨みます。

が、同時に樹を見て眉を寄せましたぞ。

それにしてもお義父さんの質問に答えていませんぞ。

うやむやにして誤魔化すつもりですな。

「それとこれとは別だ。で? 仲間のピンチを待っていたのか?」

「樹は正義が大好きですからカッコよく助けられるタイミングを待っていたのですぞ」

未来の知識ですから間違いないですぞ。

最初の世界での会議でも同じ問題を指摘されていましたからな。

フィーロたんに!

しかもお姉さんが怒っていたと聞いたので、俺の脳細胞に深く刻まれていますぞ。

「そりゃあそんな真似をしたら聞きたくもなるだろ。挙句、樹の事だから嘘まで吐いていたんだろ」

「僕がいつ嘘を吐きましたか!」

「風の噂で聞いたぞ。正体を隠してバレバレの世直しをしてるってな。既にそこがウソだろ」

「それとこれとは別です!」

「仲間を肉壁にしようとしていますぞ」

「なるほど。効率だけ見れば悪い手じゃないが、味方にはしたくないな」

盛大なブーメランですぞ!

自分の事を棚に上げてますな。

ストーカー豚に投擲武器を投げてもらうと良いですぞ。

洗脳されているみたいな脳細胞を解除してくれるかもしれませんぞ。

「いい加減にしてください! 今は僕と元康さんとの話し合いですよ」

「じゃあ明日から樹と俺のメンバーを交換してみるか? それで樹か元康のどっちが正しいかわかるだろ」

「わ、わかりました。その様に手配しておきますわ」

婚約者が話がまとまったのを察してそう言いましたぞ。

どうやら樹と錬だけでメンバー交換は継続するようですぞ。

「く……」

「またそれですか。何回呻くのですかな?」

樹にキッと睨まれました。

錬の時に上手く正体を隠せると良いですな。

まあ、樹の事ですから仲間という名の宗教徒共に色々と命令をしておくのでしょうがな。

ですが、何を具体的にするかの指示が出来ますかな?

嘘を吐くのは誤魔化せても仲間の方は誤魔化せるか見物ですぞ。

「弓の勇者様、槍の勇者様、話はもう出来たでしょうか? 次の議題に行きたいのですが」

「問題ないですぞ」

「……色々と言いたい事はありますが、保留にしておきましょう」

思う所はあっても我慢する。

それほどに強化方法を樹達は知りたがっているのですな。

少し不安な状況ではありますが、これから先を乗り越えるには必須ですぞ。

「ではこれから本題の勇者同士による情報交換を始めます」

婚約者が宣言しましたぞ。

錬と樹はそこで静かになりましたな。

大方、俺やお義父さんが隠し持つ強さの秘密をどうやって聞きだすかと考えているのでしょう。

最初の世界では信じてくれませんでしたが、今ならユキちゃんを始め、助手の強さから信じてくれるかもしれませんぞ。

で、情報交換の話題になった途端、錬と樹は黙りました。

不気味な程に、ですな。

先ほどの喧騒がウソの様ですぞ。

おそらく、錬も樹も自分の知っている強化方法とかの説明をしたくないと思っているのは確かですな。

俺も喋らずにいた方が良いかと考えていましたからな。

自分の知っている強化方法を確認する必要なんて無いと思っていましたし、仮に知らないでいる奴に教えてやる義理もありませんからな。

ですが、あの時はお義父さんの話術で喋らざるを得なくなったのを覚えていますぞ。

そうしないと協調性が無い厄介者と烙印を押されて他の三人に蹴落とされると思いましたからな。

お義父さんの話術にこの元康、称賛致しますぞ。

「……尚文さん。まずはアナタから話したらどうですか?」

樹が沈黙を破ってお義父さんに言いますぞ。

前にも聞いた台詞ですな。

「まあ……別に隠す必要は無いか。二人からは教えてもらってないけど、俺は元康くんから間接的に二人の強化方法を教わっているわけだしね」

「別に隠してなんかいませんよ!」

樹は沸点が低いですなー。

錬も不快そうにお義父さんを睨んでますぞ。

なので俺が熱い目で錬を見つめると錬は何やら青ざめながら視線を逸らしました。

片目でも瞑ってみせますかな?

「う……」

錬が更に手で口を抑えて呻きましたぞ。

何が不快なのですかな?

「お前等……そんな関係だったのか」

「何が!?」

お義父さんが錬と俺を交互に見て言いましたぞ。

何か誤解していませんかな?

「ふん。樹が隠し癖があるのは周知の事実だな。疑う余地も無い」

「僕をいじめてそんなに楽しいですか! 勇者とは聞いて呆れますね!」

錬の言葉に樹がまた言い合いを始めようとしています。

本当に懲りない連中ですな。

「まあまあ、俺は元康くんから全部聞いているから黙ったりしないよ。錬や樹の強化方法に関しても先に知っているしね」

「何をふざけた事を……」

「とりあえず錬、樹、元康くんが言っていたこの世界の未来からやってきたという話が真実であるという事を前提に聞いて欲しいんだ」

「ああ、尚文が鳥の娘を得るって奴か? で、男と寝て子供が出来るとかいう奴」

「そ、それは元康くんの説明が凄く下手なだけで未来から来たのは本当なんだよ。だから国の真実や勇者の武器の強化方法とかに詳しいんだよ。錬や樹の強化方法だってこっちは既に実践してるんだから」

お義父さんが必死に錬と樹に事情を説明して行きますぞ。

嘘偽りの混じらない真実だけをお義父さんは包み隠さず話しました。

ですが……。

「信じられませんね。大方、元康さん自体が召喚された日の夜に部屋を出て行った時にでも、城の連中の話に聞き耳でも立てていたのではないですか? 王と王女の密会辺りに遭遇したとか」

「十分あり得るな。陰謀を知って上手く立ち回る為に弱い職業の尚文を利用したとかだろ。樹じゃないが目立たない為の良いカモフラージュを得たんだろう」

なんと! 樹に夜間外出した事がばれていたのですかな?

まあ、フィロリアル舎に行ったのでみんな知っている事でしょうが。

あの時に燻製を殺害した事はまったくバレていない様ですがな。

次に暗殺をする時は気を付けるとしましょう。

まあ燻製を殺しても、まったく意味がなかったので次はしないと思いますが。

「……続けるけど、証拠に元康くんはとても強かったし、いろんな事を知っている。最初の日の段階でポータルスキルを使えるし、シルトヴェルトの方へも一瞬で行けたんだよ。そのお陰で俺も国に気付かれず強くなれたんだ」

「強いのは元康さんがチートをしているからに決まっているじゃないですか! 未来の知識? ならどうして僕が利用されているのを止めなかったんですか!」

「言っても信じないと思ったからですぞ。現に何度も言いましたぞ。その時、樹は俺の話を信じてくれましたかな?」

「結果だけで言えば樹は元康くんの言葉を信じなかった」

「う……」

心当たりがあるのですな。

まあ、何度も言いましたからな。

被害が増える前に俺やお義父さんの話を聞き入れなかった樹が悪いのですぞ。

「それを責めるつもりはないよ? 未来から来た、なんて話をあの時点で鵜呑みにする方がどうかしているしね」

む、確かにお義父さんの言う通り、未来から来た、などという突拍子も無い事を信じさせる方が難しいですぞ。

実際お義父さんの場合も冤罪を掛けられて傷付いている所に入り込む形で信用を得ましたからな。

おそらくですが、冤罪から救出した直後のお義父さんは俺の話を半信半疑で聞いていたと思いますぞ。