軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幽閉

「国民の支持も厚く、イワタニ様こそ我が国の王に相応しいと皆が思っています。どうかメルティと良くしてくださいね」

これは……つまり女王がお義父さんに王位を与えたという事に他なりませんな。

考えてみれば革命軍を納得させるには、女王が帰って来た、だけでは現在の状況では難しいと思いますぞ。

失脚したクズの権威が落ちた様に、今回の騒動で女王の権力も相応に弱まっているという事でしょう。

そこで国民が望むお義父さん、そして革命軍を納得させた婚約者が必要という訳ですな。

ふむ、お義父さんが王ですか。

実に素晴らしい案ですな。

お義父さん程の存在であるならば、人々の頂点……王……いえ、神として扱われてもおかしくないですぞ。

どうしてこんな事に気が付かなかったのでしょう。

最初の世界でしょっぱい領土の領主をしておられましたが、お義父さんは王者になるのが一番な気がしてきましたぞ。

タクト共を滅ぼした暁にはフォーブレイも吸収し、世界の王として君臨して頂きましょう。

まあ、お義父さんが望めば、ですが。

「私も国の代表として行動は致しますが、どうか……我が国の為にこれまで以上に人々を救い、波を沈めてくださるようお願いします」

「ぐぬぬぬぬ――ならん! ならんぞぉおおお!」

クズが激怒したのか兵士の拘束を払ってお義父さんに殴りかかろうとします。

無駄な事をしておりますな……。

「させませんよ。アイシクルプリズン!」

女王の魔法でクズは氷の檻に閉じ込められましたな。

「オルトクレイ、良く理解なさい。貴方の時代は終わったのです」

「ならん! 盾がこの国の王になるじゃと!? そんな事、代々続くメルロマルクの家訓に逆らう事じゃ! 認められん!」

「認めるも何も、国民は盾の勇者こそが国の代表に相応しいと思っています。オルトクレイ、貴方は杖の勇者。命だけは取りません。さあ、古い考えを持つ過去の王を……城の塔に幽閉しなさい」

「なんじゃと!?」

「外に出られるのは波の時だけだと思いなさい」

これは軟禁という奴ですな。

殺しこそしないけれど、今後一生自由な生活は出来ないという。

ざまぁ! という感情しか湧きませんぞ。

「ぐぬ! 妻よ! 盾を、盾を王になどしてはならんのじゃああああ!」

クズがそうして玉座の間から連れ去られて行ったのですぞ。

若干、まだ叫び声が聞こえますが、徐々に遠ざかっていきます。

「……まだ杖が貴方を見捨てていない事に意味があらん事を」

女王は祈るようにその姿を見届けてから顔をあげました。

シルトヴェルトの代表たちがその様子を複雑な心境で見届けていましたな。

「カワスミ様、既に結果は出ております。どうかご理解ください」

「く……わかりました。それで今度は僕にどんな罰を与えるつもりですか」

樹の問いに女王は扇を広げて口元を隠して答えます。

「特に何も……ですが、カワスミ様の評判は我が国では悪く、活動が難しいと予測されます。出来るのでしたらしばらくの間、他国で活動してもらった方がカワスミ様の為でしょう」

「遠回しな国外追放ですな!」

これは滑稽、正義を主張しておきながら最後は自らの行いで国外追放とは、笑いが止まりませんぞ。

まさしく因果応報ですな。

「知らずに悪い事をしていたから評価されず、こうして追放処分になるのですな!」

報奨金をもらった後の樹の言葉に対してこれほど的確な言葉は無いでしょうな。

自分の言葉が返って来るのは、どんな気分なのでしょうな?

……おや、俺にはその気持ちがわかる様な気がしますぞ。

主に最初の世界で結構な割合で跳ね返ってきた様な気がします。

「さっきからうるさいですよ! 人が苦しんでいるのがそんなに楽しいんですか!」

「お義父さん見てください! 樹がめっちゃ怒ってますぞ。我慢が足りませんな!」

「元康くん、挑発しないの!」

激昂する樹をゲラゲラと笑っていたらお義父さんに叱られてしまいました。

そのお義父さんも玉座から立とうとする度に女王に座っていてください、と懇願されて立てずにいる様ですぞ。

「樹に考える時間を与えるのと遠回しな追放じゃ矛盾している様に聞こえるんだけど」

「ですからしばしの間だけの話です。これは後ほど宴の際に報告しようと思っていた事なのですが、この国の近海のあるカルミラ島にて活発化現象が観測されました」

「「おお!?」」

樹と錬が女王の方を凝視しましたぞ。

何だかんだでLv上げが大好きな連中ですからな。

簡単にLvが上がるのでしたら多少の不快な気分など吹き飛んでしまうのでしょう。

何、過去の俺もこの時は仲間だと信じ込んでいた赤豚が酷い目にあって不快に思っていても忘れていましたぞ。

まあ赤豚の事など、その程度にしか考えてなかったとも言えますが。

「此度の出来事の熱が冷めるまでの間、勇者様方に参加して頂ければ、国民の熱や弓の勇者様の悪い噂も沈静化出来ると私共は考えております」

「どうにかなるの……?」

「カルミラ島での行事の後、他国でしばらく活動してもらえばその間に、カワスミ様の評価を上げる事は可能です」

「ど、どうやって?」

「四聖は神に等しい存在なのです。その神が悪事を働くというのを民は疑いを持ちます。イワタニ様もご理解なさいませんか? 偽者の勇者の話を」

「あ……なるほど、本物の弓の勇者ではなく、偽者が勇者を主張してメルロマルクを滅茶苦茶にしたとするんだね」

「はい。ですからカワスミ様はしばしの間、他国で活動して頂ければメルロマルクでも活動する事は可能となります。ただ、今までの様な無茶な行動は不可能だと思ってください」

「……」

「何なら、四聖を歓迎する国へ公式の親書を出しても問題はありません。フォーブレイという四聖勇者発祥の国も受け入れる態勢が出来ているでしょう」

女王の言葉にお義父さんが俺に目を向けます。

危険ですな。

樹がフォーブレイに行ったら間違いなくタクトの餌食となってループしてしまいますぞ。

「女王様、ちょっと」

「なんでしょうか?」

お義父さんが女王に声を掛けて内緒話をしますぞ。

樹を出来る限りフォーブレイには行かせない様、お願いしているのですな。

「……わかりました」

コクリと女王が頷き、樹の方を向きます。

「ですが彼の国にも信仰する勇者が活動しているので、カワスミ様の居場所があるかどうかの保証は致しかねます」

おお……他人の評価を非常に気にする樹の性格を理解している返答ですな。

既に似たように活躍する勇者がいる場所に進んで行くヒーローはいませんぞ。

言うなれば縄張り争いが起こりますからな。

これで樹がタクトに殺される心配はなくなりましたな。

「カワスミ様も余計な争いは好まないと思うのですが、どう致しますか?」

「う……」

言葉に詰まっていますな。

樹のゲーム知識は偏っているそうですぞ。

見知らぬ国へ行く事に対して抵抗感はあるでしょうな。

「わ、わかりました。勇者がおらず、悪が根付く国を裁くために僕は行く事にしましょう」

「四聖は世界の為、各国へ参加を要請されます。今までよりも遥かに困難な任務が来る事を御容赦ください」

「わかった。これで面倒な騒ぎが無くなるなら、俺達に不満は無い」

錬がそこで頷きましたぞ。

ぶっちゃけ、お前は何をしたのですかな?

このLvアップ中毒者が! ですぞ。

「それでは此度の騒動に勇者様方を巻きこんでしまった事を深くお詫び申し上げます」

女王はそう言って深々と頭を下げたのですぞ。

それから解散を宣言しました。

お義父さんを除き、勇者達はそれぞれ玉座の間から出る事になったのですが……。

「も、元康くん」

「なんですかな?」

「とりあえず、元康くんとみんなは残って、ここで話がしたいから」

「わかりましたぞ。さあ、みんなお義父さんの言う通りに待つのですぞ」

「わかりましたわ」

「りょーかーい」

ユキちゃんとコウが答え、キールやルナちゃん、そして婚約者とサクラちゃんが頷きますぞ。

怠け豚は部屋の隅に寄りかかって面倒そうに手を上げています。

助手とライバルは不快そうに錬の後姿を睨んだ後に静かに頷きます。

パンダ獣人は場が場なので部下と共に緊張した様に辺りの空気に飲まれていました。